2022年5月12日

鉄鋼業界で働く/女性事務職・次長編/インタビュー/若手社員の思いを大事に

男性社会のイメージが強い鉄鋼業界だが、人事や経理などの管理部門には以前から多くの女性が働いている。神鋼商事東京本社では、人事部次長の岩田亜希子さんが、2004年の入社時から一貫して人事の仕事に取り組んできた。入社したきっかけやこれまでの業務内容、管理職と家庭の両立、女性として考えることなどについて聞いた。

――入社までの経緯を。

「学生時代、外国語学部でドイツ語を専攻していました。英語ともう一つの言語を習得していれば、今後の人生の選択肢が広がると思ったんです。ドイツは環境への意識が非常に高く、自然への配慮が多くなされていることに良い印象を持っていましたね。就職活動では鉄鋼業界に限らず、商社を中心に応募し、神鋼商事に一般職で内定をいただきました。当時、総合職は男性だけの採用でした。もっと勉強を続けたい気持ちもあったのですが、世の中の流れや社会を知ることも大事だと感じ、就職しました」

――当初は営業志望だった。

「同期社員は営業部への配属が多い中、企画人事部(現人事部)へ配属され、想像と違ったスタートを切りました。私ともう一人、同じ部署に配属された女性社員がいましたが、簿記2級を取得しており、当初から経理として働くんだろうなと想定できる雰囲気でしたね」

――入社後は。

「海外駐在員の給与や退職金の計算業務からスタートしました。海外駐在員の場合、国ごとに処遇が異なります。退職金も人によって違うので、社員一人一人に資料を作って説明を行っていました」

――06年、総合職へ転換した。

「この頃から、会社が女性の総合職採用を始めたんです。過去にも女性社員を対象とした総合職への転換制度はあったのですが、会社が先導して進めたのを機に、面接や筆記試験を経て転換しました。一般職から総合職になっても、部署や業務内容は変わらず今まで通りでしたね」

――仕事で大変だったことを。

「11年に東日本大震災が発生した際、ニュースを見た海外の駐在員から『東北に住んでいる家族と連絡が取れない』といった問い合わせが複数寄せられました。代わりにご実家やご自宅へ電話を掛けても回線などの関係で全然つながらず、あまり役に立てなかったです。東京本社も窓ガラスが割れ、社員らの帰宅や翌週からの出勤をどうするのかを考えないといけない状態だったのを覚えています」

――貢献できていると感じる瞬間は。

「育児休暇について、取得を予定される女性社員に直接説明ができることです。初めてだと、どうしても分からないことが多いものですよね。私は2回経験しており、みなさんに後に続いてもらいたく、当事者の女性社員やその上司に説明を行い、育休を取っていただいています」

――現在子育て中と伺いました。

「09年と17年に息子を出産しました。育休は1年間で、保育園が見つからない場合は最大2年まで可能です。育休がしっかり取れるようになったのは、私が入社した後じゃないかと思います。1人目の時は、女性社員自体が少ないこともあって社内で実例があまりなく、どうしたらいいのか、取っていいのか悩みましたね。2人目の時は利用する女性が増え、取得しやすかったです」

――子育てとの両立は。

「仕事と子育てを行っていると、時間がないと感じることが多いですね。特に0―1歳児は体調を崩しやすいので、親は振り回されがちになります。看護休暇が年間5日あるのですが、復職直後にあっという間に消化していまい、残りは有給休暇で何とかしのぎました。3―4歳になると子供も安定してきて、頻度も減りましたね」

――21年から管理職を務められています。

「子供が小さいので出張は難しいのですが、新型コロナウイルス感染拡大を機に夫が在宅中心の働き方になったため、何とか両立できています。働き方が今後も変わっていくのだろうなと感じています」

――鉄鋼業界に女性が増えてほしいと思いますか。

「難しいとは思いますが、いつまでも拒み続けていたら会社として成り立つのが難しくなってくると思います。学力やコミュニケーション能力に差はありませんし、男女関係なく活躍できる業界になればと思います。女性は出産した際、どうしてもキャリアを止めないといけなくなります。出産から復帰したあと、働きやすい環境を作ると良いのではと感じています。抱えている仕事の心配などをされるかもしれませんが、男性社員にもっと育休を取得してもらいたいですね。男女ともにしっかり向き合ってほしいです」

――今後の展望を。

「目先の仕事でいっぱいいっぱいなのが現状ですが、今以上に自由に意見を言い合える会社づくりができればと思っています。上司や部下関係なく何でも話せて、その中できちんと学びも得て、素直にお互いが信頼できると素敵ですよね。特に若手社員の思いを大事にしたいです。進言したいことがあっても『どうせ言ってもムダだよね』と思われると悲しいじゃないですか。何か悩みや問題があったとき、お互い着地点を見つけられるようになりたいです。個人としては、今後も働き続け、営業部をはじめ社員一人一人に合ったサポートをしていきたいですね」

(芦田 彩)

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