2000.06.2
東 南アジアの電子材マーケットでの国際競争力強化をメーンテーマに昨年7月末、銅合金条事業で業務提携した神戸製鋼所と三菱伸銅は、この10カ月間で共同購入、物流コスト削減、生産の受委託など当初策定した国内の5項目を順次実施中で、第2ステージとして両社のマレーシア、シンガポールの電子材加工の海外拠点を相互に活用する方向で業務を拡大する。三菱マテリアルを含めた3社が1日、発表した業務提携の拡大はこのほか研究開発、溶解・鋳造なども含まれている。

 銅合金条に関連する海外拠点は三菱伸銅がマレーシアに異形条加工、神鋼がシンガポールにリードフレーム材の製造・販売およびスタンピング、メッキ加工。両社は東南アジアの電子材マーケットで共通するユーザーなどに対し、これら海外加工拠点を相互に補完しあう方向で鋭意協議中。

 3社がこの10カ月、第1次ステージとして位置付けてきた国内での業務提携5項目は次の通り。

 (1)圧延ロール、梱包資材(紙、ビニールなど)汎用的な外部調達品は可能な限り規格を共通化して共同購入する(2)共通ユーザーに納入する倉庫(中継倉庫も含む)の共同利用やトラックの帰り便を利用し、銅屑のスワップなどによる物流コストの削減(3)余剰生産能力を利用した相互生産の受・委託(4)神鋼・長府製造所は昨年9月、高潮の被害を受け1カ月間、操業を中止した。これを教訓に危機管理対応策として独自合金の相互生産委託(5)技術交流の中で相互の優位性を認め合い、製造ノウハウを含めたクロスライセンス、などを行ってきた。(4)の対象合金名は三菱伸銅がTAMAC15・5、MAX251、MSP1、神鋼がKLF125・5、CAC15・16。

 なお、これら5項目を実施する中で得られる年間のコストダウン効果は神鋼、三菱伸銅とも約1億円を予定。軽圧大手6社の2000年3月期業績。

軽 圧大手6社(12月期のスカイアルミニウム除く)の2000年3月期決算は、古河電工のみが増収で、利益は住友軽金属が黒字転換、三菱アルミが増益、神戸製鋼が営業損益改善を果たしたものの、総じて低調な結果となった。全体的に数量面では各社とも改善傾向が見られるが、市況の低下やロールマージンの値下がりなどで、収益面で好転するにはまだ時間がかかりそうだ。さらに、メモリーディスク(MD)事業は、いぜん業績の足を引っ張っており、撤退したメーカーを除くと、今期も同事業の動向によって影響を受ける可能性が高い。

 【日本軽金属】  部門別営業利益は、メタル・化成品が70億円の黒字(前年同期55億円)、板・押出11億円(同損失5億円)、加工製品損失28億円(同15億円)。加工製品部門が大幅に悪化したが、メモリーディスク(MD)事業不振による撤退などが響いた。

 【神戸製鋼】  軽圧品の販売数量は、38万6645トンで、前年同期比2・1%増を記録し、8065トン増加。また、伸銅品は、同6・2%増の11万8867トンとなり、軽圧・伸銅とも数量面では底堅く推移する。

 一方、売上高は、市況低迷、為替の円高などで、9・1%減少。ただ、コストダウンの推進などで、営業損益は31億円改善した。

 【住友軽金属】  軽圧品の販売数量は、37万8403トンで、前年同期比4・3%増。伸銅品については、6万3565トンで、同3・4%増加した。地金価格低下の影響などにより、売上高はダウン。しかし、堅調な缶材などに支えられ、量的にはアルミ圧延・伸銅品とも底堅い展開となった。

 【昭和アルミニウム】  熱交品売上高は40億3200万円で、前年同期比12・7%減。国内需要の減少で、メモリーディスクは60億3000万円と、同39・6%落ち込んだ。

 素材分野は、板の販売量が1万6868トンで、前年同期比9・4%プラス。押出は、同6・5%増の5万9225トン。また、箔は同13・8%増の2万7548トンで、売り上げ面でも2・5%アップした。

 【古河電工】  アルミ販売量は、27万3554トンで、前年同期比13・3%増。売上高は、板が789億7800万円(前年同期比7・8%増)、押出236億7100万円(同6・3%増)、その他77億4500万円(同12・0%減)となり、トータル5・8%の増収。

 【三菱アルミニウム】  圧延品の販売量は、前年同期比6・7%増の16万5763トン。このうち、板は同5・4%増の11万7423トン、押出が同15・8%増の2万4102トン。板製品は、缶材や印刷板、フィン材などが堅調。また、押出は、自動車熱交、一般機械向けなどが好調。箔もコンデンサーが底堅い。ただ、ディスク事業の低迷で、売上高は量の伸びに比べるとやや鈍った。

電 線大手6社の本年度設備・研究開発投資計画によると、設備投資額は計966億円と前年度実績比46%(306億円)増加、3年ぶりにプラスに転じる見通し。投資の大半は将来的にも成長が見込まれる情報通信分野の光関連製品、電子部品材料などの増産に集中する。米国を中心としたWDM(波長多重伝送)システムの需要が急伸していることや、パソコン・携帯電話などデジタル機器の伸びが要因。一方、研究開発投資は前年度比3%増の計656億円の計画となる。

 大手6社の設備投資は97年度1275億円に回復した後、事業環境の悪化により2年連続で減少し、99年度は計660億円と前年度に比べ26%、235億円圧縮された。電線需要が民間設備投資の抑制を背景に停滞しているため、各社の投資先は光製品や電子機器材料など情報通信関連分野が中心となっている。

 99年度のメーカー別投資実績をみると、古河電工はWDM(波長多重伝送)システム関連品など光製品の設備増強や、軽圧品および伸銅品の設備合理化に184億円と25%(35億円)減。住友電工は情報通信関連品、新素材、家電・エレクトロニクス品などの分野に203億円と15%(35億円)減。日立電線は化合物半導体、およびTABテープなど半導体パッケージの生産設備拡充を主体に144億円と32%(67億円)減。

 また、フジクラは光関連や電子材料関連などに86億円と49%(84億円)減。三菱電線は光ケーブルの設備増強を中心に35%減の24億円、昭和電線は研究部門の川崎事業所から相模原事業所への移設などに50%減の19億円にとどまった。

 本年度は各社いずれも投資を増やす計画。情報通信用の光製品、電子材関連と非電線部門への投資が活発化する。古河電工はWDMシステム関連品など光製品の設備増強を重点に52%増の280億円の投資を実施する。住友電工は情報通信関連品や新素材などに23%増の250億円。日立電線は74%増の250億円で、電子材の増産に充てる。

 フジクラは光関連向け66億円(前年度10億円)、富津関連向け2億円(同3億円)など、光ファイバーや光部品の増産を主体に計126億円と47%増やす。三菱電線は67%増の40億円、昭和電線は5%増の20億円の投資を計画している。

 一方、研究開発投資は99年度実績が前年度比8%減の計638億円にとどまった。本年度は3%、18億円増の656億円の計画。同投資も収益傾向を反映、非電線の新規事業分野を中心に小幅の伸びが見込まれ、600億円台後半の水準に戻る見通し。

日 鉱金属は1日、6月積み銅建値をトン23万円で据え置くと発表、即日実施した。

 国内建値の指標となる海外銅相場は、調整局面下にあり、この日入電でもLME、NYCともに1カ月ぶりの安値で推移している。

 輸入採算値(諸掛かり費用含む)は、LMEセツルメント・ベースでは前日のTTS1ドル=107・40円で約22万3000円、この日のTTS1ドル=108・95円でも約22万5000円と低迷、1万円の下げ方向にあると判断される。

◇   ◇
三 菱マテリアルは1日、6月積み鉛建値を据え置きトン当たり8万2000円にすると発表した。前月の平均建値に比べても変わらず。3カ月連続で同水準となる。

 1日入電のLME鉛セツルメントは416・5ドルで円換算4万5378円、関税2700円を加えると4万8078円、諸掛かりを3万3922円と算出した。

◇   ◇

三 井金属は1日、6月積み亜鉛建値をトン当たり5000円下げて16万1000円に改定すると発表した。5月の平均建値16万6000円に比べても5000円下回る。

 1日入電のLME亜鉛セツルメントは1129・5ドルで円換算12万3059円、関税4300円を加えると12万7359円、諸掛かりを3万3641円とみている。

 これに伴い、ダイカスト用亜鉛合金販価も5000円下げ、ZACNo.1=19万9000円、同No.2=20万9000円、ZAS=21万9000円とした。

古 河テクノマテリアル(高田誠之社長)は1日、マンションなどの給排水管床貫通部の防火・防音措置工法材として「ヒートメル・サイレンス」を開発、同日から販売を開始する、と発表した。ゼネコンなどを対象に初年度の売り上げ2億円を予定。

 同材はプラスチック発泡体を素材とした防音シートを排水継手に巻き付けるなどの工法で、従来の音量を半減するもの。

 同社によると、新製品の特徴は(1)日本建築センターより2時間耐火性能の防災性能評価を取得(2)熱膨脹性耐熱シート材の配置で防火・防音効果(3)配管全体に巻き付けるなど簡易工法――などを挙げている。

 販売価格は10セット用5万7000円、20セット用11万円。問い合わせ先は同社防災事業部(電話0463―24―9341)。

昭 和電線電纜は1日、33kV級CVケーブルの常時活線絶縁監視システムを東北電力と共同で開発、同社に納入した、と発表した。受注高は工事込み2000万円。

 CVケーブルの絶縁診断は従来、ケーブル線路を停止して測定する非活線測定で実施されていた。活線絶縁診断法の1つである活線tanδ(タン・デルタ)法はケーブルに印加された印加電圧信号と充電電流から求められるが、測定対象ケーブルの遮蔽層が1点接地でなければ、測定できなかった。

 同社は、多点接地系のケーブル線路で各接地線を流れる充電電流の大きさと位相を測定し、信号を光ファイバーで伝送後、それらの合成により全充電電流を求める活線タン・デルタ法を開発、システム化した。製品はパソコンを使用して測定時刻の管理と測定データの収集・保存などを行う測定制御部(親局)、および充電電流計測部(子局)で構成され、親局はマイコンを内蔵し、センサーとして充電電流を検出する計器用変流器がある。

 特長は(1)常時、連続監視が可能(2)シースが多点接地の系統に適用できる(3)負荷電流の影響を受けない(4)メンテナンスフリー―など。

 同システムを設置した東北電力七十七線は33kVのCVTケーブルで、宮城県庁舎受電所から七十七銀行事務センター受電所間の亘長877メートル、直線普通接続部(NJ)6組の線路。

三 井金属は1日、ビルドアップ・プリント配線板の新規マイクロビア加工用として炭酸ガス(CO2)レーザーで銅箔に直接穴を開ける加工法に適した極薄銅箔を開発し、その量産技術を確立したと発表した。今年度の売上高は3億円を見込んでいる。

 プリント配線板の小形化と多層化が進んでおり、その層の間を接続するピア径の小径化のニーズが高まってる。ただし、これまでの方法ではコストがかかっていた。

 新製品は、3ミクロン厚の銅箔に炭酸ガスレーザーのエネルギー吸収率を上げる処理を加え、従来不可能であった銅箔へのレーザー直接穴開け加工を可能にしたもの。

 また、同社の上尾銅箔工場の既設の極薄銅箔生産設備(月20万方メートル)を使用して、量産技術を確立した。


電線工業会も大商取へのニッケル・銅上場に反対
日 本電線工業会は1日、大阪商品取引所が銅・ニッケルを上場候補商品としたことについて「反対である」との見解を発表した。

 反対の理由は、(1)LMEと連動しない恐れのあるローカルな日本の取引所に銅地金が上場されることは、二重価格を生む可能性が強く、需要家との値決めで混乱を生じる(2)日本鉱業協会と日本伸銅協会が上場に反対意見を表明しているように、当業者の参加は望めず、ヘッジに答え得る流動性は期待出来ず、新規上場は特定参加者による投機の場のみとなることを懸念する(3)パラジウム先物市場で起きた「価格凍結」は、流動性に乏しい市場が引き起こした一例と考えられ、当業者として大いに懸念するところである。