2000.10.12
10 月のリン青銅板・条と銅条の生産が単月で過去最高を更新する見通しが強くなってきた。IT(情報技術)、AV、ゲーム機そしてデジタル家電向けなどの電子材需要が輸出を含めて一向に衰えないため大手板・条メーカーがこの1年間で強化してきた生産体制を例月より稼働日数が多い10月に生産を集中化しようとしているもの。

 大手板・条メーカーによると、品種別の10月生産はリン青銅板・条が今年6月の5723トンを、また、銅条は今年3月の2万2912トンというそれぞれ単月で過去最高記録を上回る見通し。ただし両品種とも「フル操業体制を継続してきた関係から製造現場で疲れが見られ出した」ともいわれるため、そうした意味での「調整局面」も入る可能性もありそう。

 リン青銅板・条の場合、98年10月時点で4300トン弱の生産規模で、99年10月には4900トンへとレベルアップした後、同年11月に5300トンへと一気に大台に突入した。今年2月以降は5000トン台で推移し、特に6月には5723トンの過去最高を更新したばかり。

 主にIT関連のコネクター材として使用されているが、板・条メーカーでは「原単位としては携帯電話やパソコンよりデジタル家電の方が多い」とこれらの需要動向に注目している。

 また、銅条生産は半導体用リードフレーム材として2万トンプラス1000―2000トンの範囲で推移しているが、ここにきてさらに2万3000トン前後を目指す勢い。

 両品種ともユーザーから要求される薄肉化に対応してきたため中間圧延工程回数が増えている。このため同じ生産量でも圧延工程回数は2、3年前より2、3割多くかかっているようだ。

黄 銅棒の9月生産は2万4000トン前後で前年同月比8%ほど増加する見込み。8月の生産が夏休みによる操業日数の減少にもかかわらず2万2135トンを記録した。この流れが9月にも引き継がれ、操業日数の増加と相まって、2万4000トン前後に達するのではないかとみられている。

 黄銅棒メーカーの主要10社はいずれもおう盛な受注で、納期が間に合わない状態が続いている。サイズ別で見た納期は、中径が1カ月半から2カ月、細物は2―3カ月もかかっている。

 各メーカーとも納期の正常化に努めているが、製造現場の現有人員体制では「目いっぱい」の状態。各社とも納期遅延を解消するため増員することには否定的な姿勢を示している。

 ここ1年間の月別生産推移は上表の通りで、主要10社は生産効率の向上などで何とか増産を目指しているが、「設備に余力があっても機械を動かすのは人員の問題」がネックになって、2万4000トン前後を大きく上回るような増産は難しいものとみられる。

日 立電線は11日、ガリウムひ素系を中心とした化合物半導体の需要増加に対応するため、同分野への設備投資について当初計画72億円を120億円に増額修正し、生産設備を増強する、と発表した。新設備は2001年6月に完成する予定。

 携帯電話など移動体通信機器に使用する高周波デバイス用のLEC基板、およびMOVPEエピタキシャルウエハ(MOエピウエハ)の電子デバイス用材料は、6インチ(150ミリメートル)径の大型基板、およびHBT用MOエピウエハの量産やInGaP薄膜を使用した各種エピウエハなどの新製品を量産する。また、今後需要の伸びが期待される半絶縁性VGF基板についても、さらに大直径6インチの製品の開発を進める。

 増強後の生産能力はLEC基板4万5000枚/月(4インチ径ウエハ換算、現状の約2・3倍)、エピウエハ(MOエピウエハ)2万4000枚/月(4インチ径ウエハ換算、現状の3倍)とする。

 一方、光デバイス用材料は、ボート法やVGF法による導電性基板、MOエピウエハおよびLPEエピタキシャルウエハ(以下、LPEエピウエハ)の需要が増加。このため同分野の設備は、ボート基板、VGF基板の合計生産能力9万5000枚/月(現状の1・5倍)、LPEエピウエハ、MOエピウエハの合計生産能力5万9000枚/月(現状の1・7倍)に引き上げる。

 売上高は1999年度実績130億円、2000年度200億円強(予想)、2002年度300億円強と予想。このうち電子デバイス用が6割、光デバイス用は4割で、輸出は全体の3割と見ている。

Y KKAPは11日、住宅性能表示制度における住宅性能表示ランクに対応できるサービスを提供するため、新会社「プロセス」を11月1日付で設立すると発表した。

 新会社は本社を東京・新橋に置く。資本金は1000万円、社長に高田充・住宅建材事業部住宅保証推進室室長が就き、従業員は10人の予定。事業内容はCAD利用による住宅性能表示に必要な設計図書および営業支援ツールの作成・販売。ビジュアルプレゼンテーションシステムによる一般施主への3次元パース図を作成し、販売する。

中 国はこのほど、被覆電線などのメタルスクラップ輸入関税大幅引き上げに踏み切った。税制やスクラップ輸入体制面での適正化が目的とされるが、上げ幅が極めて大きく、日本からの輸出業務にも影響が出てくるのは必至。関係者では国内仕入れ単価の見直しなど対応に追われている。

 関係筋によると、関税がかけられる対象となる主要品目別スクラップ単価は、被覆電線がトン当たり845ドル、モーターが780ドル前後、配電盤が330ドル、ミックスメタルが560ドル前後で、関税額はこれをベースに一律約20%。

 以前に比べ、ベース単価が2―3倍ハネ上がる計算となり、輸入関税額自体が日本での仕入れ単価を上回るケースも出てくる。輸出業者ではとりあえず、仕入れ単価「キロ5円切り下げ」を目安に顧客に打診し始めた。また、関税額上昇分を現地輸入業者と負担し合うなど対応を急いでいる。

 今回の中国の措置について、日本の有力輸出業者では、「実質的な輸入禁止措置にもなりかねない」との悲観的な見方がある一方、「踏ん張って事業を継続できるところとそうでないところがさらに選別される」として、むしろ積極的に受け止める向きに分かれている。