2000.01.19
新 日本製鉄は、昨年後半にかけて進めた普通線材全般の値上げについて、秋の段階でトン3000円方引き上がったとし、引き続き当初目標の同5000円の浸透に向けて、1月帳端明けから積み残し分同2000円方の追加値上げを実施する。規格めっき線や規格鉄線向けなど高級普通線材についても同様に、積み残し分の値上げ徹底を図る方針。年度内をメドに早期の決着を目指す意向を固めている。



 新日鉄は昨年4月に溶接金網向け普通線材を同5000円値上げし、さらに8月段階で普線全般の値上げに踏み切った。実需不足の折、同3000円方の浸透にとどまったが、値上げを受けた加工メーカーでは11月初めには鉄線、丸釘など製品単価を同3000円引き上げ、流通販価も順次、高値が通り始めている。

 一方、需要環境は、同社の向け先の約7割を占める建築需要の低迷から1―3月の生産見通しは若干の増加にとどまる見込みで大幅な需要回復は期待しにくい状況。コンクリート2次メーカーを中心に値上げに対するユーザーの抵抗感は根強く、価格改善には依然厳しい向かい風が吹いている。

 しかし、新日鉄では、採算の悪化した線材の陥没価格を是正すべく、当面の値上げ目標であるトン5000円の完全浸透を目指し、積み残し分の値上げにユーザーとの交渉を進める。すでに商社、加工メーカーには通達済みで、これを受け今後、加工メーカーでの販売姿勢がさらに強まるものと予想される。

N KKは18日、ごみ輸送システムやスラリー輸送に用いられる配管として耐摩耗性・施工性(現地溶接性)・加工性に優れた耐摩耗用鋼管(商品名=NK―SL80)を開発し、本格的な販売を開始した、と発表した。溶接性・加工性に優れた画期的な耐摩耗用鋼管で、溶接鋼管、継目無鋼管の両方に対応できる配管としてプロジェクト物件中心に年間1000トンの販売を目指す。

 スラリー輸送は固形物を水と混合してパイプラインで輸送する手段で、現在、石炭・石灰石のスラリー輸送、鉄鉱石・銅鉱石・燐鉱石のスラリー輸送、石炭火力発電所の石炭燃焼灰(フライアッシュ)のスラリー輸送、ごみ焼却プラントの燃焼灰の輸送、ごみ空気圧送システムなどに用いられている配管には、優れた耐摩耗性が要求されるため400メガパスカル級鋼管(TPY400)や高炭素含有の炭素鋼管、クロムなどの合金元素を含んだ合金鋼管、さらには鋳鉄管が用いられている。

 しかし、STPY400鋼管では耐摩耗性が問題となり、一方、耐摩耗性をSTPY400鋼管よりも改善した高炭素鋼管、合金鋼管、鋳鉄管では溶接施工が難しい、あるいは曲げ加工が劣るといった問題点が指摘されていた。

 こうした課題を克服するため同社は今回、溶接性を損なわないように低炭素鋼に特殊な合金元素を添加することなく、特殊熱処理を施すことで耐摩耗性・溶接性・加工性を兼ね備えた耐摩耗鋼管を開発した。

 この耐摩耗鋼管は(1)炭素鋼だがSTPY400鋼管の2倍の耐摩耗性を有している(2)溶接性に優れている(低炭素母材のため予熱なしで現地溶接施工が可能)(3)曲げなどの加工性に優れている(ベンド鋼管製造可能)(4)小径サイズ(25A―400A)の継目無鋼管から大径サイズ(400A―1000A)のUOE鋼管まで幅広い寸法ニーズに対応できる(5)輸送システムのトータルコストの低減ができる(高価な合金元素を添加しておらず、現地施工性にも優れている)―などの特徴がある。

 このためスラリー輸送システムやごみ輸送システム(空気圧送システム)などの建造費および維持費の低減に大きく貢献できるだけでなく、幅広い寸法サイズをカバーできることから多様なニーズにも対応可能で、同社ではすでに石炭焚き火力発電所の石炭燃焼灰輸送ラインなどに販売を始めている。

 なお、価格はロッド単位で異なるため、物件ごとに値決めする。

政 府は18日、首相官邸で第8回産業競争力会議を開催した。会議は産業技術力の強化、高コスト構造を主要テーマに議論。産業界からは技術力強化について経団連の金井務副会長(日立製作所会長)が大学での研究支援、民間への移転促進などを提唱した。経団連の今井敬会長(新日本製鉄会長)は国家産業技術戦略での産学官連携の実現、人材・リーディング産業育成、情報化、企業年金と直接金融市場の整備を求めた。小渕恵三首相は、次期通常国会に産業技術力強化法案を提出する考えを明示、高コスト構造についても規制緩和推進3カ年計画の再改定で取り組む考えを示し、今井会長の提言に対して重要課題として同会議で議論していくことを明らかにした。

 会議では産業界から産業技術力強化について金井・経団連副会長が産学官連携システムの確立を提唱。大学での研究支援として民間から国・公立大への資金流入円滑化を挙げ、共同研究や寄付など委任経理金制度の整備を唱えた。このほか民間への移転促進として兼業規制の緩和、技術移転機関(TLO)充実を挙げ、国大教官などの民間企業役員の兼業許可の透明性、安定性確保や公立大教官への拡大、TLOでの国有施設無償使用などを求めた。

 高コスト構造については欧米並み水準を目標とする是正策や、電力、石油、物流での是正が提言され、電力の新規参入と自家発設備の有効活用、物流での規制撤廃と緩和が指摘された。

 また、今井・経団連会長は人材とリーディング産業の育成、情報化推進、企業年金と企業資金調達のための直接金融市場の整備や、産学官連携の実現に向け兼業規制緩和、TLO充実を提言。合わせて同会議での議論継続を要望した。

 これに対し政府側は、企業年金について審議中であることや、積み立て不足解消では今井・経団連会長の唱える株式持ち合い制度で対処したい考え(丹羽雄哉・厚相)などが示された。



住 友金属工業は2月から、鹿島製鉄所内に建設したガス化溶融炉の実証運転を開始する。すでに30日間の連続運転のデータは取得済みで、現在、設備の改造工事中。2月から100日間の連続運転で耐久性などのデータ取得に入る。同社は予算分割などの理由から実証試験が遅れていたが、早期に実証試験を完了させ、全国都市清掃会議に技術評価申請を行う方針。

 同社のガス化溶融炉は、高炉をベースとするシャフト炉型で、ガス化したガスをケミカルリサイクルできるのが特徴。転炉の酸素吹き込み技術を応用した独自の溶融システムにより、2000キロカロリーの高カロリーガスとしてゴミの事前乾燥処理の熱源として使うことができる。

 ダイオキシン類の発生についてはガス急冷システムを採用。ゆっくりとした温度低下で発生しやすいダイオキシン類の発生自体をガス急冷によって抑制している。出てきた溶融スラグも高温還元雰囲気で重金属類を回収できるためスラグの再利用がしやすく、生成ガスの発生量を従来の6分の1に減らし、省スペース化を図ることができる。

 溶融炉でガス化したガス自体を改質し利用する方式は、川崎製鉄(サーモセレクト)、東芝(PKA)、日本ガイシ(ノエル)など、現在、国内では同社を含めて4方式あるが、国産技術は同社のみ。ただ、この4社はいずれも後発組ということもあり、廃棄物研究財団の技術評価廃止に伴い、技術評価書の交付を受けられなくなっていた。

 このため同社は、99年4月から始まった全国都市清掃会議の技術評価を受けるために、「エネルギー回収設備」を含む100トン炉3基の技術設計書を作成。技術評価を申請し、まもなく営業活動を本格化させていく。

 現在は、ボイラー据付工事やより連続運転を行うための自動化装置、バルブ類の自動化設備、遠隔装置などを付加するなどの改造工事中で、2月の試運転開始までの最後の調整を行っている。

住 友金属テクノロジー(本社‖兵庫県尼崎市、長井俊彦社長)の鹿島事業部が開発した「フィルムレス・システム」は、写真を含むデータの入出力、保管、編集、解析自動化を図る高性能デジタル画像処理システム。99年7月の販売開始以来、新日本製鉄の光製鉄所から分離したニッテツ・ビジネスプロモート中国社(本社‖山口県光市、川口泰男社長)や、大手電機メーカー向けなど順調に売り上げを伸ばしている。同システムは、同社にとって外販商品第1弾として発売開始したこともあり、2000年度は年間1億円を目標に営業強化を図る方針。  同システムは、鹿島製鉄所の内製化や合理化を狙って15年前に開発された写真情報の付加価値アップを図るコンピューターシステム。もともとは製鉄所で行われるミクロ組織、非鉄金属介在物の析出など金相学諸元の定量化、写真データベース構築やネットワーク化を狙って実用化された。 その後、91年に第32回創意工夫功労者賞(科学技術庁長官賞)を受賞するなど製鉄所以外でも応用できる独自システムとして育成。昨年7月から、写真情報のネットワーク構築を図るフォト工房、粒子解析システムとともに売り出した。  現在、すでに写真情報のネットワーク構築を図る「フォト工房」は10セット、「粒子解析」は3セット、「フィルムレス・システム」1セットなど、順調な売れ行きを見せている。「既存設備に対してきめ細かく対応でき、また、従来機種の約半分の低価格が受けているようだ」という。  同社は87年、鹿島製鉄所から試験検査専門会社として分離、これまで主に製鉄所での合理化ツールとして住友金属の全国の製鉄所などへ納入してきた。昨年から同システムで外販をスタートさせたが、今後は、非鉄メーカー、化学分析メーカー、医療メーカー向けなど新たなニーズを開拓すべく提案活動を強化していく方針。  販売価格は「フィルムレス・システム」は600万円、「フォト工房」が5万8000円、「粒子解析」が14万8000円。問い合わせ先は、0299(84)2557。

世 界最大のシームレス鋼管メーカーであるテチントグループ(DST)の世界戦略が加速している。昨年、グループの中核会社シデルカがNKKと今年度上期中にシームレス鋼管の合弁会社を設立することで合意し、アジアでの生産拠点を確保したのに続いて、カナダのアルゴマ社との提携交渉のほか米国ミルとの提携に向けた動きなど、世界の主要地域を対象としたグローバル展開を進めている。DSTの世界戦略は、大部分を輸出に依存している住友金属工業など、日本ミルのシームレス鋼管事業に大きな影響を与えることになる。  テチントグループは、アルゼンチンに本社を置く鉄鋼、エンジニアリング、石油・ガス生産などの事業を展開するコングロマリットで、DST(ダルミネ・シデルカ・タムサ)がグループのシームレス鋼管部門を担い、3社を合わせた生産量は年間200万轤ノ達する。  同70万轤フシデルカ(アルゼンチン)とタムサ(メキシコ)両社が南米市場に、ダルミネ(イタリア)が欧州市場にそれぞれ拠点を持ち、昨年シデルカとNKKが京浜製鉄所のシームレス鋼管工場を合弁会社で運営することで合意し、“DSTN”グループに拡大した。さらに、カナダのアルゴマ社と業務提携することで仮合意し、提携の具体的方法などについて検討を進めている。また、米国USスチールとの提携に向けた動きも伝えられており、両国ミルとの提携が実現に向かえば、北米にも拠点を確保することになり、世界の主要地域に拠点を持つグローバル展開が可能となる。  関係筋によると、近年の油井管市況の低迷で、シデルカの99年度上期は大幅な損失に陥ったものの、アルゼンチン国内向けの販売価格は輸出価格の2倍を超える1100|1200ヨ程度といわれ、大部分を輸出に依存する日本ミルとは収益構造を異にしている。  NKKを除く日本ミル3社のうち、住金と新日本製鉄は業務提携に向けた話し合いを進めているが、一方で川崎製鉄と住金は13クロムシームレス鋼管の特許問題で提訴合戦を展開中。テチントグループの世界戦略が強まる中で「内輪もめをしている場合ではない」(商社)との指摘も出ている。日本のシームレス鋼管事業が生き残っていくことができるかどうかは、DSTとの競争に伍していけるかどうかによるところが大きく、国際競争力の一層の強化が求められている。

日 本鋼管ライトスチール(岸清司社長)は、昨年末にエクステリア事業部において、プロジェクト営業を専門に手掛ける第三営業部を設置した。昨年4月に、旧トーア・スチールから引き継ぎだ、エクステリア事業の本格展開に向け、今年からより積極的なプロジェクト営業戦略を進める構えだ。  昨年4|9月上期は、マクロの経済情勢の冷え込みと企業間競争の激化で、上期の事業部売上高は、前年同期比約20%減の43億1600万円と低調に推移した。しかし、川上営業の推進強化で下期から電力、鉄道など設計織り込みの受注が積み上がり、「99年度は事業部売り上げ目標120億円の達成は難しいが、昨年は種まきの年であり、今年あるいは来年の刈り取りが楽しみ」(岸社長)と軌道に乗り始めている。  2000年を「攻めの年」(岸社長)と位置づける同社は、さらに営業強化を図るため、自治体や地方建設局担当の第一、第二営業部に加え、電力や鉄道、NTTなどプロジェクト専門の第三営業部を設置し、今までの兼任から専任体制とし集中的に営業活動に入る。  これでエクステリア事業部は景観プロジェクト営業部と管理部、技術部と合わせ全6グループに整備。すでに市場投入した新ネットフェンスなど随時新製品やリニューアル品を提案し、特約店との連携も密にとり積極拡販に臨む方針だ。

大 阪地区の冷延薄板はベース5万2000|5万3000円どころで地合いは段々と引き締まりつつある。  引き合い、荷動きは変わり映えしていないが、3月決算を控え、流通の売り腰が引き締まり。市場の空気は上げムードが台頭している。  高炉の3000円値上げの浸透状況だが熱延、酸洗先行し、冷延、メッキ鋼板が追随する形。  冷延はやや遅れをとっているが、現在までの吸収は半分程度とする声が多い。  採算ラインに持っていくためには、最低4000円の転嫁が必要で2月の攻防が見物。  国内の在庫調整は完了、、韓国、台湾の主力ソースからの輸入も当分抑制基調が続くため、供給面に関しては不安材料はない。  需要は建材、鋼製家具など低調の域を出ず、エンドユーザーとダイレクトに商売しているコイルセンターの値上げは難航している。