2000.01.31
通 産省は31日、1999年度第4・四半期(2000年1―3月)鉄鋼生産計画の集計結果を発表した。粗鋼生産は2501万2000トン(前期比69万4000トン、2・7%減、前年同期比341万8000トン、15・8%増)で、計画通り推移すると2期連続の2500万トン台乗せとなるほか、第4・四半期としては96年度以来3年ぶりの2500万トン台となる。昨年12月同省が策定した需要見通し2460万トンと比べ41万2000トン、1・7%上回る。輸出が高水準を維持するほか、内需も自動車関連需要の増加を予想、さらに経済対策効果から不需要期ながら建設需要に支えられ、条鋼など通常より落ち込まないことなどが前年同期比の増加要因。各社とも「強気の生産計画」を打ち立てている。

 第4・四半期の生産計画について通産省では、強気計画の背景に自動車生産増(完成車ベース270万台、前期比8・9%増)が挙げられている点を指摘し、トラック生産が伸び始めているため鋼材の原単位上昇も期待できる半面、「自動車全体の需要が増えるか不確定」と分析。「実需がついてきているか見極めが必要」(鉄鋼課)として実需見合いの生産動向かを総点検していく考えだ。

 今期の普通鋼鋼材生産は、1960万8000トン(前期比11万1000トン、0・6%減)。内訳は国内向け1404万2000トン(同25万8000トン、1・8%減)、輸出向け556万6000トン(同14万7000トン、2・7%増)。輸出は依然としてアジア向けが好調を保つ。

 普通鋼鋼材のうち、H形鋼は127万7000トン(前期比7万7000トン、5・7%減、前年同期比4万4000トン、3・6%増)で、国内向けが112万7000トン(前期比11万2000トン、9%減)、輸出向けが15万トン(同3万50000トン、30・4%増)。

 小棒は292万2000トン(前期比13万6000トン、4・4%減、前年同期比8万6000トン、3%増)。

 一方、特殊鋼鋼材生産は、351万5000トン(同9万8000トン、2・7%減、同10万1000トン、3%増)。内訳は国内向けが256万5000トン(前期比3万3000トン、1・3%増)、輸出向け95万トン(同13万1000トン、12・1%減)。

 奥田真弥鉄鋼課長の話 年度第4・四半期の生産計画としては90年度以降、4回目の2500万トン超えとなり、数字としては高い。自動車需要などやや強気過ぎる見通しだ。新年度へ向けて在庫が積み上がる危険性もあり、実需が付いてきているか見極めていく必要があるだろう。

通 産省は中国政府による鋼材輸入規制に関して、2000年のIL(輸入許可証)の早期実施を、中国・国家経済貿易委員会(経貿委)に対して申し入れた。昨年12月の通産省と経貿委との第5回定期協議で中国側に2000年上期分のIL発給必要枠の確保と円滑実施を要請したのに対し、経貿委側は1月中旬までに発給を行うと回答していた。しかし、1月末までに日系企業への発給は実施されていないもようで、通産省から中国に担当者を派遣して、早期の発給を求めた。

 今回の申し入れでは、通産省・通商政策局の浦田益太郎・大臣官房審議官(開発協力担当)が経貿委を訪れ、日本からの鋼材輸入に関して、IL発給の改善を要請した。

 これに対し、経貿委側は「早急に発給を行う」との見解を示すにとどまり、具体的な実施日程などは明示されなかった。

日 新製鋼は、新製品・新用途開発などの付加価値品の売上高比率を2001年度に16・9%まで引き上げる。粗鋼生産量、売上高ともに大幅な上昇が期待できない環境で、付加価値品を拡充することで収益拡大につなげる。

 99年度は新製品・新用途開発などの付加価値品の売上高比率が7・4%の計画だったが、9・3%に達する見通しとなった。中期経営計画では2000年度にこれを15%まで引き上げるが、2001年度以降も拡充していく。

 具体的には、自動車向けハイテン鋼板、亜鉛・アルミ・マグネを含む新防錆鋼板「ZAM」、表面処理ステンレス、「アルスター」の用途開発、クロムフリーの亜鉛メッキ鋼板などに注力。東予製造所の立ち上げと絡めて収益拡大を目指す構え。

 99年度の売上高は3100億円強(98年度実績は3200億円)、粗鋼生産量は約340万トン(同334万トン)となる見通しだが、付加価値品を拡充することで収益改善を狙う。

三 井物産は2月から、関東地区でH形鋼の在庫販売を3年ぶりに再開する。野水鉄興(本社=東京都千代田区、野水清志社長)の浦安第二倉庫(千葉県浦安市)を賃借し、当面はSS400規格のフルサイズ7000―8000トンを在庫し、月間5000―6000トンを販売する考え。将来的にはグループ特約店の参画による別会社化を視野に入れており、グループの在庫機能を集約して回転率を高めるなど効率化する構想で、今回は中核となる在庫拠点整備の第1段階と位置づけている。

 三井物産は野水鉄興との間で、倉庫の賃貸借と入出庫業務の委託契約を結んだ。特約店向け販売の在庫拠点として適した浦安の立地、レイアウトなどが頻繁な入出庫に適した倉庫に着目し、取引関係の強い野水鉄興と提携した。倉庫は敷地11129平方メートル、建屋6387平方メートルで、在庫能力は1万トン。

 在庫するのは広幅の100―400W、細幅の150×75―600×200、中幅の148×100―900×300のほぼ全サイズ。当面はSS400を対象とし、将来は野水鉄興・浦安第1倉庫に三井物産名義で在庫しているSN規格材を第2倉庫に集約することも検討している。

 三井物産では需要減、市況下落によるH形鋼販売の採算悪化で在庫機能の再編が避けられないとみている。解決策として資金力のある商社が市況変動リスクを伴う在庫機能を引き受け、小口販売・与信管理が得意な特約店と機能分担する形態を想定。将来的にグループの在庫を集約して在庫回転率を上げるなど、効率化メリットを各社が受けるという構想だ。

大 同特殊鋼は31日、情報システム部を4月3日付で分社化すると発表した。

 新会社は大同グループ内のシステム専門会社と位置付け、大同特殊鋼、および関連会社におけるシステム関係業務を集中管理することによって、グループ連結経営の効率化とグループ全体のシステムの高度化・効率化を図る。そしてシステムの外販も行う(情報システム部システム販売事業室での今年度の売上高は約4億円を見込む)。

 新会社の社名は社内公募中。本社所在地は同社名古屋本社内。資本金は9000万円(大同特殊鋼100%出資)。従業員数214人。売上高は2000年度33億円で、2005年には40億円を目指す。

2 000年の韓国、台湾、中国の鉄鋼事情は、(1)韓国は前年に引き続きおう盛な内需が続く(2)台湾は輸出が好調に推移(3)中国は総量規制の継続実施に伴う生産・輸入の抑制が続く見通し。

 日本鉄鋼輸出組合がまとめたところによると、韓国経済は99年の10%台の高成長から2000年は6―8%程度にやや減速すると見られているものの、POSCO経営研究所(POSRI)の見通しではおう盛な鋼材内需が続き、6%程度の鋼材増産を見込んでも、前年をさらに50万トン以上上回る630万トンの輸入が必要と想定している。

 POSRIのまとめによると、韓国の99年の鋼材生産は4415万トン5000トンで前年比11・7%増。おう盛な内需を映して、輸出は1284万4000トンで同20・7%の減少だが、輸入は577万トンで90%の大幅増となる見込み。

 2000年の見通しは鋼材生産が4695万4000トンで前年比6・3%増、輸出が1245万トンで3%減、輸入は631万7000トンで9・5%増と、大量に増加した99年をさらに上回る数量を見込んでいる。

 台湾は電子関連分野が景気を主導しているものの、鉄鋼内需に目立った改善は見られない。ただ、輸出は1―11月累計ですでに史上初の600万トン台乗せとなった。向け先別では北米向けが熱延鋼板を中心に急増し、日本向けを上回っている。

 中国は99年の粗鋼生産が1億2331万トンで前年比7・6%増。鋼材生産は1―11月累計で前年同期比14%増の1億840万トンで、1億トンの大台を突破した。鋼材貿易は輸出が1―11月累計で312万トンで同5%増、輸入は同1360万トンで26・3%増ながら、年初からの累計としてはこれまでで最も低い伸びとなった。各品種が減少した中で、鋼板類は54%の大幅増。

 国家冶金工業局は昨年末、(1)総量規制の継続実施(粗鋼生産を1億1000万トン以下、鋼材を1億トン以下、鋼材輸入を1000万トン以下に抑制)(2)輸出振興(目標500万トン)(3)老朽設備淘汰の促進による能力削減(4)条鋼類の減産・鋼板類の増産によるプロダクツミックスの改善―などを柱とした鉄鋼業の基本政策方針を発表している。「止め」

川 鉄商事は、フィリピンの特別経済区「スービック湾フリーポートゾーン」にある工業団地「スービック・テクノパーク」で、日系企業の誘致活動を展開しているが、このほど小型精密モーターメーカーの山洋電機(本社=東京都豊島区、山本茂生社長)が、同工業団地で冷却用ファンモーターを生産することが決まったことを明らかにした。同社は2000年2月に現地に100%子会社を設立し、7月から製造を開始する予定。「スービック・テクノパーク」に進出した日系企業はこれで4社目となる。

 「スービック湾フリーポートゾーン」は、ルソン島中部のオロンガポ市の南に隣接する約1万l8000Dの広大な地域で、「スービック・テクノパーク」はその中心のボトン地区にあり、開発総面積は約60D (約18万坪)。

 同工業団地はスービック湾都市開発庁(SBMA)と、川商および日本国際協力機構(JAIDO)、東洋建設、東京三菱銀行の日本企業4社が共同で設立した「スービック・テクノパーク社」が運営している。管理エリアと分譲エリアの2ゾーンからなり、分譲エリアは76区画(1区画平均面積は0・5D)で、50年間の土地利用権を分譲している。特別経済区にあるので、主な特典としては(1)外資100%の会社設立が可能(2)法人税率が5%(3)輸出型企業の原材料、製品などに伴う輸出入税や付加価値税が免除(4)通関手続きや査証取得が容易である。

 工場運営面では十分な電力供給量を有し、水道水もそのまま飲用に利用できる品質で、最新設備を使用した通信・電話は回線数も十分にある。銀行は、東京三菱銀行の現地合弁であるフィリピナス銀行の支店が管理エリアにある。

 またフリーポートゾーン内には、2700メートルの滑走路があり大型ジェット機が離着陸できるスービック湾国際空港や、水深が深く港湾施設が充実しているスービック港がある。貨物便はフェデラル・エクスプレス社が同空港をハブ空港と位置づけ、米国や日本、アジアの主要都市へ毎日運航している。

 「スービックテクノパーク」では、すでにオムロン、日本インターなどが操業しており、三協精機製作所の進出も決定している。

東 京地区の縞板(4・5ミリ厚、ベースサイズ)は、5万4000円どころ中心で強含み横ばい。

 熱延薄板、中板は鋼板類の中で最も強気ムードとなっており、縞板も東京製鉄の再値上げが引っ張る形で底入れ強含み。「店売り市場の雰囲気に変化が出てきたのは確か」(大手扱い業者)であり、流通は値上げ玉の入荷が今月から本格化することから価格転嫁の姿勢を強めている。

 ただ、最終価格は建築需要の停滞に抑えられ浸透が遅れ気味。ようやく動き出した物件対応で加工業者の忙しさは昨年秋頃に比べれば増しているが、受注価格は全体的に下押し傾向。1―3月不需要期に供給サイド主導の値上げ局面が続くことから、流通は期待よりも採算面の危機感が強い。高炉メーカーの値上げアナウンスもあるが、実需の動き次第で目先も同値圏内を推移か。