2000.02.28
三 井物産、三菱商事、日鉄商事と藤本金属(本社=大阪府)、産業振興(本社=東京都)の5社は、独のコングロマリットであるELG・HANIELグループの米法人ELG・HANIEL・METAL社(ペンシルバニア州、テロード社長)と合弁で、日本では初となるステンレスブレンドスクラップ(メルトダウンスクラップ)の加工企業「ジェイエスプロセッシング(JSP)」を設立する。非鉄金属スクラップとステンレスブレンドスクラップの扱いで世界トップ企業のELGと組み、同社のブレンドスクラップ加工技術を導入、今後、国内ステンレスメーカーでも使用拡大が予想されるブレンドスクラップを加工および成分管理して供給する。

 新会社「JSP」の設立は3月1日付で、本社を日鉄商事(東京・江東区)に置き、5月1日から大阪市の藤本金属内の加工設備(能力年間5万トン)で操業を開始する。年間3万6000トンを供給、新日本製鉄・光製鉄所向けを皮切りに順次、他メーカーにも販路を広げる。すでに関東エリアでも同様に年間能力5万トン規模の加工拠点を設立するため、FS(フィジビリティ・スタディ)に着手しており、年内の立ち上げを目指す。

 現在、ステンレスブレンドスクラップの流通は全ステンレススクラップの約65%を占めるといわれ、世界のステンレススクラップの主流をなしている。日本でも新日鉄が昨年からELGからブレンドスクラップ年間4万トン規模の輸入を実施しており、従来の18%Cr―8%Niのステンレス鋼屑に代わってステンレス溶解用原料として使用拡大が見込まれる。こうした動向を踏まえて、ELGとJVでブレンドスクラップの加工企業を国内で初めて発足することとなった。

 資本金は1000万円で、出資比率はELG40%、三井物産19%、三菱商事19%、日鉄商事12%、藤本金属5%、産業振興5%。社長には三井物産の平嶋俊祐・製鋼原料部長が兼務で当たる(三井、三菱から2年ごとの輪番制)。三井、三菱の両社が販売、日鉄商事で業務管理を担当、加工は藤本金属に委託する形で行う。集荷については既存流通網をそのまま活用する。

 ステンレスブレンドスクラップは、18Cr―8%Niのステンレス屑が約70%で母材として使用、残り30%をクロム屑、その他ニッケル含有雑多屑をブレンドする。高比重、ニッケル・クロム、その他成分を品質管理して加工される。

 欧米、韓国、台湾で主流となっているブレンドスクラップの国内での普及を図り、JSPでは当面、32億4000万円レベルの売上とし、早期に45億円に引き上げ、関東エリアの新拠点と合わせ90億円規模に拡大させる

新 日本製鉄は、プロジェクト物件向けで鉄骨に使用する厚板の価格を、4月契約分から10―15%値戻しすることを主要ファブリケーター(鉄骨加工業者)に伝えた。金額は具体的には明らかにされていないが、材料によっては1万円以上の値戻しとなるものもある。

 鉄骨分野は値下がりが激しく、採算が厳しい状況が続いている。このため、この改善がメーカーにとって課題となっている。鉄骨需要は96年度には約1000万トンだったが、99年度は30%減の約700万トンに落ち込んだ。鉄骨単価も同様に30%以上の下落となっているのが実態。

 H形鋼、一般形鋼(山形鋼、溝形鋼)、厚板などの建築用鋼材の価格が、ここ2―3年で1万―2万円の値下がりとなっている環境での値戻しにより、「鉄骨単価の改善の後押しになると期待している」(新日鉄・建材営業部)。昨年末までに鋼材市況が全般的に底打ちして、年明けから反発市況となっていることを受けて、鉄骨厚板も不採算価格からの脱却を図る。

 関東地区を中心に、東京駅周辺、品川駅周辺、汐留、六本木6丁目などの大型建築物件が目白押しとなっており、3年間で75万―80万トンの鉄骨需要が見込まれている。こうした大型物件向けのゼネコンからの資材発注が本格化するタイミングに合わせて鉄骨厚板の価格を値戻しすることで、抜本的な採算の回復を狙う。



特 殊鋼倶楽部(会長=高山剛・大同特殊鋼社長)は2000年度特殊鋼業需要見通し(熱間圧延ベース)を1441万トン(前年度見込比0・6%増)とまとめた。主力需要分野の自動車生産をKDセット輸出も含め総合計で1239万9000台(同1%増)と微増を想定。アジア経済回復を背景に間接輸出も合わせ輸出が全体を下支えする形で、中でも軸受鋼やステンレス鋼は強基調推移と予測している。この結果、見掛け内需を1022万1000トン(同0・3%増)と推計、国内向け生産を1010万トン(同0・3%増)、輸出向け生産を431万トン(同1・2%増)と見通した。

 2000年度については上期はアジア向けを中心とする外需依存の形をとり、下期は産業機械の受注が増加に転じていることなどを加味し、民間設備投資にも動きが出てくるとし、緩やかに内需にシフトする予想。2年連続の増加見通しとなった。

 前提となる経済予測は、国内総支出を同0・9%増とし、民間住宅投資同1・5%減、民間設備投資同0・2%減と減少を予想しているものの、民間最終消費支出は同1・7%増、鉱工業生産指数を同2・4%増とプラス予想とした。自動車生産は完成車ベースで985万台(同0・5%増)、KDセット輸出254万9000台(同3%増)、総合計も1239万9000台と99年度を上回る。小型車への移行や現地生産の拡大がマイナス要素となる半面、買い換え需要とアジア輸出が相殺する。

 この前提を基に、国内、輸出とも2年連続の増加と予測した。

 また、輸入数量については12万1000トン(同0・8%増)の微増とされた。ステンレス鋼板の輸入は頭打ちとしたが、ステンレス線材の輸入は台湾、韓国の生産能力アップから増加すると見ている。

 なお、99年度生産見込みは、国内1007万2000トン(同2%増)、輸出425万8000トン(同0・1%増)で、合計1433万トン(同1・4%増)。国内、輸出、合計とも2年ぶりの増加となる。



神 戸製鋼所・神戸製鉄所の「神鋼神戸発電所」建設現場に、巨大な石炭サイロが姿を現した。高さ53・35メートル、直径35メートルの鋼製サイロで、1基目は22日据え付け完了、2基目は25日据え付けられた。昨年3月に着工した1号機建設工事は、基礎工事を終え、タービン建屋建設、ボイラ立柱工事などに入っているが、2002年4月の稼働に向け、極めて順調に進んでおり、「予定を上回るペース」(池田辰雄副所長)で進捗しているようだ。

 2基目の据え付けを終えた石炭サイロは、貯炭容量3万トンで高さ53・35メートル、上部から石炭を投入するベルトコンベアを含めると約60メートルとビル20階建ての高さになる。直径は35メートル、重量は1500トン。使用された鋼板の厚みはサイロ下部で36ミリ、上部が23ミリ、日立造船因島向上で製造され、海上輸送で神戸製鉄所まで運ばれた。石炭サイロを工場で製作し、海上輸送で現場に据え付けるのは、初めての工法だと言う。28日に3基目が据え付けられ、以降順次12基のサイロが据え付けられる。

 工事全体の進捗状況は、タービン建屋が鉄骨工事を完了、10月からタービン(三菱重工高砂)の据え付けが始まる。ボイラー設備(三菱重工神戸)は1月から立柱工事に入っており、夏には機器据え付けの予定。その他工事では、高さ150メートルの煙突2本が29メートルまで組み上がっている。機械据え付けは来年3月に完了、試験稼働に入り、7月にはボイラーに火入れ、9月から全体の試運転に入り、2002年4月から1号機が本稼働する。また来年3月から2号機の基礎工事に入るが工事全体としては順調に推移、むしろ予定より早めの進捗となっている。

 「神鋼神戸発電所」は、出力140万キロワット(70万キロワット2基)とIPP事業としては最大規模。建設にあたっては都市部での建設工事とあって騒音、防塵など近隣地域へ配慮した工事を行っており、石炭サイロの建設も、従来方法の現場施工を止め、工場製作、海上輸送という新工法をとったのもその一環。

 神戸製鋼所では、神戸発電所プロジェクトを「21世紀の収益の柱」と位置づけ、同時に「環境に配慮したクリーンな神戸製鉄所」づくりを目指しており、大気、粉塵、騒音などに対し、国内最高水準の環境対策をとることにしている。すでに一部完成している石炭搬送用のベルトコンベアも粉塵対策として幹線密封式となっており、石炭の荷揚げから発電まで「石炭が全く見えない」ようにするなど、万全の対策がとられている。

山 陽特殊製鋼は自動車の排ガス浄化、燃費向上などのニーズに則して、同社の独自技術である低酸素・高清浄度鋼の適用拡大などを軸に高強度、長寿命化や軽量化、コスト低減への対応を加速する。特殊鋼開発に当たって軽量化、静粛性向上、コストダウン、環境負荷物質軽減などを具体テーマに据え、新規製品の普及を図る。すでに高清浄度鋼では軸受鋼のほか、自動車のギヤ変速の新技術のCVT(無段変速)用材料として採用されるなど、新規の用途を伸ばしており、さらに新技術への移行をにらんで拡大させる。さらにカーエレクトロニクスにも向けて高機能ステンレスや磁性材料など新材料の展開も広げていく。

 同社では自動車での排ガス浄化、燃費向上などの流れから新技術開発が積極化する中で、高清浄度鋼など軽量化など機能特性の向上を通して新鋼種、新材料の供給を実践、新たな販路を開拓する。

 低酸素・高清浄度鋼では、SNRP(SANYO・NEW・REFINING・PROCESS)鋼として軸受鋼、構造用鋼で実績を上げている。鋼中の酸素量を低減させることで、強度や疲労強度の改善を可能とした。同技術によって高強度、長寿命化に対応、自動車部品の小型化、軽量化などにつなげる。耐高面圧長寿命、高疲労強度などの特性を生かし、CVT用材料としても材料供給に着手。さらに、冷温鍛化による切削省力のため高清浄度構造用鋼の浸透なども進め、自動車生産段階で工程省を促進する。

 カーエレクトロニクス分野への展開も広げる。酸素センサー部品、インジェクター部品、ABSセンサー部品、燃料噴射ポンプ部品への適用を指向、耐食耐酸化性材料、高応答性軟磁性材料などとして高機能ステンレス、新材料を伸ばしていく。

関 西地区のコイルセンターの大阪鋼板工業(本社=大阪市大正区、白國紘一社長)は今年度(2000年3月期)の実績見込み、および来年度計画を明らかにした。来年度計画は売上高が年間57億円と今年度見込み比べ4億円程度増、利益も今年度に引き続き、経常段階での黒字を確保する。取り扱いは今年度見込み比約5%増の年間20万トン弱を目指すとともに、加工については表面処理鋼板などの上級品種のウエートをさらに高めていく。コストも一人当たりの生産性の向上を図るとともに、諸経費の削減を徹底していく。

 同社は本社工場にレベラー1基、スリッター4基・(大型1基を含む)、ミニスリッター1台を持ち、熱延鋼板、酸洗鋼板、冷延鋼板、表面処理鋼板、特殊鋼などの加工を手掛けている。現在、加工量は月間1万5000トンで、機種別の加工内訳はレベラーが20%、スリッターが80%。

 今年度の決算見込みは売上高が53億円と前年度比約5%減、利益は経常段階で黒字となる見込み。取扱数量は年間19万トンを維持する見込みだが、単価の下落により、売上げ減となる見込み。ただ、ここ1―2年の要員削減や、コスト低減策の実行により、利益は黒字となるもの。

 特に、ここ数年は上級品種の加工比率を高めている。3年前の段階では加工内訳は表面処理鋼板が60%、冷延鋼板が20%、熱延鋼板が20%だった。しかし、今年度では表面処理鋼板が75%、冷延鋼板が13―15%、熱延鋼板-(特殊鋼を含む)が10%と、表面処理鋼板のウエートが高まっている。

 来年度はまず、取扱量を今年度見込みに比べ5%増の年間20万トン弱を目指す。特に、新日鉄材の取り扱いをカサ上げしていく。加工は引き続き、表面処理鋼板など上級品種のウエートの拡大に努めていく。また、価格の是正に注力していく意向。

 設備投資は来年度、補修程度に抑制する。また、レイアウトなど可能な限り修正を行い、生産効率を引き上げていく。また、歩留まりの向上、諸経費の低減を図り、来年度は売上高で年間57億円、利益も経常段階で黒字継続を目指す。



普 通線材の99暦年国内生産高は、前年比0・9%増の180万500トンとなり、輸入材の大幅減をカバーする形でわずかに増加した。90暦年との比較では14・2%増、95年比で24・5%増と、ここ10年間では97、98年に続き高水準を維持している。しかし、国内材と輸入材の合計(前年比0・5%増の181万8300トン)は、90年比9・4%減、95年比1・7%減となお低水準。建設・土木主体の国内需要の低迷と線材製品の低市況も加わって線材業界は依然厳しい状況が続いている。

 線材製品協会(理事長=杉本宏之・神戸製鋼所副社長)がまとめた線材および主要線材製品の暦年生産実績によると、普線の国内生産高は輸入材の下落に反比例し、96年から上昇傾向にある。96年に3年ぶりに前年比を上回り、157万トンを計上。97年181万4000トン、98年178万トンと高レベルを示現。反して輸入材は、91年の68万7000トンを頂点に坂を下り、99年の入着量はわずか1万7800トンにまで減少した。

 この結果、国内材・輸入材合計量は、94年に200万トンを割り、96年には175万トンにまで縮小。97年には消費税率改定時の駆込み需要などで197万トンと回復したが、98年は180万8000トンに反落。99年は微増となり、「底ばい」の状況が続いている。

 普線需要は建設、土木が柱だが、99年の建設工事受注調査(建設省調べ)では、建設工事受注総額は7兆5200億円で前年比7・5%減少した。公共事業も地方財政のひっ迫で予算縮小。大口ユーザーのコンクリート2次製品は、年々減少傾向をたどっている。

 製品別でみると、主要製品の鉄線は、2・9%減の76万6200トンで3年連続の減少。一方で、堅調な住宅着工に支えられた格好で、特殊釘は8万600トンと0・4%の微減にとどめ、普通釘は2・2%増の5万7600トンと5年振ぶりに増加に転じた。溶接金網は0・3%増の21万1600トン。また、河川護岸工法が好調に推移し、針金が5・8%増の20万2400トン、蛇籠も28・8%増の5万3200トンと伸長した。




東 京地区のH形鋼は200×100で3万1000―3万2000円で横ばい。荷動きの低迷で市況の上昇は一服状態。入荷減で在庫は歯抜けサイズが広範に見られる状況だが、需要の減退感が上回っているようだ。流通はメーカー値上げ分の転嫁を進めるを崩しておらず、綱引き状態が続きそうだ。

 1月後半から引き合いの低迷状態が続いており、2月の販売量は「1月並み」(特約店)の低水準が見込まれる。こうしたなか値上げに対する需要家の抵抗が強く、流通の高唱えは通りにい状態で、市況は3万1000円寄りの展開。

 ミル休止による入庫減で在庫は減少傾向。需要の低迷で品不足感は強くないが、各社の在庫は歯抜け状態だ。メーカー値上げ分の入荷で在庫単価が切り上がっているため、流通は着実に市況に転嫁したい考え。需要増が見込めないなかで在庫調整の進展具合が焦点になる。