2000.03.08
新 日本製鉄など高炉6社は7日、99年度の連結および単独決算見通しを明らかにした。

 連結経常損益は新日鉄が650億円、NKKが160億円など住金を除く5社が黒字、当期損益は新日鉄がゼロのほか5社は特損処理で赤字を計上。とくに住金はエレクトロニクス事業整理損失1000億円、鉄鋼設備廃却損およびキョウエイ製鉄株式評価損320億円などで合計2070億円の特別損失を計上、この結果、同社の連結当期損益は1460億円と他社との比較で突出した金額になる見通し。単独決算でも住金は180億円の経常赤字、他5社の経常利益は黒字で、神鋼、NKK、日新の3社は98年度の赤字から黒字に転化する。なかでも98年度の277億円の経常赤字を一挙に507億円改善させるNKKの健闘が光っている。

 期末配当は新日鉄と川鉄が1・5円、日新が2円(一株当たり)、その他3社は無配。川鉄、NKKなどの収益改善は販価の値下がりを相殺して余りあるコスト削減に成功したためで、鋼材単価は日新製鋼の4000円ダウン(99年度末見込み9万9000円)、川鉄の9400円ダウン(同5万5000円)住金の1万600円ダウン(同7万2200円)など軒並み低下している。

 有利子負債は日新が若干増加しているほかはおしなべて減少しているが、その中でも新日鉄の1643億円減、川鉄の1496億円が目立ち、川鉄の99年度末の有利子負債残高は7700億円程度と8000億円台を大きく割り込む。

      高炉6社の99年度連結決算見通し        
                            (単位:億円、%)
                    売上高 経常損益 当期損益
新日本製鉄   99年度 26,500     650         0
             98年度 27,594     152       114
             前年比 ▼ 3.6 +327.6        ―
NKK       99年度 16,900     160   ▲  460
             98年度 18,087 ▲  448   ▲1,085
             前年比 − 6.6      ―        ―
住友金属工業 99年度 14,200 ▲  650   ▲1,460
             98年度 13,470 ▲  649   ▲  694
             前年比 + 5.4      ―        ―
神戸製鋼所   99年度 13,100     130   ▲  480
             98年度 13,054 ▲  226   ▲  388
             前年比 + 0.4      ―        ―
川崎製鉄     99年度 12,300     250       120
             98年度 10,943      31   ▲1,138
             前年比 +12.4 +706.5        ―
日新製鋼     99年度  4,300      50   ▲   65
             98年度  3,986 ▲    6   ▲   50
             前年比 − 7.9      ―        ―
合計         99年度 87,400     590   ▲2,345
             98年度 87,134 ▲1,146   ▲3,241
             前年比 + 0.3      ―        ―


               高炉6社の99年度決算見通し         
                                      (単位:億円)
                    売上高 経常損益 当期損益  配当
                                              (円)
新日本製鉄   99年度 18,300      500        0   1.5
             98年度 19,185      502        5   1.5
             前年比     −      4.6    −0.4    ―
NKK       99年度 10,000      230       30  無配
             98年度 10,136    ▲277    ▲503  無配
             前年比     −      1.0       ―    ―
住友金属工業 99年度  9,100    ▲180    ▲930  無配
             98年度  9,457    ▲269    ▲207  無配
             前年比     −      3.8       ―    ―
神戸製鋼所   99年度  8,400       90    ▲160  無配
             98年度  9,384    ▲ 98    ▲233  無配
             前年比     −     10.5       ―    ―
川崎製鉄     99年度  7,600      160       60   1.5
             98年度  8,362       68    ▲622   1.5
             前年比     −      9.1  +135.3    ―
日新製鋼     99年度  3,100       40    ▲ 55   2.0
             98年度  3,222    ▲ 12    ▲ 30   2.5
             前年比     −      3.8       ―    ―
合計         99年度 56,500      840  ▲1,055      
             98年度 59,746    ▲ 86  ▲1,590      
             前年比     −      5.4       ―    ―


大 同特殊鋼は7日、ロイヤル・ダッチ/シェルグループ(蘭)と共同で、鋼管の締結をアモルファス(非晶質)接合することで石油掘削管を内径比で20%拡管することに成功したと発表した。大同特の持つアモルファス接合技術を応用、最適な接合条件を見出すことで鋼管接合部の大径化を工業的レベルで具現化させた。石油掘削管では長寿命化のための補修や原油増産のため、鋼管径を太くする拡管の技術的ニーズが高まっている。従来のネジ込み式接合に代わって、アモルファス接合することで拡管を可能とした。来年度からシェルと実機適用のフィールドテストを開始、メドをつけ次第、接合法、接合装置など技術ノウハウを網羅した知的所有権(2月末までに特許100件出願済)を販売、2010年度には30億円以上の確保を目指す。

 シェルグループでは油井寿命の延長、掘削コスト削減、採油能率の向上を狙い、掘削管の拡管技術開発を進めてきた。しかし、従来のネジ継手接合では拡管の際、継手接合部が緩み、油、ガスの漏洩を生じていた。大同特とシェルグループでは95年から共同で拡管技術の開発に着手、アモルファス接合による拡管に耐える掘削管接合技術を確立した。

 アモルファス接合は特殊成分(ニッケルベース合金)のアモルファスシートを接合面に挟み、一定の圧力と熱力を加え、原子の拡散現象を利用して接合する。接合強度は強く、凸凹面もない。炭素鋼、ステンレス、チタンなど各材料に適用可能で、接合生産性もネジ込み式と同等とした。共同で掘削管の接合装置も開発、実験では速度毎分10メートルで内径を5インチから6インチに20%拡管、良好なデータが得られた。

 油井補修では内側に新しい鋼管を挿入、これを拡管(拡管率5%)することで寿命を20年から30年に延長できる。難工事鉱区掘削ではあらかじめ細径の管を埋設し、これを拡管(同20―25%)することで40%以上の原油増産でき、深海油田に適すという。

 年間接合対象は約1億カ所、2000億円が試算され、今後、接合装置のコンパクト化とフィールドテストを並行して手掛け、実機ベースの技術を構築、知的所有権販売などの形で事業化を図る。

新 日本製鉄室蘭製鉄所の製銑部門を分社化した北海製鉄は、13年9月から約3カ月で第2高炉を改修する予定。炉容は詳細を検討中の模様で約2700立方メートル(現状2296立方メートル)となりそう。投資金額は約150億円の見込み。

 同高炉は昭和60年7月に火入れ後、14年を経過。炉内耐火物などの寿命が限界に近づいているための改修。炉容拡大は従来より出銑比を下げることによって操業コスト低減および炉命延長の効果を得るのが目的とみられる。



深 谷隆司通産大臣は7日、閣議後の記者会見で、冷延鋼板アンチ・ダンピング提訴で米国際貿易委員会(ITC)がシロの最終決定を下したことについて、「正確な判断を下してくれ、歓迎する」と評価する意向を示した。熱延鋼板の世界貿易機関(WTO)のパネル設置、厚板でのWTO提訴については、パネルについては「粛々とやっていく」とし、厚板については「勝算があるという背景が固まれば提訴するが、現在は厳密に精査調整している段階」と述べるにとどまった。

 ITC決定については「自由貿易の中で、保護主義的な動きは避けるべきで、常識的な好ましい結果」と語った。
日 本電工(高橋啓悟社長)は、クロム酸回収などの環境システム事業で国内向け営業に加え、海外向け営業も強化する。昨年12月に専門スタッフによる「海外営業室」を設置し営業強化に取り組んでおり、3年後には3億円の売上げ規模を目指す。

 可搬式イオン交換塔(NDミニクロパック)のイオン交換樹脂にクロムを吸着させ回収し、再利用する同社のクロム酸回収システムは国内市場規模30億円の50%を占め業界トップのシェアを持っている。

 海外でも韓国ですでにミニクロパックによるクロム酸回収実績があり、台湾などからも引き合いが寄せられている。アジア諸国で環境問題が台頭する中で、同社は海外営業室の設置と同時に、全社横断的バックアップチーム「海外展開推進グループ」も設置して海外展開を積極化させている。

 現在、環境システム事業の海外向けは年間7000万―8000万円程度の売上げだが、同事業を今後のコア事業のひとつとして位置づけている中期計画(2000―2002年度)の最終年度には3億円レベルまで伸ばしていく方針。

岸 和田製鋼(本社=大阪府岸和田市、鞠子重孝社長)は今年度の収益計画として『償却前の黒字確保』を目標にしていたが、製品市況の低迷と鉄スクラップ価格の上昇によって「実現が困難な状況」(鞠子社長)となっていることから、来年度での達成を目指すことにしている。

 同社は関西地区の大手小棒細物メーカー。一昨年秋から新圧延ラインが本格稼働を開始、最近では安定操業を維持するとともに、月間生産数量も4万5000トン程度となっている。こうした中、同社では今年度の収益目標として償却前段階での黒字確保を目指していた。しかし、年度を通して製品価格が3万円台を割り込み、特に昨年春、中山鋼業が会社更生法の申請を行った前後には市況がベース2万1000―2万2000円どころにまで下落するなど『異常安』で推移した。また、鉄スクラップ価格もH2で7500―8000円前後の水準だったものが、夏場前から急伸、1万円を突破する状況となったことから、この目標は達成が困難な情勢となっているもの。

 鞠子社長は来年度の見通しについても「よほど大きな環境変化がない限り、需要は伸びないと考えている。また、鉄スクラップ価格も国際相場から勘案するとH2ベースで1万500円から1万1000円の水準に落ち着く」との見方をしており、生産性の向上やコスト削減を行うことで「来年度こそ償却前黒字を達成したい」としている。

普 通鋼電炉工業会(会長=佐々木喜朗・合同製鉄会長)と日本鉄リサイクル工業会(会長=鈴木孝雄・スズトク社長)は6日、東京・大手町の経団連会館で「第5回電炉鉄スクラップ懇談会」を開いた。当日は両会の会長・副会長などが出席、ダイオキシン問題や放射性物質混入問題について意見を交換。ダイオキシン問題では相互の認識を深め、放射性物質問題では発生者責任を明確化するよう共同アピールを検討することにした。

 ダイオキシン問題では、普電工が日本鉄鋼連盟と共同で取り組んでいる自主管理計画や、ダイオキシン特別措置法の内容などについて説明。すでに自主管理計画によって、ダイオキシン特別措置法で定める数値をクリアしている現状が報告された。今後は普電工がさらに取り組みを強化する方向を示し、両会の認識を深めた。

 放射性物質を混入した鉄スクラップの取扱い問題については、普電工側では各社が放射能検知器を設置する方向だが、最大の課題は発生元にあるため、発生者責任を明確化するためにも両会が連名で共同アピールする方向で検討することになった。関係行政の窓口についても早い時期に明確化することを求めている。

 放射性物質混入スクラップは現状、電炉各社が検知した結果、問題になる数値には至っていないが、今後は発生者責任を明確化することで、放射性物質混入スクラップをなくしていく方向だ。

東 京地区の異形棒鋼はベース2万5500円中心と横ばい。メーカーは減産をテコに追加値上げの時期をうかがっているが、需要の低迷で需要家の抵抗が強い。当面は大きな変動要素に乏しく、今後もこう着した市況展開が続きそうだ。

 商社によると、2月の商いは20万トンかこれをやや下回る水準にとどまったようだ。ベース、細物メーカーの減産で一部で配送が窮屈になっているが、新規の需要が乏しいため、タイト感は出ていない。需要の低迷で市況の先高感が薄らいだため、各ポジションで様子見に入っている。

 メーカーは減産に見合った販売量の制限など、新たな供給削減策を打ち出すことで再度値上げしたい考え。大型物件の材料手配が近づいているが、大量発注につながるかどうかはまだ見えない。メーカーの販売姿勢を見極めながら、当面は同値圏の商いに終始しそうだ。