2000.03.28
新 日本製鉄は4月3日付で、財務部門の「統合会計システム」を使用し新日鉄本体と同グループ各社の決算・出納業務を請け負う新会社「エヌエス・アカウンティング・サービス」(NSAC)を設立する。新日鉄が100%を出資、社長は財務部の太田克彦財務総括グループリーダーが兼務、常勤の取締役管理部長には同統計会計システムグループの山田正治マネージャーが就任。本体は今年10月、グループ各社は来年4月から業務受託を始める。

 新日鉄は決算事務の一部と出納事務を分社し、本体はもとより、グループ各社の受託はASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と位置付け、NSACが統計会計システムを駆使し事務を請け負う。連結各社の判断業務は従来通りとし、自律性を損なわない。

 簡単には「システム貸し」をするわけで、会計システムの更新時期にある、または要員合理化のメリットが享受できる連結対象会社が相手。このシステムを活用することで、各社単位のシステム更新や維持管理が不要となる。

 新日鉄では連結決算の時代に対応し、財務ノウハウのグループ内での共有化を目指す。

 統合会計システムは昨年4月に稼働、極めて順調に機能しており、各製鉄所など12の単位で業績をまとめ本社に集中していたのが、現在は本体で一括して集約する方式へと移行、業務負荷が大幅に軽減された。

 新日鉄には持分を含め300超の連結対象会社があり、孫会社をくくると156のグループが傘下にある。近い将来、これらがすべてNSACに業務を委託することになろう。

 新会社設立は「コンパクトな本社」を目指す一環といえ、これを柱とする財務の合理化によって、新日鉄は本体だけで40%ほどの人員が圧縮できる計算。

 NSACは本社を東京・大手町の新日鉄本社ビル17階財務部のフロアに置き、事業内容は「経理・会計事務の受託代行、財務書類の調査・作成、システムの運用管理、付帯事業」。

 資本金9900万円、従業員20人。

住 友金属工業は27日、小島又雄社長が会長、下妻博副社長が社長に昇格する首脳人事を、両氏が住金・東京本社で会見し発表した。今年度決算で2070億円の特別損失を計上せざるを得ない中で、来年度に200億円の経常利益と復配を目指すステップとして「社長としてのけじめをつける」(小島社長)ことになった。「ギアを入れ替えスピードアップし、新生住金を目指す」(同)。

 住金の社長は4年間務めた小島氏から下妻氏にバトンタッチされる。

 突然の住金社長交代について小島氏は淡々と「全人格、識見、全能力を信頼して下妻氏を社長に選んだ」と理由を語った。内示の時期については「若い時からコンビを組んできたので以心伝心。いつとはなしに 『そろそろだな』『そうですな』と話し合って決まった」と答えた。周辺からのアドバイスは否定。

 下妻副社長は「急な話なので抱負はこれからよく考えてまとめたい。世の変化は激しく、国際競争はますます厳しいので、全力で与えられた役割にまい進する」と語った。

 住金は昨年9月に策定した収益向上・400億円の合理化を実行する「経営改革プラン」を、下妻社長のもとで仕上げていく。

 両氏の役割分担について小島氏は「米国流に言えば会長がCEO、社長がCOO。会長は連結経営・住金グループを大所高所から見る。社長は業務執行の最高責任者として陣頭指揮を執ってもらう」と二人三脚を説明。

 住金は長期不況と競争激化、大混乱期の真っただ中を走った小島時代から下妻新時代に移っていく。



 ▽下妻博(しもづま・ひろし)氏=1937(昭和12)年生まれ、高校時代までは札幌、プロ野球の選手になりたかったが「無理と分かって」東京大学ではスケートに転進。スポーツマンタイプ、今でも長身にしてスリム。

 60(35)年入社、73年薄板部長、住金にとって後発の薄板販売に大きな実績を上げた。販売について「お客さんに尽くす気持ちがないと売れません」と語る。

 89年取締役、96年副社長。座右の銘は「ひとつの事を信じていては物事は進まない」。

 分社化する小倉と直江津は「今後も住金の執行役員が社長を兼務、社長直轄で見ていく」「高炉再編には興味ない。足元を固めるのが第一」「一番の問題点はもうかっていないこと」

N KKは27日、4月1日から施行される容器包装リサイクル法を受け、京浜製鉄所に建設していた容器包装プラスチック高炉原料化工場の稼働式を行った。当日は、通産省や川崎市、福山市など関係者から多数出席し、完成した高炉原料化工場の稼働を祝った。挨拶に立った半明正之副社長は「96年10月からスタートした産廃系プラスチックの受入れだが、その延長として4月1日から施行される容装法に対応して京浜と福山の稼働させるところまできた。全力を挙げてこの事業を推進していきたい」と語った。

 今回、京浜地区、福山地区に設置する工場は、それぞれ最大4万トンの「その他プラスチック製容器包装」を高炉原料として再商品化、高炉吹き込み処理する設備一式。一般廃棄物系プラスチックに含まれる塩ビを比重選別によって自動分離除去する設備も設置している。これらの設備稼働により、同社の使用済みプラスチック高炉原料化能力は、既存の産業廃棄物系プラスチックと合わせて年間最大12万トンとなる。

 高炉法は、使用済みプラスチックの約60%が高炉原料、残り40%は高炉ガスとして利用できる高効率なリサイクル処理法で、大幅なCO2削減効果も期待できる。このため、京浜地区の工場は、通産省・厚生省および川崎市の「エコタウン事業」として、建屋・設備の2分の1、福山地区は、資源・エネルギー庁およびNEDOの「新エネルギー事業者支援対策事業」として建屋を除く3分の1の補助を受けている。

 同社では、今後、国内年間30万トン以上の再商品化と吹き込み能力を確保する方針だが、将来的には海外製鉄所向けのシステム販売も狙っていく。

新 日本製鉄は27日、同社が開発した「3%Ni海浜耐候性鋼」が第32回(1999年度)市村産業賞・貢献賞を受賞することになった、と発表した。表彰式は4月28日にホテル・ニューオータニで行われる。

 3%Ni海浜耐候性鋼は、ニッケルを3%添加することで耐塩害性に優れた耐候性鋼板で、海浜地域などの塩害飛来環境でも緻密なさびの形成が阻害されないため橋梁など大型構造物の維持管理コストが削減できる。

 この鋼材は日本鉄道建設公団、北陸新幹線の鉄道橋にすでに約1800トン採用され、その他の橋梁向けも含めると2200トン以上が出荷されている。

住 友商事は4月1日付けで、大阪の鉄鋼建材部門を再編・強化し、グループ会社の住商鉄鋼販売(本社=東京都千代田区、水上義久社長)との一体運営を本格的に開始する。具体的には住友商事本体の大阪厚板建材部は厚板をはずし、大阪鉄鋼建材部とする。チームはこれまでの4チームから5チームとし、厚板チームについては東京厚板・建材部の管轄とする。人員はチームリーダ以上の役職者が住商鉄鋼販売と本体の兼務となり、それ以外は住商鉄鋼販売に出向する。また、住商鉄鋼販売の関西支店は4月1日付けで、大阪鉄鋼建材事業部に名称変更し、事業部の下に3部6チームを置く。

 住友商事は鉄鋼建材分野についてはすでに、東京で住商鉄鋼販売に全面的に業務移管しており、これによる成果を上げている。大阪地区の建材販売については伝統があり、他商社に比べても強い分野。

 ただ、鉄鋼建材分野は長引く不況により、販売が落ち込むとともに、市況の長期低迷もあって、収益性が低下していた。このため、大阪地区についても住友商事本体の建材部門と住商鉄鋼販売・関西支店の機能をさらに効率化させ、低コスト運営を図るため、本体の建材事業を住商鉄鋼販売に業務を移転、両社での一体運営に移行するもの。

 まず、組織変更は大阪厚板・建材部を大阪鉄鋼建材部とする。チームも棒鋼、形鋼・建築建材、土木建材、厚板の4チーム体制から、棒鋼、形鋼、建築建材、土木建材、特殊建材の5チームとする。人員も38人から33人とし、部長やチームリーダなどの管理職以外は住商鉄鋼販売に出向する。

 一方、住商鉄鋼販売の関西支店(人員=8人)も4月1日付けで、大阪鉄鋼建材事業部とする。事業部長には住友商事の大塚速大阪厚板・建材部部長(4月1日から大阪鉄鋼建材部部長)が兼務する。事業部の下には建築建材部(建築建材、形鋼、システム建築の3グループ)、土木建材部(土木建材、特殊建材の2グループ)、棒鋼部(棒鋼グループ)の3部を置く。

 今回の鉄鋼建材営業の一体化により、鉄鋼建材業界の変革に対応できるとともに、住商鉄鋼販売が持つテクノトラス、テールアルメ工法などの技術力(技術導入、商品開発、工事施工)や機動力をより生かすことができ、今後は川上から川下までの幅広い鉄鋼建材営業を展開していく方針。

冷 延鋼板など鋼材市況とともに、鉄スクラップ、銑鉄など冷鉄源の海外市況も世界的な鉄鋼生産の増加基調を背景に上伸基調で推移している。ただ、4月から予定されている韓国の浦項綜合製鉄総合製鉄所(POSCO)の光陽製鉄所第5高炉の稼働が、とくに銑鉄市況に影響を与えるものとみられている。

 鉄スクラップ、銑鉄の海外市況は日本、韓国をはじめ鉄鋼生産が急速に落ち込んだ98年後半から99年春頃まで低迷が続いていたが、4月に鉄スクラップ81ドル(No1HMS)、銑鉄96ドル(いずれも韓国着ベース)を底に反発に転じ、今年1月に鉄スクラップが128ドル、銑鉄が142ドルまで上昇。

 その後、POSCOが4月から光陽第5高炉を稼働させるとの方針を明らかにしたことが影響して、3月上旬段階で鉄スクラップ123ドル、銑鉄124ドルまで下げている。鉄スクラップと銑鉄価格は通常、5―10ドルの差がある中で、両価格がほぼ同レベルまで接近した背景として、光陽5高炉の稼働に伴う銑鉄市況への影響が指摘されている。

 関係筋によると、POSCOの99年度の還元鉄を含む冷鉄源輸入量は380万トン(うち銑鉄約100万トン)だが、5高炉の稼働により出銑量が300万トン程度増加、うち270万トン相当分を自社に切り替える結果、今後の冷鉄源輸入量は110万トンに減少するという。

 鉄スクラップ価格に比べて銑鉄価格は値下がり幅が大きく下げ過ぎ感もあって、3月中旬には127―128ドルまで戻しているが、今後、5高炉の稼働による市況への影響が注目されている。一方で今年央にも予想されている韓国の韓宝鉄鋼の熱延コイル増強も鉄スクラップなど冷鉄源市況への先行きのインパクト要素とみられている。
フ ェロマンガンなど合金鉄の国際市況が上昇基調を強めている。フェロマンガン(高炭素製品)が先週、10―20ドル上昇したのをはじめ、シリコマンガンも500ドル台を回復するなど全面高、本格回復の様相を呈している。

 フェロマンガン、シリコマンガン、フェロクロム、フェロバナジウムなど合金鉄各品種は99年に史上最低価格まで落ち込んだ後、年末から反発に転じ、回復基調が鮮明化している。

 フェロマンガンは98年の世界の鉄鋼生産の減少や大手メーカーの統合・再編(南アフリカ・サマンコール社の豪州BHP社のマンガン部門の統合、フランス・エラメット社のノルウェー・エルケム社の合金鉄部門の買収)にともなう在庫放出の動きなどに影響されて、98年の470―480ドルから100ドル以上値下がりし、99年末に過去最低の345ドル台まで下落した後、反発に転じ、2月に420―425ドルまで戻した後、3月20日の週に430―450ドルまで回復中。

 シリコマンガンも99年10月に440―450ドルまで下落していたが、その後回復に向かい495―510ドルまで戻し、97年レベルまで回復しつつある。

 フェロクロムはステンレス価格の長期低迷の中で過去最低水準の37セント(高炭素製品・重量ポンド当たり・ユニット)まで下落した後、99年4―6月積みで底入れし、世界のステンレス需要の回復を背景にその後3期連続の値上がりの結果、値下がりする直前の98年7―9月期とほぼ同水準の45セントまで回復。

 フェロバナジウムは98年前半に30ドル(キログラムV)まで急騰した後、後半から一転して値下がりが続き、過去最低の7・55ドルまで下げたが、年明け後に反発し、13・50ドル台まで回復している。

 合金鉄市況の本格回復の動きは、価格の低迷と円高基調の中で厳しい状況に陥っていた日本の合金鉄各社の収益改善への下支えとなる見通しで、とくに国内生産の比率が大きいマンガン系合金鉄の回復が期待されている。
東 京地区の縞板(4・5ミリ厚、ベースサイズ)は、5万5000円―5万6000円どころ中心で強含み。

 高炉メーカーが4―5月積みをめどに3000円の値上げを表明し、メーカーの値上げが出そろった形。流通は東京製鉄の実施した値上げ分も入荷していることから、「材料(価格)が上がる中では実質的に値上げせざるを得ない」として仲間価格から500―1000円単位で高値浸透を図っている。プロジェクト物件の始動で工場は忙しい状況が続く。

 ただ、年明けから強基調で推移する熱延、中板など鋼板類は荷動きに一服感が出ている。建築物件の受注単価が低水準とされ、需要家からのコスト面での抵抗は相変わらず強く、条鋼建材や熱延薄板の市況上昇が頭打ちムードとなると、縞板の値上げ転嫁も遅れる可能性はある。目先は値上げ浸透を見守る展開。