2000.04.20
鋼 材倶楽部の鉄鋼流通情報化委員会(委員長=福島幹雄・川崎製鉄取締役営業総括部長)は19日、鉄鋼ECシステムを7月をメドに実運用すると発表した。通産省事業として3月に実施した薄板商流の実証実験参加企業55社を核に、厚板、鋼管、条鋼などに対象分野を拡大し、初年度100社をメドに参加企業を確保し、コイルセンター工業組合など関連団体との連携を通じて、3年間で300―500社規模のサプライチェーンマネジメント(SCM)システムに発展させる。また、自動車、電機などの需要家業界ネットワークとの連結を視野に入れており、鉄鋼のヒモ付き分野の物商流管理支援の中核システムとして定着させたい考えだ。

 鉄鋼ECは通産省事業として、96年から3次にわたってシステムを研究開発してきた。薄板のヒモ付き商流を対象に、メーカーの生産状況、コイルセンター在庫、需要家の使用計画などの受発注関連情報を商社を含めた商流のなかで共有し、事務効率化や余剰在庫の削減などの業務効率化を図るのが主眼。

 各社が公開した関連情報をインターネット上の仮想データベースに構築し、参加企業が自社に関連した情報を検索できるシステム。アクセス管理などのセキュリティ機能などを含めて開発した。

 鉄鋼EC3では中小企業への普及をにらんだ低コストの簡易型システムを開発し、トヨタ、トピー工業など需要家を含めた55社で実証実験を実施し、実用段階に入ったことを確認した。

 通産省事業が6月までに完了するのを受けて鉄鋼ECの研究成果を鋼材倶楽部で引き継ぎ、情報化委員会の下部組織として「鉄鋼ECネット管理運用センター(仮称)」を設置して、参加者管理、システムの保守、他業界ネットワークとの連結などの管理運営にあたる。 7月から可能な商流から順次実運用する方針で、薄板以外の商流に対象を広げ、初年度は100社、3年後には数百社規模が参加するシステムに発展させる。

 業界内の関連団体との連携で中小企業を含めて参加企業を増やすほか、自動車業界のJNXなど他業界のネットワークとの連結も視野に入れている。

新 日本製鉄名古屋製鉄所(所長=大橋徹郎常務)は19日、第3高炉の火入れ式を実施し、稼働を再開した。200億円を投じて1月17日から行ってきた改修工事(4次)を93日という短期間で完成したもので、火入れ式には地域関係者を含め約150人が参列した。

 第3高炉は、84年に第3次改修・火入れを実施以来、15年1カ月にわたり高水準の生産を継続し、1月16日の吹き止めまでの累計出銑量が3873万9000トンを記録。今回の改修工事では大ブロック工法の採用や3000トンクローラークレーンの活用などにより一般的には約4カ月要する工事を大幅短縮した。

 稼働した新第3高炉は、炉容積の拡大、炉頂圧発電設備の増強などの最新技術を結集し、省エネ・長寿命化を実現した新生高炉。炉容積を従来の3424立方メートルから4300立方メートルに拡大し、能力に余裕を持たせた。また炉頂圧発電設備を従来の約1万3000kW/hから約2万kW/hへ1・5倍に増強。このほか冷却能力を増強するためシャフト部、炉底側壁共にステーブ冷却を採用。鋳床環境改善として集塵機の能力をアップした。一方、操業面においては省力化を図るため、第1・3高炉の運転室を統合し、第1高炉の運転室で第3高炉の操業も行う。

 火入れ式後の直会では大橋所長が「今回の第3高炉改修に合わせ、発電、焼結、ガス精整、製鋼のCC増強なども並行して行い、当製鉄所の上工程の増強を完了した。これを機にこれらの新鋭設備が威力を発揮することを期待したい」と力強く述べた。続いて来賓として平井隆取締役が「強い戦力として前線に復帰し、高い目標に果敢に挑戦してほしい」とあいさつした。

神 戸製鋼所は19日、イラン国営製鉄所プロジェクトに関する外電の報道について、事実関係に大きな誤認があるとの考え方を明らかにした。

 報道によると、神戸製鋼所の投資保険上の問題によって、最終合意期限である3月19日を越えても契約締結に至らず、イラン政府は中国・台湾企業との交渉に切り替える可能性を示唆しているという。これについて神鋼は三井物産、三菱商事、丸紅、伊藤忠商事の5社でコンソーシアムを組んで、イラン国営製鉄所建設の入札に参加しているが、いくつかの点で誤解があると反論している。

 報道のなかで触れられている投資保険上の問題については、「今回はハード輸出のためプラント輸出保険ならともかく、出資する予定もないため投資保険というのは当たらない」としている。また、3月19日の最終合意期限というのも「同意事項でない」と反論。今後、細かいファイナンス構築に向けた最終調整に入るという進捗状況について明らかにした。

 イラン国営製鉄所プロジェクトは、年間200万トン規模でペレットプラント、ミドレックス法によるDRプラント、電炉スラブ連続鋳造機を建設するという約11億ドルの大型プロジェクト。 神鋼では三井物産、三菱商事など5社のコンソーシアムを結成して参加しているが、これまでに同国のモバラグ製鉄所建設での実績もあり、イラン政府から高い評価を得られているという。

米 商務省(DOC)は18日、日本から輸入されている構造用形鋼に対して、31・98―65・21%の反ダンピング課税を賦課するとの「クロ」の最終決定を下した。最終マージン率は、川崎製鉄、新日本製鉄、NKK、住友金属工業、東京製鉄、トピー工業が65・21%、その他が31・98%。

 このケースはノースウエスタン・スチール・ワイヤ、ニューコア・ヤマト・スチール、TXI―チャパレル・スチールおよび全米鉄鋼労組が1999年7月に提訴していたもの。今回のDOCの最終決定を受けて、米国際貿易委員会(ITC)は6月1日までに被害認定の最終判断を下す。

 なお、DOCまとめによると、日本の同製品輸入は96年4万1500ネットトン(輸入額約1600万ドル)、97年4万3400トン(同1600万ドル)、98年が92万4200トン(同3億1300万ドル)。99年1―3月は輸入量が17万6600トン、前年同期比29・8%増、輸入額は約4700万ドル、同24・2%減。



関 西鉄鋼センター(本社=大阪市此花区、星山秀正社長)はこのほど、前年度(99年度)の業績見込み、および今年度(00年度)の計画を明らかにした。今年度計画は売上高が前年度横ばいの年間43億円、損益は経常段階で黒字継続を目指す。自社の切板は平均で月間2700トンと、前年度比100トン程度増の確保を目指す。特に、小口・複雑化する切板注文の対応を強化するとともに、生産性の向上・コスト低減を推進する。中期的には自社の切板が月間2500トンでも利益を出せる体制を構築する。このため、来年度中にも生産管理がリアルタイムで的確に把握できる、新しい生産システムの構築を図る。

 同社は新日本製鉄の関西地区の指定シャー。本社工場は敷地面積が1万9562平方メートル、建屋面積が7862平方メートル。加工設備はガスプレーナー1台、NCガス切断機3台、NCレーザ切断機1台、アイトレーサー2台、NCプラズマ切断機2台、高速開先切断機1台、油圧ベンドプレス1台など。

 自社の切板能力は一直で月間3200トン程度で、主に橋梁、鉄骨向けに加工を手掛けている。前年度の業績は集計中の段階だが、売上高が年間43億円と98年度比3億円前後減、損益は経常段階で98年度比増益となったもよう。これは自社の切板は月間2600トン台と98年度に比べ100トン程度落ちたが、人員も98年度比10%程度削減するなど合理化したことにより、増益となったもの。

 ただ、先行きの需要は橋梁、鉄骨ともに厳しい、と予想しており、今年度もこれに耐えられる企業体制を構築する。今年度の計画としては橋梁を中心に受注を強化し、基本的には月間2700トンの自社の切板を目指す。

 特に、今年に入り本社工場にアクアガス設備、半自動コーナーカット、文字マーキングロボット、糸面取り装置を導入、小物・複雑な物が加工できる体制を整備した。今後は外注に出していた加工を自社で取り込むとともに、全体の切板の生産性も引き上げる。

 また、中期的には、自社切板が月間2500トンでも収益が出る体制を整備する。特に、受注から加工、出荷までの細かい工程が迅速・的確に把握できる管理システムを構築する。これにより、事務部門の効率化が進み、ホワイトの人員についても、現状の30人から24―25人に削減することも検討している。

N KK系列の中核物流企業、エヌケーケー物流(本社=川崎市浜町、三好英明社長)の2000年3月期業績は、売上高約530億円(前年度実績約522億円)、経常利益2億円程度(同7億7200万円)、当期利益2億円強――と、増収減益になるものの、合理化努力によって黒字を確保する見込みである。

 当初計画では、経常利益は6億円ほどを予定していたが、4億円程度未達となった。

 その減益要因は、NKK本体へのコスト追加貢献が大半だが、新会計制度のスタートに伴う退職年金への積み増し、償却費の積み増しなどが重なったことによる。今回初めて算定されたフリーキャッシュフローは「プラス11億円」。年度末借入金残高は210億円で、前年度比約9%の減少。

 この1年間の合理化努力によるコスト圧縮は総額40億円に達し、最近10年間では過去最高となった。

 契約船の運賃値引き(10%弱引き下げ)、労務費の抑制のほか、福山事業所に総合管制センターを設置し「最適航行システム」を実現し滞船料をセーブした。また、荷役コストの改善、諸資材などの節減など細かい努力を積み重ねた。

 2000年度計画では、売上高550億円、経常利益7億円、当期利益6億円――を予定している。引き続き運賃コストの低減などに取り組む。ただ、国内海運業界共通だが、リプレース時期にきており、積み荷保証など若干のリスク要因があり、流動的だ。

 財務体質改善に向けて、引き続き総資産を圧縮する方向で、営業上必要としていない遊休地(有価証券等含む)は原則売却処分する。これらによってキャッシュフローは「プラス45億円」程度を目指す。借入金残は最低でも本年度の減価償却分に当たる17億円程度は削減する方針。

 本年度の業績計画には、年内予定されている同系列の日産船舶との合併による数字は含まれていない。

 両社による合併委員会は近く発足し、5月には「合併契約書」の調印が予定されているが、スケジュール的にはかなり厳しく、現状では「10月1日発足」はやや危ぶまれる状況だ。



溶 材メーカーの川鉄溶接棒(本社=東京都台東区蔵前、石崎巳社長)は、大入熱・高パス間温度に対応した炭酸ガスシールド溶接用ソリッドワイヤ「KC―55G」を99年秋に発売したが、6月施行予定の改正建築基準法に標準を合わせ、今月下旬から本格的な受注対応を進める方針だ。

 鉄骨工事技術指針(日本建築学会発行)には、推奨溶接条件範囲を「溶接入熱1平方センチメートル当たり4万ジュール以下、パス間温度350℃以下」と明記され、改正建築基準法(案)でもこの条件が付記されると見込まれている。この法改正では、中間検査や施工試験が厳しくなり、ユーザーサイドのファブリケーターなどでは、作業能率が高く、しかも溶接の機械的性質が損なわれない溶接材料を求める傾向にある。

 川溶棒では、法改正に伴うユーザーの要望に応じて、従来、一般的に行われている大入熱や高いパス間温度下での作業時にも、法的範囲と同様の機械的性質を得ることができる、新溶材を開発した。

 既存のソリッドワイヤKC―50に焼き入れ性向上のための化学成分を添加。JISではYGW―18に該当する性能を持ち、軟鋼および490N/平方ミリメートル級高張力鋼に適用する。ワイヤ径は、1・2ミリ、1・4ミリ、1・6ミリ。全姿勢で溶接でき、機械的性質は、パス間温度300℃、入熱3万8000ジュールの場合で、引張強さ548N/平方ミリメートルを得ている。

 適正溶接条件は、下向すみ肉および下向姿勢で200―500アンペア(ワイヤ径1・6ミリ)、水平すみ肉で200―450アンペア(同径)。

大 阪地区のH形鋼はベース3万円どころで弱含み。

 先月後半以降、荷動きに減退感が見え始めているため、扱い筋の売り腰が急速に弱まり、安値応じが散見。置き場換算では3万円の大台を割り込む安値も出ている。電炉の物件価格も3万円を割り込み、柔軟な対応となっている。

 また、3月末のときわ会在庫も前月比0・7%減の7万トンと微減に推移。いぜんとして過剰感が残るため、市中のムードが悪くなっている。

 ただ、ここにきて扱い筋では自主的な申し込み削減により、「4月末在庫が減少に向かう」との見方が強まり、在庫調整の進展をテコに軟化気配の市況を下支えする動きも出てきている。また、平均的な鉄骨価格もS造で9万円、SRC造で12万5000円と安値が切り上がる傾向となっている。