2000.04.28
通 産省は27日、2000年度第1・四半期(00年4―6月)鉄鋼生産計画の集計結果を発表した。粗鋼生産は2593万2000トン(前期比52万9000トン、2・1%増、前年同期比321万トン、14・1%増)で、2600万トン際の生産計画となった。年度第1・四半期としては97年度・第1四半期の2677万トン以来の2500万トン超えで、先月末同省が策定した第1・四半期需要見通しの2490万トンを103万2000トン、4・1%上回る。輸出が依然ハイペースを続けているほか、国内向けも首都圏での再開発プロジェクトなどで建設需要の増加を見込んでいる。さらに足もとは自動車生産が当初の230万台(完成車ベース)想定を10万台以上回るとし、粗鋼生産が同計画水準を超え、2600万トン台に乗せる公算も大きい。(3面に関連記事)

 今回の生産計画について通産省では、普通鋼生産が前年同期を国内向け7・5%増、輸出向けが48・3%増とアジア向けを中心に輸出がけん引役となっていることを指摘。「いつ東南アジア市場が在庫調整期に入るかわからず、これに備えた生産対応が必要」と分析している。

 国内向けでも小棒は関西以西の需要低調を踏まえ、「地域の実態に則した慎重な生産がポイントとなる」と実需見合いの生産対応を求めている。

 第1・四半期の粗鋼生産計画は国内、輸出とも増加を見越していることが高水準の要因。改修を終えた新日本製鉄名古屋製鉄所第3高炉の再稼働もあって、増産計画につながった。

 普通鋼鋼材生産は1977万1000トン(前期比28万2000トン、1・4%増)。内訳は国内向け1425万4000トン(同21万1000トン%、1・5%増)、輸出向け551万8000トン(同7万3000トン、1・3%増)。

 特殊鋼鋼材生産は361万2000トン(前期比2万8000トン、0・8%増、前年同期比12万4000トン、3・6%増)。内訳は国内向け265万2000トン(前期比1万6000トン、0・6%減)、輸出向け96万トン(同4万4000トン、4・8%増)となった。自動車生産の動向では国内向けの上振れもあり得る情勢だ。

 普通鋼鋼材のうち、H形鋼は142万トン(前期比7万1000トン、5・3%増、前年同期比18万5000トン、15%増)で、国内向け123万6000トン(前期比5万7000トン、4・8%増)、輸出向け18万4000トン(同1万4000トン、8・2%増)。小棒生産が310万トン(前期比17万1000トン、5・8%増、前年同期比12万トン、4%増)。

奥田真弥鉄鋼課長の話

 需要見通しの数値を100万トン以上上回ったのは、94年度第4・四半期、97年度第1・四半期に次いで3度目。輸出が引っ張っている形だが、好調なアジア市場がいつ在庫調整に入るかわからない。調整期に入ると急速に落ち込むため、これに備えた対応も必要だ。国内でも小棒の数値は高いといえ、特に関西以西の需要が低調なことを考えると、地域の実態に則した生産対応が重要なポイントとなる。

鋼 材倶楽部が27日発表した3月末の普通鋼鋼材国内向け在庫は543万3000トンで、前月末の552万6000トンに比べ9万3000トン、1・7%減少した。国内向け出荷が513万2000トンで33万3000トン、6・9%増えたため2カ月連続減少した。前年同月比では1・1%増加している。これに伴い、国内在庫率も前月の115・2%から9・3ポイント減の105・9%へ減少した。前年同月比でも5・6ポイント減少している。

 一方、輸出船待ち在庫は145万4000トンで前月末の170万4000トンに比べ24万9000トン、14・6%も減少した。

 この結果、国内、輸出の在庫合計は688万7000トンで、前月末の723万トンに比べ34万3000トン、4・7%の減少となった。 この在庫をメーカー・問屋別で見ると、メーカー在庫は国内向け出荷増で前月末の571万2000トンに比べ33万6000トン、5・9%減の537万6000トンとなったが、問屋在庫は前月末の151万8000トンに比べ7000トン、0・5%減の151万1000トンになった。

 メーカー・問屋在庫合計で前月末比1万トン以上増加した品種はなく、減少した品種は鋼矢板が1万1000トン減の7万8000トン、H形鋼が1万2000トン減の34万5000トン、小棒が3万9000トン減の62万3000トン、特殊線材が1万3000トン減の5万2000トン、鋼帯の幅600ミリアップが6万6000トン減の173万4000トン、冷延広幅帯鋼が4万8000トン減の68万トン、冷延電気鋼帯が1万トン減の9万6000トン、亜鉛メッキ鋼板が6万1000トン減の114万5000トン、鋼管が3万9000トン減の60万5000トンになっている。

 この結果、3月末の在庫率は15・4ポイント減の94・9%となった。この在庫率は89年3月の94・1%以来の低水準。

 なお、3月の普通鋼鋼材の生産は691万2000トンで前月比49万3000トン、7・7%増加しており、前年同月比では9カ月連続の増加。出荷は国内向けが513万2000トンで同33万3000トン、6・9%増加し、輸出向けは212万3000トンで同37万トン、21・1%も増加している。この輸出量は86年7月の213万5000トン以来の高水準。

新 日本製鉄は27日、自動車鋼板用途向けに溶接部の耐久性を改善した熱延高強度鋼板の新商品を開発した、と発表した。この鋼板を使用すると、適用部位の板厚・重量を5―10%程度低減することが可能で、すでにプロペラシャフトなどの自動車部品として実用化されており、同社では複数の自動車メーカー向けに月間1000トン弱の販売を開始している。

 鋼板にアーク溶接などを加えると溶接熱影響部(HAZ)の軟化が起こり、疲労強度が低下し、この現象が鋼板の板厚低減を進める際のネックとなっていた。 同社が今回開発した鋼板は、440―780Mpa(45―80Kg/平方ミリメートル)クラスの熱延高強度鋼板(通常の鋼板は270Mpaクラス)で、アーク溶接部の疲労試験では、同じ強度の従来材に比べ2倍以上の疲労耐久寿命を示す。

 このような特性は、鋼に特殊元素を添加することで形成される微細析出物が溶接熱影響部の結晶粒粗大化を阻止することによって得られるもので、熱延鋼板だけでなく冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板などにも適用できる。

 この熱延高強度鋼板は、すでにプロペラシャフトなどの自動車部品として実用化されているが、今後は溶接部の疲労特性改善による軽量化効果が大きいフレーム・アクスルハウジングなどへの適用が検討されている。また、この熱延高強度鋼板は、溶接部の特性が重要なハイドロフォーム成形・テーラードブランクに適した鋼板で、今後の採用拡大が見込まれている。

 同社では、こうした採用の拡大によって、この熱延高強度鋼板の需要が現在の数倍に増えるものとみており、将来は生産量も月間1万トン規模へ伸びるものと期待している。

 この熱延高強度鋼板の開発で同社の自動車向け高機能鋼板は、高穴広げ(高バーリング)鋼、DP(Dual Phase)鋼、TRIP鋼(大河内記念生産賞受賞)などに加え、さらに品ぞろえが進み、環境負荷軽減のための自動車の軽量化や衝突安全、コストダウンなど自動車に対する社会的要請に一層、貢献できるとしている。

 なお、この熱延高強度鋼板は同社独自の開発商品で、すでに特許を出願している。
日 鉄商事は27日、5月1日からサービスを開始する鋼材eコマースサイト「鋼材ドットコム」に、高炉系商社の住金物産と神鋼商事が参加すると正式に発表した。エヌケーケートレーディングも近々参加する方向で検討している。川鉄商事にも参加を要請中だ。住金物産と神鋼商事は今後、同サイトに製品を供給するとともに、鋼材ドットコム社に出資を行い、共同でサイトの機能の改善・追加を推進し、鋼材電子商取引における業界標準を確立することを目指す。

 住金物産と神鋼商事は、eコマースを利用した鋼材取引の拡大・効率化の可能性について検討してきたが、高炉と密接な関係をシステム構築に生かすことができること、サービス開始が最も早いことから、日鉄商事の「鋼材ドットコム」に参加することを決めた。

 日鉄商事は、高炉系商社がそろって参加する鋼材eコマースサイトの構築を目指している。高炉系商社が同一のサイトに参加することにより、サイトへの鋼材供給量が大きく増加することが期待されるとともに、物流手配、決済支援などの今後追加が予定されている各種サービス機能の充実が見込まれる。

 「鋼材ドットコム」は、6月中にオフィスを日鉄商事オフィス内(東京都江東区亀戸)から、システム開発を行っている新日鉄情報通信システム(ENICOM)に至近の東京都中央区新川に移転し、サイトとしての中立性を確保するとともに、開発の効率化、期間短縮を図る。
全 国鉄鋼特約店連合会がまとめた特約店流通動態調査によると、99年度の販売量は542万6264トンで、前年度比2・9%減と3年連続で減少した。品種別の販売量は、鉄筋用棒鋼が3年ぶりに増加したが、形鋼、軽量形鋼とも3年連続の減少だった。

全鉄連流動調査99年度      
    (単位:トン、カッコ内は前年比%)  
  仕入量 販売量 期末在庫量 年末契約残
鉄筋用丸鋼 2,327,164 2,326,542 45,302 147,626
  (2.2) (1.9) (−3.2) (6.9)
 異形 2,247,164 2,247,422 40,600 146,630
  (2.2) (1.9) (−5.1) (7.1)
形鋼 2,903,216 2,884,722 272,840 122,999
  (−4.2) (−6.0) (5.2) (24.1)
 H形鋼 1,864,761 1,852,780 145,993 81,834
  (−4.4) (−6.3) (3.9) (24.5)
  東京 971,505 966,576 69,178 47,610
  (−0.7) (−2.7) (7.5) (48.1)
  大阪 698,541 697,082 61,209 29,877
  (−3.5) (−5.1) (2.4) (11.6)
  愛知 194,715 189,122 15,606 4,347
  (−21.5) (−24.5) (−4.5) (−36.4)
軽量形鋼 217,489 215,000 14,795 2,903
  (−6.8) (−9.0) (6.4) (−18.0)
総計 5,447,869 5,426,264 332,937 273,528
  (−1.7) (−2.9) (4.0) (13.6)
A WA認証機構 建築鉄骨の品質検証(モニタリング)に関する傷害及び賠償責任保険制度を整備。

 AWA認証機構(所在地=神奈川県川崎市、会長=松崎博彦・三井建設建築本部建築技術部長)は、今年秋までに中堅損保と契約し、建築鉄骨の品質検証(モニタリング)に関する傷害および賠償責任保険制度を整える。オーナー向けに建築品質を保証する制度は業界初。

 AWA認証機構の事業目的は、中立・公平・透明性の高い建築鉄骨検査技術者のプロとして、建築鉄骨に関連した広い分野からAWA検査技術者を認証・登録し、建築主など顧客の立場から建築鉄骨の品質を検証(モニタリング)を実施している。

 同機構では、今年秋までに中堅損保と契約して、建築鉄骨の品質検証(モニタリング)に関する傷害および賠償責任保険制度を整備する構えだ。保険料は会費から徴収し、契約は1年ごとの更新となりそうで、現在、最終調整を行っている。

 内容はAWA技術者がモニタリングで怪我をした場合などの傷害保険と、モニタリングで合格となった建物が倒壊した場合など、検証結果自体を保証する賠償責任保険の2種類。同機構業務局が行うプロジェクトごとのモニタリングが対象となる。

 改正・建築基準法では、従来の仕様規定から性能規定に移り、建築に関するオーナーの自己責任がより一層強くなる。オーナー向けに建築品質を保証する制度はこれまでになく、今回が初めてのケース。同機構では、モニタリングのメリットをアピールし、普及に尽力していく。

日 建フェンス工業(本社=東京都台東区、古屋馨社長)はこのほど、2002年度までの中期3カ年計画を策定したが、スタートにあたる本年度は経常段階での黒字回復を最重点課題とし、売上高に占める経常利益率1%確保を目指す。

 フェンス需要は引き続き低迷した民間に加えて、官公庁関連も地方自治体の財政ひっ迫などを受けて物件減少が著しく、99年度のトータル需要は10―15%減となる見込み。それに伴って、価格競争も激化しており、メーカー各社は適正利益の確保が難しくなっている。 このため、同社の99年度決算(3月期)の売り上げは金額ベースで約6%、数量ベースでは約10%のマイナスとなり、経常段階で赤字転落を余儀なくされそうだ。

 これを受けて、同社では、事業領域の拡大と企業体質の改善をベースにした中期3カ年計画(2000―2002年度)を策定した。それによると、2002年度には売上高50億円以上、売上高に占める経常利益率は3%以上を達成する計画。 

 具体的には仕入れ原価の見直し、リーズナブルな新商品の開発などで変動費を削減する一方、出先機関や要員配置などを見直し、収益に見合った体制を構築するなど、総固定費を8億円未満に圧縮。人員に関しては減耗不補充で15%削減し、現在の78人から2002年度には67人体制とする。

 営業面では@昨年12月に発売したメッシュフェンス「ステラVフェンス(STLV型)」を拡販(本年度目標8万メートル)A積雪地向けフェンスの開発B門扉と目かくしフェンス、角パイプフェンスの商品メニューを拡大D日鉄建材工業との連携を深めて防雪柵類の拡販に注力する―などの戦略を打ち立てており、全社一丸となって取り組んでいる。

東 京地区の冷延薄板(1・0―1・6ミリ、ベースサイズ)は、5万2000―5万3000円中心でもちあい。

 「3月、4月の動きが悪かった」(特約店)ことから、流通は今ひとつ強気になれない状態。安値部分を中心に1000―2000円の切り上げとなったが、それ以降は強含み気配が消えて、相場は現状維持。高値を通すのは難しくなっている。自動車、電機メーカーなどひも付きの値下げ姿勢が明確で、店売り分野も需要家に近い商いでさらに価格圧力が強まる可能性が高い。

 また、3月は輸入冷延コイルの入着が約10万3000トンと通常の7―8万トンペースに比べて大きく増加。1月も9万トン台の入着を記録したが、これが先行きの国内市場に対して影響するとの懸念も出ている。流通としては「今が踏ん張りどころ」(同)として価格維持で臨む意向。