2000.05.22
4 月に米商務省(DOC)のクロの仮決定が行われたシームレスステンレス鋼管の反ダンピング(AD)調査で、13クロム油井管と12クロムラインパイプの両品種が適用除外されることになる見通し。日本ミル各社が強みを持つ13クロム油井管の対米輸出が継続されることになる。

 同提訴・調査は、米国のシームレスステンレス鋼管ミル7社が日本のシームレスステンレス鋼管のほぼすべてを対象に99年10月に提訴し、同年12月に米国際貿易委員会(ITC)のクロの仮決定に続いて今年4月にDOCのダンピングマージンの仮決定が行われた(住友金属工業と山陽特殊製鋼156・81%、その他62・14%)。

 提訴会社は、プラント用などに使用されるシームレスステンレス鋼管のメーカーで、13クロムの油井管などは製造していないにもかかわらず、シームレスステンレス鋼管すべてが提訴対象とされていたことから、日本ミル各社は個別に提訴会社側の弁護士と油井管、ラインパイプを適用除外とするよう話し合いを行ってきた。

 この結果、提訴会社はこれに同意、13クロム油井管すべてと12クロムラインパイプを適用除外とする方向が固まったもよう。ただ、提訴会社は日本からの13クロム油井管などが他の用途に使用されないことを保証する目的で、製品の全長にわたってステンシル(刷り込み)を付けるよう要求しているという。

 対米鋼管輸出が、95年に普通鋼のシームレス油井管に対するITCのクロの最終決定が出されて以降、大幅な減少となっていることに加え、大・小径シームレス鋼管(ラインパイプ)のAD調査や、溶接ラインパイプに対する201条調査など、一連の通商法提訴で壊滅的な打撃を受けている中で、高付加価値品で日本ミルが得意とする13クロム油井管の輸出継続見通しは、厳しさを増している対米鋼管輸出への下支えとなる見通し。



通 産省はこのほど、鉄鋼需要につながる日本機械工業連合会(日機連)など需要団体ヒアリングを行った。それによると、日機連の2000年度生産額見通しは一般機械、電気機械、輸送機械、精密機械と全機種がプラスで前年度比2・1%増と3年ぶりの増加を予測した。しかし、3月の自動車生産は前年同月比0・5%増と増加したものの、4月の販売は減少。産業機械、建設機械も3月の受注額、出荷額を減少させたほか、電気機械も重電、家電と2月の生産額はマイナスとなった。足もとの減少については季節要因や個人消費の伸び悩みが影響していると分析。年度を通じて見ると民間設備投資に動きが出てきている点を挙げ、穏やかな回復軌道をたどると予想している。

 日機連の2000年度生産額見通しでは、半導体製造に絡んで金属工作機械が前年度比12・5%増、アジア向け輸出で繊維機械同21%増、木造加工機械同33・6%増とし、IT(情報技術)関連投資やアジア経済成長などを背景に、総じてプラス予想。

 自動車は4月の販売が前年同月比2・3%減と2カ月続けて減少。乗用車の同1・4%増に対し、トラックの同8・1%減と減少したことが響いた。3月の輸出も同2・4%減と減少。乗用車、トラックとも減少し、現地生産化による欧州向けの減少(同16%減)が要因となった。3月の生産は同0・5%増で、乗用車の同2・9%増がトラックの同10・3%減を相殺した。

 産業機械は3月の受注額が同16%減。内需同25%減、外需同24・8%増と外需は伸展している。

 建設機械は3月の出荷額が同5%減。内需同2・3%減、外需同10%減で油圧ショベル、トラクターなどウエートの大きい品目の減少が影響した。

 電気機械は重電の2月生産額が同0・7%減。半導体関連でサーボモータが同55・9%増と伸びたが、それ以外は減少が目立つ。家電も2月の生産額が同2・6%減。3月の国内出荷同4・5%減、輸出は同6%増と国内が低調となっている。



通 産省はこのほど建設省との連絡会議を開き、建設分野の動きについて情報交換した。中で2000年度の建設投資見通しを説明、見通し額は71兆2200億円(前年度比0・5%増)とされ、政府関連が34兆6800億円(同0・9%減)、民間が36兆5400億円(同1・8%増)で民間建築分野が全体を押し上げる予測だ。首都圏などで再開発プロジェクトが進行し始めたことで、民間建築は長期間にわたってコンスタントな動きが予測され、鋼材需要にとっても、けん引材料となると分析されている。

 建設投資の99年度見込みは70兆8600億円(同1・3%減)、内訳は政府が34兆9800億円(同0・1%増)、民間が35兆8800億円(同2・7%減)となった。

 建設着工床面積も伝えられ、3月は1623万平方メートル(前年同月比3%減)と減少した。内訳は公共は同21・6%減、民間が同1%減。用途別には商業用、鉱工業用が大店法改正や再開発プロジェクトで伸びたものの、それ以外は総じて減少した。構造別では鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造は増加したのに対し、鉄筋コンクリート造は減少となった。



大 手総合商社の99年度鉄鋼部門の売上高が19日、出そろった。金属部門で発表している三菱商事と25日発表の兼松を除く7社の売上高合計は5兆4897億5900万円で、前年度の6兆5818億4300万円に比べ1兆920億8400万円、16・6%も減少した。99年度の粗鋼生産が好調な輸出を背景に、前年度比7・7%増の9800万トンに回復したにもかかわらず、国内の鋼材単価がさらに値下がりする一方、3000万トン際まで増えた輸出も(円高で)円ベースでは12%強も減少するなど、支援材料にはならなかった。この結果、形態別でも国内は3兆5548億9400万円で前年度比13・9%減、輸出も9077億4800万円で19・2%減となるなど前年度に引続き2ケタの大幅な減少となった。

 各社別に見ると、三井物産と(金属部門の三菱商事)が1ケタの減少にとどまったが、丸紅、ニチメンの25―26%台をはじめ各社が2ケタ減少した。しかし、売上高順位は(三菱商事を除き)1位三井物産、2位住友商事、3位日商岩井と変わらなかった。

 形態別に見て増えているのはトーメンの輸出だけで、国内は三井物産、(三菱商事)を除く各社が2ケタ減少しており、中でもニチメン、丸紅は25―29%台も減少している。

 この結果、国内の売上高順位(三菱商事を除く)はトップが日商岩井、2位住友商事、3位三井物産で変わらないが、4位は伊藤忠商事が丸紅を抜いて入れ替わった。また、1―3位の差も縮小した。

 輸出は増えたトーメンを除く各社が減少し、日商岩井、ニチメン、三井物産は20%以上も減少した。

 各社別の売上高は別表の通り。





大手8商社の99年度鉄鋼部門売上高

(単位:100万円、下段は前年度比%)

        国内     輸出      輸入     外国間    合計

三井物産    796,378    236,777    242,560   123,412    1,399,127

         (-3.1)    (-20.6)    (-16.7)   (-10.7)     (-9.7)

住友商事    811,501    255,625    69,990    82,170    1,219,289

         (-11.3)    (-8.2)    (-17.1)   (-23.0)     (-11.9)

日商岩井    836,583    88,459     99,905    50,708    1,075,655

         (-18.1)    (-32.3)    (-24.8)   (-24.9)     (-20.4)

丸紅      452,771    177,482    86,557    52,746      79,556

         (-25.1)    (-21.2)    (-17.3)   (-55.3)     (-26.9)

伊藤忠商事   505,578    80,709     83,475    58,464     728,266

         (-10.7)    (-27.9)    (-17.5)   (-36.1)     (-16.4)

トーメン    85,221     35,960     31,561    6,013     158,755

         (-18.4)    (10.7)    (-20.6)   (-33.5)     (-14.5)

ニチメン    66,862     32,735     19,912   19,602     139,111

         (-29.8)    (-28.5)   (-21.2)    (-5.3)     (-25.6)

合計      3,554,894    907,747    633,960  393,115    5,489,759

         (-13.9)    (-19.2)   (-18.6)    (-28.7)     (-16.6)

三菱商事    1,010,564    181,982    374,476  308,668    1,875,691

金属部門     (-4.8)    (-19.7)    (-9.6)    (-7.5)     (-7.9)

産 業新聞社はこのほど、在阪の小棒扱い商社10社を対象に99年度の業績(小棒および周辺商品)をヒアリング調査したが、その結果、10社中5社の半数が経常赤字となったことがわかった。赤字企業が2社にとどまった前年度に比べると商社の収益環境は悪化、昨秋までの電炉値上げが大きく影響したことがうかがえる。売上高も10社中8社が「前期比減」と答えるなど、単価下落や扱い数量の減少が止まらなかった。

 今回、ヒアリング調査の対象としたのは三菱商事、三井物産、住商鉄鋼販売、阪和興業、川鉄商事、日鉄商事、日商岩井金属販売、丸紅鉄鋼建材、兼松トレーディング、伊藤忠テクノメタルの主力商社10社。それぞれ小棒を管掌する担当部長、もしくはチームリーダーにヒアリングし、前期実績との比較で回答してもらった。

 調査結果によると、売上高は10社中8社が前期に比べ「減少」と回答、このうち6社が「10%以上の減少」となった。このほか「増加」の回答が1社、「横ばい」が1社あった。

 月間扱いトン数は半数の5社が「減少」と答え、減少幅はおおむね15%前後となった。しかし、建設需要が減退した中にあっても、2社が「増加」、3社が「横ばい」と答えており、企業によって小棒事業に対する取り組みの違いも見られた。

 損益状況は10社中5社が「経常赤字」と答え、3社が「経常黒字」、2社が「収支トントン」と答えた。電炉メーカーが昨年の夏から秋口にかけて強行値上げを実施する上げ相場で、大半の先物契約が打たれ、商社の損益は苦戦。経常赤字となったところは、下期のロングポジションでもカバーするに至らなかった。一方、経常黒字とした企業はその理由に、「加工品など付加価値商品で収益を上げた」「強い販売力を背景に有利な仕入れ展開ができた」などを上げている。

 また、各商社の人員体制は年々減る傾向にあるが、今期も10社中4社で新たに人員が削減された。収益改善が進まない小棒事業に対する商社の厳しいスタンスがうかがえる。



新 日本製鉄と合同製鉄は、普通線材の物流コスト削減を目的に、関東、関西地区で昨年から相互の生産委託を進めてきたが、今後ユーザーの線材加工メーカーの了解を得ながら互いに委託数量の拡大を図る方針だ。提携内容は、新日鉄が釜石、君津両製鉄所から関西に海送している普線を合鉄の大阪製造所で生産し陸送する。一方で合鉄が関東、東北に陸送していた普線を新日鉄の両製鉄所で生産し陸送で供給する。従来、新日鉄は関西に月約4000トン、合鉄は関東に同約9000トン出荷しているが、すでにこのうち約2000トンを相互委託に切り替えている。

 普通線材は、91年のピーク時で約69万トンと96年ごろまで安価な輸入材が大量に入着し、これに引きずられる形で電炉を中心に対抗材が出回り、価格下落が続いている。99年夏に高炉、電炉各社は値上げに踏み切ったが、陥没価格の是正にとどまり各社低市況にあえいでいるのが現状だ。

 こうしたことから、新日鉄、合鉄両社は相互に生産委託し、低市況からコスト比率が高まっている物流費の圧縮を進めることでまとまった。相互に生産する普線は溶接金網向け線材が中心となるが、新日鉄では合鉄で生産可能な品種すべてに対応していく方向。

 新日鉄は釜石、君津両製鉄所で普通鉄線を月間約4万2000トンを生産、うち4000トン程度を関西に出荷している。海送での搬送のため、入着港での倉庫費用・港からユーザーまでの陸送運賃がかかっているが、これを合鉄の大阪製造所(大阪市西淀川区)からの生産・出荷にシフトすることで物流費を抑える。

 合鉄では月産4万3000トンで、大阪から関東、東北に陸送している一部を新日鉄からの生産・出荷に切り替えることで輸送距離を縮めることになる。両社では、今回の受委託生産で、トン当たり2000―3000円の物流費削減を図ることができるという。



鋼 材倶楽部が18日集計した4月末のH形鋼、厚中板など主要7品種の鋼材在庫傾向調査は、自社所有分、その他分合わせた合計で67万5600トンで、前月末に比べ2500トン、0・4%減少した。前年同月比では2・4%減少している。

 品種別に前月と比べると、厚中板が12万5000トンで4・8%増加したほか熱延薄板が1万7000トンで4・7%、冷延コイルが6万トンで3・6%増加した。

 一方、H形鋼は5万トンで3・7%、熱延コイルは23万4000トンで1・6%、冷延鋼板が2万2000トンで1・7%、亜鉛めっきは16万6700トンで3%それぞれ減少した。

 なお、自社所有分は48万5500トンで前月末に比べ1・7%増加したが、前年同月比では2・5%減少している。その他分は19万トンで前月末に比べ5・4%減少し、前年同月比でも2・2%減少している。

東 京地区の異形棒鋼はベース2万6000―6500円で強含み。メーカーの値上げを受けて流通は2万7000円などに唱えを引き上げているが、新規の引き合いが低調のため一服した状態。しかし、タイトな供給状況は当面解消しないとみられており、当面は先高含みの展開が続きそうだ。

 4月に「40万トン近く」(商社)の規模に膨らんだため、反動で今月の商いは月次で20万トン前半程度の低いペースで推移している。流通段階でカラ売り明細が滞留しているとみられるが、単価が折り合わないため手配できないようだ。

 減産効果でメーカー在庫は歯抜け状態でロールもタイトのため、当面メーカーの強気姿勢が崩れる見込みはない。

 流通は手持ち枠を消化するに従って販価を上げざるを得ないため、足もとは成約ベースで停滞感は強いが、市況の上昇圧力は持続するとみられる。