2000.05.23
東 京製鉄は22日、同日―25日売り出しの6月契約で、H形鋼、異形棒鋼など条鋼品種を1000円値上げすると発表した。各品種とも値上げは2月以来。海外市況が好調なうえ、需要期に入って国内市況も好転しつつあるため、値上げできると判断した。鋼板類は市況の伸びが鈍化しているため今回も値上げを見送ったが、来月以降早い段階での値上げを視野に入れている。今後も市況の動向を見極めながら、小刻みな値上げで着実に浸透させたい考えだ。

 値上げするのはH形鋼、異形棒鋼、山形鋼、溝形鋼、I形鋼、線材、縞H形鋼で、上げ幅は各1000円。異形棒鋼は建値を2万4000円に上げた。その他品種は建値は据え置き、建値とカイ離している実行販価を値上げする。H形鋼は物件対応価格も同様に値上げする。

 「国際的にあまりに安い価格を是正すべく」(安田英憲常務)値上げに踏み切った。「今回は1000円だが、着実に上げていきたい」(同)としており、市況の動向を見極めながら7月以降も値上げしたい意向。

 鋼板は荷動きは底堅いが、市況の上昇力が今一歩という判断。ただ、海外市況の上昇で内外価格差が広がっており、国内需要の好転による需給改善と合わせて、早晩値上げできる環境が整うとみている。

 スクラップは米国スクラップ市況の下落、国内電炉の減産などで当面は弱含みで推移するとみている。価格優先の販売で製品値上げを実現することで、収益改善を図る意向だ。

イ ンドネシアによるパイプのアンチ・ダンピング(AD)提訴で、インドネシアのAD委員会(KADI)は今月24日にジャカルタで公聴会を開くこととなった。このほど日本側に開催日程が伝えられ、日本政府では現地大使館が対応、このほか被提訴者の新日本製鉄、NKK、川崎製鉄、住友金属工業が出席する予定だ。

 これまでにネシアのパイプAD問題に関しては、昨年9月の提訴後、提訴対象を「パイプ類」とするなど不明瞭な点が多く見受けられることから、今年3月には通産省から担当官を派遣するなど詳細の掌握に当たってきた。日本から輸出される製品はパイプライン用UOE管が中心で、インドネシアでは生産されておらず、現地生産のスパイラル管とは競合しないことなどの説明を行っている。

 これに対し、ネシア側は3月に日本に調査団を派遣するなどの対応を進めていた。

川 崎製鉄は、93年10月からスタートさせた内航輸送一貫システム「ZEUS」の見直しを2000年度中に実施する。これを元に2001年度中に、端末のハードを中心とした更新を実施する予定。これにより、効率化と船型の大型化により50隻程度までに半減した支配船システムのリフレッシュを行う。

 川鉄の鋼材輸送システムは、海上と陸上で構成されており、海上部門(輸出は別)は支配船を主体にした定期運航システムで管理されている。93年10月からこれら全国的な内航海運システムを、人工衛星を使ってオンライン化し、ZEUSとして立ち上げた。全国100隻の支配船(当時)の位置、積み荷、航路をコンピューターを使って一元的に管理し、効率化した。そのために、同年1月から他高炉に先駆けて全社の統一バーコードを鋼材に添付するなどインフラの整備も行っている。翌年には、形鋼のユニット一貫輸送(Uパック)を水島―大阪間で実施するなど、一貫化による効率化が進められている。こうした対策が功を奏し、98年度の物流費は231億円、トン当たりの物流費は2376円まで低下している。

 ZEUSの見直しは、稼働後8年経過し、端末のハード設備などが老朽化しているのに加え、支配船が50隻と半減しているため。特に、支配船は、スタート時199GT級が主体だったのが499GT級に拡大。隻数は半減したものの、容量的にはあまり変わっていない。それだけ効率運用がコスト面に直接的にはね返るようになっている。

 こうした状況から今年1年、ハード設備を中心に見直しを行い、2001年度で更新を計画している。またシステム自体も、見直しを実施し、効率化をさらに高める方針。

 高炉各社の内航管理システムは、新日鉄のTORITON、NKKの新SPS、住金のSAILなど人工衛星を使った高度なシステムが導入されている。しかし、支配船の減少やEDI、ECなど新しい商形態の導入で、物流自体もより短納期で小ロット対応ができるものに移行する必要に迫られている。各社システムの見直しは、今後他社でも本格化する見通し。



日 本鉄鋼連盟は22日、3月の用途別受注統計をまとめた。それによると、普通鋼鋼材の受注合計は649万3000トンと前月比1・2%増、前年同月比17・2%増となった。内訳をみると、建設業は120万5000トンで同8・0%増、同10・7%増、自動車用は68万トンで同3%減、同5・1%増。販売業者向けは169万6000トンで、同4・8%増、同14・7%増など内需合計は457万1000トンと同2・6%増、同8・1%増。一方、輸出は、192万1000トンで、同2・0%減、同46・2%増となっている。

 この結果、99年度の受注合計は7250万7000トンと前年同月比7・7%増となった。

 品種別・用途別詳細は続報。

関 西地区の大手コイルセンターの秋津鋼材(本社=奈良県大和郡山市、北雅久社長)は今期(2001年3月期)、EDI体制を整備し、ステンレスと普通鋼の薄板の取引でeコマースを推進していく。まず、今期からステンレスで取引関係の深い日本金属とeコマースを開始し、日金の西日本の加工・デリバリー拠点としての位置付けをさらに強めていく。今年9月には川崎製鉄と入側EDIを構築する予定。また、取引先の500社のうち、大手の15社と早急に出側のEDIを構築し、受発注業務の効率化を図る。

 同社は本社工場に大型スリッター3基(1、2、4ライン)、小型スリッター4基(3、5、6、7ライン)、ミニレベラー1台を持ち、熱延薄板、冷延薄板、表面処理鋼板、カラー鋼板、さらにはステンレスコイルの一・二次加工を手掛けている。

 受注先は自動車部品関連、電力資材関連、ボイラー、雑貨プレス関連、建材など約500社で、最近の加工量は月間8000―8500トン。形態別の内訳は自販が60%、受託・賃加工が40%となっている。

 同社はかねてから、コンピューターで総務・経理、加工・在庫管理、生産計画の作成するなど、業務の効率化を図っていた。また、メーカーとは1997年から、日本金属とオンライン化した。さらに、前年の下期には社内LANを構築した。

 ただ、業界でのEDI化、電子取引が進行しており、こうした要望がさらに強まる方向にあることから、同社もさらにEDI体制を整備する。まず、今期から日本金属とのEDIをさらに徹底させる。これにより、日本金属のステンレスの西日本の加工・デリバリー基地としての役割を強化する。

 また、普通鋼の薄板で取引関係の深い川崎製鉄と、入側EDIを商社経由で構築する。これにより、メーカーからの生産・出荷・ロール計画などの情報の迅速・正確な把握ができる体制となる。

 さらに、同社は販売先が普通鋼で150社、ステンレスで350社、トータルで500社だが、このうちの大手15社と早急に出側のEDIを整備する計画。

新 日本製鉄など高炉6社は、先週末までに一定の値上げに成功し来期(7―9月)積みの中国向け鋼材輸出商談を終了したのに勢いを得て、他地域向け交渉を本格化させる。薄板3品種はトン当たり10―20ドルの値上げが浸透する見通しで、ばらつきはあるものの来期積み実勢は、関係者によると「四捨五入すればホットコイル300ドル、冷延鋼板400ドル、亜鉛鉄板500ドルを達成する(FOB、ベース)」。各社は10―12月積みで価格是正の第1次目標3・4・5作戦を完全達成する構えだ。

 高炉6社は国際相場の上昇を追い風に対中商談を有利に進めた。今期(4―6月)積み韓国向けホットコイルのネゴが暗礁に乗り上げているという懸念材料はあるが、中国商談の決着により、6社は本腰を入れ来期積みの値上げと取り組める態勢が整った。

 しかもこの時期は年2回の半年商談のうち、下期(7―12月)積みの更改期にあたり、価格是正にとって重要な節目。早くも自動車向けではトン20ドル前後のオファーが始まろうとしており、6月中旬にかけ各需要家との交渉をまとめていく。

 すでに今期積みの段階でとくにアフリカや中東など遠隔地では、欧州からの輸入が大幅に抑制されていることもあって、日本からの輸出価格がホットコイルで300ドルを超えたケースも珍しくない。今後の課題は散見される安値の底上げともいえる。

 日本各社はホットコイルを確実に上げて冷延鋼板、続いて亜鉛めっき鋼板につなげる―という戦略。スラブがFOB240―250ドルをつけようとしているなかで功を奏していこう。

 欧州では5月までにホットコイル340ドル、冷延鋼板420ドル、亜鉛めっき鋼板もようやく500ドルを浸透させ、上昇力には衰える気配がない。

 半面、アジア地区ユーザーには昨年来の相次ぐ値上げに抵抗が強まる傾向がうかがえるようになり、日本各社にとっても腹を据えてのハードネゴとなろう。



中 国での新日本製鉄とNKKの各合弁ブリキメーカーに下期(7―12月)積み原板ローモのIL(輸入許可証)が6月中に届くものと期待されている。従来のような原板枯渇・操業中断の危機はなんとしても回避しようと関係当局への理解を得るため全力を挙げる。

 今年上期(1―6月)積みのローモはIL獲得が大幅に遅れて3月下旬となり、2社とも事実上の操業中断を余儀なくされた。

 上期積みの獲得量は、新日鉄系列の広州太平洋馬口鉄公司(広東省、年産能力12万トン)が5万トン、うち2万トンは過去の再輸出用として差し引かれ実質3万トン、NKK系列の福建中日達金属公司(福建省、15万トン)は2万トンだった。

 能力に比べ半分以下のローモ枠を2社とも「大事に使い」(関係者)、6月いっぱいの原板を在庫しているが、7月になれば枯渇してしまう。

 このため下期分の早期発給、可能な限りの増量を中央政府筋や地元省・市に要請しているところで、当局も上期分で見せたような”遅刻“はしないものと観測されている。

東 京地区の中板(3・2ミリ厚、ベースサイズ)市況は、3万9000円どころが中心で横ばい。

 扱い筋では実需の手ごたえがなく、頭打ち感が広がっている。価格的には一時仲間ベース定尺で4万円が定着したとされるものの、実際にはそこまで届かず足踏み状態。需給はバランスが取れているが、在庫補充の動きが見られない。コイルセンター在庫は調整段階から年度末を経て微増傾向となっており、東日本地区でも在庫率120%前後とやや緩和している。

 流通は市況に対して強気にはなれないにしても、メーカーの値上げをコイル価格で転嫁してきた経緯から現状維持の方針。コイルセンターでは採算ベースに乗せるにはあと一段階価格を上げる必要があるとの認識で、「良い要素はない」が「正念場」との姿勢。

 目先、上昇期待は小さく同値圏内で推移。