2000.05.31
経 済協力開発機構(OECD)がまとめた2000年の鉄鋼市場予測によると、粗鋼生産量は8億3000万トンに達するとされ、全世界の鉄鋼需要量(最終製品ベース)は7億2500万トン(前年比5・8%増)と見通された。先週行われた第56回OECD鉄鋼委員会で報告され、価格面ではアジア経済危機前の水準以下(米国)とする見方があるものの世界の鉄鋼市場は回復傾向にあり、貿易パターンも危機前の状況に戻りつつあることを確認した。

 鉄鋼市場の動向については、OECD地域では2000年の需要量は同3・9%増加するとし、粗鋼生産量を4億8300万トン(同4・7%増)と試算。輸入は依然として高水準を保つとし、99年レベルと比べ2・2%の減少にとどまると予想している。輸出については同1・7%の増加とした。

 各国からのカントリーリポートによると、米国については、2000年のGDP(国内総生産)の伸びを4・5%と想定。鉄鋼市場は回復の兆しが見られるものの、輸入量は引き続きハイレベルにあり、雇用面でも目に見える改善はないと分析している。足もとの状況に関しては、今年の第1四半期(1―3月)の生産量は3500万トン(同15・2%増)となったとし、国別の輸入状況は日本、韓国からの輸入量は減少したものの、ウクライナ、台湾からの輸入が急増したことで減少分を相殺したと報告された。

 欧州連合(EU)は、2000年のGDPを3・4%の成長とした。99年の輸入量は1900万トン(同0・7%減)となり、主に鋼板類の輸入が減少、同21・3%減と20%以上の落ちを記録。逆に条鋼類同26%増、半製品同24%増、鋼管類同44%増と伸展した。輸出については約2000万トン(同10%減)と前年を下回った。

日 立金属、大同特殊鋼など特殊鋼専業メーカー6社の2000年3月期決算が出そろった。連結ベースでは三菱製鋼の14・1%増を筆頭に5社が増収、経常段階でも日立、愛知製鋼が700%強、200%強の伸びを示したほか、大同特、山陽特殊製鋼が黒字に転換。赤字の三菱製鋼、日本高周波鋼業の2社も赤字幅は縮小した。個別ベースでも4社が増収、大同特、山特は経常黒字となった。合理化効果、品種構成の見直しや、98年度と比べ生産量が回復したことなどが総じて増収と収益改善につながった。次期業績予想も連結では全6社が増収とし、三菱、日本高周波は黒字化を見込む。個別では5社が増収を予想している。

 各社の連結決算をみると、売上高は日立が高級金属製品1724億9300万円(前期比14%増)、電子・情報部品797億1400万円(同10%増)、自動車用高級鋳物部品908億6400万円(同5%増)、設備・建築部材1097億2300万円(同4%減)、サービス他752億1900万円(同5%増)。高級金属製品の増加はIT関連や自動車関連の輸出増が寄与、金型材料は微減。

 大同特は特殊鋼鋼材1905億9400万円(同5・6%増)、エレクトロニクス材料367億9100万円(同17・9%増)、自動車・産業機械部品775億6200万円(同4・7%増)、エンジニアリング261億8000万円(同17・2%減)、新素材69億5800万円(同1・3%減)、流通サービス131億4800万円(同5・9%減)。

 愛知は鋼材1006億8800万円(同2・7%増)、鍛造品438億6700万円(同横ばい)、電子・磁性部品18億5100万円(同6・4%増)、その他74億600万円(同17・6%増)。

 三菱は特殊鋼鋼材267億2200万円(同7%増)、ばね293億8700万円(同4・2%増)、素形材159億8000万円(同22・2%減)、機器装置109億2700万円(同196・3%増)、その他72億6800万円。

 日本高周波は特殊鋼246億7100万円(同1・8%減)、金型・工具26億2800万円(同4・8%減)、鋳鉄41億4200万円(同3・6%減)の上期中の自動車、機械の減退が減少要因。

 収益状況をみると、営業利益で三菱が黒字化。経常段階では各社とも増益または収益改善を図った。当期段階では日立が磁気ヘッドの構造改革による182億200万円や退職年金過去勤務費用償却58億5300万円など合計247億5500万円を特別損失として計上した。三菱は特殊鋼以外は黒字化させた。当期段階では三菱製鋼室蘭特殊鋼への機械装置売却、電炉廃止などで特損が228億4900万円を計上、税効果会計で126億8200万円の法人税等調整額を計上。日本高周波も退職給与引当金計上方法変更などで特損を計上した。

主 要電炉各社の2000年3月期決算がほぼ出そろったが、販売数量ベースでは回復基調に入ってきたものの価格は下げ止まりにまで至らず、鉄スクラップ価格も夏場以降、比較的高値で推移したことから赤字継続を余儀なくされた。22期連続して黒字を計上してきた大阪製鉄が初の赤字に転落、経常ベースでの黒字企業は王子製鉄、トピー工業、豊平製鋼、大和工業の4社にとどまった。今期は合理化効果に加え、製品価格の修正がもう一段進むとの見方から、下期からの黒字への転換を見込む企業が多い。
関 東の小棒メーカーは、唱えのベース2万8000円の浸透に改めて取り組む。減産効果でメーカー在庫は一部歯抜け状態で、ロールでも即納対応は窮屈になっている。こうした状況は需要家側にも浸透し始めており、市況は2万7000円が通り始めている。「7―9月も定修以外に生産を絞れば3万円が見えてきた」(朝日工業)という強気の見方も出始めており、各メーカーは減産を継続することで着実に値上げを浸透させる考えだ。

 底値感から4月はメーカーの受注量が40万トン弱に膨らんだ反動で、5月は新規の引き合いが一服。メーカーは2万8000円を唱えているが、市況は2万6500円程度で伸び悩んでいるため、浸透は遅れていた。

 それでも5月は各メーカーとも生産量見合いの受注量を確保しているとみられ、6月のロールはほぼ埋まってきているという。メーカー各社は夏季減産となる7―9月は「4―6月比10%減産」(城南製鋼所)などと減産強化で採算価格実現を優先させる考えで、当面は供給のタイト感が持続しそうだ。

 こうしたムードが市場に広がるにつれ、メーカーは値上げの浸透に手ごたえを感じ始めてきた。流通側は手持ちの枠を消化しつつあるため、値上げ分を買い入れ、再販売価格に転嫁せざるを得ない状況。当面メーカーの値上げ意欲は衰えないという見方が一般化しつつあり、市況は緩やかに上昇するとみられる。

中 山製鋼(本社=大阪市、神崎昌久社長)は、8月から本格営業生産を開始する予定のニュープレート(NP)改造ミルが順調に立ち上がってきていることもあり、今年度の生産数量として上半期で80万トン、下半期は90万トンの合計170万トンを見込んでいる。

 同社は線材、中板、厚板、縞板、帯鋼などを生産、前年度は合計で154万5700トンを販売した。ピークには年間220万トンを生産したこともあるが、需要の減少に加えてNP改造ミルの新設に着手、これに合わせ形鋼工場を1997年度末に閉鎖したのをはじめ、今年5月には清水製鋼所の中板生産を休止、さらに6月末には本社・船町工場のフープも生産休止を予定するなど設備の休止を行ったため、生産数量が大幅に減少している。

 しかし、月間7万トンの能力を持つNP改造ミルは2月上旬からのホットランも順調に進み、品質・サイズテストを経て4月からは製品として売り出しを開始した。4月は2万トン、5月は3万5000トンと順次数量を増加させることにしており、7―9月平均では6万5000トンを見込んでいる。この結果、線材など他の品種も加えたトータルでの生産数量としては上半期で80万トン、下半期では10万トン多い90万トンを予定、トータルで前年度より10%程度多い170万トンを計画しているもの。

林 田特殊鋼材(本社=大阪市東住吉区今林4―12―14、林田耕平社長)はこのほど、自社開発の特殊な丸鋸切断機を本社工場に導入した。切断のための鋸刃が10枚取り付けられており、一度に10個の切断品が切断可能なことが特徴。特殊鋼問屋として、こうしたタイプの切断機の導入は関西地区では恐らく初めて。

 同社は、軸受鋼を中心として構造用鋼などの特殊鋼を全般的に取り扱う。切断・加工・半製品の取り扱いに力を入れ、これらの販売比率が高く、売り上げの約半分は加工品・半製品が占める。切断は全社で約30台の切断機を保有、切断個数は月間約23万個と関西地区ではトップクラス。

 今回導入した自社開発の切断機は、自動車用部品として自動車の軽量化と騒音対策のために採用されている新材料の切断受注に対応したもの。特殊鋼に樹脂をクラッドした丸棒で、現在は月間5万―6万個切断しているが、最終的には月間約15万個の受注量が見込まれている。

 同社は、軸受業界、金属製品・機械加工業、産業機械業界などへ販売している。自動車向け新材料の受注増により、今年中には切断量が月間30万個を超える見通し。

神 鋼シャーレックス(本社=尼崎市西高洲町、前田憲幸社長)は今年度(00年度)から02年度の3カ年の中期計画を策定、スタートさせた。中期計画の骨子は3カ年ともに売上高が年間22億円の横ばいとし、損益は今年度がイーブンだが、01年度から黒字への転換・定着を図る。具体的には工場設備のNC化による生産効率の向上、事務・管理では今年度から「溶断管理システム」を稼働させ、コスト低減を推進する。人員も前年度末の43人から、計画最終年度には15%減の36人体制とし、切板の加工量が月間1500トンになっても収益が出せる体制を構築する。

 同社は神戸製鋼所の直系シャーで、本社工場の加工設備はNCガス溶断機、NC酸素プラズマ、NC付きレーザー、フレームプレーナー、アイトレーサーなど。切板は月間2200トン前後、このうち、40%が橋梁向け、残りの60%が鉄骨向け。

 99年度(00年3月期)は売上高が年間22億円と前年度比26%減、損益は経常段階で赤字。これは切板価格が大幅に下落したことに加え、加工内容は小物が増加し、コストアップとなったことによるもの。

 同社ではこうした厳しい環境は続き、先行きの需要も大きく回復しない、との考えをベースに中期計画を策定した。基本的には現状、切板で月間1700―1800トンが損益分岐点だが、計画の最終年度には月間1500トンでも収益が出せる体制を構築する。

 まず、工場の加工設備は今年5月、NCガス溶断設備を2台増設、生産効率の向上と省力化を図った。また、事務・管理は今年度から、溶断管理システムを稼働、受注・在庫・材料の取り合わせ・切板工程・検収・出荷、およびメーカーからの入荷などがコンピュータで一括管理できるようになった。これにより、作業の効率化と合理化への寄与が期待されている。

 また、人員は自然退職、不補充で対応し、前年度末の43人から、計画最終年度には15%減の36人体制とする。この他、物流経費やガスなどの資材コストの軽減を推進する。切板の数量については最低でも月間2000トンを確保していく。

 これらの作業により、業績も売上高が3カ年ともに年間22億円の横ばいだが、損益は初年度がイーブン、01年度が黒字転換、02年度には黒字幅の拡大を目指していく。



大 阪地区の等辺山形鋼はベース2万9000―3万円どころでジリ高。

 東京製鉄が6月積みで1000円値上げし、在阪メーカーの大阪製鉄、エヌケーケー条鋼もこれに追随。地区の扱い流通筋は4月値上げの転嫁を進めていたが、再度、売り腰を引き締め直し、置き場3万円の実現を目指す構え。

 大阪鉄鋼流通協会によると、市中動向(小山・中山)は4月末段階で入庫が前月比1・6%減、出庫が同比6%減と推移。在庫は同比2・9%増と2カ月ぶりに増加に転じた。メーカーの供給構造の変化による一時期のタイト感はやわらいだものの、一部ではいぜんとしてロール待ちのサイズがあるなど品ぞろえに支障をきたしている状態。

 建材主力のH形がここにきて値戻しムードとなっており、これに連動する形で市況は当面、ジリ高傾向。

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