2000.07.03
住 友金属工業は、ステンレス事業で販価是正や流通効率化などを進め、2000年度第3・四半期までに国内、輸出両部門とも黒字転換させ、今年度で通期黒字を目指す。すでに国内部門については収益均衡レベルにまで回復させており、今後、積み残し分の販価是正と、下落しつつある輸出価格をニッケル系冷延薄板で1800ドル(C&Fベース)を下限に歯止めをかけ、収益アップにつなげる。さらに鹿島製鉄所での物流合理化や、日本ステンレス商事を関東、関西ステンレスを関西の拠点とする同社系列流通の地域拠点体制を1―2年以内に固め、効率運営を図る。来年4月から新日本製鉄から母材ホットコイルの供給を受ける合理化策の進行をにらんで、さらに強固な体制づくりを進め、収益力を強める。

 収益力強化として短期的には、国内、輸出での販価是正に注力する。輸出価格については、ここへきて中国のアンチ・ダンピング提訴などから東南アジアでの価格がトン当たり2000ドルから下降し始めたため、今後、1800ドルを最低価格として価格低下を抑える。ホットコイル価格も7月積みから韓国の浦項綜合製鉄が値下げするが、同社ではトン当たり1600ドルを維持し、収益低下を抑制する。現在、原料ニッケルも3・7ドルレベルに下がったものの、ひところの4・7ドル水準への高騰からコストプッシュを強めており、国内価格についても4月からのニッケル系2万円値上げの完全浸透を進める。

 一方、中長期的には、新日鉄との提携を念頭に、物流や流通面での体制を整備、体質を強化する。流通部門では系列コイルセンターについて関東エリアの拠点を日本ステンレス商事、関西エリアの拠点を関西ステンレスと位置づけ、地域拠点としての機能分担を明確にする。現在、日本ステンレス商事の関西地域の商権を関西ステンレスに移管するなど各地域での重複機能を拠点ごとに住み分けることで流通部門をより効率化させる。1年から2年をかけて地域拠点体制を完全施行する。

 製造部門については新日鉄製母材による製品のサンプルトライを早期に開始、8月までには着手する。月間約4万2000トンの生産量のうち、70―80%を新日鉄からの母材供給分とし、残りの20―30%分については住友金属直江津の電気炉や和歌山製鉄所での高炉溶銑を活用して補完する。特にステンレスシームレスや条鋼向けのブルームについては補完体制で対応していく方針だ。研究開発は従来通りの対応を図り、新鋼種開発、VA提案など積極展開する。

川 崎製鉄の江本寛治社長はこのほど、「鉄鋼業界そのものが大きく変ぼうしている。川鉄としてそれにどう対応すべきか、知恵を出し合い(最終年度の2001年を待たず)中期計画の仕切り直しをしたい」として第2次中計を2カ年で打ち切り、改めて中期経営計画を組み直す考えを示した。

 経営計画の手直しについては、住友金属工業の下妻博新社長も同社が昨年9月に策定した「経営改革プラン」を見直し、「その後の情勢変化を踏まえて、2000年度―2001年度の中期計画を作る」ことを明らかにしており、いずれも経営環境が短期間に大きく変わる昨今の情勢変化に対処した経営戦略といえる。川鉄は昨年5月、最終年度目標を連結経常利益650億円以上、有利子負債4300億円程度の削減等を内容とする第2次中期経営計画(99―2001年度)を策定。

 江本社長によると、この第2次中計は利益目標以外の資産および有利子負債削減、グループ各社の製品・半製品、原料の在庫削減などは2000年度中に大方の目標を前倒し達成できるという。このため同社長は「数値目標を変えるためでなく、具体的に川鉄として、もっとやれることはないのか、計画の仕切り直しをするいいタイミング」と判断。このトップの意向を受け、近く同社役員会で方針が正式決定されることになる見通し。99年度からの第2次中計の主要課題と具体的施策は、(1)研究開発から製品開発に軸を移すこと、海外合弁事業および海外企業との連携強化による「販売力の強化」(2)総額800億円のコスト削減による「損益分岐点の引き下げ」(3)鉄鋼部門の投融資規模を年平均240億円に抑制すること、製品・半製品、原料などの在庫削減などによる「資産効率の削減」など。

 これら施策により、第2次中計では最終年度で連結経常利益650億円、有利子負債削減額4300億円(残高1兆3000億円程度)の達成を目標としている。これに対し初年度実績は連結経常利益が260億円、同有利子負債削減額が2542億円で、経常利益は2000年度で650億円を達成することは難しそう。しかし有利子負債削減目標は初年度で60%近くを達成していて、「2年間で前倒し達成できる」(江本社長)メドがついている。

 一方、鉄鋼業を取り巻く環境は同社が第2次中計を策定した99年春以降、鉄鋼業の経営環境は大きく変ぼうした。市場環境は、アジア経済が本格的な回復軌道に乗ってきたことに加え、国内市場にも鉄鋼需要の底離れ傾向が強まってきたこと、その中で、高炉の主力製品である薄板のヒモ付き分野での販売競争が熾烈化、増産効果を相殺し、収益の足を引っ張る結果をもたらしている。さらに、新日鉄の油井管事業からの撤退、ステンレス事業の提携に見られるメーカー間の事業提携の動きも急だ。川鉄自身も今年4月、NKKとの製鉄所間で物流、資材、補修3分野での提携、将来的には統合・合併までを視野に入れた“付き合い”がより深まる可能性もある。経営計画の仕切り直しはこうした諸般の情勢変化を踏まえての社内協議となろう。

通 産省が6月30日に発表した2000年度第2・四半期(7―9月)鋼材需要見通しによると、粗鋼需要量(出荷等相当)は2650万トン(前期比21万トン、0・8%減、前年同期比233万トン、9・6%増)と策定された。鋼材需要は2427万トン(同42万トン、1・8%増、同93万トン、4%増)と増加を見込んでおり、輸出に加え、内需でも自動車、電気機械の製造業やマンションなど建設分野とも鋼材需要は堅調と予測している。ただ、粗鋼ベースでは5月末に在庫が積み上がったことからやや高めに推移、第2・四半期での圧縮も必要とし、電炉の夏期減産もあって前期比では微減見通しとした。見通し通り推移すると4―6月期の実績見込み2671万トンと合わせ、00年暦年では累計量の1億トン乗せが確実となった。

 第2・四半期の見通しは、けん引材料がこれまでの公共事業に替わって、民間需要に移行してきた点が特徴。東南アジアなど輸出のほか、内需でもプラスを予想、前年同期で見ると需要基調に力強さを増している。粗鋼生産は5期連続の前年同期比増となる。

 今回の需要見通しについて通産省では需要は堅調で、「在庫圧力が高まらなければ、全体的にいい方向に向かう」(奥田真弥鉄鋼課長)と分析、このために「あえて来期も実需の出方を見極めつつ、慎重な対応が必要」と実需見合いの生産対応の重要性を強調している。

 鋼材需要2427万トンのうち、国内は1755万トン(同30万トン、1・8%増、同41万トン、2・4%増)。内訳は、普通鋼鋼材が2044万トン(同35万トン、1・7%増、同70万トン、3・5%増)で、このうち国内は1482万トン(同28万トン、1・9%増、同15万トン、1%増)、輸出は562万トン(同1・3%増、同10・8%増)。

 特殊鋼鋼材は383万トン(同7万トン、2%増、同23万トン、6・3%増)で、このうち国内は273万トン (同2万トン、0・9%増、同26万トン、10・4%増)。

 在庫(普通鋼メーカー・問屋在庫)は6月末見込みが710万トン、在庫率1・06カ月で、国内が554万トン、輸出が155万トン。3月末の1・04カ月より増えており、これらを9月末までに輸出を中心に圧縮していくこととなる。

 主要産業の鋼材消費予測は、土木が同4・5%増、同1%増、建築が同2・1%増、同3・7%増で建設合計が同2・8%増、同2・8%増。建築ではマンション建設の増加などを見込んでいる。製造業は、造船が同3・6%増、同12・6%減、自動車が同横ばい、同0・4%増、産業機械が同3・3%増、同4・1%増、電気機械が同1%減、同1・7%増などで、製造業合計は同1・1%増、同0・7%減。造船以外は総じて増加の見通しだ。

通 産省は2000年度第2四半期(7―9月)の特殊鋼需要見通し(熱間圧延ベース、月平均)を国内、輸出合わせて合計127万7400トン(前期比2%増、前年同期比6・3%増)と策定した。国内需要は主要需要分野の自動車生産を今期完成車ベース246万台(前期比0・8%増)、KDセット136万台(同0・7%増)で合計382万台(同0・8%増)とプラスを想定、5期連続の前期比増となる。一方の輸出も前期では2期連続のプラスとされ、合計では6期連続の前期比増、5期連続の前年同期比増を予測した。

 第2四半期見通しの内訳は、国内が91万1300トン(同0・9%増、同10・4%増)、輸出が36万6100トン(同4・7%増、同2・7%減)で、97年度第4四半期(98年1―3月)の1354万トン以来の高水準となる。

 鋼種別にみると、国内向けは総じて前年同期を上回る。工具鋼が前年同期比8%増、機械構造用炭素鋼が同8・9%増、構造用合金鋼が同9・6%増、ばね鋼が同0・1%減、軸受鋼が同12・4%増、ステンレスは条鋼が同5・2%増、鋼板が28・9%増で合計は同22・9%増。その他鋼が同7・8%増、高抗張力鋼も同5・2%増。ばね鋼以外はプラスで、減少のばね鋼も0・1%減の微減にとどまる。

 輸出向けは、ステンレスの減少が前年同期比で目立つが、それ以外はおおむねプラスの見通し。工具鋼が同20・1%増、機械構造用炭素鋼が同23・3%減、構造用合金鋼が同5・7%増、ばね鋼が同13・8%増、軸受鋼が同8%増、ステンレスは条鋼が同26・1%増、鋼板が同11・9%減で合計は同3・5%減。その他鋼は同8・5%増、高抗張力鋼が同3・4%減。

フ ジキン(本社=名古屋市南区弥次ヱ町3―51、十倉良太社長)は、経済環境の激変にも耐えうる強靭な企業体質構築とグローバルな視野に立った企業展開を進めるため、(1)同社を中核とするフジキングループの顧問に岡部貿易(東京都八王子市)の小笠由兼会長を迎え入れる一方、(2)今秋にも戦略室を新設する。

 同社は、ステンレスを取り巻く環境が厳しく、かつIT革命に代表されるように、その変化が速いことから、抜本的な体質強化を進めると同時に、グローバルな視野に立った中長期的な企業展開、グループ展開を強力に推し進める方針。その一環として昨年秋、営業組織を全面的に見直し、建築や厚板・プラントなど需要分野別に専門的なチームに再編成し、今年2月にはグループを含めた体質強化策としてステンレス条鋼・鋼管類を扱う大手流通企業数社と組み、在庫・素材供給面を中心に相互協力する体制を敷いた。加えてステンレスコイルセンター(同、同社長)との3年以内の合併をメドに、その準備としてステンレスコイルセンターの営業部門(5人)を7月1日からフジキン本社事務所に移転させるなど、両社の仕入れ・販売面での一本化を順次進めている。一方、産業界のIT化に対応するための情報インフラ整備に関してはLANを昨年秋に構築し、ホームページも今春立ち上げ、デジタル社会への対応に向け、着実な展開を図っている。

 今回、小笠氏をグループ顧問に迎えたのは、同氏の通産省や銀行、貿易実務を含めた豊富な経験を生かし、国際的な視野に立ったアドバイスを受けることが狙い。また新設する戦略室は十倉社長をはじめ数人で構成し、中小企業の原点となる人と人との信頼関係をベースに置き、かつ中長期的な視点からフジキン、および同グループをいかなる環境下においても価値ある企業、企業グループとして存続させるため、その戦略を構築していく。グループを含む個々の企業の体質強化だけでなく、メーカーから流通・加工を経てユーザーに至る流れをトータルな観点から見た場合のミニマムコストを追及し、加えて国際化時代に伴うボーダレス社会の進行に対応した強靭な企業体質づくりを目指す。一連の施策によりグループの中核に位置付けられる同社は、数年以内に自己資本比率30%、また長短合わせた借入金をゼロにする計画だ。

 なお同社は、1962年設立、資本金3億1640万円。ステンレス鋼板を中心に棒鋼、形鋼などを販売する一方、加工(レーザー・プラズマ切断、コイル精製、板金、研磨、表面処理など)、製品メーカー(クリーンルーム、住宅機器、建築金物、プラント、熱処理治工具、圧力容器、パイプほか)など22社でフジキングループを組織する。売上高は178億7500万円(今年1月期)。従業員数83人。

プ レスコラムメーカー大手のセイケイ(本社=栃木県佐野市、浦孝雄社長)は今年度の生産目標を、当初の4万3000トンから5万トンに上方修正した。足もとではフル操業の状態が続いており、IT関連設備投資など受注が好調なため、9月前半まで生産予定が埋まっている。繁忙化を背景に受注単価も上昇しており、小口緊急対応の建築構造用プレス成形角形鋼管(BCP)で7万8000円程度と、3月時点の底から8000円程度上がっているケースもあるという。

 99年度の生産量は4万5400トンと前年比9・7%増加した。99年度は6月の大店立地法施行前の駆け込み発注で好調だったが、反動減で今年度前半は需要が落ち込むと見ていた。

 ところが、大店法関係が一段落すると、IT関連工場にスムーズに移行し、現状では月間4500トンペースのフル操業の状態。納期は通常30日程度だが、好調な受注で現状は90日程度まで伸びている。単価も徐々に上昇しており、厚板値上げ分をほぼ転嫁できているという。

 売上高は99年度が35億7500万円と前年度比7・8%減少した。今年度は当初35億円を見込んでいたが、増産で40億円以上に上方修正している。



川 鉄商事の成木宏雄社長と塩川満会長は6月30日、都内のホテルで新任会見を行い、そのなかで成木社長は「9カ年の経営計画『アクティブ50』の5年目を迎え、経営方針や課題など具体的に実績があがっている。企業活動は『継続は力なり』でないと実力がつかないため、これを続けて大きな成果に結びつけていきたい」と抱負を述べた。

 塩川会長は「96年度から『アクティブ50』に走りだし、昨年の旧・野崎産業との合併、新会計基準などをクリアして、2000年を契機に成木社長にバトンタッチした。私自身は『アナログ人間』だが、これからのIT化の時代をにらんで、川商の展開と対応には若い力が必要。成木社長はシャープで対応力、実行力がある」とエールを送った。

 『アクティブ50』のなかで、各事業分野ごとの課題の整理は終わっている。このうち、鉄鋼部門の営業では川崎製鉄と戦略を共有化しつつ、川鉄の資産を有効活用。東アジアなどで川商の競争力を発揮する。

 「サプライヤー(供給側)とカスタマー(顧客)の間のロジスティックス(物流)や時間を見直し、双方にメリットのある提案をしていく。仲介だけではなく、提案できる商社になると同時に、個々の事業分野で収益力をつける。商流にあぐらをかいた『眠り口銭』は許されない。汗をかかなければ意味がない」(成木社長)と強調した。

 また、IT化については「ITはテクノロジーや手段としての効果は大きい。7月1日付で『IT推進部』を新設し、何が必要かを勉強し、ITの角度から仕事をどう変えられるかの両面を考えていく。IT化による流通の『中抜き現象』が指摘されているが、事務的な処理の省人化の一方で、中身の見直し機能が要求されるため、この2つをセットして『中抜き現象』に対応していく」とした。

 eコマースでメタルサイト側に参加することについては、「メーカー商社として、川鉄というサプライヤーのサイドに立ったBtoB(企業間)の取引の形でITを取り入れるため、メタルサイト側と組むことにした」と説明。

 一方、川鉄とNKKの業務提携の影響について成木社長は「現状では何とも言えない。今度の成り行きを見守りたい」とし、塩川会長も「ある方向性が出れば対応できる準備はできている。両社の提携が良い方向に進むよう願っている」とコメントするにとどめた。



東 京地区のH形鋼は200×100で3万1500―3万2000円と強含み。新日本製鉄の値上げ表明を受けて流通は値上げ攻勢を強めている。大幅な減産で流通の入庫が2ケタ減少しており、今後も供給はタイトに推移する見込みで、需要家にも急速に先高観が浸透している。

 6月は入庫が各社で10%以上減少しており、出庫量はほぼ5月並みだが、在庫は減少に転じた。高炉を中心に6、7月も同様の減産を実施するため、今後、在庫は急速に減少するとみられている。

 減産と組み合わせたメーカーの値上げ姿勢が明確になったことで需要家にも先高観が浸透し、流通に先物の見積もり依頼が入り出しているという。事後調整の廃止で流通は採算確保の必要に迫られており、早い段階で足もとの赤字を解消し、値上げ分を市況に転嫁させたい考えで、今後市況の上昇圧力が強まる見通しだ。