2000.07.05
阪 和興業(北修爾社長)は、99年度末の段階で748億円あった連結での累積損失を2002年度末までに一掃、復配を視野に入れる。土地の含み益が約350億円、約200億円の資本準備金、2000年度から2002年度までの3カ年の「営業・収益計画」での利益の累計が約200億円となることで、累損一掃にメドをつける。2000年度末には320億円の外債圧縮にも取り組み、一連の財テク処理はほぼ終了する。

 99年度の連結業績は売上高6297億円、営業利益87億円、経常利益34億円、最終利益6億円を計上。しかし、依然として748億円の累損があることから、資本勘定1018億円(資本金826億円、資本準備金192億円)から累損を差し引いた資本合計は270億円となっていた。

 阪和興業単体の業績は売上高6205億円、営業利益74億円、経常利益24億円、最終利益3億円。資本金は826億円、資本準備金192億円、剰余金5億円、資本合計1024億円だった。

 計画では、土地の含み益が約350億円(本体約100億円、子会社約250億円)、資本準備金が192億円あることに加え、2000年度を起点として2002年度を最終年度とする阪和興業単体の3カ年の「営業・収益計画」で着実に利益を計上することで、累損一掃にメドをつける。「営業・収益計画」での利益は、営業利益が3カ年合計で264億円、経常利益が合計182億円、当期利益が合計177億円となっている。

 2001年3月末には320億円の外債が満期となるが、当初計画に基づいたフローを確保しており、資金面でのメドはついている。

 これにより、営業外費用も年間35億円改善される。ブラジル国債は190億円のうち、99年度末に100億円を売却、残りは90億円。一連の外債圧縮により、過去の財テク処理の残りはこの90億円のみとなる。新会計制度に伴う年金給付会計で発生する5億円は、2000年9月の中間期で一括償却する。

 すでに97年と98年の2度にわたって、任意有償での資本減少を実施。以前は約4億株だった発行済み株式数が1回目で約1億株、2回目で約8000万株を減少し、現状ではほぼ半減。配当面でのネックだった自己株を半減させ、連結累損の一掃にもメドをつけて、3カ年計画に基づいた利益を確保し復配を視野に入れる。

新 日本製鉄は、今治造船西条工場の新ドック対応として、30メートルサイズの超長尺サイズの造船厚板を生産する方針を固めた。これまでの長尺サイズ22メートルをさらに8メートル上回ることになり、ハンドリングなど問題はあるが、需要家の要請とコスト対応から踏み込む。「具体的な申し込みがあれば、大分製鉄所で生産したい」としている。早ければ今年後半にも、営業生産する。

 30メートルサイズの厚板生産は、川崎製鉄水島製鉄所が生産できると言われており、高炉では2社目となる。30メートルサイズで生産できると、造船所の板の取り合いの自由度が増加する。同時にVLCCなどの超大型船では、溶接延長の短縮化に貢献する。当面は今治造船だけしか採用できないが、将来は大手7造船でも採用するところが出てくるとみられている。

 造船向けの厚板は、現在クオーター50万トン強の水準。各造船ともに先物で申し込みを行っており、長さサイズは大半が10メートルから最大で22メートル程度。

 こうした中で、今年3月に稼働を開始した今治造船西条工場では、新ドック対応として長さ30メートルの超長尺サイズの厚板の導入を決め、設備面でもクレーンやヤード能力を大きめに設定している。これにより、建造コストの削減を進めることになっている。現在建造中の船は中型船であるため、次のVLCC建造から30メートルサイズの購入を行う見通し。川鉄、新日鉄などに対しては、30メートルサイズとの申し込みを打診していると言われる。

 川鉄は、現在の設備で30メートルサイズの厚板生産は可能と言われており、申し込みがあれば対応する方針。これに続き、新日鉄も大分製鉄所で生産を行う見通し。大分製鉄所は、厚板ミルを造船主体の設備として位置付けており、基本的には造船向けは大分1カ所に集約している。造船所の高張力化要望やハイアレスト鋼などの高機能材の開発にも、積極的に対応している。長尺化の要望は、これまで具体的になく22メートル以上のものは生産していなかった。

 長尺化は技術的には、現状で十分対応できる。しかしスラブ単重の関係で30メートルになれば、厚さ方向に制約があると指摘されている。加熱炉の長さにより、スラブ単重が最大で24トン前後(ホットコイル用は最大45トン)までであるため、厚ものの長尺化は制約を受けるようだ。



薮 本鉄鋼(本社=大阪市福島区福島7―15―26大阪YMビル5階、東驍社長)はこのほど、同じ川鉄系列で仮設機材を製造・販売する川鉄機材工業(本社=東京都台東区蔵前2―17―4、千葉省二社長)と重複する兵庫・名古屋両地区の機材センターを相互集約し、共同利用を開始した。集約は、仮設機材リース部門の運営効率の向上を図るのが狙い。

 機材センターの共同利用は、両社が同地区にそれぞれ所有していたセンターを地区1カ所に集約して、資金負担を軽減。ヤード集約により、保有機材を相互に融通しあうことで合理化を図るもの。

 川鉄機材の神戸機材センター(兵庫県三木市)は薮本の西宮機材センター(兵庫県西宮市)に集約され、一方、薮本の名古屋機材センター(愛知県丹羽郡扶桑町)は川鉄機材の名古屋機材センター(愛知県犬山市)にそれぞれ集約。すでに先月までに、この両社4拠点を2拠点に集約する作業を終え、共同利用を開始している。

 また、今回は、営業面での協力までは踏み込んでいないが、共同利用を行うことでこれまでの競争関係を解消し、今後、営業面で協調関係を築いていきたい考え。

 薮本は枠組足場、単管足場部材などを中心に建設用仮設機材のリース・販売を行っており、リース部門単体の年商は約42億円規模。

 また、川鉄機材は枠組足場や軽量足場板、鋼製型枠などの仮設機材製品を製造、販売している。



N KKは4日、世界で初めて下水汚泥から高純度の黄リン回収に成功した、と発表した。この技術は日本化学工業と共同で開発したもので、下水汚泥焼却灰をスラグ化するとともに、焼却灰中に含まれるリンを工業原料である黄リンに再生する資源化プロセスを開発したもの。2―3年内にパイロットプラントを建設し、事業化を目指す、と言う。

 リン回収プロセスは、電気抵抗式灰溶融炉に下水汚泥焼却灰を入れ、還元剤としてコークスを投入して加熱すると、焼却灰を溶融すると同時にリンを揮発させ、黄リンとして回収するもの。この方法で、下水汚泥中に含まれるリンを99・94%という高い純度で回収することができる。

 リンは肥料や化学品などに欠かせない元素だが、リン鉱石を産出しないわが国ではリン資源の全量を輸入に頼っており、輸入量は年間2万4000トンに達する。

 したがって、あと60年で枯渇するといわれるリン鉱石が輸入できなくなれば、工業生産活動や農業生産活動に大きな影響が出ることは避けられない。

 しかし、家庭や工場から排出される下水には多量のリンが含まれており、下水処理の過程で下水汚泥焼却灰に蓄積され(リン鉱石並みの含有率を持つ焼却灰も少なくないといわれる)、この焼却灰からリンを回収することによって、リン資源の社会的な循環システムを構築することができる。

 この下水汚泥焼却灰は全国で年間約30万トン(うち関東で10万トン)発生しており、うち約80%が埋め立て処分されているのが現状だが、この開発プロセスで焼却灰をスラグ化するとともに年間1万5000トンの黄リンの回収ができる。と同時に六価クロムなどの重金属類を無害化するすることで、タイルや炉盤材などに有効利用することも可能となり、この技術は単に下水汚泥焼却灰からのリン資源回収にとどまらず、灰の有効利用にもつながるなど一石二鳥の効果がある。

 ただ、現在の開発プロセスでは、1日当たり30トンの下水汚泥焼却灰の処理でランニングコストが輸入品の市中価格並みのキロ400円程度となるため、同社では電力コストを下げるなどコストダウンを図りながら工業生産を目指していく、としている。

関 西地区の薄板加工業者の三屋シャーリング(本社=大阪府四條畷市中野、三屋正人社長)は前期(2000年3月期)の業績、および今期(01年3月期)の計画を明らかにした。今期は売上高の追求よりも、取扱量を最低でも月間3500トン(コイルの出荷ベース)を確保し、損益は一定の設備償却した後に、金額的にイーブンとしたい考え。人員は現有の48人体制(役員を含む)で臨み、小口の即納体制、品質管理を徹底させ、賃加工、受託加工分野をそれぞれ強化していく。

 同社は本社工場(敷地面積=4230平方メートル、工場建屋面積=2510平方メートル、事務所面積=590平方メートル)、第2工場(敷地面積=1650平方メートル、工場建屋面積=900平方メートル)を持つ、薄板加工業者。設備は本社工場がレベラー4基、シートスリッター3台、第2工場はシャーリング11台、シートスリッター2台。シャーリングについては関係会社の三屋スチールで手掛けている。

 取扱量は月間3500―4000トンで、このうち、賃加工分が60%、受託が40%。製品別の内訳はプレコートが40%強、表面処理鋼板が50%、冷延・酸洗・ステンレス・その他が10%。また、加工量はトータルで月間5000トンで、このうち、レベラーの一次加工が月間3000トン、シートスリッターとシャーリング二次加工が月間2000トン。

 前期の業績は売上高が23億円と99年3月期比10%程度減、損益は通常の設備の償却を行ったうえで、経常段階でイーブン。売上高の減少は取扱単価自体の下落したことによるもの。今期は売上金額についてはあまり固執せずに、取扱数量を最低でも月間3500トン、多ければ同4000トンの確保を目指す。損益は経常段階で設備償却をしたうえで、イーブンの形を目指す。

 商社、メーカーなどからの賃加工、受託加工の数量維持を図るため、二次加工を含めた小口・即納体制をさらに徹底させる。また、プレコートなどの高級鋼板を中心にした製品の検査体制をさらに磨きをかけ、品質の向上を図っていく。

 さらに、一部の商社とは出荷データを電話回線でのオンライン体制とし、スピーディーな受注・納入管理を行うとともに、コンピュータでの事務管理により、業務の効率化を推進していく方針。



金 網総合メーカーの松井金網工業(本社=大阪府高石市高砂2―7―4、松井隆佳社長)は業務のさらなる効率アップを目的に、今秋から新システムによる管理体制を本格スタートする。これは、1年半前からソフト会社と共同開発を進めていた同社独自仕様のソフトを全社的に導入し、業務全般に活用していくもので、松井社長は、「社員一人ひとりの“自己管理の体制”を徹底させるためには、われわれのような中小企業ほど、コンピューターを駆使したスピーディーな経営が必要であり、時代のすう勢と受け止めている」と意欲をみせる。

 「数年前に仕事で渡米した際に、訪れた現地企業の社長ルームはほぼペーパーレス化されていた。ただ、日本企業から届くFAXの山を保管する箱を除いてはね」。その光景があまりに象徴的に映ったことで、トップがまず率先して進めることが必要であると痛感。3年ほど前から全面的なシステムの見直し計画を推進、今年2月に本社機能および本社工場を従来の松原市内から現在地へ移転したことを機に、順次導入を進めている。

 10月からの本格稼働を前に、現在最終的な調整段階に入っているところだが、総務や経理などの事務関係の迅速化・正確化はもちろん、営業における計算間違いなどの単純なミスが激減するなど、すでにさまざまな面での効果も表れている。

 「新システムの導入が100%完ぺきになるとは言い切れない。90%できればむしろ満点と見なしたい。それでも従来のやり方に比べて、数倍の能力発揮につながることが期待できる」とも。





東 京地区の表面処理鋼板(電気亜鉛めっき、ベースサイズ)は熱延下地6万―6万1000円、冷延下地7万―7万1000円どころ中心。

 荷動きは悪い。扱い筋では「5月の商いが特に落ちたのではないか」との声も聞かれ、稼働日数が減ったことはあるものの、これを裏付ける形でコイルセンターの出荷も5月が大きく減少した。在庫は前月比7・2%の増加となり、もともと高かった在庫率は196%(関東・東北・北陸)まで上昇している。コイルの余剰感は払拭できず、一部に安値に突っ込むケースもあるようだ。

 扱い筋では「流通の踏ん張りどころだが、一部値段が崩れかかっている」との見方。需要はプロジェクト物件を中心とした建材関連に期待感があるが、実際に波及効果が出るのは秋口となる見通し。市況は当面、価格維持を図りつつも弱含みで推移。