2000.07.10
合 同製鉄の猪熊研二社長は先週末、就任後初の会見を行い、「現在の中期経営計画を棚上げし、収益改善を中核とした2カ年の新経営計画を7月末をメドに策定する」ことを明らかにした。骨格は、「99年度下期の経営環境を前提に2000年度下期で黒字転換し、年度でも経常黒字を確保する」意欲的なもので、これをコスト対策で実現する。このため現在323人に達している出向者の早期転籍制度の導入など、新たな要員対策を検討する。このほかこれまでのコスト収益改善対策では、あまり手を付けていなかった資本・財務面での対応策を強化する。またコスト管理対策の一つとして導入していた品種別事業部制(3事業部)は、事実上止める。一連の収益改善策で「01年度には復配を目指したい」としている。

 同社は、新日鉄系の電炉メーカーとして大阪、船橋、姫路の3工場体制でH形、棒・線材、構造用鋼などを生産している。99年度までの3カ年で姫路工場にビレットCC、加熱炉、船橋工場に炉底出鋼装置、大阪工場にブレークダウンミルの導入など140億円の設備投資を行っている。これによる効率化とコスト削減で収益改善を目指したが、環境悪化が大きく、99年度は579億円の売上高で31億円の経常赤字。7期連続の欠損で、単年度での黒字転換が当面最大の経営課題となっている。このため、今年度を初年度とする中期経営計画に乗り出したばかりだった。 2000年度は、すでに終わった4=6月期が赤字で、上期の経常欠損は避けられない状況。このため7月末までに新しい2カ年計画を策定し、早期の黒字化を目指す。新中期計画は、7月末までに内容を詰めるが、新たな合理化投資は行わず、要員や資本・財務対策を中心としたコスト対策で黒字転換を目指す。特に要員面では在籍910人のうち、323人に達している出向者の差額負担がマイナス要因として大きいため、制度的な対策を検討する。このため年度で、リストラによる特損処理も避けられないとしている。資金は比較的余裕のある資本準備金の取り崩しや、資産売却などで対応する。

 経営体制面では、品種別の収益対策を明確にするために導入したH形、線材条鋼、構造用鋼の3事業本部制を実質的に廃止する。これにより、トータルとして収益改善を検討する。品種別では大阪の棒は9月末で生産を停止し、中山鋼業に集約することで収益改善を目指す。赤字幅が大きいH形鋼は、実質的に高炉対応品種になっているため新日鉄と協議し、新たな経営の枠組みを模索する。

 同社の前年度決算は上期で15億円、下期で16億円の赤字だった。00年度は上期でまだ、数億円の赤字が見込まれている。こうした状況から「早期の黒字転換しないと、会社の存続自体が危うくなる」との危機感を強めている。猪熊社長は、「環境好転を織り込まないで、早急に黒字化できる対策を策定し、すぐに取り組む」との意向を示した。

N KKは鉄鋼の国際戦略の一環として、米国の連結子会社ナショナルスチール(略称NSC、本社インディアナ州ミシャワカ市、会長兼CEO田中豊NKK特別顧問)とR&D(研究開発)相互協力協定を締結した―と先週末発表した。1984年に資本参加して以来、NKKは出向協定を結びNSCへの技術協力を進めてきたが、これによってNSCは技術力を向上させ、共同で包括的な研究・開発を行い、補完し合う力量を蓄えた。

 R&D協定では、NKKは最先端の高張力鋼板の製造技術や表面処理技術を活用し、NSCでの新商品開発の迅速化を図り、自動車メーカーの多様化するニーズにタイムリーに対応していく。また、NSCはテイラー・ウェルド・ブランク製造技術(プレス加工前に異なる板厚、種類の鋼板をレーザー溶接する技術。部位に合わせ最適な鋼板が使用でき、軽量化・経費削減が図れる)などの自動車部品加工技術や、米国内で強い競争力を持つ建材向け亜鉛メッキ鋼板の商品製造技術を活用することで、NKKの商品開発力を補完する。

 NKKはこれまでNSCに、製鉄所ベースでの技術協力を積極支援してきた。ひところは50人、現在も35人が出向・派遣されている。今後は研究所にまで協力関係が広がり、しかも一方通行ではなくなる。

 NSCは、年産600万トンのうち自動車向けのシェアが年々高まり、現在は30%強を占める。しかも米自動車メーカーの厳しい要求に応じるなかで、技術面で日本の先を行くケースも出始めた。相互に商品開発力を高めるのに役立とう。NSCはデトロイトに技術開発・商品開発センターを擁し、55人の技術研究員がいる。

 さらに自動車業界は、製造業のグローバル化の先頭を走っており、NKKグループが日米でR&D体制を構築する意味は大きく、84年の資本参加が生きてくる。

 今年1―3月期で500万ドルの当期利益を上げた。4―6月期は生産トラブルがあり利益は下がるが、すでに完全復旧し今期(7=9月)は市況にもよるが、回復は十分に期待できる。

電 炉小棒メーカーの伊藤製鉄所(本社東京都江戸川区、伊藤三好社長)は、ダイオキシンの発生防止と除去方法のシステムを確立。石巻工場(宮城県石巻市)で実用化に成功した。電気炉から出た排ガスを高温燃焼して急冷、空気と混合したうえで除去することにより、ダイオキシンの発生量を1立方メートル当たり0・05ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)以下に抑制することができる。

 96年9月に同システムの特許を出願。その後、石巻工場の電気炉リプレースに当たり、同システムで集塵装置を設置。実操業において旧設備の100分の1以下のダイオキシン値となり、システムの実用化を実証した。今年3月に特許の確定と登録を得た。すでに集塵機メーカーからの問い合わせもあるという。今後は筑波工場(茨城県つくば市)での切り替えも検討していく。

 電気炉から出た排ガスを燃焼塔に導入し、高温により完全燃焼することでダイオキシンを分解する。この排ガスを複数の冷却用パイプにセ氏600=400度の温度で導入し、300度以下に急冷することでダイオキシンの再合成を防止。さらに建屋集塵設備のガスと合流、100度以下の温度として集塵機の送給。集塵のろ布でダイオキシンを90%以上も付着除去することを特徴としたダイオキシン発生防止と除去方法のシステム。

 日本鉄鋼連盟は、97年から99年までの3年間でダイオキシン対策を国内電炉およびNEDO資金で実機試験を行った。今回の伊藤製鉄方式は、空気およびバーナーを使用して高温燃焼でダイオキシンを分解。多管、間接冷却(水、空気を使用)により、6秒以下で600度から300度に急冷。建屋集塵ガスと混合して100度以下にする。ろ布前は100度以下となって、90%以上のダイオキシンを除去する。

 鉄連方式では、バーナーを使用し、燃焼温度を700=900度にしてダイオキシンを分解。水スプレーや多管を使用することにより0・5秒以下で600度から300度に急冷。冷風導入混合、建屋集塵ガス混合で100度以下とする。ろ布前は100度以下となり、70=80度で90%以上のダイオキシンを除去。ほぼ伊藤製鉄の特許内容と同じ結果が出た。

 既設電気炉の法規制値は2000年12月までが80ナノグラム以下、2001年1月から2002年11月までが20ナノグラム以下、2002年12月からは5ナノグラム以下となっている。今回の伊藤製鉄のシステムは、2002年12月からの法規制値の100分の1以下にダイオキシン排出量を抑制できる。



川 鉄建材は2000年度中にも、システム建築事業部と建設事業部の2つの事業部を分離し、100%子会社(1社)を設立する。製品の製造については川建本体に残すが、これ以外の設計、販売、施工・管理は新会社に移す予定。新会社の人員、資本金などは今後、具体的に詰めていく。新会社の売り上げ規模は現在の売り上げの3分の1に相当する年間150億円程度となる見込み。今回の新会社設立は、川崎製鉄がグループ全体で建設事業の見直し、統廃合・再構築を進めており、この流れに呼応するためのもの。

 同社は昨年から、二本松工場の閉鎖など生産分野の統廃合、物流分野の効率化、人員の削減など経営構造改革に取り組んできた。この結果、2000年3月期は売上高が前期比7・2%減の456億円となったが、損益は経常段階で5000万円の利益を計上、前期の赤字から黒字転換した。

 ただ、親会社の川崎製鉄が21世紀をにらみ、グループを含めた建設事業の見直し、効率経営を目指しており、この一環として建設事業などの経営・方向性を企画する新会社「川鉄建設」(仮称)を設立。今後、(本体と)グループの建設、建材事業の再構築を図っていく。

 そうした中で、川鉄グループの建材製品、建設の中核企業である同社は、システム建築事業部と建設事業部を分離、子会社化することを決めた。これにより、親会社の建設事業の再構築にフレキシブルに対応できるようにする。

 現在、システム建築事業ではメタルビル、立体トラス、デバイスを取り扱っており、一方、建設事業部は建設の請負を行っている。両事業部の売上高はトータルで年間150億円程度。両事業部の分離後、川鉄建材の事業部は建材事業部、土木事業部の2つとなる。

 なお、川鉄建材は外壁材の分野についてはすでに分社、新会社を設立しており、数年前に窯業系の外壁材は備前工業、金属系の外壁材は昨年、川建ウォールに業務を移した。





住 友金属工業は、鹿島製鉄所内に建設したガス化溶融炉について6月に全国都市清掃会議の技術評価を申請した。評価書取得後、2001年度からの本格営業を目指す。

 同社は予算分割などの理由から実証試験が遅れていたが、順調に100日間の連続運転を完了。ダイオキシン類の発生自体はもちろん、排ガス急冷により再合成も防ぎ、ガス化したガスもケミカルリサイクルできるシャフト炉方式の直接ガス化溶融炉として売り込みを図る。

 同社のガス化溶融炉は、高炉をベースとするシャフト炉型で、ガス化したガスをケミカルリサイクルできるのが特徴。転炉の酸素吹き込み技術を応用した独自の溶融システムにより、2000キロカロリーの高カロリーガスとして、ゴミの事前乾燥処理の熱源として使うことができる。

 ダイオキシン類の発生についてはガス急冷システムを採用。ゆっくりとした温度低下で発生しやすいダイオキシン類の発生自体をガス急冷によって抑制している。高温還元雰囲気でのガス化溶融と金属の事前回収により、リサイクルしやすい高品質のスラグを生成できる。また、生成ガスの発生量を従来の6分の1に減らし、省スペース化を図ることができる。

 溶融炉でガス化したガス自体を改質し利用する方式は、川崎製鉄(サーモセレクト)、東芝(PKA)、日本ガイシ(ノエル)など、現在、国内では同社を含めて4方式あるが、国産技術は同社のみ。技術評価書取得後は、2001年をメドに営業活動を本格化させていく方針。





住 商鉄鋼販売(本社東京都千代田区、水上義久社長)は、環境事業の一環として緑化屋根(傾斜屋根対応)、屋上緑化工法を開発した。在来工法とは差別化した防水技術と緑化技術工法で低コストと長期保証を実現し、「サミットグリーン」の商品名で販売・施工を開始した。同社では屋根緑化および関連資材で2001年度に10億円の売り上げを計画している。

 サミットグリーンの第1号として「田貫湖ふれあい自然体験ハウス新築工事(静岡県富士山麓)」に採用され、約1700平方メートルの緑化屋根を施工し、引き渡しを完了した。

 同工法は4社の共同開発で、三晃金属工業の開発したエックスロン(EPシートを被覆した超耐候性鋼板)をリブ加工して防水・保水層を作り、その上に緑化資材総合メーカーの日本地工(開発はクレアテラ)野芝の種子をあらかじめ埋め込んだ超軽量ヤシガラ繊維マットを敷き詰め、ネットで飛散防止施工する。

 また平たんな屋上緑化については、エックスロン防水以外のオプションとして複雑なおさまりにも対応できる吹き付け塗膜防水システムで、超耐候性、耐薬性、耐摩耗性、伸縮性能を持つ工法を用意している。

 さらに、緑化については超軽量マットから軽量土壌、地下支柱、環境に適応した植物群の提案もできるメーカーとして進出する。

 屋上緑化はCO2の削減、断熱効果による省エネ、さらには都市景観の向上に貢献することから導入事例が広がっており、環境庁の市場予測では2000年に1894億円、2001年に3265億円が見込まれている。





輸 入厚板のうち、中国などを供給元とするローグレード品(C級品)の価格が上昇している。ヨーロッパの景気回復やスラブ価格の高騰から、供給元に日本向け輸出に対する強気姿勢が見られるという。市場では一部歯抜けサイズも出ており、扱い筋では今後も安値の材料は手に入らないとの見方。価格的には溶断業者置き場渡しで3万円を上回る水準となった。

 厚板のいわゆるローグレード品は、ガセットやスプライスプレートのような建築向け補強材のほか敷板にも使用され、中国やルーマニア、ロシアなど東欧諸国を供給元とする輸入材で市場が成り立っている。この中で主力供給元である中国材の市況は、3万2000―3万4000円(溶断業者置き場渡し)と、最近3カ月間で2000―3000円ほど上昇している。背景には、スラブ価格の高騰やヨーロッパの景気回復により、日本向けの輸出価格が安いと判断された点が挙げられる。

 東欧からの輸入もスポット的なものにとどまっている。これに対して国内市場ではいわゆる歯抜けも出ており、「すでに契約した分の入着も遅れている」(関東地区のシャー母材扱い業者)という。

 工事現場などで使用する敷鉄板についても、半年前まで215ドル(C&F運賃込み)前後で推移していたものが、「250ドルを超える」(商社)水準となった。中国の安い価格帯の材料が手当てできない一方、国内材にも早くから買いが入っているようだ。敷板は年後半から需要期に入るため、さらに需給がひっ迫する可能性もある。

 値上げが出そろった国内高炉メーカーの規格品、韓国や台湾メーカーの規格相当品に比べると、値上げの転嫁速度は速い。中国が対日向け輸出に強気姿勢を見せていることから、敷板を含めた厚板ローグレード品については、「先行きも安い材料は手に入らない」(浦安鉄鋼団地)との見方が有力となっている。





東 京地区の異形棒鋼はベース2万6500円と強含み。メーカーは受注量の30%削減と同時に改めて値上げを打ち出しており、流通は今後唱えを引き上げる構え。夏季減産で供給量が減少する場面で、今後はメーカーの値上げを反映した市況展開になるとみられている。

 6月の商いは「25万トン前後」(商社)と5月並みかこれをやや下回ったとみられている。数量的には通常のレベルだが、需要家の抵抗にあって市況は伸び悩み、メーカーの値上げは浸透しなかった。

 メーカーは販売量を制限することで改めて値上げの浸透を図る。今月下旬からは各メーカーの炉修などで生産量は減少するため、供給のタイト感が強まるとみられている。今回はメーカーの折り合いは期待できないと見て、流通は需要家に値上げを提示する考えで、市況はジリ高で推移する見通し。