2000.07.12
通 産省が集計作業中の鉄鋼各社の2000年度第2四半期(7―9月)鉄鋼生産計画の感触によると、粗鋼生産は2700万トンを超えるペースとなっている。これまでのところ普通鋼電炉各社からのヒアリングは終了していないものの、高炉、特殊鋼各社の計画は全体的に強基調で、第1四半期の2671万トンを超えることは確実な情勢だ。需要基調は自動車のほか建設分野も堅調とし、第1四半期を上回る計画を打ち立てている。

 特に高炉では、H形鋼など条鋼、線材製品は比較的絞られているのに対し、鋼板類は需要増を映して増加傾向にある。輸出は米国市場で熱延鋼板などが軟化しつつあることからアジア市場への流入が拡大しており、各社とも価格を注視し高水準を保つものの、量的な伸びは見られず、内需の堅調推移が粗鋼生産を押し上げる形だ。

 第2四半期鉄鋼生産ヒアリングは高炉各社が終了、この後、普通鋼電炉、地方通産局所管分などに移り、今月31日にまとめられる。

 これまでのところ普通鋼電炉各社の夏季減産など絞り込みがどの程度かわからず、流動的な要素もあるが、高炉各社の生産計画は鋼板類を中心に強基調で、粗鋼ベースでは2700万トンを超えるペースとなっている。自動車向けを主体に鋼板類が増加、逆に条鋼、線材は幾分絞り気味で伸びておらず、特殊鋼もほぼ横ばいペースという。高炉では鋼板類と条鋼類とで対応が異なっている点が特筆される。

 内需は総じて堅調としているのに対し、輸出については、やや環境が変化してきた。米国市場にロシア、中南米から製品流入が増加したため、熱延鋼板など市況は下落し始めた。このためアジア市場への流入が増えてきており、価格面で懸念材料も散見されつつある。各社ともこうした動向を踏まえ、量的にこれ以上伸ばすと価格に悪影響を及ぼすとして、価格重視の姿勢を取っている。

 鉄鋼生産ヒアリングのこれまでの感触について通産省では、「しっかり実需の出方を見て、生産対応してほしい」(奥田真弥鉄鋼課長)として、鋼板類での在庫が増加したこともあり、実需見合いの生産を強調する。

通 産省とEU(欧州連合)委員会と日本鉄鋼連盟、EUROFER(欧州鉄鋼連盟)の官民が参加する「日本・EU鉄鋼対話」の開催が10日、合意に達した。通産省の岡本巖・基礎産業局長が訪欧、EUのカール対外総局長、アブー対外局長との協議で鉄鋼対話の実施が決まった。鉄鋼貿易摩擦の未然防止のため、市場動向など情報を交換、ロシア、中国を含めたグローバルな地域情報を共有化するとともに、経済開発協力機構(OECD)でのマルチ(多国間)の鉄鋼通商問題再発防止の取り組みを補完する。対話は課長級で年2回交互に開催することとし、第1回対話は今秋に行われる。

 「日本・EU鉄鋼対話」は官側から通産省とEU委員会、民間側から日本鉄鋼連盟の代表が参加する。対話の議題は(1)日本、EU両地域の鉄鋼業界の状況(2)両地域の鉄鋼貿易動向(3)環境問題など双方関心分野での協力関係(4)OECD鉄鋼委員会に関する情報・意見交換―などと設定された。開催は年2回とし、東京、ベルギー・ブリュッセルと交互に行うこととした。なお、第1回対話は今秋に開かれることが決定したが、開催地については現在のところ未定となっている。

 鉄鋼通商摩擦の防止に向けて、OECDベースなどによるマルチと、バイ(2国間)の取り組みが重要視される中で、意見、情報交換を通じ、連携など緊密化し、これらの動きをサポートする考えで、日本としては、日・米(99年9月〜)、日・韓(99年4月〜)の鉄鋼対話に続く2国間対話の実現となる。いずれも課長級対話を基本に民間も参加して実施されており、日・韓は年1回、日・米は年2回行われ、日・米については適宜次官級に報告することとなっている。

高 炉筋がまとめた大手5社の5月の出銑量(1日当たり)は21万1685トンで前月比3・3%増で、これまでの20万トン台を突破し、出銑比も2・00の大台に乗せた(前月1・94)。おう盛なアジア向け輸出を中心とした需要増加が要因。

 とくに、4月19日に再火入れした新日本製鉄・名古屋製鉄所3号高炉(内容積4300立方メートル)の出銑量が4月の2100トン台から8700トン台、出銑比も0・50から2・04へと急速な立ち上げにより、同社の出銑量は8万トン台(室蘭2号を含む)に乗せ前月比7%の増加となった。

 5社合計の燃料比は513・8キログラム(銑鉄トン当たり前月517・8)、うちコークス比は384・8 (前月390・7)、PC比は127・6(同125・9)で増産基調の中でもコスト抑制が進んでいる。

大 日本印刷(北島義俊社長)は10日、環境に配慮し、意匠性にも優れた化粧鋼板「クレリオ」を開発(製造元=大日本エリオ)し、7月から発売すると発表した。初年度10億円、05年度には50億円の売り上げを見込んでいる。

 同社は新日本製鉄と共同で1962(昭37)年に大日本エリオ(本社=神奈川県、伊藤清一社長)を設立、化粧鋼板「エリオ鋼板」を開発し、家電業界や建材業界に販売してきた。エリオ鋼板は、鋼板に直接印刷するもので、冷蔵庫、暖房機などの家電製品、玄関ドア、間仕切りなどの建築部材などの製品に使用されている。

 一方、ユニットバスの壁面材のような耐食性が要求される水回り商品には、塩ビフィルムなどに絵柄を印刷したものを鋼板の表面に張り合わせた「塩ビ鋼板」が広く使用されている。しかし、環境や健康という観点から塩ビ製品に対する見直しや、新たな素材を使用した化粧鋼板の開発が求められてきた。

 今回開発した化粧鋼板「クレリオ」は、こうした課題に対応するもので、耐食性に優れた環境対応型の化粧鋼板。また、特殊な印刷方式を用いており、意匠のバリエーション、自由度を飛躍的に広げた。

 特徴は、(1)ポリエステル系樹脂を用いた環境対応型化粧鋼板(2)ユニットバスの壁面など、耐食性と意匠性を必要とする用途に最適(3)クレリオは、壁面の下半分をタイル調のデザインにしたり、上下にボーダー調(横のストライプ)のデザインなどを施すことが可能(4)深み感や質感も優れており、高級感、グレード感のある製品(5)オリジナル製品(意匠)の場合でも、開発期間が短く、小ロット対応も可能なため、物件対応となるホテルや住宅メーカーのオリジナル製品の開発に適している―など。

 【ニューヨーク支局】米鉄鋼協会(AISI)まとめによる先週の米鉄鋼ミルの粗鋼生産は224万2000ネットトンで前週横ばい、平均操業率は90・0%で同0・1ポイント上昇した。前年同週の生産は191万2000トン、操業率は78・0%。

 この結果、年初来の粗鋼生産累計は6164万9000トン、前年同期比16・2%増、操業率は91・3%で同11・5ポイントのアップとなった。

崎製鉄は8月7日に「創立50周年」を迎えるが、その一環として、千葉製鉄所で製造したブリキを用いたスチール缶の“記念缶ビール”=写真=を製作した。この缶ビールは、サッポロビールの協力を得て同社の生ビール「黒ラベル」の350ミリリットル缶の表面に、製鉄業のシンボルである溶鉱炉をデザインしている。

 ▽…川鉄では、この50周年記念缶ビールを社員向けに販売することにしているが、それに先立ち、7月23日から開幕予定の都市対抗野球大会に出場する千葉硬式野球部および水島硬式野球部の壮行会(千葉はきょう12日午後6時から千葉製鉄所近くの「みやざき倶楽部」で、水島は14日午後6時30分から水島製鉄所近くの「川鉄体育館」で開催)の出席者に試飲してもらう、という。

コ ーレンス(本社=東京都千代田区、Dr・M・フォン・アイゼンハルト・ローテ社長)は、カナダのラドコム社が開発した世界初のグラブ式放射能検知器「クリケット」の国内販売を7月15日から開始する。従来のゲート方式では、輸入スクラップを港湾で荷受けしてトラックへ詰め替えてチェックしなければならなかったが、グラブ式にすることで確実に効率よく放射能検知が可能になる。半年前の販売開始以降、海外ではすでに12基の納入実績があり、日本国内でも港湾での荷受け時やチャージバケットやコンベヤー方式の代替として普及する可能性が出てきた。

 同装置は、世界で400基の販売実績を持つカナダのラドコム社製の放射能検知器で、線源への近接性を高めるためにグラブに直接検知器を設置している。従来のゲート式の場合、スクラップ密度が高いと検知しづらい場合があり、これまでコンベヤーやチャージバケット方式による2段階チェックをしていた。

 これを受け、同社では、より信頼できる放射線防護の必要性を認識。グラブに検知器を直接取り付ける高感度検出システムとして「クリケット」を実用化した。

 同システムは、防護シールド、検出ユニット、バッテリーパック、コントローラーの4つのアセンブリーから構成され、故障に強く修理しやすいなどの特徴を持つ。コントローラーによって放射性物質検出とシステム運転状況をリアルタイムに把握。遠隔操作できる。

 どんなサイズのグラブにも幅広く対応でき、極めて高い衝撃抵抗と摩耗抵抗をを持つ特別設計で製作。シールドの損傷などがあれば、直ちに操作員に警告、シールド交換により簡単にバックアップできる。

 同社では、神戸製鋼加古川製鉄所や住友金属工業和歌山製鉄所などへ持ち込まれた放射線源がスクラップに混入されていた事件を踏まえ、より精度の高い検知能力を持つグラブ式放射能検知システムの国内の本格投入を決めた。輸入スクラップを直接港湾で荷受けする高炉メーカーなどを中心に、電炉メーカーやスクラップディーラーなどへの提案活動をしていく方針。





関 西地区の大手溶断業者の高砂金属工業(本社=大阪府高石市高砂、宮崎吉二社長)はグループ会社を含めた全社で、厚板のSN規格材の在庫体制を強化する。現在、SN材の厚板については自社の2工場(本社工場、赤穂工場)と関係会社の木津川建材加工(本社=大阪市大正区南恩加島)の本社工場の3拠点でトータル2000―3000トン在庫しているが、今後、SN材の需要拡大に併せて、同規格の在庫量を3000トン以上まで引き上げていく方針。

 同社は本社工場、赤穂工場(兵庫県赤穂市)、および関係会社の木津川建材加工の本社工場を持ち、建築向けの切板、およびB・H(ビルトH形鋼)の製作などを手掛けている。現在、切板は本社工場で月間1000トン前後、赤穂工場で同600トン前後、木津川建材加工の本社工場が同1000―1200トン、トータルで同約3000トン。

 厚板の在庫はSS材、SM材、TMCP鋼、FR鋼、SN材で、全社で6000トン在庫している。SN材については1996年ごろから、SN490Bの在庫を開始、その後、SN490Cも置き出した。昨年春からはSN400B、SN400Cの在庫も開始した。

 現在、SN材の厚板の在庫量は月々で変化があるものの、全社で2000―3000トンを在庫している。在庫サイズは厚み6―40ミリ(40ミリ以上はTMCP鋼で、45ミリ、50ミリ、55ミリを在庫)で、サイズは2500ミリ×13メートル。ただ、今後もSN規格の厚板は官公庁物件だけでなく、民間物件向けでも増える方向だ。このため、同社では状況を見極めたうえで、順次、在庫量を増やしていく方針。

 なお、同社のSN材の厚板の仕入れメーカーは住友金属工業、神戸製鋼所、中山製鋼所。

大 阪地区の異形棒鋼はベース2万6000―2万6500円どころで続伸ムード。電炉メーカーのロール待ちは現在、国光製鋼、中山鋼業などで8月末、ダイワスチールで9月中旬とベースがひっ迫。細物は2―3週間前後となっている。

 また、ベースメーカー3社の設備廃棄を含めた集約問題が、遅くとも9月末には実現しそうなことから、商社筋などでは集約による夏場のノンデリを懸念。「集約となれば、関西のベースで1万―1万5000トンがショートし、ベースの不足感がさらに強まるのは必至」と警戒している。

 このため、流通筋は先月から2万7000円を唱えており、これまでに1000―1500円方の値戻しを実施。さらに、今後もメーカー販価の値上げを折り込んで、今月末にかけて2万7000円まで市況が上伸する見通し。