2000.07.19
通 産省がこのほど開催した「第2回アジア鉄鋼市場と日本鉄鋼研究会」(基礎産業局長の懇談会、座長=浦田秀次郎・早大教授)では台湾、韓国、中国など東アジア地域11カ国の鉄鋼業や同市場動向、アジア経済の現状と見通しなどが報告され、東アジア地域の鉄鋼生産は能力増の方向にあることが示された。ユーザーの現地進出が加速し、鉄鋼の下工程を中心に能力はアップしており、このことが今後、上工程の新増設にも波及、拡張の動きが鮮明になると分析。これらを踏まえメンバーからは「アジア全体で将来へ向けた鉄鋼業の方向性や、あり方などを調整するメカニズムも必要となる」といった意見も述べられた。

 第2回会合ではワーキンググループの進め方も詰められ、次回9月4日の第3回会合で品種別の需給・設備増強などの動向について議論、9月25日の第4回会合では海外鉄鋼メーカーの動きやユーザー動向、電子商取引の影響などについて話し合う。第4回会合まで第1段階として事例収集を行い、10月以降の第5回会合から第2段階として品種別鉄鋼需給見通し、輸出入見通し、アジア太平洋経済協力会議(APEC)活用も含め、東アジア市場での協力、分業のあり方や対東アジア鉄鋼投資のあり方などを検証、年内に合計7回程度を開く予定だ。

 今回提示された報告によると、アジア経済の現状と見通しでは、アジアの生産、輸出を情報化関連産業がけん引するとし、2000年も情報化関連産業にけん引され、これが徐々に内需主導に移行、回復に向かうと予想した。



新 日本製鉄が18日発表した6月末の「ときわ会」H形鋼流通在庫の集計速報によると、全国在庫は35万400トンと5月末比0・3%減少した。4月の集計ベース拡大以来初めての減少。出庫量が4%伸びた結果、在庫率は1・43カ月と0・05ポイント低下した。新日鉄では今月から各社の減産が本格化するため、今後さらに需給が引き締まるとみている。

 6月実績は東京が入庫7万2200トンと前月比9・6%減、出庫7万3000トンと1・4%増、在庫10万8400トンと0・7%減。大阪は入庫5万100トンと0・8%増、出庫5万800トンと6・1%減、在庫6万2700トンと1・1%減。名古屋は入庫2万7400トンと6・6%増、出庫2万7700トンと9・5%増、在庫4万500トンと0・7%減。

 東名阪3地区合計では入庫14万9700トンと前月比3・6%減、出庫15万1500トンと0・1%増、在庫21万1600トンと0・8%減。その他8地区合計の在庫は13万8800トンと0・4%増加した。在庫率は東名阪が1・40カ月と0・01ポイント低下。その他8地区は、出庫量が10%伸びたため、1・47カ月と0・14ポイント低下した。

 6月末の予測段階で東名阪3地区だけで約5000トンの減少を見込んでいたのに対して、減少幅が小さかった要因として、先高を見込んで在庫を積み増した動きが一部あったと新日鉄では見ている。ただ、今後は新日鉄などの30%減産の効果が本格化するうえ、夏季減産で電炉の生産も減るため、在庫調整の進展が早まる見込み。

 その他8地区の6月末在庫量は以下の通り。

 ▽札幌=2万1400トン、5月末比1・4%減▽東北=2万4200トン、5・7%増▽新潟=7300トン、5・2%減▽富山=4600トン、2・1%減▽静岡=1万900トン、0・9%減▽四国=2万1200トン、7・1%増▽中国=1万4300トン、4・7%減▽九州=3万4900トン、1・4%減

N KKは18日、めっき薬剤メーカーの日本リーロナール(本社=東京都中央区、汲田鉄也社長)と共同で、環境負荷の大幅な低減と生産性の向上とを両立させた画期的な錫めっき浴を世界で初めて工業化に成功した、と発表した。この錫めっき浴は、すでに米国など5カ国で特許を取得するとともに、本年2月に米国の薬剤メーカー、シュクレロナール社に技術供与され、ナショナルスチール社の製造ラインで採用されている。

 これまで世界的に使用されているめっき浴には、フェノールスルホン酸錫を主成分とするフェロスタン浴と呼ばれるめっき浴と、ハロゲン化錫を主成分とするハロゲン浴がある(メーカーでの使用比率はフェロスタン浴が60―70%でハロゲン浴は30―40%)。

 ハロゲン浴は、高電流密度での電解特性に優れるなど生産性は高いが、めっき槽に堆積する多量のスラッジや塩化物、弗化物の廃棄処理が必要で、一方、フェロスタン浴は塩化物や弗化物の廃棄が不要で環境負荷に優れているが、高電流密度での電解特性がハロゲン浴に比べ小さく生産性が低い。 今回開発した新しい錫めっき浴は、メタンスルホン酸錫(MSA)を主成分に、独自に新開発した添加材を加えて広いめっき電流密度範囲で均一めっきを可能にした浴で、生産性の高いハロゲン浴と同等以上の生産性が得られる。

 さらにハロゲン浴の欠点である弗化物スラッジの発生もなく、廃液処理で負荷となる化学的酸素要求量(COD)も環境負荷に優れたフェロスタン浴に比べても3分の1に低減できるめっき浴。



愛 知製鋼は18日、欧州での営業強化を狙ってドイツに欧州現地法人を設立し、8月1日から業務を開始すると発表した。

 昨年9月に開設したデュッセルドルフ駐在員事務所を現地法人化(6月8日に設立登記)したもので、社名はAICHI・EUROPE・GmbH(愛知ヨーロッパ有限会社)。所在地はドイツ連邦共和国デュッセルドルフ市インマーマン通り。事業目的はステンレス形鋼を中心とする熱間圧延鋼材の輸入・販売、および欧州全域の特殊鋼関連の市場調査と情報収集など。役員は社長=柴田雄次・愛知製鋼社長、副社長=鈴木晧弌・同取締役、取締役=菅田雅巳・デュッセルドルフ駐在員事務所長(愛知製鋼から出向)。役職員は菅田取締役を含め4人。

 同社では法人化を機にきめ細かな営業、需要開拓を進め、5年後に売上高25億円(来年度見込み22億円)を目指す。なお、同社の海外現地法人はアメリカ2社、フィリピン1社と合わせ4社目。

川 崎製鉄は18日、知多製造所のシームレス鋼管工場が今年7月1日、70年6月の操業開始以来30年で累計生産量1000万トンを達成したと発表した。

 川鉄は70年6月に操業開始した小径シームレス管工場を中核として、シームレス製造品目の拡大や生産量の増加にあわせて各種設備を充実させ、さらに78年4月に中径シームレス管工場を稼働開始させてフルレンジ(外径25・4―426ミリ)をカバーする製造体制を確立してきた。

 83年に知多製造所が「シームレス鋼管数値管理圧延技術の開発」で、93年に川鉄として「ステンレス継目無鋼管の高生産性製造技術の確立」でそれぞれ大河内記念生産賞を受賞。今年6月に知多は操業30周年を迎えた。

 現在の知多シームレス鋼管工場の年間生産量は約30万トン。長年にわたる技術開発の成果に支えられた13クロムシームレス鋼管では、全世界シェアの40%を占めている。

 また、近年ボイラー分野で需要の伸びている9クロムシームレス鋼管、ラインパイプ分野では耐腐食性・溶接性に優れた12クロムシームレス鋼管などの高級シームレス鋼管の商品開発と製造技術開発に注力し、今後ともより高品質、高性能なシームレス鋼管の供給を通じて需要家のニーズにこたえていく方針。

日 新製鋼は18日、新めっき鋼板「ZAM」が積水化学工業の鉄骨系プレハブ住宅「セキスイハイム」構造材として、全面採用されることになったと発表した。

 積水は以前から、鉄骨ユニット住宅のボックスラーメン構造を構成する柱・梁材をはじめ、構造材に日新の「ガルタイト」を使用してきたが、今回これらをすべて「ZAM」にリプレースされる。

 「ZAM」がプレハブ住宅の構造材に全面採用されるのは今回が初めてで、「セキスイハイム」の構造材への導入時期は、「住宅新法」に基づく住宅性能表示の開始に合わせ、年内をメドとしている。

 「ZAM」は亜鉛―アルミ(6%)―マグネシウム(3%)系の溶融めっき鋼板(特許20件出願済み)で、めっき層に含有されるマグネシウムとアルミの効果により、時間の経過とともに緻密で付着性の強い二重構造の保護皮膜をめっき表面に形成し、めっき層の腐食を抑制する、新めっき鋼板。

 東予製造所の最新鋭の溶融めっきライン(HCGL:月産能力4万トン)で生産している。

日 本鉄鋼連盟は18日、5月の用途別受注統計をまとめた。それによると、普通鋼鋼材の受注累計は638万2000トンで前月比1・2%、前年同月比でも13・9%増加した。このうち内需合計は457万1000トンで同4・5%増、同10・6%増、輸出向けは170万7000トンで前月比6・9%減少したが、前年同月比では23・8%増加した。販売業者向けは162万2000トンで同6・1%増、同9・4%増。

 内需を部門別にみると建設用は112万5000トンで前年同月比5・3%増、このうち建築用は62万1000トンで同8・4%増、土木用は27万8000トンで同0・1%増。自動車用は77万5000トンで同20・4%増、船舶用は25万8000トンで同3・7%増、電気機械用は18万4000トンで同13・9%増。

大 阪地区のH形鋼はベース3万1000―3万2000円どころで強含み横ばい。高炉などメーカー各社が3000円の値上げを実施。併せて、5月契約以降3カ月連続で引き受けを30%カットするなど、本格的な需給調整に取り組んでいる。このため、扱い特約店筋も先月以降、唱えを引き上げ、現状、持ち込み3万3000円を掲げ値上げ浸透を図っている。

 ただ、6月末のときわ会在庫は前月比2%減の6万2100トンと微減にとどまる見通し。また、市中の荷動きも緩慢で、小口中心の商いが続いているため、迫力を欠く展開。ここにきて民事再生法の乱発を懸念する信用不安問題も急浮上しており、回復基調の市場に影を落としている。

 このため、値上げの浸透は今月末の在庫推移を確認してからとなりそうで、当面、強含みながら横ばい基調が続く見通し。