2000.08.04
電 炉業界の構造改革が全国的に進行するなかで、北越メタル(本社=新潟県長岡市、大谷壽正社長)と三星金属工業(本社=新潟県燕市、鈴木吉男社長)のトップが、「お互いに利益になることを進める」ことで合意したことが3日までに明らかになった。協調の具体的な内容や方法は今後、両社で詰めることになるが、「どのような方法をとった場合でも、メリットとデメリットを分け合う」という着地点が確認されたことにより、共販会社設立と資材・副資材の共同購入を含む包括的な業務提携に発展する公算が大きい。

 新潟県内の小棒市場を二分している両社は今春、機械式鉄筋継手の分野で業務提携に調印。継手という限られた部門での提携ではあるものの、協調関係が現実化していた。

 これをベースに、三星金属の新社長に就任した鈴木氏と北越メタルの大谷社長が2回にわたって会談。2回目の会談では両メーカーの取引先である大手商社の新潟支店長も同席。この席で鈴木社長が、協調関係を強めることを提案したとされる。ただ、この時点での大谷社長の認識は、「交渉を行うテーブルにはついていない」ということにとどまった。

 その後、大谷社長は「販売および価格での競争を激化させて、お互いに消耗することは絶対さけるべきだ」と見解を表明。続いて「協調関係を促進する場合には、片方に利益が偏り、もう一方が犠牲になることであってはならない」と提携の大前提を強調した。

 一方、鈴木社長は「中間期決算(秋)までには、提携の形をつくりたい」と語り、この問題への熱意を示していた。

 7月下旬、両社の営業担当者が交歓。さらに技術者レベルでの交流もあったようだ。このような流れを受けて、大谷社長から鈴木社長に、会談の申し入れが行われ、7月31日に3回目のトップ会談として実現した。その席上で「お互いの利益になることを進める」という確認がなされた。

 両社の協調事項はこれから協議されるが、「共同販売会社」を設立。これによって販売数量と売り出し価格を市場見合いに適正化する構想も浮上しそうだ。その前段階では副資材の共同購入、物流の共有などの提携も考えられる。両社の「可能なところから提携に着手していく」との基本方針によって近い将来、提携協調が包括的なものに発展していく公算が大きい。

 両社の主力品種である小棒は、採算を大きく下回る1トン当たり2万円台の市況が長期化。この影響で両社ともに赤字決算の継続を余儀なくされている。これを打開して採算を早期に回復するために、年初からメーカー主導の値戻しが実施されている。この成果は着実に市場に反映。3万円台乗せが現実味を帯びてきている。

 両トップの共通課題は早期赤字解消、黒字化の実現にある。このため、中長期的な提携構想はともかくとして、今の段階でできることに協力し合うという合意が値戻しの進ちょくに大きく寄与していくことになる。また、日本海側の電炉業界で始まった協調促進の動きが、全国の再編・提携問題に与える意義も重要なものとなりそうだ。

神 鋼商事はこのほど、「強い商社への挑戦」をキャッチフレーズに、連結経常利益50億円、単体40億円、ROA3%などを目標とする、今年度から2002年度までの3カ年中期経営計画を策定した。時価会計・連結決算制度などグローバル会計制度の本格的導入、IT化の急速な進展など経営環境が大きく変化していることから、グローバルな視点にも耐えられる財務体質・収益構造を構築するため中期計画を策定したもの。同社では、この計画の達成により最終年度の「2002年度には復配したい」(杉本宏之社長)としている。

 中期計画の基本方針は、(1)財務体質の改善(2)収益構造の変革(3)連結経営の強化―の3点。「財務体質の改善」では総資産の見直し、有利子負債の削減、「収益構造の変革」では低採算事業の見直しとコア事業である金属部門と新事業への経営資源のシフトなどを実行する。また、「連結経営の強化」では関係会社の見直し、グループ事業の効率と成長の追求などを行うとしている。さらに事業の「選択と集中」を一段と推進、コア事業である金属部門の安定成長と、新規事業である電子部門のコア事業への育成を図る計画。

 数値目標としては、最終年度である2002年度の売り上げ目標を連結で5900億円、単体で5300億円と置き、経常利益は連結で50億円、単体で40億円を目指す。また有利子負債は連結で1200億円未満、単体で1000億円未満にする。ROA(総資産利益率)は連結・単体とも3%、フリーキャッシュフローは3カ年累計で連結150億円、単体180億円を目標としている。

 売り上げのうち鉄鋼部門は、連結で1910億円(99年度実績1629億円)、単体で1800億円(同1553億円)が目標で、16―17%の伸びを見込んでいる。また電子部門は、連結で840億円(同277億円)、単体で610億円(同237億円)と、2・5―3倍以上の大幅な拡大を予想している。

 売り上げ目標達成に向けた経営戦略としては、ITビジネス、電子商取引への対応強化、環境・リサイクルビジネスの推進を積極的に行い、部門別戦略としては、鉄鋼部門で国内プロジェクト物件への対応強化、海外合弁事業の積極的な展開を図るとしている。

 同社はこれまで99年度を最終年度とする中期計画「アクションプラン'99」を実施、新会計基準合わせて有価証券含み損などの一掃を進めてきたが、今回の計画ではこれをさらに推進するとともに、コア事業と電子部門など今後の伸びが期待できる新規事業に経営資源を集中、「強い商社」を目指していく方針である。

  02年度 99年度
  計画 実績
<連結>    
売上高 5,900億円 4,767億円
経常利益 50億円 19億円
有利子負債 1,200億円未満 1,308億円
総資産 2,800億円未満 2,658億円
ROA 3.0% 1.6%
<単独>    
売上高 5,300億円 4,416億円
経常利益 40億円 20億円
有利子負債 1,000億円未満 1,141億円
総資産 2,500億円未満 2,408億円
ROA 3.0% 1.6%
亜 鉛鉄板会(理事長=三村明夫・新日本製鉄副社長)は、今年4月施行の住宅新法に対応し、新築住宅に屋根用亜鉛めっき鋼板を使用した場合の雨漏りに対する10年担保責任を盛り込んだ、「材料統一保証基準」を作成した。住宅屋根の施工および加工会社に対し、材料の腐食による穴あきが10年間ないことを保証するもの。これまで鋼板メーカー各社でそれぞれ行っていた年数保証について、業界として統一基準を定めた。会員各社で準備を進め、10月1日から亜板会として完全実施に入る。

 新たにパンフレットを作り、これまで各社が独自に作成していた保証書は原則的に発行しない。亜板会の基準に一本化し、パンフレット内に記載している「亜板会・統一保証基準」を各社のパンフレットなどに記載する。また、必要に応じて、同時に作成した「技術標準集(雨漏り編)」を活用する。

 基準の作成にあたっては、会員以外に日本建築板金協会(勝又貞治会長)、日本金属屋根協会(川ア文一郎会長)、建設省、大学研究者の協力を得た。材料の腐食による穴あきに限っての保証であり、客先でのトラブル回避や保証を確保して屋根用鋼板の拡販につながることを期待している。

 対象材は、住宅材料の仕様基準を設けている住宅保証機構とリンクした選定で、JIS規定の(1)塗装溶融亜鉛めっき鋼板および鋼帯(2)塗装溶融亜鉛―5%アルミニウム合金めっき鋼板および鋼帯(3)塗装溶融55%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板および鋼帯(4)溶融55%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板および鋼帯のそれぞれ屋根用(ポリエステル系の2類、フッ素系の3類とも)とし、塩ビ鋼板もこれに準じる。

 今後、技術標準集について雨漏り編に続き、従来各社が保証書を発行している板平面部のチョーキングや変退色などの保証(年数保証)に対しても検討していく方針。

 亜板会ではパンフレットをテキストに、8月7日に東京(日本橋・鉄鋼会館)、8月22日に大阪(北区・日本生命中之島研修所)でメーカー、商社、流通に対し説明会を開催する。問い合わせは、亜板会まで。電話03(3669)5331、FAX03(3669)6685。

川 崎製鉄と川鉄鋼管(本社=千葉市中央区、佐山泰弘社長)は3日、高強度・厚肉鋼管の製造を可能とする新ロールベンディング法を開発し、この装置を川鉄鋼管(千葉工場)に設置するとともに、新規受注活動を開始したと発表した。

 土木・建築分野に使用されている構造用鋼管は耐震性、破壊限界性能の追求により、高強度化、厚肉化の傾向が顕著になっている。

 従来のロールベンディング法は3本のロールによる折り曲げのため、自由なパイプ径の製造が可能であり、多品種少量生産分野での構造用鋼管の製造に対して広く適用されている。しかし、上ロールの直径がパイプ内径によって制約を受けるため、特にパイプ径の細い鋼管(500―800ミリメートル径)では上ロールの強度限界やロールたわみに起因するパイプの口開き現象が発生し、製造可能範囲は極めて狭いものとなっていた。

 両社が開発した新ロールベンディング法は、下ロール間隔を最適化することで、上ロールにかかる荷重を6分の1から2分の1の範囲までに低減可能とする成形方法で、これにより従来法に比較して、パイプ径500―2000ミリメートルの範囲内で、板厚で約2倍(従来16―22ミリメートルが32―45ミリメートル)に製造可能範囲が拡大した。

 従来製造法による高強度・厚肉鋼管と比べた場合の、新ロールベンディング法で製造される鋼管の特長は、(1)従来、UOEプレスによって製造されたものに対しては、金型によるパイプ径寸法の制約がないため、自由なパイプ径の選定が可能で、経済的な鋼管断面による合理的な設計が可能となる。また、型替えも必要ないため、1本からの注文に対しても対応可能(2)従来、プレスベンドによって製造されていたものに対しては、プレス機の最大オープニング間隔によるパイプ径の制約(一般には大径の製造が難しい)がないため、より大きなパイプ径まで製造可能(3)川鉄はUOEプレス法、プレスベンド法および今回の新ロールベンディング法の最適な運用を図ることで、寸法サイズ、納期、数量などに対して、より広範囲で機動的な受注が可能―があげられる。

N KKは、独の総合エンジニアリングメーカーのノエルKRC社(本社=ビュルツブルグ市)からストーカ式廃棄物焼却炉の火格子水冷化技術に関する技術導入契約を締結した。契約期間は、今後10年間で非独占契約、日本および東南アジアでの設計・製造・販売に関する実施権を取得した。当面は、同社の鶴見事業所の環境R&Dセンターで実証試験をしながら、既設炉向けに「火格子と水冷システム」の提案活動を開始。来年度から、燃焼効率や発電効率に優れた「次世代型ストーカ炉」として大規模焼却施設向けに本格投入する方針。

 今回、同社が技術導入したのは、中空鋳物火格子と加圧水循環を特徴とする高い冷却性能と低空気比を持つ水冷システム。従来の空冷火格子に比べ、空気比を1・5以下に抑え、2倍近い大幅な高寿命化を実現している。

 水冷式にして熱効率を上げることで炉内温度を摂氏1000度に高温化でき、2000キロカロリー程度の高カロリーゴミによる高効率発電に対応できる。このため、大都市の大型炉でのゴミ発電などで強みを発揮する。また、ダイオキシン対策も炉出口で0・5ナノグラム程度に抑えることができるという。

 同比格子は、ノエルKRC社によるオリジナル技術で、スイスのホルゲン向けに94年に納めた初号機以降、ヨーロッパで11基の採用実績を持つ。水冷火格子では、ヨーロッパでトップクラスのシェアを誇り、高カロリーのプラスチック混焼やRDFの直接焼却などでの実績もある。

 コスト的には「冷却温水を間接冷却するシステムなどを含めた維持管理費を含めると4ー5年程度で回収できる」程度だという。従来のストーカ炉との比較では、火格子の高寿命化などトータルコストでは、同程度か機能アップ次第では若干のコストアップとなりそうだ。

 同社では、環境R&Dセンターで実証試験を完了させ、来年度までに高効率発電システムを付加した「次世代型ストーカ炉」として市場に本格投入する方針。

米 国際貿易委員会(ITC)は2日、日本から輸入されている錫・クロムメッキ鋼板が国内産業に被害を与える、あるいはその恐れがあるとの「クロ」の最終判断を下した。投票結果は4対2。これにより、日本の同製品は2000年4月12日にさかのぼって、先に米商務省が決定した反ダンピング・マージンを賦課されることになった。

 各社のADマージンは新日本製鉄、川崎製鉄、NKK、東洋鋼鈑が95・29%、その他32・52%と高率で、今回の決定が見直される5年後まで日本からの同製品輸出は事実上ストップする。

 このケースは、米ウエアートン・スチール、全米鉄鋼労組などが99年10月28日に提訴したもの。提訴企業が1社のみ、被提訴国が日本のみという異例のケースであることに加えて、国内製缶メーカーなど大手需要家がITCの公聴会で被提訴側の証人としてダンピング販売の事実がないと証言していたことから、ITCの最終判断に注目が集まっていた。

建 設経済研究所は3日、建設大手50社の2000年3月期の連結決算分析を発表した。売上高、売上総利益、営業利益は連単倍率が1・15―1・21倍を確保しているが、子会社・関連会社の金利負担が重いため、経常利益は単体を下回った。50社のなかの上位を中心に潤沢なフリーキャッシュフローを生み出しており、有利子負債を前期比8・5%に当たる、9810億円削減するなど財務体質の改善に寄与している。

 50社の連結キャッシュフローは営業が6775億円、投資が2250億円、財務がマイナス9495億円。営業と投資を合わせたフリーキャッシュフローは9025億円で、公表していない竹中工務店を除く、上位4社の平均は1610億円と高水準だった。営業キャッシュフローを原資に返済した場合、15・6年で有利子負債を完済できる計算だ。

 売上高は17兆9061億円と連単倍率が1・16倍。売上総利益は1兆7778億円と1・21倍。売上総利益率は9・9%と単独を0・4ポイント上回った。販管費は1兆2507億円と1・25倍で販管費率は7・0%と単独を0・5ポイント上回る。営業利益は5271億円と1・14倍で、営業利益率は2・9%と単独を0・1%下回った。

 営業外収益は1776億円と1・08倍。営業外費用は3516億円と1・29倍。金融収支はマイナス1556億円と1・52倍。経常利益は3531億円と単独の3545億円とほぼ同水準。経常利益率は2・0%と単独を0・3ポイント下回った。特別利益は4024億円と1・15倍。特別損失は9050億円と0・92倍。税引き前当期損失は1495億円と0・54倍だった。

 有利子負債は10兆5736億円と1・26倍。棚卸不動産は2兆6084億円と1・37倍。保証債務・保証予約は6685億円と0・38倍だった。

 50社の連結会社は779社、持分法適用会社が256社。前の期は連結490社、持分法適用が200社。連結基準の変更や子会社の整理などで、前年との比較ができないため、連単倍率を中心に分析している。

大 阪地区の厚板は需給がタイト化してきているうえ、在庫も品薄感が強まっていることから、扱い特約店は強気の販売を展開している。これを反映し、市況は4万3000円(トン当たり、9ミリ厚、3×6幅)どころで強含み。

 高炉メーカーは造船、重機、さらには大径管向けを中心にロールが埋まっている。輸入材も月間7万―8万トンと低水準。また、店売りの主力の中山製鋼所も通常ペースの生産にとどまっている。この結果、流通の入荷は絞られている。一方、需要は産業機械、建設機械ともに回復してきており、建築もここにきて、大底を脱したもよう。このため、地区の溶断業者は切板の受注が増え、受注残も2―3週間から1カ月近くなってきている。

 在庫も特約店、溶断業者段階ともに少なくなってきており、品薄感が強まっている。今後、流通は段階的に唱えを引き上げる方針だ。