2000.09.11
新 日本製鉄など高炉6社は8日、2000年度中間期と年度決算見通しを発表した。増産効果をフルに享受したNKK、川崎製鉄両社と半導体市況回復、ステンレス価格改善の恩恵を受けた神戸製鋼所、日新製鋼が中間期の連結経常損益で前回(5月25日)公表値を上方修正、新日本製鉄(250億円)と住友金属工業(20億円)は前回公表値通りの経常損益。NKKは前回公表値30億円増の50億円に、川鉄は同50億円増の250億円に、神鋼は同120億円増の170億円に、日新は50億円増の80億円にそれぞれ中間期の経常損益が上方修正された。

 下期については、「国内需要は上期より増えるが輸出は在庫調整局面を迎え、価格は国内、輸出とも下げ基調になる」(川鉄他)ことで、経営環境はかならずしも楽観できない。このため、年度の連結決算の経常利益見通しは、前回公表値より新日鉄が50億円増の1050億円、NKKが公表値と同じ500億円、川鉄は100億円増の550億円、神鋼は150億円増の450億円、日新が20億円増の150億円、住金は公表値と同額と、各社とも上期で上げた利益を下期でさらに大きく押し上げるとは見ていない。

 年度末での連結最終損益は新日鉄が250億円(前回公表値と同じ。ただし、中間期は八幡製鉄所の中小径シームレス鋼管設備休止に伴う除却損失等の引き当て計上負担、退職給付会計適用に伴う企業年金および退職一時金の積立不足額の償却負担などで180億円程度の赤字を計上)、NKKが240億円(同180億円)、川鉄が200億円(同220億円)、住金が120億円(前回公表値と同じ)、神鋼が170億円(同50億円)でNKKと神鋼の改善が際立っいる。

 この結果、上位5社の年度決算の連結最終損益はそろって黒字(99年度はNKK、住金、神鋼、日新の4社が赤字)となる。日新は退職給付会計に基づく積立不足額の処理、特別退職金、有価証券の減損処理に伴う評価減等の計上があり、40億円程度の損失となる見込み。中間配当は6社とも見送りを決めている。

金 属製品の電子商取引サイト運営会社「鋼材ドットコム(本社=東京都中央区、吉江純彦社長。URL=http://www.kouzai.com)」は扱い品種の拡大を受け、11日からサイト機能を更新する。また、サプライヤーとして従来の日鉄商事に加え、住金物産と神鋼商事が新たに参加する。ドットコム側では8月のサイト上の扱い実績を7月レベルの1万トン水準(見込み)としており、下期は今回の扱い品種の拡大と、3社の固定サプライヤー参加が実現したことで、さらなる増加を見込んでいる。

 今回のサイト更新で新たに扱い品種に加わったのは、アングル・チャンネルなどの条鋼、厚中板、縞板、ステンレスのコイルおよび鋼板、鋼管で、それぞれにつき在庫を検索できる。また、立ち上げ時から扱っているH形鋼は、従来はサイズなどをマトリックス表で選択して申し込む「注文方式」だったが、今回のサイト更新と合わせ、在庫の確認を可能とした。

 同時に、サイト上に「取引デモンストレーション」画面を追加したほか、高炉メーカー、鉄鋼関連団体、官公庁、メディアなどとのリンク画面を掲載した。今後は日鉄商事、住金物産、神鋼商事などの「ユーザートピックス」欄で、各ユーザーの独自性による情報提供を行いたいとしている。

 これからの扱い品種の追加は10―11月に丸棒、特殊鋼、チタン、アルミを始める予定。各品種とも注文方式からスタートし、年内をメドに在庫明細の提示に進める意向だ。金融機能は年内12月を目標に、具体化への準備を進めている。

阪 和興業は、今週から大径角形鋼管(コラム)の一次加工付きの販売価格をSTKRで5万6000円下限に1000円引き上げる。日鉄建材工業などメーカーが10月出荷分から2000円値上げするのを前に、経費をすべて賄える価格を実現させる。10月からは5万8000円下限に引き上げ、10月中には6万円に近い価格を定着させたい考えだ。

 メーカーが8月から3000円値上げしたのに対応し、阪和では8月上旬から5万5000円下限を掲げ、盆休み前には浸透していた。現状では5万5000―5万6000円が一般的だが、メーカーの追加値上げ前の収益確保のために、今回は安値を払しょくする。そのうえで10月からは本格的な値上げ分の転嫁に乗り出し、10月中に5万8000―5万9000円の水準に引き上げたい考えだ。

 需要は6月後半から堅調に推移しており、一次加工の契約残は7―10日程度を安定的に確保している。今後も加工出荷量は高い水準で推移するとみられており、鉄骨単価の上昇基調などを背景に、値上げ分は比較的順調に受け入れられると見ている。



関 西地区の鋼材取扱商社は薄板とH形鋼について、メーカーに対して減産などの要望を行う。9社会の会合後、商社が明らかにしたもので、働きかけは各社個別で行う。まず、薄板については高炉各社に期中内減産を含め、早急な生産調整を求める。また、H形鋼についてはすでに、高炉・電炉ともに減産を行っているが、今回、減産の継続とメーカーのヒモ付き価格(物件向け価格)の引き上げ、是正を要請していく。

 現在、地区の薄板市況は冷延が5万円割れとなるなど、深刻化している。これはメーカーの生産が高水準となっていることに加え、在庫が積み上がっているため。今回、商社では長引く、薄板市況の低迷を深刻に受け止め、高炉メーカーに早急な減産を要望するもの。

 また、H形鋼は市況が順調に上げてきている。ただ、この基調を大事にしていくため、引き続いての減産、および市況上伸の足カセとなっている物件向け価格の是正を、メーカーサイドに要請していく。

電 炉小棒メーカーの伊藤製鉄所(本社=東京都江戸川区、川島幸雄社長代行)は、筑波工場で生産するベース小棒のロールがタイト化してきたことから、きょう11日から14日までの4日間、新規契約分の売り出しをストップし、既契約分の明細整理を進める。18日からの9月後半分の引き受けは50―60%削減する。需給がひっ迫して値戻し環境が整ったと判断、18日からは実行販価を1000円引き上げる。

 大型の再開発プロジェクトや、公共エネルギー関連工事など、大型物件が活況を呈しているため、需要は引き続き堅調に推移している。大幅減産も継続していることから、ロールはかなりタイト化している。このため、このままの引き受けを続けていては、需要家に迷惑がかかると想定。独自の判断で新規契約分の売り止めと、大幅引き受けカットを決めた。

 こうした需給がひっ迫した状況が今後も続くことが予想されるため、販価の抜本的な引き上げを狙う。当面、18日からは実行販価を1000円引き上げるが、さらに適正販価に向けた上げも検討していく。

共 英製鋼の子会社、鉄鋼運輸興業(本社=大阪市西淀川区佃、高島浩司社長)は、電気炉を利用した医療廃棄物処理事業の拡大に取り組む。共英の大阪および名古屋事業所の電気炉に加え今回、会社更生手続き中の中山鋼業の電気炉を利用することも決まり、処理体制を強化した。将来的には共英グループの関東スチールの電気炉を利用した処理も検討、同事業での全国展開を推進する。

 同社は共英の各事業所の構内作業および製品輸送業務をメーンに行うが、10年前に共英の電気炉を利用した医療廃棄物の収集運搬処理事業に進出、岡山県から西を共英の山口事業所、兵庫県から東を同社が回収エリアとして担当し、代理店も活用して事業を展開している。同事業はメスキュード事業の呼称で、病院内に20リットル缶をはじめ専用の金属缶を設置、院内で発生する使用済み注射針やガーゼなど医療廃棄物を缶に密閉し、密閉缶のまま回収、電気炉を使って溶融処理する。

 同社ではこれまで共英の大阪および名古屋事業所の電気炉を利用し処理を行ってきたが、処理量は毎年30%程度ずつ伸びている。ダイオキシン問題などで医療廃棄物の焼却炉による処理が難しくなってきている状況からも今後、電気炉による溶融処理需要がさらに増えると予想されるため、新たな処理場の確保を検討していたが、共英が合同製鉄とともに再建を支援する中山鋼業の電気炉を活用していくことが決まった。

阪 和興業は、関東地区のH形鋼の在庫販売価格をスケジュール値上げする。新日本製鉄など各メーカーが9月契約で2000円値上げしたのに対応する措置で、アナウンス期間を経て、現状3万6000円の唱えを18日から3万7000円、25日から3万8000円に引き上げる。メーカー各社の減産で今後も在庫の減少が確実とにらんでおり、品薄在庫を背景にその後も4万円を目標に値上げを進めたい考えだ。

 東京地区の市況は3万4000―3万5000円。8月末からのメーカーの値上げ表明以後は阪和、日鉄商事、川鉄商事など商社を中心に流通は3万6000円に唱えをアップ。8月の販売量は各社ともほぼ7月並みを確保したもようで、盆休みで数量は通常減るところが、今回は堅調な荷動きを持続している。

 在庫は200×100などの中心サイズや100Wなどで長さ切れが出ている状況。現状は2―3軒に照会すればそろうため大きな混乱はないが、今後在庫が減る過程でひっ迫感が強まるとみられている。

 需給環境の好転をとらえて、阪和はメーカーの値上げ分を先行的に市況に転嫁して自社の収益を確保する。今後は需要期に入り、各メーカーの5カ月連続の引き受け30%削減で当面、需給はタイトな状況が続くと想定。メーカー側はさらに追加値上げを示唆している情勢下で、4万円を視野に順次値上げする方針だ。



東 京地区の厚板(12ミリ、ベースサイズ)市況は母材価格の上昇を背景に価格転嫁の機運が高まり、強基調で推移。仲間取引の中心価格は4万―4万1000円。

 メーカーの値上げ幅は3000円、海外も韓国や台湾は国内高炉と同じ歩調を取る。これに対して流通のシャー母材値上げは一次流通で2000円前後、二次流通・特約店で1500―2000円ほど。溶断業者以下末端流通への浸透については「対応がバラバラな面もある」(流通)が、仕事量の増加とサイズによって品薄感が出ている。

 溶断業者の仕事量は駆け込み需要で忙しかった8月後半以降も、建築物件を中心に回復基調。

 H形鋼など建材市況が全般的に上昇しつつある中で、足元の仕事量が確保されれば値上げの転嫁が進む、との見方。定尺扱いの流通量は全体比では少ないが、母材市況としては強基調が続く。

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