2000.09.21
日 商岩井は20日、更生会社で同社の100%出資会社、スズヤス(本社=東京都中央区、菊地宣彦社長兼管財人)が、10月2日の払い込みで2億円の第三者割当増資を実施、スズヤスの主力仕入れ先である新日本製鉄と神戸製鋼所が各々1億円の増資分を引き受けると発表した。日商岩井の関東地区での薄板戦略強化の一環。環境の変化に対応できる経営基盤の構築を狙う日商岩井と、薄板の販売先としてスズヤスの機能を評価していた新日鉄・神鋼の利害が一致した。

 これまでの株主構成は日商岩井100%、資本金は10億円、株式数は2000万株(額面50円)。第三者割当増資で1億円(200万株)ずつ新日鉄と神鋼が引き受けた後の株主構成は日商岩井が2000万株・10億円(出資比率83・3%)、新日鉄200万株・1億円(8・3%)、神鋼200万株・1億円(8・3%)、合計2400万株・12億円となる。新日鉄と神鋼から要員は派遣しない。 スズヤスは95年5月に会社更生法の適用を申請。同年7月の更生手続き開始決定を受けて、不採算事業所の閉鎖や人員削減など再建に向けての合理化に着手し、97年11月に15年間の更生計画で東京地裁の認可を取得している。それ以降、需要の低迷などの厳しい環境下でありながらも、いち早く合理化を進めたことから業績は現在まで順調に推移している。

 今回の増資は、業界を取り巻く環境の変化が激しくなるなか、将来に向けてスズヤスの経営基盤の安定化を図るため、日商岩井から新日鉄と神鋼に対して増資引き受けを要請。両社とも快諾した。同じくスズヤスの主力仕入れ先である日新製鋼や東京製鉄などにも、日商岩井が今回の経緯を説明して了承を得ている。

 日商岩井は今回の増資に関して、「環境の変化のなかで、メーカーの再編などに対応できる経営基盤を構築する狙いがある。新日鉄と神鋼にはスズヤスの持つ機能を評価していただいており、『あうん』の呼吸で増資要請を引き受けてもらえた」(水谷正史・常務執行役員)と説明した。

 増資を引き受ける新日鉄は「日商岩井から要請があり、増資を引き受けることにした。当社はヒモ付き向けの加工拠点といしてスズヤスとは関係が深く、店売りの神鋼と2本柱でバランスよく影響力を発揮することで、販売上の無駄な競争を避ける調整の役目もやりやすくなると判断した」とコメント。

 神鋼は「当社薄板分野にとって重要な取引先であるスズヤスへの増資を日商岩井から要請を受け、将来にわたる薄板分野の安定的な取引関係の継続を目的に、増資を受託した」としている。

新 日本製鉄が20日発表した8月末の「ときわ会」H形鋼流通在庫の集計速報によると、全国在庫は32万1500トンで、7月末比4・7%減と3カ月連続で減少した。前月の1万3000トンに続いて1万5900トンの減少で、2カ月で3万トン近い大幅な在庫圧縮。9月については、各メーカーの引受量削減などで入庫が伸びる要素がなく、足もとの荷動きなどから判断して8月に比べて出庫量が増えるため、在庫の減少で需給の引き締まり感がさらに強まると新日鉄では見ている。

 東京は入庫が6万6700トンと前月比7・1%減、出庫7万5700トンと2・1%減、在庫9万3900トンと8・7%減。大阪は入庫4万8300トンと4・4%減、出庫5万2500トンと0・6%減、在庫5万6200トンと7・0%減。名古屋は入庫2万7400トンと1・1%増、出庫2万7600トンと6・8%減、在庫3万7800トンと0・5%減。

 東名阪3地区合計では入庫が14万2400トンと前月比4・7%減、出庫15万5800トンと2・4%減、在庫は18万7900トンと6・7%減少。その他8地区合計の在庫は13万3600トンと1・8%減少した。在庫率は東名阪が1・21カ月と0・05ポイント低下、8地区は1・49カ月と0・05ポイント上昇、全国では1・31カ月と0・02ポイント低下した。

 8月の1日当たりの荷動きは堅調で、9月に入っても建築中心に同様の好調さを持続している。盆休みの停滞期がないため、8月に比べて月次の出庫量が増えるのは確実とみられ、9月末も大幅な在庫減が見込めそうだ。現状でも細幅中心に長さ切れが目立つなど、サイズバランスが崩れているため、今後品薄感がさらに強まりそうな情勢だ。

東 京製鉄(池谷正成社長)は20日、先月に続き10月契約分も鋼矢板を除く建材類をすべて建値・実行販価とも1000円値上げすると発表した。建築に用いるH形鋼の細幅サイズのエキストラも改定した。民間の建材需要が緩やかに回復、引き続き市況が強含みに推移すると判断した。その他の品種の価格は据え置き。申し込み締め切りは25日。

 新しい売り出し価格(建値)はH形鋼3万6000円、縞H形鋼4万4000円、I形鋼3万9000円、溝形鋼3万3000円、山形鋼2万9000円、線材3万5000円、異形棒鋼2万7000円(CIF)。U形鋼矢板はこれから需要期となるため、動向を見極める意味もあって価格を据え置いた。鋼板類の需要は徐々に底入れしていることから、秋に向けて建材類に続く価格回復を目指していく。

 また、今回はH形鋼の細幅サイズのエキストラを改定。100×50はベース比6000円(これまでは2000円)、125×60は同比4000円(同2000円)、150×75は同比2000円(同ゼロ)とした。長らく建築需要が低迷するなかで、エキストラ体系が崩壊していたが、中小の建築物件を中心に需要が回復してきたことで、エキストラを戻す環境が整ったと判断した。

神 戸製鋼所をリーダーとする4社コンソーシアムは、イタリアのイタリセメンティグループ向けに、セメントプラント新設工事を約50億円で受注した。

 同社単独の受注金額は約30億円で、9月に建設着工、2003年春に引き渡し予定。生産能力はクリンカーベースで日量3600トン。欧州向けのセメントプラント受注は、国内セメントプラントサプライヤーとしては初めて。今後は、すでに実績があるイタリセメンティグループや世界最大のフォルダーバンク社などの継続受注を狙うともに、NEW―DDプロセスなどを中心に代替燃料対応案件向けの営業を強化、年間50億円規模の受注を目指していく方針。

 今回のプロジェクトは、イタリアのイタリセメンティグループの発祥の工場であるバルガモのカルスコ工場向けに納めるもので、既設の半湿式焼成設備4系列を新型乾式焼成設備(NSPキルン)方式1系列に転換、その付帯設備の改修工事も行う。

 入札には、同社をリーダーに、シーメンス社(独)、FMコンストラクション社(伊)、日商岩井イタリア社の4社コンソーシアムを組織して参加。最終的には、NOXや騒音など欧州内の厳しい環境規制対応技術であるNEW―DDプロセスの技術力が高く評価されたことが、受注につながったものとみられる。

 受注範囲は、原料ミルからNSPキルン、クリンカークーラーに至る設計、機器製作、調達、輸送、据え付け工事、試運転まで。このうち、機械部門は、同社とFMコンストラクション社と日商岩井イタリア社が請け負い、電器部門はシーメンス社が担当する。

川 崎製鉄は20日、断面が四角形状の線材を、熱間圧延により製造する技術を開発し、製造を開始したと発表した。

 精密機械の部品や特殊なギヤなどに使用される四角形の鋼材は通常、丸鋼(断面が円形の線材棒鋼)を伸線して製造されている。

 川鉄は、水島製鉄所線材・棒鋼工場に開発導入した「KSミル(4ロールサイズフリーミル)」を用いることで、断面が四角形状の線材を、熱間圧延により高い寸法精度で製造することが可能となった。

 さらに四隅の形状も、「直角」から「なだらかな曲線形状」まで、任意に製造できる。

 これにより、需要家での冷間伸線と熱処理の回数を減らすことが可能になり、さらに用途によっては、伸線工程、熱処理工程を省略できる可能性もある。これによって、需要家サイドでのコストダウンに貢献できる。

 川鉄では今後、適用の拡大に向けた取り組みを図る方針。



重 仮設リース大手のヒロセ(本社=大阪市西区、廣瀬太一社長)はこのほど、自社開発の地山補強土工法「ダグシムシステム」で、建設大臣認定の土木系材料技術・技術審査証明事業実施機関である土木研究センターから技術審査証明を取得した。同工法に使用する部材の力学特性や品質が審査確認されたもので、同社ではこれを機に官公庁や設計コンサルタントなどに積極的に採用を働きかけ、普及拡販を図る。

 「ダグシムシステム」は、地山補強の中でもとくに切土斜面の安定を目的に1988年に開発され、これまでに230件の採用実績がある。特許も取得済み。補強芯材にパイプを使用し、パイプの先にビットを取り付けて削孔・掘進しながら、同時に先端部からモルタル注入を行う同時注入工法で、ダグシムパイプ(補強芯材)、ダグシムパイル(補強材)、ダグシムカップラー(補強芯材の継手)、ダグシムビットなどの部材を使用し施工。削孔と注入の同時施工などによる工期の短縮や、膨張性注入材と独自考案したツバ付芯材とにより、補強芯材と地山との強固一体化などを実現する。

溶 接材料・機器商社の愛知産業(本社=東京都品川区、井上裕之社長)は、独自のシーム溶接機について、従来の特定ユーザーへの営業から、より広い市場開拓を目指し提案営業を拡大する。ガス不要で光を出さず軽量コンパクトな同社のシーム溶接機は、5年ほど前から本格販売に入り、これまで300台ほど販売、大手造船所や発電所、ドラム缶メーカーなどに納入している。0・27ミリ厚の薄板から最大10ミリ厚の厚板までシーム溶接が可能で今後、リベットや鋳物など他の接合・加工分野への展開を図り、市場での普及を図る方針。

 従来の自動溶接は、炭酸ガスやアルゴンなどを使うTIG・MIG溶接で、ヒュームガスの発生や紫外線、火花など作業環境に難点がある。抵抗シーム溶接は円盤状の溶接電極を使い、連続的に回転させながら電流を断続させて溶接を行う溶接法。接合する板同士の内部抵抗を利用して発熱させるため、ガス、紫外線、騒音などを出さず、溶接スピードはアーク溶接の10倍と速い。しかし、電気効率が悪く大容量の電気設備が必要なため、これまでは薄板のタンク・容器類、空調ダクトなど一部の利用にとどまっていた。

 愛知は、1928年にベルギーの溶接棒輸入を生業に設立し、40年ほど前からフランスのARO社の総代理として抵抗溶接機の輸入を進めてきた。20年前に抵抗溶接機の中のシーム溶接機の国産化に取り組み、4000台近くを販売している。

 5年前にシーム溶接機の問題点である大電気容量に関して、ARO社の省エネトランスと愛知が開発した直流MFトランスを採用することで、電気容量を従来比約10分の1の低減化することに成功。電気容量を抑えたことでサイズがコンパクトになり、制限されていた使用範囲を拡大した。

東 京地区の厚板(12ミリ、ベースサイズ)市況は4万1000円どころ中心で強基調。

 メーカーの値上げは一次商社段階で3000円で出そろったようだ。二次販売業者では早くから値上げを打ち出した向きと、周囲を慎重に見て価格を据え置く向きとに分かれている。このため定尺市況としては完全に上がっていないが、段階的な転嫁へ向けて時機を待つ状態。メーカーの生産体制は引き締まっており、店売り向けへの供給は引き続き絞られる見通し。

 需要は建築関連を中心に漸増。中小溶断業者では小口、短納期の仕事が大半だが求められるような納期対応ができないほど忙しい業者もあり、仕事の繁忙感が安値払しょくにつながり相場全体を底上げしつつある。

 切板価格の値上げが課題となるが、輸入材を含めて先行き母材価格はさらに上昇する可能性もあり、市況は目先も強含み推移か。