2000.09.26
三 菱商事と三井物産は、新日本製鉄と米イスパット・インランド社の合弁会社、I/Nコート社(本社工場=インディアナ州ニューカーライル)が導入するCGL(溶融亜鉛めっき設備、年産能力40万トン)の建設について、イスパット社など関係各社との間で先週、契約・調印した。機械設備の総額は2億ドル(約210億円)で、機械設備本体は新日鉄が製作。設備輸出は三菱商事が取り扱い、プロジェクトファイナンスを三菱商事が70%、三井物産が30%の割合で担当する。

 I/Nコートは現在、年産50万ショートトンのCGL(新日鉄製)と同40万ショートトンのEGL(電気亜鉛メッキ設備、オーストリア、ルスナー社製)を保有。米自動車産業の活況を背景に両設備ともフル操業を続けている。

 その中で近年、自動車各社はトヨタ、ホンダなど日系のみならず、GM、フォード、クライスラーのビッグ3もコストが割高なEG鋼板をCG鋼板へシフトする動きを強めており、I/Nコートでは、かねてCGLの増強が懸案事項となっていた。

 新CGLの操業開始は2001年末とみられ、その時点でI/Nコート社のCG鋼板は現在の約2倍に増強される。

 I/Nコート社は、同社より2年早い1987年7月に設立(操業開始90年3月)された冷延鋼板メーカーのI/Nテック社(本社工場=I/Nコートと同じ、出資比率=新日鉄40%、イスパット・インランド60%)とともに、新日鉄の北米における最重要拠点。I/Nコートが使用する原板の大部分は、I/Nテック社から供給されている。



通 産省は25日、同省内で「第4回アジア鉄鋼市場と日本鉄鋼業研究会」(座長=浦田秀次郎・早大教授)を開き、東アジアへの自動車、電気機械などユーザー業界の進出動向、海外鉄鋼メーカーのアジア戦略、電子商取引の影響について意見を交わした。ユーザー業界の動向では、中国が2010年に向け自動車市場が2倍に拡大、電機も堅調に推移、韓国も同年ごろ自動車、電機と過去最高水準に達するとされ、インド、台湾、タイなど総じて輸出基地として成長を予測。これを受けて鋼材使用も拡大するほか、東アジア地域への進出も中国など拡大方向にあることが示された。海外鉄鋼メーカーの展開ではBHP、浦項綜合製鉄(POSCO)、中国鋼鉄(CSC)、ユジノールなど欧州メーカーの進出状況が報告され、各国国営製鉄所の買収の動きなどが説明された。

 ユーザー業界の動向では韓国で自動車、家電が99年までのマイナス成長が底を打ち、自動車は2010年ごろには過去最高水準に回復するなど、拡大傾向を予想。中国では2010年には自動車市場は97年の2倍に成長、家電も拡大が持続するとされた。これを受けてアジア、欧州企業の現地進出も活発化している。アジア地域全体で見ても、カラーテレビ、エアコンなど家電は着実に生産量を増やし、地域内需要とともに輸出基地としての色彩を強めていることが指摘された。これに伴って現地での鋼材使用量も伸展、今後も増加していく方向だ。

 海外鉄鋼メーカーの展開では、韓国への進出事例はないものの、POSCOによる展開は中国、ミャンマーと進められているほか、中国ではBHP、POSCO、CSC、クルップ・ティッセン・ステンレスなどが展開。インドネシアではBHP、ミャンマーではPOSCOが資本投資を行っている。台湾ではCSCが同地域間で他社への資本参加による高炉建設を進めているほか、インドネシアでの高炉建設構想が伝えられている。マレーシアの現地企業の株式取得で東アジア市場への進出を図っていることなどが報告された。タイではユジノール、BHPのステンレスや亜鉛鉄板、表面処理鋼板の現地生産について伝えられた。このほかフィリピンでの国営製鉄所買収の情報や、各国メーカーの輸出状況などが説明された。

 電子商取引(EC)については、各国ともIT(情報技術)政策を積極的に推進、この中で鉄鋼については、ミャンマー、マレーシアなどでは進んでおらず、国によって格差がある。全般的には内容など今後さらに拡大傾向する予想としている。



首 都圏ではゼネコンが決定した大型物件だけで来年上期までに48万トンの鋼材発注が予定され、未決定の計画物件では38万トンの鋼材需要が見積もられる。計86万トンの物件が着工を待っていることにより鉄骨単価が急上昇、建築用鋼材も先行して値上がりするなかで、ゼネコンとファブリケーターの生き残りをかけた受注競争も厳しくなり、同時に鉄骨単価、鋼材価格の値上がりも必至だ。

 計画が進む40件を超える大型物件の中で、すでに鋼材が発注されたのは4件にすぎず、これから本格化していく。またファブが決まったが、確定的となったのは24件ほどで、大半は年内に鋼材発注先が決まる。

 ゼネコンが決まった27件のうち、大きなプロジェクトは汐留B街区三井・アルダニー棟(ゼネコンは竹中工務店、ファブ=確定的を含む、以下同じ=はNKK・住友金属工業・山根、鋼材使用量は3・1万トン)、汐留C街区日本テレビ本社ビル(清水建設、石川島播磨重工業・住金・新日本製鉄、3・7万トン)、品川駅東口大東建託本社ビル(竹中、NKK・ヤマネ、2万トン)、品川東口三菱商事三菱自動車工業ビル(竹中、川岸工業など、2・8万トン)、六本木の六・六B街区事務所A棟(森ビル中心の組合が施主、大林組・鹿島、横河ブリッジ・駒井鉄工・川田工業・NKK中心、9・5万トン)、汐留C街区鹿島複合ビル(鹿島、ファブは全くの白紙、2万トン)。

 ゼネコンが未定で来年後半以降の鋼材発注が予定されるのは、旧国鉄本社ビル跡地再開発(施主は日本生命・三菱地所、5万トン)、明治生命館街区開発(2万トン)、東京駅八重洲口複合ビル(森ビル、3万トン)、日本工業倶楽部会館永楽ビル(日本工業倶楽部・三菱地所、2万トン)、汐留D北1街区ツインタワービル(森ビル、3万トン)、新宿駅南口基盤整備・南口ターミナルビル(JR東日本・建設省、3万トン)などがあり、さらにロッテによるドーム、ホテル、プラザ、商業棟からなる超大型事業(設計は久米設計)では鋼材14万トンの需要が見積もられる。

 大型物件をめぐるゼネコンの受注合戦は激しく今後もその傾向が続きそう。だが鉄骨単価や鋼材価格の先高予想によって、未定物件の落札価格も急上昇する気配を強めている。

 すでにゼネコンが決まった物件に対する関係者の説明によると、三菱地所の新丸ビル(2・8万トン)では大林が先行していたが、大成建設が逆転して解体・地下工事を受注し、大林は予定を100億円ほど切り下げて巻き返しに成功したという。



大 手溶断業者の大阪玉造鋼業(本社=大阪市西区九条南、中本茂社長)は四国工場の増築、およびレーザーNC切断機1台を増設しているが、今月末に一連の作業を完了する。増築部分の本格稼働は10月から開始する。今回の増築は切板の納期対応を円滑化させるとともに、四国地区の需要に細かくフォローしていくのが狙いで、切板能力も月間800トンと従来に比べ200トン増える。 同社は本社と、大阪、名古屋、福岡、福山、四国に事業所、そして工場は大阪の九条、西淀川、名古屋、福岡、福山、四国の6カ所があり、産業機械、車両・運搬機、電気機械・設備向けに切板を行っており、切板数量は全社トータルで月間6500トン前後。

 四国工場は四国全域の切板需要に対応するため、1988年に開設した。今回の増築前の工場概要は敷地面積が約5000平方メートル、工場建屋が1485平方メートル。加工設備がレーザーNC切断機1台、自動ガス切断機2台、天井走行クレーンは20トンが1台、10トンが1台の計2台、CAD・CAMが3台で、ここ最近の切板は月間550―600トン。

 工場開設後、地域の切板の受注が順調に伸び、昨年くらいから、既存の工場・倉庫スペースと加工設備では納期の迅速化、およびまとまった注文に対応しづらくなっていた。このため、四国工場が繁忙な時には大阪事業所・工場や他の工場がバックアップしてきた。

 しかし、切板の注文内容は先行き、さらに小物・複雑形状で、即納化が要求される方向にあり、物流面も考慮した場合、他工場からの支援方法ではコストがかかるなどの問題があった。これを受け、四国工場の増築、設備の増強が必要と判断した。

 増築工事は今年6月から開始した。工事個所は既存工場建屋の東側部分で、増築面積は1485平方メートル。設計・ゼネコンは大和ハウス工業。すでに、建築工事自体は終えており、現在、増設設備の据え付け・テストを行っている。

 増設設備は田中製作所製のレーザーNC切断機で、出力は4キロワット。今後、既存のレーザー切断機とともに、小物・複雑形状の注文をこなしていく方針。また、設備の増強に加え、建屋の増築により、切板母材のスペースが拡充でき、この結果、切板能力は現状の月間600トン程度から、月間800トンに引き上げられる。

川 崎製鉄は25日、川鉄サーモセレクト方式ガス化溶融技術について、10月1日付で極東開発工業に対し、同方式の製造・販売・使用に関する国内の非独占的権利を再実施許諾すると発表した。この技術について、98年10月、三菱マテリアルに再実施許諾している。

 川鉄サーモセレクト方式は、97年11月に川鉄がスイスのサーモセレクト社から技術導入した廃棄物ガス化溶融技術で、(1)ごみを圧縮して乾燥・脱ガスし、高温溶融ガス化―ガス改質―急速冷却することによってダイオキシン類の合成をほぼ完全に抑制しつつ、有用な燃料ガスとして回収し、ガスエンジン、燃料電池等による高効率発電等に活用する(2)ごみ中に含まれる不燃物や金属類、有害物質は、再利用可能なスラグ、メタル、金属水酸化物、硫黄、混合塩、再利用水として回収する(3)このシステムにより、施設からの有害物質排出量を極小化するとともに、飛灰などの最終処分必要物をなくすことで、ゼロエミッションの実現を可能にする―などの特長を有する。

 川鉄では、99年9月に千葉製鉄所内に日量処理能力300トンの設備を設置して実証試験を実施、実証試験完了後の今年4月からは、本格的な販売を開始し、併せて同設備を用いた産業廃棄物処理事業を展開している。また、今年3月には全国都市清掃会議から、技術検証・確認を受けた。



物 流合理化機器・システム販売のワイテック(枚方市上野、横島直彦社長)はこのほど、長尺・重量物の立体保管システムである「とくとくラック」の低価格版である「HFクレードル」の本格販売を開始した。

 「とくとくラック」は、形鋼、丸棒、パイプなどの鉄鋼製品をはじめ、サッシ、ガードレールなどの建材製品を保管するマニュアル式多段ラックで、(1)倉庫丈夫空間を有効利用する省スペースシステム(2)玉掛け作業不要の安全・省力システム(3)数本単位の小出し作業が可能な効率システム(4)レイアウト変更が簡単なフレキシブルシステム―などの特長を持った保管システムで、これまで150社以上に納入実績を持つヒット商品。

 今回、このシステムの低価格版として、これまで特定ユーザーに販売していた「HFクレードル」を本格販売することにしたもの。価格は1万4800円からの低価格で、従来の「とくとくラック」は、デラックスタイプとしてこれまで通り販売していく。

 「HFクレードル」は、「とくとくラック」同様、高さ方向、長さ方向とも省スペース構造になっており、作業性が良く入出庫作業が速い、ガイド機能が優れ熟練作業者が不要、安全性が高いなどの特長を持っている。また、他のクレードルでは、片側だけに保管品が入っている場合、クレードルが傾くなどの問題が発生するが、「HFクレードル」はそうした問題も起こらず、他社製品に比べ優れた機能性を保持している。しかも低価格であるなどの特長を生かし、このほど本格的な一般販売を開始したもの。

 同社では、従来の「とくとくラック」をデラックスタイプとし、低価格版の「HFクレードル」とともに、積極販売を行っていく意向。

 【ニューヨーク支局】米アイアン・エイジ誌まとめによる18日現在の米国鉄スクラップ・コンポジット価格(1ヘビー、トン当たり)は89・00ドルで前週横ばい。ひと月前の同価格は89・33ドル、1年前は96・33ドルだった。

 一方、西海岸の輸出向け同価格は、ロサンゼルスが46ドル、サンフランシスコは28ドル、シアトルが29ドル、国内向け同価格はロサンゼルスが76ドル、サンフランシスコは28ドル、シアトルが31ドルでいずれも同横ばい。



新 日本製鉄など高炉6社と、韓国・冷延単圧メーカーとの来期(10―12月)積みホットコイル商談はにらみ合いが続き、本格化するのは10月中旬となりそうだ。数量減、価格調整は避けられそうもない。

 高炉6社による現代鋼管、世亜製鋼、東部製鋼、聨合鉄鋼など韓国のリローラー向けの交渉は大幅に遅れている。理由は(1)今期(7―9月)積みが10月にキャリーオーバーされる(2)株式市場の乱調にみられるように、韓国経済に不透明感が漂い始め、単圧メーカーが生産計画を決められない(3)浦項綜合製鉄に対する値下げ交渉に結論が出ていない―などが挙げられる。

 一方、日本6社も新日鉄が輸出向けを50万トン以上削減する方針のほか、他社も実需見合いのトレードプランを立てるなかで、韓国向けも抑制するタイミングを計っており、機が熟した段階で大幅削減を提案することになろう。価格は国際マーケットに応じて調整は不可避としても、最小限にとどめる構え。

 韓国のホットコイル輸入量は、四半期ベースで100万トンを超える高水準を推移してきた。日本が大半を占め、うちリローラーが70%ほどと日本6社にとって最重要なユーザー。今年1―3月積みの場合は全輸入量が128万トン、うち日本からは91万トンだった。だからこそ日本側が数量減を絡めた価格政策をとれば、無用の混乱は避けられる―との判断がある。

 日本の今期積みの対韓ホットコイルは前期(4―6月)積みに比べ20―30%ほど減少するものとみられ、来期積みではさらに減少しよう。

 日本側には在庫調整が完了するまで削減を続ける―との考えがあり、来年1―3月期中には効果が表れると想定している。

 価格は昨年4―6月積みからの5期連続の値上げが、今期積み商談で据え置きと一段落し、来期積みは値下げを余儀なくされよう。

 韓国経済は成長率こそ鈍化し波乱要因も散見されるが、依然として力強さは失われていない。対米輸出の依存を脱し、自立的な成長の循環に入ったような傾向もある。

 日本の対韓鋼材輸出は転機を迎えているものの、意外と早く調整段階を通過するかもしれない。

東 京地区の中板(4・5ミリ厚、ベースサイズ)は3万8000―3万9000円どころ中心で横ばい。

 メーカー、コイルセンター在庫の増加から弱気へ傾いていたが、新日鉄が店売りの引き受けカットを表明したこと、需要が底打ちしたことから「これ以上の値下げはないだろう」(コイルセンター)との認識。コイルセンター出し値は一時の高値に比べて2000―3000円下落したが、仲間相場は「値下げで数量が増える状況にない」との見方が強く、ほぼ据え置きで商いを行っている。

 5―6月に一部メーカーの集中出荷を行い、コイルセンターの在庫増に結びついたといわれる。当面は在庫調整の局面が続くが、コイルセンターは「在庫にばらつきはあるが、契約量も落としているし、それほどだぶつき感はない」という。高炉メーカーの供給姿勢がポイントとなる。