2000.09.28
2 000年度下期の国内大手造船18社の造船鋼材購入予定量は130万5375トンで、上期比3・7%の増加となった。新造船受注が比較的堅調になったのに加え、期近納期の新造船が増加しているためとみられている。品種別では、厚中板が107万6929トンで同3・6%増。形鋼が12万1791トンで同5・9%増。これに対し、鋼管は2万8910トンで同5・0%の減。VLCCなどのタンカー受注が、低下しているのを反映している。年度間では、上期の低下があるため鋼材全体では256万4185トンで前年度比1・1%の減。日本造船工業会が27日、アンケート調査の結果をまとめて公表した。

 国内造船の鋼材購入・消費量は、このところ低下傾向にあり、上期まで微減で推移している。しかし、7月後半から新造船受注が回復していることを受け、起工ペースも再び上昇に転じている。鋼材購入量も、8月後半から増加に転じており、下期ではより明確になっている。

 アンケート調査によると、00年度下期の大手18社の鋼材購入予定量は普通鋼で128万3375トン、上期比3・4%増。特殊鋼が2万2000トンで同22・7%の増加。合計130万5375トンで、同3・7%の増加。ここ数期のマイナス傾向から、増加に転じた。

 消費予定量も130万7080トン、同3・6%と増加する見込み。

 こうした消費増を背景に、00年度末の在庫は3万2538トンで同5%の減少見通し。

 個別品種の購入予定量は、厚中板、形鋼が増加。特殊鋼も、高張力鋼板が3025トンで同230・9%の大幅な増加。低温用鋼も1万7020トン、同12・9%と増加する。ケミカルタンカーや冷凍船などの特殊船が増加しているためで、01年度もこうした傾向が続く見通し。

 年度の購入予定量は上期の低下傾向が影響して、全鋼材ベースでは256万4185トン、同1・1%減とマイナスが残る。消費予定も256万8348トン、同0・9%の微減。下期の鋼材購入予定量の増加傾向は、来年度も継続する見通しで、01年度は全体で鋼材購入量がプラスに転じる可能性が出てきた。

通 産省の2000年度第3・四半期(10―12月)の特殊鋼需要見通し(熱間圧延ベース、月平均)によると、特殊鋼需要量は国内、輸出合わせて133万4700トン(前期比1・8%増、前年同期比7・7%増)と策定された。自動車生産をKD込みで394万台と7―9月期より2・3%増加すると予想、さらにIT(情報技術)に絡んで、ステンレスなど国内向けを中心に増加見通しとなった。見通し通り推移すると特殊鋼生産は7期連続の前期比増、6期連続の前年同期比増となる。

 第3・四半期見通しの内訳は、国内が97万5900トン(同3・4%増、同10・2%増)、輸出が35万8800トン(同2・4%減、同1・6%増)。国内向けは6期連続の前年同期比増で4期続いて10%台のプラスとなる。

 国内向けでは主力需要分野の自動車生産を、完成車で255万台と前期より2・8%増加、KDセットで139万台と同1・5%増加するとし、構造用鋼やばね鋼、軸受鋼、自動車用鋼が増加するほか、ステンレス鋼も建材や電子部品など機能材の増加を見込み、全鋼種が前期比、前年同期比増となる。

 輸出は各社ともフル操業下にあり、好調な内需にシフトしているため、減少する鋼種が多い。

 在庫(メーカー・問屋在庫)についても7月末は0・89カ月で、6月末の0・94カ月、99年6月末の1・04カ月から圧縮。適正レベルの範囲内にある。

 ただ、同省では、ステンレス鋼板で輸入が4―6月に前期比で15・6%増、前年同期比で30・7%増と増加している点について「様子を見る必要がある」(鉄鋼課)とし、特に韓国からの輸入量が大きく伸びていることを注視している。

阪 和興業は27日、東京・大手町の経団連ホールで、同社の電子商取引サイト「hanwa−steel.com」の説明会を行った。当日は同社の取引先から約350人が出席し、サイト機能の説明に聞き入った。

 同社が10月1日から本格的な立ち上げを予定している鋼材の電子商取引サイト「hanwa−steel.com」は、総合商社などが立ち上げを検討しているオープンサイトとは異なり、阪和興業の取引先を対象としたクローズサイトであることが特徴。

 サイトの設立は、阪和興業および取引先の業務効率化を主眼とし、双方のルーティーンの営業にかける時間および事務処理を圧縮させ、新規取引や提案営業など創造的な業務能力を高めることを目指す。

 サイトの扱いは、店売りの仲間取引の小口を対象としており、この業務処理をスピード化する。在庫・単価情報は取引先ごとに公開する。取引先には個別のIDが与えられる。

 扱い製品のカタログは東京製鉄、中部鋼鈑などが掲載されており、今後も相手先の了承を得次第増やしていく方針。商品の(1)条鋼(2)薄板(3)表面処理(4)厚板―を年内にラインアップする予定。その後はステンレス製品にも広げたいとしている。

神 戸製鋼所溶接カンパニー(島田博夫・執行社長)は、ここ数年赤字基調を続けてきたロボット事業が、工場集約と営業強化が効果を上げ、下期は黒字基調に乗る見通しだ。99年に豊橋工場のロボット事業を藤沢工場に集約し、コスト構造を改革。昨年から溶材部門の営業要員をロボット事業に振り分け、営業強化を進めてきた。今期は鉄骨需要の回復を受け、ロボットシステムの販売数量が伸びたこともあり収益が改善している。通期では赤字脱却は困難とするが、体質改善の進展で来期は黒字確保を目標としている。

 同社のロボット事業(溶接システム部)は、中厚板を得意領域とし、向け先は鉄骨、建設機械、橋梁がメーン。売上高は約30億円。建設不況のあおりでバブル崩壊以降は部門赤字を計上してきたが、99年に豊橋を藤沢に集約したことで開発、管理部門を一本化、また部品点数の圧縮やデッドストックの削減など、抜本的な見直しを進めてきた。

 99年から営業要員を増強し、キメ細かな営業展開を図ってきたが今年に入り、建設機械のリプレース需要が出始め、建機向けが堅調に推移。また、都心部の大型プロジェクトやIT関連投資を背景に今年度の鉄骨需要見通しが800万トン(99年度768万トン=鉄構建設業協会まとめ)とファブリケーターの仕事量が増えてきているため、鉄骨向けに省スペース型コア・仕口兼用溶接ロボや柱大組立溶接ロボなどのロボットシステムの販売が上向いている。ユーザー先では、作業のスピード化や省力化から機械化の志向が強く、また建築基準法の改正によって、新基準をクリアするロボットの導入も一部で進められている。

 こうした需要環境の好転と社内体制のスリム化で体質改善が進み、上期は赤字を余儀なくされるものの、下期は収支が均衡するメドがついている。さらにコスト削減の課題を消化し、来期の黒字達成に向け基盤強化に取り組む構えだ。

新 日本製鉄プラント事業部は27日、熱間圧延分野での高性能ロールであるCPCハイスロールの技術をベースに、革新的な冷間圧延向けワークロールを開発、広畑製鉄所のミルでの適用を開始したと発表した。

 これまで、冷間圧延用ワークロールは、鍛鋼製一体ロール(5%クロム鍛鋼ロール)が主流であった。ロール替えから次のロール替えまでの圧延量増大、生産性向上を狙い、鍛鋼製一体ロールのセミハイス化が試されてきたが、幅逆転圧延を実現するほどにはロールの表面粗度保持性(耐摩耗性)が改善されず、限定的な使用にとどまっている。一方、鋳造系ロールは、「鍛造に比べ、組織が粗く不均質なため靭性が劣る」とされ、適用はあまり考えられてこなかった。

 今回、新日鉄が開発した冷延用ワークロールは、軸部は強靭なクロム―モリブデン鍛鋼であり、圧延に使用される胴部については、急速凝固による微細かつ均一な結晶組織を特徴とするCPC法に、今回新たに導入した誘導加熱装置による特殊な熱処理を加えてミクロ組織を大幅に改善、冷延用の全く新しい材質を開発した。これにより、冷延ワークロールの最大の課題であった表面粗度保持性が大幅に改善、幅逆転圧延が実現され、飛躍的な長寿命化が可能となった。

 新日鉄広畑製鉄所錫メッキ工場のタンデムミルの圧延実績では、5%クロム鍛鋼ロールと比較して粗度保持性は5倍以上に改善、1ロット当たりの連続圧延量は3―5倍に増大した。また、幅逆転圧延の結果も極めて良好だった。この幅逆転圧延の実現は、「スケジュールフリー化」(圧延計画の自由度拡大、突発的な計画の変更にも柔軟に対応できるフレキシブルな生産体制)に大きく近づくものであり、この面でも冷延工程での納期対応力の強化、コスト削減への寄与が期待されている。

 この冷延用CPCハイスロールは、すでに広畑で通常使用(プロパー化)が決定している。

川 崎製鉄が鋼管業界の重要勢力としての重みを増そうとしている。一連の業界再編の結果、鋼管業界の高炉4社による勢力均衡体制が崩れ、各社独自の戦略性が強まる中で、川鉄の独自性が鮮明化している。

 鋼管業界ではこれまで、NKKがガス管、住友金属工業がシームレス鋼管、新日本製鉄が電縫管をそれぞれ強み・特色とする中で、川鉄は独自性にやや乏しいとされる傾向があった。

 しかし、高能率・高品質の傾斜圧延法での生産を目指して80年代初めから研究・開発を進めてきた13クロムステンレスシームレス鋼管は現在、世界シェアの約40%を占めるトップメーカーの地位を確立。また、世界最大径の26電縫管ミルによる輸出用ラインパイプや、国内向け構造用鋼管ではトップクラスのシェアを構築中。これに続いて今秋から新たに高強度、高延性、高加工性のニーズを充足する新製品である電縫管「HISTORY鋼管」の生産・販売を開始する。

 川鉄は、UO鋼管を除く鋼管をすべて知多製造所で生産。最も厳しい状況に陥っていたシームレス鋼管は、専門工場の強みを生かしながら徹底した合理化・コスト削減を実行。この結果、4社の中では赤字幅が最小レベルまで縮小するなど、コスト競争力を強めてきた。

 新日鉄の油井用シームレス鋼管からの撤退、NKKのシデルカとの合弁事業化など再編が相次ぐ中で、川鉄は独力で事業を継続する。

 水島、千葉両製鉄所の黒字基調が定着するとともに、両製鉄所がそれぞれNKKの福山、京浜両製鉄所との間で業務協力することで合意している中で、この対象になっていない知多製造所は一層独力での生き残り策を求められることになる。

 これを推進するため、13クロムステンレス鋼管に続く独自技術・分野の開拓製品が「HISTORY鋼管」。3社が電縫管分野でグループ会社への生産・販売移管など連携を強める中で、これを持たないで独自の戦略と基盤強化を目指す川鉄の動向は、溶協メーカーを含む鋼管業界で一段と注目されるものとなっている。

三 井物産系のコイルセンターのオーシーシー(本社=大阪府堺市、松浦正芳社長)は10月1日から、平和鋼板(岸田徹社長)とスチールセンター(本社=東京都、末光敬正社長)の大阪事業所の薄板加工の営業権を譲り受け、営業生産を本格的に開始する。本社工場の一次加工設備は現在、大型レベラー1基、大型スリッター1基だが、12月には大型レベラー1基と大型スリッター1基、および二次加工設備を設置、フルライン体制を整備する。加工は2直の終日稼働で、一次加工能力は月間1万9000トン(2直)。当初、月間1万トンの加工を目指し、来年度には建材向けなど自販分野を伸ばし、年間20万トンまで増やす。設備の特徴はレベラーの1号機が加工可能な板幅が5幅と大型・広幅コイルの加工ができ、他の設備・工場レイアウトも生産・物流効率、製品品質を重視したものとなっている。経営的には3年目の02年度には黒字化、4年目には累損を解消したい考え。

 同社は三井物産が関西地区の薄板需要の対応強化、および地区の関係コイルセンターの設備統合・集約を図るため、昨年12月に設立した。資本金は3億400万円。出資比率は三井物産が81%、新日本製鉄が14%、スチールセンターが5%。

 その後、新日本製鉄の堺製鉄所内に薄板加工の工場整備を進めてきた。現在の工場概要は工場敷地が3万3000平方メートル、工場建屋が1万3200平方メートル(うち1200平方メートルはスチール京阪が二次加工で使用)、事務所の床面積が846平方メートル。

 加工設備は8月に、大型レベラー1基を広畑鋼板工業から移設、その後に改造、大型スリッター1基も新設した。また、ミニレベラー2も平和鋼板、スチールセンターの大阪事業所から移設。これ以外に、各種クレーン16台、および自動搬送台車3台。

 今回、平和鋼板、スチールセンターの大阪事業所(大阪府寝屋川市)の薄板加工の営業権を10月1日でオーシーシーに移し、オーシーシーは同日から本格的な営業生産を開始する。これにより、スチールセンターの大阪事業所は9月30日に閉鎖する。ただ、スチールセンターの大阪事業所はオーシーシーへの設備の移行期間のため、今年11月末まで一部の加工を行う。

 今後、設置する設備は大型レベラー1基、大型スリッター1基、およびミニレベラー1基で、スチールセンターの大阪事業所から移す。シャーリング設備はスチールセンターの大阪事業所と平和鋼板から移す。この結果、12月には大型レベラー2基、大型スリッター2基、ミニレベラー3基、シャーリング5台となる。

 工場の特徴としてはまず、推進が8メートル、5000トン級の船舶が着壁が可能な岸壁があり、陸送だけでなく、海上からも入出荷できる体制となっている。また、多品種・小ロット生産に適当なレイアウトとなっており、型替え・段取り時間を短縮、高性能な加工ラインとなる。

 さらに、梱包作業のオンライン化、搬送設備を強化しており、生産性も高く、工場人員の作業負担が軽減された形になっている。入出荷・在庫管理システムもコンピューターで一元管理できるような体制となっており、管理面でも迅速・正確な体制となっている。

 なお、今回の工場整備の投下金額は約16億円(このうち設備が8億円、その他の周辺整備などが8億円)。人員は50人(うち工場が30人)。当初の加工目標の月間1万トンの内訳はレベラーが月間4000トン、スリッターが同6000トン、形態別では自販が60%、受託が40%。母材の在庫は1万2000トン程度を予定している。

大 阪地区の等辺山形鋼はベース3万1000―3万2000円どころで強含み。

 東京製鉄が10月に1000円値上げを実施。エヌケーケー条鋼、大阪製鉄の在阪メーカー各社も2000円の値上げを表明しており、扱い流通筋ではこの値上げに敏感に反応、再度、売り腰を強める方向となっている。一部流通筋は唱えを3万3000円に引き上げており、ここにきて小口で3万2000円が通り始めた。

 一方、市中在庫は僚品のH形鋼ほどタイト感が出ていない。大阪鉄鋼流通協会の調べによると、8月末の入出庫状況は入庫が前月比1%増、出庫が同比4・9%減。この結果、在庫は同比2%減と微減推移で、「在庫はサイズによって歯抜けがある程度」(特約店筋)。ただ、メーカー在庫は依然として少ない状態が続いている。