2000.10.19
伊 藤忠商事と丸紅は、鉄鋼部門を統合することで検討に入った。早ければ来春にも折半出資の新会社を設立して、社員や商権を移管するものとみられる。統合した場合、新会社の売上高は約1兆5000億円と商社の鉄鋼部門でトップに立つ。

 すでに両社は、鋼材のeコマース(電子商取引)分野で日本メタルサイトに共同出資することで提携している。両社は鉄鋼部門を統合することで、経営基盤を強化していく。

 両社の鉄鋼部門における国内営業や貿易を統合すると同時に、コイルセンターや内販会社などの関連会社も統合、海外での拠点も対象となりそうだ。

 伊藤忠は川崎製鉄、丸紅はNKKが主力仕入れ先となっており、川鉄とNKKの提携が進む中で、統合により川鉄・NKKグループの中核商社としての位置付けを狙うもようだ。

日 本鉄鋼連盟は18日、9月の鉄鋼生産速報を発表した。粗鋼生産は886万6000トンで前月に比べ20万1000トン減少したが、前年同月比では9・5%増と昨年7月以来15カ月連続増加した。7―9月では2694万5000トンで前期に比べ0・9%増加し、前年同期比では11・5%増と5期連続の増加となった。また4―9月では5365万8000トンで、前年同期の4689万3000トンに比べ676万5000トン、14・4%も増加している。

 9月の鉄鋼生産は前月に比べ粗鋼および高炉銑が減少したが、熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)はわずかながら増加し、前年同月比ではともに増加した。

 炉別生産では、転炉鋼は630万3000トンで前月比5・6%減少したが、前年同月比では10・9%増加した。電炉鋼は256万3000トンで前月比で7・2%増加し、前年同月比でも6・3%増加した。この結果、前年同月比は転炉鋼が15カ月連続、電炉鋼は12カ月連続増の増加となる。

 7―9月では転炉鋼が1945万3000トンで前期比3・6%の増加で、前年同期比では13・1%増加した。電炉鋼は749万2000トンで前期比5・6%の減少だが、前年同期比では7・4%増加した。この結果、4―9月では転炉鋼が3823万3000トンで前年同期比17・7%も増加し、電炉鋼は1542万5000トンで同7・1%増にとどまった。転炉鋼の大幅な伸びに伴い、電炉鋼比率は30・7%から28・7%へ2ポイント低下した。

神 戸製鋼所は、同社が保有するKMTセミコンダクターの全株式、発行済み株式数の75%をマイクロン・テクノロジー社に譲渡し、経営権を移管することで基本合意に達した―と18日発表した。

 来年3月末をメドに事業譲渡し、完了時にマイクロンは1億2500万ドルを神鋼に支払うほか、KMTの借入債務(9月末時点で500億円)を全額引き継ぐ。記者会見した水越浩士社長は「実質的な事業譲渡の対価は630億円」と説明するとともに、選択と集中のため今後行うべき決断は「まだある」と表明、例として建設機械の100%出資会社「コベルコ建機」を挙げた。

 水越社長はKMT(本社=兵庫県西脇市平野町、高橋出雲男社長)の経営権をマイクロン(本社=米アイダホ州)に全面移譲する理由について(1)世界最強の企業による経営が将来の発展につながる(2)マイクロンは日本での拠点確保に強い意欲を示した(3)神鋼は事業の選択と集中を進めており、財務体質の改善を図った―を挙げ「3社にとって最適の判断と確信する」と述べた。

 また、神鋼にとって半導体事業への進出は「無駄ではなかった」と総括し、半導体設計の「コベルコ・エルエスアイ・デザイン」(KDI)と同テスト装置の「ジェネシス・テクノロジー」(GTI)は、2社とも利益を上げており事業を継続していく―と強調。

 譲渡の決断は目前に迫った0・15ミクロンへの次世代投資に対応するための資金調達がきっかけだった。KMT独自で200億―300億円と想定される融資を模索したが「今年7月にかけて難しいとの判断を余儀なくされ、マイクロンが経営権を持ち継続的な設備投資をするのが最善と判断した」(犬伏泰夫取締役常務執行役員)。

 神鋼の半導体事業は1987年のGTI設立からスタート、米テキサス・インスツルメンツとの合弁で、90年にKTIセミコンダクターが設立され、93年にDRAM専用工場が操業を開始、95年度に115億円の利益を上げたが96―98年度には大幅な赤字を出し、98年に合弁相手がマイクロンに代わり現社名に変更、99年度に黒字化し、今00年度は200億円の経常黒字が予想されるほど業績は上向いている。

 実質630億円、総資産からみると810億円の売却額について水越社長は「妥当」と判断する。

協 同シャフトのタイ現地合弁会社で磨棒鋼メーカーのマハジャック・キョウドウ(MKCL、松尾久幸社長)は、タイ国内の自動車生産が輸出を主体に増加し、今後も受注量が増える見込みであることから、来年初めから増産に向けた設備投資を行う計画だ。細径対応のコンバインドマシン(CM)T型、高速切断機、面取機を各1台ずつ導入し、生産能力を約倍増の1200トンに拡大する。隣接して材料倉庫を建設し、新設備の設置スペースを確保する予定で、一連の投資予定額は8700万バーツ(約2億4000万円)。細径製品を拡充し設備に余裕をもたせることで、ユーザーニーズに広くこたえていく。

 MKCLは、日系自動車メーカー向けの材料供給にこたえるため96年3月に設立され、磨棒鋼の丸・角鋼を製造している。98年に増資し現在の資本金は、1億4400万バーツ(約3億2000万円)。資本構成は現地資本のマハジャック・グループ25%、協同シャフト25%、神鋼商事と日商岩井のタイ現地法人でそれぞれ25%。従業員は26人(うち日本人3人)。

 生産能力は月間650トン(2シフト16時間操業)で現在月産550―600トンでほぼフルに近い生産を続けている。材料仕入れ先は全量が神戸製鋼所から。品種構成はSGDB41%、SC27%、バネ鋼23%、快削鋼7%、その他2%。販売先業界は、自動車41%、オートバイ30%、電機9%、OA機器3%などで、主要ユーザーは日本発条、日本精工、青山、伊藤などのタイ現地法人の部品メーカーに納めている。

 今年9月に精密シャフト用の矯正機を導入し、10月から稼働させるなど顧客の精度要求に対応を進めている。保有設備はこのほか、CMU型(製造範囲8―25ミリ径)、渦流探傷機器、丸鋸だが現設備では、この先の需要増に対応できないと判断。細径仕様のCMT型(5―16ミリ径)を導入することでOA機器用シャフトなど細物品はT型でこなし、余裕のできるU型では太物品を量産する。導入後の生産能力1200トンのうちT型400トン、U型800トンを想定。また、材料倉庫は、もう一回り大きくする考えもあり、投資額が増える可能性もある。

住 友金属工業は、内外のシームレス鋼管の需要回復を支えに(1)輸出・国内向け両価格の改善(2)和歌山製鉄所の新中径ミルを核とした高付加価値製品の製造と拡販―を柱に、同鋼管の営業基盤の強化を図る。

 住金は、油井管市場が急悪化する前の97年には98万トンのシームレス鋼管を生産していたが、99年には数量・価格とも過去最低水準まで落ち込み、国内向けの低迷も加わって、68万トンというこの二十数年間では最も低いレベルまで低下した。

 しかし、油井管需要の回復を背景に生産は増加に転じ、今期(10―12月)で年率80万トンの水準まで回復する見通しを強めている。印刷ロール、産業機械向けなどの国内需要の底入れ状況も支えとなって、01年初めには年率で98年度の84万トンレベルに達する見通し。

 価格も99年後半からの値戻しの結果、汎用品で400ドル台の過去最低レベルから反発に転じ、足元ではボトム比200ドルアップ、さらに下期以降プラス100ドルの上昇を見込むなど、改善基調を強めている。国内向けも値戻しを検討していく局面に入りつつある。

 住金は今年3月に休止を予定していた和歌山の海南小径西ミルの操業継続を決め、小径2ミルと中径ミルの3基体制による操業を持続する。

 輸出では、世界最大のDSTにNKKが加わったテチントグループの影響力が強まる中、住金は特殊ネジの「VAMジョイント」付き高級油井管などの拡販に注力するとともに、国内でも高度の寸法精度などが求められるメカニカル向けを中心とした高付加価値品に販路拡大を図る。

 住金は、輸出・国内向けとも業界全体の約40%を占めるシームレス鋼管の最大手。シームレス鋼管事業の収益回復が住金全体の収益構造の改善への弾みとなる見通し。



台 湾で年産60万トン規模のステンレス一貫製鉄所構想が持ち上がっている。現地からの情報によると、Chien・Shing・ステンレス・スチールは17日、台南に120億台湾ドル(3億7500万ドル)を投じてステンレス一貫製鉄所を建設すると発表。融資先を探している段階であるとしているが、年内の着工、2002年央の第1期計画(年産35万トン)の生産開始を見込んでいるとしている。

 原料は国内でステン・スクラップを、ロシアおよびカナダ、豪州からニッケル合金の調達を予定。中国をメーンに東南アジア、欧州市場などを対象に大半を輸出するとの考え。世界のステンレス供給過剰感が高まる中、同社が融資先を確保できるかどうか微妙であるが、この構想が実現されると同社は、年産100万トン規模のYieh・United・Steelに次ぐ、国内第2位のステン一貫ミルとなる。

 なおChien社は現在、Yieh社からステン熱延鋼板を調達して冷間圧延する単圧ミルで、年産能力は6万トンとされている。

厚 中板加工・販売業の角彦(本社=東京都墨田区、角田ふさよ社長)は、レーザー切断用鋼板の拡販に積極的に取り組む。販売開始当初の8×20(幅×長さ=単位フィート)サイズに加えて、今年から5×20サイズも常時在庫、耳付品でほぼフルサイズの加工販売体制が整った。毎月コンスタントな注文も定着し始めており、今後さらに営業を強化する方針。

 同社は中部鋼鈑(本社=名古屋市中川区)が開発したレーザー切断用鋼板「SS400―LS」について、93年6月の発売開始と同時に浦安工場(千葉県浦安市鉄鋼通り)で8×20サイズの在庫販売を開始。今年から在庫サイズに5×20を加え、いずれも厚み9―22ミリのレーザー切断用鋼板を常時在庫している。

 「SS400―LS」は、微量元素を含んだ緻密なスケールが地金との界面に生成され、密着性の高いスケールにより表面粗度を均等に保つ画期的な鋼板。レーザー切断で求められる夜間無人運転による生産効率化や切断精度の向上に対し、レーザー切断用鋼板は良好な断面品質が得られるうえ、レーザー切断機の大出力化や板厚の上昇にも対応できる。

 角彦は販売提携により関東地区で唯一、同製品の在庫販売を行っており、レーザー加工業者を中心にサンプル出荷から拡販に取り組んできた。今年に入ってスポットだけでなく、少量ながら毎月一定量のヒモ付き的な受注も獲得するなど、コンスタントな引き合いが定着しつつある。

 同社では8×20であれば4×8に、5×20であれば5×10に切断加工のうえ販売できるため、レーザー加工業者から要望のあったスタンドスペースの大きさに対応する形で、フルサイズの販売体制を整えた。切断面の品質や安定性が評価されており、「最近は中部鋼鈑のLS指定の見積もりが入ることもある」(角田和彦常務)という。

 今後は定期的な引き合いを含めて受注先、在庫量とも増やす方向で営業活動を一段と強化、展開していく考え。

大 阪地区の平鋼はベース3万9000―4万円どころで強含み。

 メーカー各社は10―11月でも2000円値上げする意向を流通筋に伝えており、引き続き強気の姿勢を堅持。これを受け、流通筋は置き場4万円、持ち込み4万2000円の市況形成に全力を注いでいる。市中在庫もベースを中心に低位に推移しているため、「ここにきて流通の足並みもそろい始め、小口では4万円が通り始めている」(特約店筋)という。

 一方、市中の荷動き自体は8―9月と変わらず低調で盛り上がりを欠く展開となっている。大阪鉄鋼流通協会の調べによると、9月末の入出庫状況は入庫が前月比5%減の1万3000トン、出庫が同比1・1%減の1万3000トン。この結果、在庫は同比1・6%増の1万8000トン水準で3カ月連続で微増に推移した。