2001.03.16
軽 自動車のトップメーカー・スズキ(静岡県浜松市、戸田昌男社長)は、新年度から自動車用鋼板の集中購買対象メーカーをこれまでの新日本製鉄、住友金属、NKK、川崎製鉄の4社から新日鉄、住金、NKKの3社に集約する。効率化を目指したもので、住金のシェアがこれまでの20%強から30%にアップ、NKKも10%強から20%に引き上げられる見通し。すでに昨年モデルチェンジしたグランドエスクード、エリオなどの部品素材については、川鉄への発注を取りやめている。

 スズキは、軽自動車のトップメーカー。2001年度で90万5000台の生産が見込まれている。売上高1兆2700億円で、経常利益280億円の見通し。生産工場は本社工場を中心に湖西、磐田、豊川、大須賀、相良の6工場体制。湖西、磐田の2工場が軽四輪の主力工場。相良工場でエンジン、大須賀工場で関連の鋳物部品を生産している。

 自動車用鋼材は熱延鋼板、冷延鋼板、メッキ鋼板などが集中購買の対象になっている。月間3万トン弱の規模で、これまでは新日鉄が50%強(窓口は日商岩井)、住金が20%強(住友商事)、NKKが10%強(豊田通商)、川鉄が10%(川鉄商事)。一部特定材として日新製鋼のアルスターがマフラー材として入っている。

 対象メーカーの絞り込みは、ロットをまとめることによるコスト効果と、管理費の削減を目的としている。

N KKは15日、10社強の商社に委託している輸入鉄鋼原料の決済業務を4月1日をもって社内に取り込み、各シッパーとの決済窓口を一本化、重複業務を簡素化することによって、数億円のコスト削減を図ることを明らかにした。決済業務は同日付でエヌケーケートレーディング(木崎肇社長)に新設される原料決済部が行う。同様な直接決済は、昨年4月の新日本製鉄に続いて2社目。

 同社が決済実務を見直す対象は当面、鉄鉱石と原料炭の2品目だが、今後、エヌトレ原料決済部の実務の進捗状況に合わせ「合金鉄などについても当然、検討する」と原料全般に広げる方針を示している。

 ただ、同社が商社に委託している決済業務のうち、原料以外は従来通り。

 同社はこれまで鉄鉱石、原料炭などの輸入についてシッパーと契約し、支払い、通関、保険など輸入決済実務を委託してきた。

 しかし、1998年の外為法の改正に伴い、ドル建て決済が可能になったほか、急速のITの発達で現地との情報がタイムリーにとれるようになり、また、通関作業などを含めた支払い手続きが簡素化されている。同社は必要な条件が出そろったことを踏まえ、今回、直接決済の変更が可能になったと判断した。

財 務省通関統計による1月のステンレス鋼板類輸入実績は、月間としては過去最高となる、前月比35・1%増の1万2416トン(前年同月比117・3%増)になった。内訳は熱延が35・3%減の2246トン(43・4%増)、冷延が77・7%増の1万170トン(145・2%増)。輸入量1万2416トンは、92暦年の冷延総輸入量(1万3806トン)に匹敵する規模。

 輸入製品の熱延および冷延それぞれの主力(当月の各分類中、最大輸入量の製品)をみると、熱延が幅600ミリ以上のコイルで34%減の1403トン(39%増)、冷延が幅600_以上・板厚3_未満の製品で66・1%増の8769トン(147・2%増)。

 また、輸入先国別で構成比トップの韓国からの輸入量は、前月比10・5%増の9448トン(前年同月比112・6%増)。

 内訳は熱延が44・6%減の1737トン(30・4%増)、冷延が42・5%増の7711トン(147・9%増)。熱延および冷延それぞれの主力(当月の各分類中、最大輸入量の製品)は、熱延が幅600_以上のコイルで43・9%減の1101トン(26・8%増)、冷延が幅600_以上・板厚3_未満の製品で37・7%増の6956トン(132・1%増)。
ト ピー工業の子会社で電力卸供給事業(IPP)を行う明海発電(本社=愛知県豊橋市、石川裕勇社長)は、昨年4月の営業運転開始から1年がたち、年間電力卸量10億キロワットの当初計画をクリア。順調な立ち上がりをみせている。01年3月期の業績見通しは売上高107億円、営業利益32億円を計上するメドがつき、トピー工業の連結業績に大きく寄与する。4月中旬からは35日間にわたって操業を休止して自主定期検査を行い、2年目以降の安定操業に備える。

 1年365日のうち、85%の日数(310日前後)が稼働、残りの15%の日数(55日前後)を設備のメンテナンスに充てる。順調な営業運転に入ったことから、今後は設備管理体制の充実が最重要課題となるため、4月15日から5月19日までの35日間を「第1回自主定期検査」として操業を休止。設備を分解して集中的にメンテナンスを行う。02年度以降は2年に1度の定期検査を予定している。

 95年12月にトピー工業は発電事業への参入計画の検討に入って、100%子会社の明海発電を設立。入札・落札を経て、98年7月に建設を開始、99年9月に建設工事を閑静して同10月から6カ月の試運転に入り、計画通り00年4月から営業運転を開始した。石炭を用いた発電で、15年間にわたって中部電力向けに卸事業を行う計画。

 発電事業の操業では、環境規制値をクリアしつつ、地元の住民の理解を得るために、定期的に懇談会を開き、環境の情報は常時開示している。投資額220億円のうち、環境設備費は50億円を超えている。

N KK福山製鉄所は、省エネ対策の一環として4月以降、高炉への微粉炭吹き込み(PCI)を引き上げる。これまで高炉4基体制で平均トン当たり160キロだったが、200キロ以上を目指す。このため5高炉のPCI吹き込み能力の増強工事を行い、従来の100キロを200キロに引き上げた。さらに微粉炭を製造するローラーミル1基を増強した。

 福山製鉄所は、平常生産で粗鋼1000万トン体制を確立するため、上工程から下工程にわたる設備投資を進めている。上工程の省エネ、増強投資の一環としてPCIの拡充を計画。昨年後半から工事を進めていた。

 PCIはコークスの節約を目的に、微粉炭をそのまま高炉に投入する。高炉の中では神戸製鋼が、平均で200キロ弱と高い水準にある。それ以外の高炉は新日鉄が平均150キロ弱、住金が100キロ強、川鉄が100キロ弱。NKKは、京浜製鉄所が100キロ、福山製鉄所が160キロ。福山では、これを200キロに引き上げるため、5高炉のインジェクション装置を増強。微粉炭製造用のローラーミルを1基増設した。これにより、4高炉ともにPCI比200キロ以上が可能になった。

住 友金属小倉(天谷雅俊社長)は、昨年4月から新高炉の建設を進めているが、今年の4月から炉内の耐火レンガの積み上げ作業に着手する。半年程度で完成する計画で、これで炉体はほぼ完成する。2002年4月には、現行の2高炉に代わり操業する。炉容積が現在の1850立方メートルから2150立方メートルに拡大するため、上工程に多少余裕が発生し、下工程との能力カイ離が解消される。このため住金和歌山製鉄所からの分譲鉄源2万トン前後は、4月以降なくなる。

 住金小倉は、2高炉が老朽化しているうえに容積が小さいため、新高炉建設を計画。昨年4月から着工している。高炉建設は、これまでの実績から判断して2000立方メートル強では200億円前後かかるが、期間を長期化することと既存設備の有効活用で90億円と、半分以下の費用で建設する。事前の製作期間を入れ3年かける計画で、工事は原則昼間の常駐時間帯のみの作業。

 本体設備は、和歌山製鉄所の3高炉の櫓や炉頂ベルなどを移設。熱風炉も貯水タンクを改造したものを使用する計画。これまでに炉体の建設をほぼ終わり、4月にコテ入れ式を行い、レンガ積み工事に入る。半年で工事は終了する計画で、来年4月の火入れを予定している。
米 鉄鋼協会(AISI)、カナダ鉄鋼製造者協会(CPSA)、メキシコの鉄鋼業界団体CANACEROの3団体は14日、豪オウスチールが計画する15億米ドル規模の銑鋼一貫プロジェクトが、世界の鉄鋼市場における供給過剰を加速させる懸念があるとの声明を発表した。

 3団体は「現地ニューサウス・ウェールズ州政府のみならず、日本政府が同プロジェクトを支援すると伝えられており、また直近の報道によると日本興業銀行の名前も挙がっている」と指摘、こうした政府機関などの取り組みが世界の鉄鋼市場環境をさらに悪化させると批判している。

 CPSAのB・Lacombe会長は、オウスチールのプロジェクトは日本政府を含む政府機関によるサポートを受ける予定で、また、米国政府や独政府もこのほど中国、キューバでのプロジェクトへの支援を決めたと聞いている。とくにキューバのバー・ミル、エストニアの亜鉛メッキライン、オウスチールなどのプロジェクトは輸出マーケットをメーンの対象とするもので、各国政府のこうした取り組みが世界の鉄鋼市場の一層の混乱を招くと批判している。

 CANACEROの代表者は、オウスチールの幹部は輸出市場を対象としていると明言、最近の報道によると420万ネットトンの鉄鋼製品を生産、このうち70%を輸出する方針であると伝えられていると指摘。

 またAISIのA・シャーキー会長は、世界の鉄鋼生産能力過剰が原因で鉄鋼貿易摩擦が過熱しており、鉄鋼生産能力追加の是非を検討するタイミングにきている。またOECD諸国、とくにNAFTA諸国の政府がなぜ、他地域の輸出を前提とした新規鉄鋼プロジェクトに加担する必要があるのか、理解に苦しむと述べている。

日 鉄建材工業のグループ会社、ニッケンビルコン(本社=東京都江東区、高橋吉雄社長)は、中期3カ年計画(00―02年度)をスタートしているが、本年度は「要員20%削減」を前倒し達成するとともに、出先機関のスリム化にも着手し、全営業所で黒字化を実現した。このため、本年度売上高は目標(売上高25億円・経常利益5000万円)に近い数字を確保する見通し。

 ニッケンビルコンは92年10月、日鉄建材工業のパネル営業部・ルクサロンルーフ販売推進班・床システム部品営業班を分離して設立され、93年4月から営業を開始した。営業所は仙台、名古屋、大阪、福岡に置いている。

 本年度からスタートした中期3カ年計画の数値目標(@売上高A経常利益)は、00年度が@25億円A5000万円、01年度は@27億円A1億円。そして最終年度である02年度は@29億円A1億5000万円に設定している。

 これを達成するための施策として、選別受注を徹底して採算を確保するとともに、営業所のスリム化などで要員を20%削減。また、@全社の損益状況で財源を決定A事業部単位の評価B個人の業績―の3点を考慮しながら、固定費や人件費の流動化を図ってきた。

 この目標に全社挙げて取り組んだ結果、本年度は「要員20%削減」を前倒し達成するとともに、出先機関のスリム化にも着手。3営業所で営業マン一人体制にするなど、全営業所で黒字化を実現した。また、建築需要の回復傾向から床システム部品関連が好調に推移したことから、本年度売上高は目標(売上高25億円・経常利益5000万円)に近い数字を確保できそうだ。

東 京地区の表面処理鋼板(電気亜鉛めっき、ベースサイズ)市況は弱含み。市中価格は熱延下地5万7000円、冷延下地で6万7000円。

 コイルの先安ムードから買い控えが広がっており、定尺品の荷動きは停滞気味。コイルセンターの稼働にも年明け以降勢いが薄れてきた。需要は店売り主力の建材で悪くなったとの見方が増え、自動車も期末の生産を落とすメーカーがあるという。

 在庫は流通、コイルセンターで減少している一方、国内メーカーは1月が前月比11%増と大幅に増加。コイルセンターでは「付加価値が高い部分で競争が激化する傾向にある」として、高炉メーカーの薄板供給に警戒感を持つ。

東 京地区の等辺山形鋼市況は6×50で3万5000円、溝形鋼は5×50×100で3万9000円中心。多品種の下げ基調の影響を受けて荷動きは悪いが、メーカーの供給姿勢がしっかりしているとの認識が流通にあるため、現状維持を続けている。

 形鋼部会の調査によると、2月の山形の在庫量は1月比横ばい、溝形は同7・8%増。現在、メーカーは需要に見合った生産をしており、流通は必要分のみ購入。「強気にはなれないが、現状維持を続ける」(特約店)状態。需要が増えて市況の上昇を狙えるのは4月後半以降とみられる。このため、来週以降明らかにされるメーカー販価が上げられても市況への転嫁は難しい。

大 阪地区のH形鋼市況はベース3万3000円どころで弱含み。建築需要の低迷から、市中の荷動きは相変わらず低調。今月の流通出荷量も増加の兆しは見えず、「前月並み」(特約店筋)の見通し。1―3月の合計出荷量はバブル崩壊後の最低水準に落ち込みそう。また、市中在庫も2月まで増加基調が続いている。

 このため、市況は下支え材料を欠き、ジリ安の展開。特約店筋は売り腰を引き締め切れず、需要家の指し値に応じざるを得ないのが現状。一部では3万3000円を下回る安値も散見されており、下押し圧力が強い。メーカー各社は追加減産で市況歯止めに全力を挙げているが、当面は需給調整待ち。