2001.05.30
新 日本製鉄は6月契約分から、店売り向け熱延鋼板の受注調整に踏み切ることを決めた。調整幅は6月契約分のうち、最低50%の引き受けカットから最大100%の全面スキップまで。流通により異なるが、「平均すると1カ月弱の調整」(薄板営業部)で、流通各社にはすでに意向を伝えている。同社の店売り熱延鋼板受注調整は、3月以来今年2度目の措置。長期化する薄板需給緩和への危機感が表れている。

 熱延在庫は国内メーカー分が3月に減少に転じたものの、4月はコイルセンター分を含めて再び増加した。メーカー、流通合計では228万9000トンと前月比9万トン(4・0%)の増加。薄板3品在庫も合計440万トンを超える高水準と、需給改善が遅れている。

 今回の熱延鋼板受注調整は昨年9月、今年3月に続くもの。流通在庫については特に3月の受注調整が徐々に効果を表し、関東地区の一部コイルセンターでは、歯抜けサイズが出るなど需給が改善してきた。

 ただ、輸入材の影響が大きい関西では在庫水準が非常に高い。需要や供給環境に地域差があり、コイルセンター間で在庫や受注状況も異なる中で、新日鉄は再度の需給改善策が必要と判断し、流通各社個別に50―100%の引き受けカットを要請した。

 需要は1―3月が非住宅分野で予想以上の大幅減少となり、4月以降も減少したまま低位で推移。同社では4―6月は薄板の不需要期で在庫調整が難しいとの認識を強め、7―9月に向けても建築や土木分野を中心に需要は期待できない状態が続くとみている。

鋼 材倶楽部が集計し、29日発表した4月末の普通鋼鋼材のメーカー・問屋在庫(速報)は前月末(734万3000トン)比24万5000トン、3・3%増の758万8000トンと3カ月ぶりに増加した。

 生産が3カ月連続でマイナスとなるなか、国内向け出荷の減速、輸出向け出荷の減少で、出荷合計が99年4月(552万7000トン)以来の600万トン割れとなり、生産を下回ったため。

 4月末の在庫率は、前月末の102・3%から24・4ポイント上昇し、126・7%となった(国内在庫率は19・5ポイント上昇の132・8%)。

 在庫の内訳は、メーカー在庫が、前月末(567・1万トン)比29・4万トン、5・2%増の596万4000トンと3カ月ぶりに前月比プラスとなった半面、問屋在庫は前月末(167万3000トン)比4万9000トン、2・9%減の162万3000トンと小幅ながら5カ月ぶりの減少となった。

 国内・輸出別でみると、国内在庫は前月末(607万6000トン)比10万6000トン、1・7%増の618万2000トンと3カ月ぶりに増加したうえ、4カ月連続して600万トンを上回る水準となった。一方、輸出船待在庫は前月末(126万7000トン)比13万8000トン、10・9%増の140万6000トンと3カ月ぶりに増加した。

 前月末比で1万トン以上減少した品種はH形鋼(29000トン減)と冷延広幅帯鋼(1万2000トン)。5万トン以上の増加は幅600mm以上の鋼帯(13万8000トン)と亜鉛めっき鋼板(5万7000トン)。

N KKは29日、耐候性鋼のさび安定化処理剤「カプテンコートM」が日本塗装技術協会(会長=白石振作・東大名誉教授)から技術賞を受賞したと発表した。単層化(1回塗り)やプレコート対応による優れた施工性、クロム・鉛化合物フリーによる環境調和性が高く評価された。

 さび安定化処理剤は鋼構造物で耐候性鋼を適用する際に、安定さび形成までの流れさびによる景観汚染を防ぐ目的で使用される。カプテンコートMは、従来のさび安定化処理剤で課題だった、施工性やクロム化合物使用などの環境負荷をクリアした。

 平田化成(本社=東京都江東区)を通じて製造販売開始後1年間で15物件、約5万平方メートル(鋼材約5000トン相当)を受注。今後も都市部の物件を中心に受注拡大が見込まれる。特にプレコート鋼板は施工費低減に大きな効果が得られて好評を得ているという。

清 水建設とシャープ、川崎製鉄の3社は29日、オフィスや工場、公共施設などの各種産業施設向けに最適な建材一体型太陽光発電システムを、このほど新たに開発したと発表した。

 今回開発したのは「カーテンウォール型」と「斜め屋根型」の2タイプで、すでに実用化している4タイプ(フラットルーフ型、スクリーン型、採光型、壁面設置型)と併せて建材一体型太陽光発電システムはフルラインアップ化された。

 「カーテンウォール型」は太陽電池をガラスカーテンウォールの一部として利用し、モジュールと窓ガラス面を上下連続して一体化することで、建物に調和し、デザイン性に優れた設計を可能にした。一方、「斜め屋根型」は太陽電池モジュールを補強した鋼板に接着させて、モジュール枠を兼ねた金物で固定することによって、簡素化・軽量化を実現。金属折板の斜め屋根への設置が容易になる。

 近年、地球温暖化防止などの観点から、クリーンエネルギーの利用による二酸化炭素排出量の削減をはじめ、地球環境保全に貢献する技術への関心が高まっており、産業施設向けの太陽光発電システムも注目を集めている。今回、システムのフルラインアップを実現したことで幅広いニーズに対応できることから、開発3社では官公庁および民間ユーザーに対して積極的な提案営業を推進していく方針だ。
東 京鉄鋼販売業連合会有志による電子商取引運営会社、鉄鋼流通イーシー(SEC、社長=久富順平・中央鋼材社長)は28日開催した定時総会で、システム本ソフトの構築と業務開始を延期することを決定した。

 同社は昨年5月、東鉄連会員の有志41社により、電子商取引システム構築と運用管理業務を目的として設立。デモ用ソフトの構築に着手した。9月完成したデモソフトに一部修正を加え、12月には出資者を含む東鉄連会員87社183人出席のもと、デモソフト説明会を開催した。

 この時点では、今年3月をメドに本ソフトを完成し業務開始の予定で、2月には業務外注説明会を開催。新日本製鉄EI事業部(現新日鉄ソリューションズ)、川鉄情報システムほか4社に「サイト構築および運用代行に関する企画、見積もり」を依頼し、2月下旬には各社の見積もりが出された。

 しかし、初期費用として2000万―6000万円、業務開始後の月間運用費が300万―500万円かかることが判明。役員会で今後の方針について協議を重ねた結果、現段階ではただちに本ソフトを構築し、業務を開始することは運営費確保の問題から困難であるとの結論に達した。

 資本金は有志1社100万円の出資による4100万円。01年3月期決算ではサーバーレンタル費など一般管理費234万円が当期損失となり、次期繰越損失として処理した。
4 月の鉄鋼品種別輸入実績(鋼材倶楽部まとめ=速報値)は、普通鋼鋼材が31万1457トン(前月比8・6%減)、全鉄鋼が86万6109トン(同56%増)となった。普通鋼鋼材では厚板、冷延コイルの輸入がさらに減少、熱延コイルも4カ月連続で前月比減となった。全鉄鋼の増加は、フェロアロイの大量輸入が影響した。

 厚板は合計で前月比15%減。韓国の同10%減に加えて中国も減少した。遠国材ではルーマニアから1万3000トンの入着があった。冷延コイルは合計で同9・5%減。韓国が同9・6%減、台湾が同5・1%減と3カ月連続で減少。ただ、平均単価はいずれも前月比1000円以上の下落となった。熱延コイルは5・0%減で韓国が同1・4減、台湾は同7・2%増。

 普通鋼鋼材の8割以上を占める鋼板類の輸入が減少しているのは、国内の薄板、厚板価格が1月以降大幅に下落したため、韓国や台湾にとって輸出利益が見込めない市場となっていることが要因とみられる。その他亜鉛めっき鋼板、鋼管、形鋼、特殊鋼なども前月比で減少した。

 1―4月の合計でみると、厚板が前年同月比25%減、熱延コイル(酸洗とその他)が同0・5%減、冷延コイルが同12%減といずれも前年を下回るペース。全鉄鋼では通常10―15万トンペースであるフェロアロイが50万トンの大量入着。銑鉄はゼロだった。
イ ンドのTATA・RYERSON社は、国内自動車生産の伸びに対応して、ランジャンガオンで、国内4番目のコイルセンターの建設に着手した。第1期工事では、スリッター1基とシャー2基を導入する計画で、年間加工能力15万トン。投資額は4億ルピーで、8月に完成予定。

 インドの国内自動車生産は比較的堅調で、鋼材生産もこのところ前年を上回る水準が続いている。今年の第1クオーターは696万1000トンの生産量で、前年同月比4%近くの増産。

 こうした国内需要の拡大傾向を背景に、新しいコイルセンター構想が具体化された。TATA・RYERSON社は、インド国内に現在、ホットコイル主体のコイルセンター2カ所と冷延コイル主体のコイセンター1カ所を保有しており、今回のコイルセンターが完成すれば4カ所目となる。

 インドでは、三菱商事や日商岩井などの日本商社がマヒンドラー&マヒンドラー社などとタイアップして日系自動車メーカー向けにコイルセンター網を整備している。今後は増設計画もあり、市場動向を見ながら具体化の方向にある。また、韓国ミルの動きも、コイルセンター建設では活発化しているといわれており、海外メーカーを交えて建設が本格化している。

韓 国の今年第2クオーター(4―6月)の電磁鋼板需要は10万5000トンで、第1クオーター比で1・9%の微増の見通し。内訳は方向性電磁鋼板が1万5000トン、無方向性電磁鋼板が9万トン。

 変圧器やモーターコアに使用される電磁鋼板需要は、韓国内ではこのところ増加傾向にある。第1クオーターの需要は10万3000トンで、方向性電磁が1万4000トン、無方向性電磁が8万9000トン。供給面は方向性ではPOSCOが9000トン、輸入が5000トン。無方向性ではPOSCOが9万トン、輸入が2000トン。POSCOの供給が全体需要を上回っている。

 これに続く第2クオーターは10万5000トン。方向性の1万5000トンのうちPOSCOの供給量が、6700トンと低下する見通しで、その分輸入は増加するもよう。

 無方向性は、9万トンのうちPOSCOが6万6000トンを供給する計画で、不足分は輸入玉で対応される。

 電磁鋼板の需要動向は、第1クオーターでは韓国電力が一般電柱用の低損失変圧器の調達を前年同期比で30%減少させ、1万7000台の発注にとどまった。これに対し、第2クオーターは、第1クオーター比20%増の2万台程度の電柱型変圧器の発注が計画されている。

 据え置き型の変圧器は、第1クオーターでは前年同期比26%減の1万500台が発注され、第2クオーターでは、20%増の発注が見込まれている。

東 京地区の厚板市況は弱含み。市中価格(12ミリ、ベースサイズ)は3万9000―4万円中心。販売業者では「メーカーの減産以上に需要が落ちている」との声も聞かれ、需給バランスの改善が遅れ気味。中小溶断業者では仕事量の減少が一部受注価格の競争を生んでいる。ただ、小口当用ばかりで引き合い自体が少ないため、極端な値崩れは起きていない。

 国内メーカーの供給抑制姿勢に加え、輸入材も月間5万トン前後の低水準で推移していることから、市中の母材在庫は5月末の時点で4月に比べて減少しているとみられる。ただ、需要停滞が7―9月も続くと、在庫圧縮の効果が薄れてしまう懸念もある。

東 京地区の等辺山形鋼市況は6×50で3万4500―3万5000円、溝形鋼は5×50×100で3万8500―3万9000円中心の横ばい。製販ともに価格優先姿勢を貫いているが、実需の減少で荷動きの好転には至らない。

 5月の荷動きは4月よりも若干良くなっているが、「レベル自体は非常に低い」(特約店)。特約店の出庫量は山形で4月比横ばい、溝形で同5%減。小口中心で歯抜けはない。入庫量は各社大幅に減少。メーカーも申し込み見合いの生産に抑えている。在庫量は同10%程度減。「本来ならばタイト感が出るはず」(同)だが、今年は仮需もなく実需減が響く。製販は市況維持に努める。当面横ばい。

大 阪地区のH形鋼市況はベース3万1000円どころで強含み。市中の荷動きは依然として低調だが、流通の申し込み削減などで先月以降、市中在庫が急減。

 現状、ベースを中心とするジュニアサイズに歯抜けが散見。メーカーの減産などで今月末の在庫も減少が確実で、需給はタイトとなりつつある。これを受け、扱い特約店筋では先週から値戻し機運が台頭。各社は来月前半をメドに、3万3000―3万4000円の市況形成を目指す方向で、6月末以降、さらにステップアップする見通し。また、電炉の物件価格も先週から1000円方上昇し、市況立て直しの追い風となっている。