2001.06.13
新 日本製鉄は、2001年度の決算で経常黒字800億円を目指しているが、これをクリアするため600億円のコスト削減を想定している。しかし現状では在庫調整のための減産による固定費増や、原料単価アップによるコスト増が年間100億円強新たに想定されており、これをカバーするため追加的対応の検討に入っている。

 新日鉄は、前期で粗鋼2783万トンを生産し、営業利益1174億円、経常利益787億円を確保。経常段階では前々期比85%の増加となっている。前期は、増産による固定費の低下などのプラス要因があった。一方で販売単価減が進行した。具体的には増産による売り上げ増が、700億円。単価低下で300億円がマイナスとなった。こうした中で鉄鋼部門を中心に年間600億円のコスト削減に成功し、最終的には787億円の経常黒字を確保した。

 今期は、粗鋼生産では在庫調整と需要減による減産が、全国ベースで800万トン必要と想定されており、新日鉄も一定の粗鋼減産が避けられない状況にある。しかし経常段階の目標黒字幅は800億円とさらに前年度を上回っている。このためコスト対策を前年度より強化し、経常黒字の底上げを図る。

経 済産業省は、総合資源エネルギー調査会(経済産業大臣の諮問機関)の石油分科会開発部会天然ガス小委員会がまとめた「天然ガス政策のあり方に関する報告書」でのパイプライン敷設・整備の提言などを受けて、ガスパイプラインの技術基準面から保安規制の検討、作成に乗り出す。学識経験者や鉄鋼、ガス業界関係者で構成されるガスパイプライン安全基準検討会を今月20日に立ち上げ、安全基準の基本的考え方から人口密度など敷設条件によって基準レベルを設けるロケーション・ファクター導入の可否、耐震、液状化対策、新高グレード鋼管材料といった新しい素材、技術の安全基準の構成要素などについて検討を図る。今秋には欧米での海外調査も計画、作業を進める。

 ガスパイプラインの安全基準については、保安レベル向上、保安規制各法の安全基準、技術基準の整合化、新しい素材、技術の導入による科学的、合理的な基準作成が必要とされている。経済省では原子力安全・保安院を設置、ガス体エネルギー産業の保安規制を一元管理する体制を整備、ガス事業自由化の検討や閣議決定された規則改革推進3カ年計画での長距離パイプラインにかかわる適用法規のあり方、技術基準についての検討提示、さらに先月まとめられた天然ガス政策のあり方に関する報告書での天然ガスパイプラインの整備などを踏まえ、検討に着手する。

中 山鋼業、国光製鋼、合同製鉄の3社は、中山で集約生産している3社のベース小棒について、8月ロール以降、3社共通の新ロールマーク、新ブランド名に移行する方針を固めた。昨秋の3社集約生産の開始以降、暫定的に中山のロールマーク、ブランド名を使っており、共通の新ロールマーク、新ブランド名への移行はできるだけ早い時期に実施すべき案件となっていた。今後、販売先の了解を得て、今夏の定期修理後の生産から切り替える予定。ブランド名は最終決定していないが、「ストロングバー」などが候補に挙がっている。

 会社更生手続き中のベース小棒メーカー、中山鋼業での小棒の3社集約生産がスタートしたのは昨年10月。国光製鋼が9月中旬から中山に小棒生産を委託、さらに合同製鉄大阪製造所が10月から委託をかけ実現したもので、目標生産量を月間圧延ベースで中山3万トン、国光1万5000トン、合鉄5000トンの計5万トンに置き、取り組みを開始、11月に一度達成したが、その後、需要低迷から減産を実施し、現在は月間4万トン前後の生産で推移している。

関 西地区のH形扱い流通筋は今週から、H形の唱えを3万4000円に引き上げる。同地区の市中在庫が3カ月連続で減少し、「地区の在庫調整はほぼ完了した」(特約店筋)との見方を受けてのもので、今後、さらに段階値上げを実施していく。

 現在、同地区の市況はベース3万1000―3万2000円どころを高値寄りに推移。4月末のときわ会在庫が前月比14・8%減の6万1000トンと急減したのを受け、扱い筋の売り腰が硬化。市況は底入れから安値回避に転換し、底値から1000円方切り上がってきている。

 先週、発表された5月末のときわ会在庫でもこの減少基調は変わらず、同比10・3%減の5万4700トンと引き続き2ケタ台の減少を堅持。実際、市中では200×100、200×200、350Wなどベースサイズを中心に歯抜けが多数散見され、「1社では明細がそろいにくくなっている」(特約店筋)のが現状。市中では一部で「5万トンが現在の適正在庫」との見方があるものの、「ほぼ同地区の在庫調整は完了した」との見方が大勢。特約店筋は「これだけ歯抜けが増えると、在庫を大切に売らざるを得ない」として、値戻しに強い意欲を示している。

物 流合理化の機器・システムの販売業者のワイテック(本社=大阪府枚方市上野、横島直彦社長)は今年度(01年度)、「とくとくラック」を年間8000個と前年度比2000個増の販売を目指す。昨年夏に製品を投入した廉価版の「HFグレードル」の普及に努めるとともに、鉄鋼問屋・特約店向けへの販売を一段と強化する。また、アプリケーションの開発を継続、細かな顧客ニーズに対応していく。

 同社は1998年4月に、コマツの関係会社のコマツクレードルから、ラックなどの商権を買い取り、会社を設立した。主力製品の「とくとくラックシステム」は他に類を見ない多段積みの保管ラックシステム(特許・意匠登録商品)で、受注は自社で行い、製作は各地区の外注先を活用している。

 前年度(00年度)はステンレス、特殊鋼、丸棒などの特約店向けでの販売が好調だったこと。さらに、廉価版の「HFグレードル」を製品投入し、きめ細かく対応したことから、販売実績は年間6000個と99年度比50%増となった。

 今年度も知的財産権をフルに機能させている会社として、製品のアプリケーションの開発やこまごまとした改良を行うとともに、拡販を展開する。これにより、販売は前年度比33・3%増の年間8000個を目指す。

住 友精密工業(本社=尼崎市、長谷登社長)は、アメリカで航空機のエンジン用熱交換器の現地加工に乗り出す。このため、昨年末資本金1億円で現地法人・SPU社を設立。近くロールスロイスのV2500向けのエンジン用熱交換器の最終処理と研磨・検査業務を開始する。航空機製造の先進地・アメリカで現地生産することで、信頼性の向上とグレードアップを目指す。

 住友精密工業は、精密機械・部品の専門メーカー。航空機部門(50%)、熱交換器部門(20%)、半導体関連、センサー(30%)で、年間360億円の売上高。航空機部門は主力部門で、防衛庁向けのプロペラ、ランディングギアなどを中心にエンジン用の熱交換器なども製造している。

 今回アメリカで、現地製作することになった熱交換器は、日本で一定レベルまで加工し、それをアメリカの現地法人で最終的に完成品にする。現地加工会社は、昨年末資本金1億円で設立。当面は従業員3人程度で操業を開始する。
中 国の重慶鋼鉄公司は、今後3年以内に自動車用薄板生産設備の導入に乗り出す。年産80万トンのスラブ連鋳機、77万トンのホットストリップミル、40万トンのコールドストリツプミル、25万トンの亜鉛メッキラインなどで、総投資額は2億4000万ドル以上に達する見通し。形鋼、厚板主体の一貫製鉄所から薄板系への展開を志向したもので、大きな路線の変更を意味している。日本鉄鋼輸出組合が明らかにした。

 重慶鋼鉄は、中国内陸部の一貫製鉄所。中小型高炉で操業しており、生産量自体は多くない。圧延部門の主要設備は厚中板、中・小型形鋼、軌条、線材ミルなどが主体で、特殊分野として76ミリ以下のシームレスパイプ部門を保有している。内陸部立地であることもあり、建築・土木用のインフラ整備対応の製品が主体。

 今回の設備投資計画は、製造業向け製品への進出を目的としたもので、内陸部の需要構造の変化を示唆している。

 導入されるのは、スラブCC80万トンと77万トンのホットストリップミルが上工程の主要設備で、やや軽めの設備となっている。下工程が40万トンのコールドストリツプミルと25万トンの亜鉛メツキライン。いずれも自動車産業向けが、主要なターゲットとなっている。重慶地区には、新鋭の自動車組み立てラインが立地し、生産量が拡大していると言われている。こうした薄板系製造業の立ち上げに伴い、素材面からの対応が迫られている。

 また、同公司では別敞として運営されている重慶特殊鋼敞が電炉、圧延設備導入の計画を進めている。60トン電炉、真空脱ガス設備、ビレットCC、線材ミルなどの投資を検討しており、現在はFSが進められている。

戸 田建設は、「壁付き柱ボルト定着鋼板半巻き補強工法」を適用した耐震改修工事を竣工させ、同工法の補強有効性を確認した。東京都防災・建築まちづくりセンターの耐震改修計画評定や「建築物の耐震改修の促進に関する法律」による耐震改修の計画を経て、実証確認したもの。今後は、病院建築や学校建築などの耐震補強ニーズに対応して提案していく方針。

 同工法は、既存柱の約3分の2の断面を鋼板と通しボルトで囲み、既存柱と鋼板との間に収縮モルタル充填するもの。性能確認実験の完了を踏まえ、鋼板全周巻き工法とほぼ同等の靭性に優れた復元力特性が確認され、補強有効性を実証した。

 従来、張間方向に耐力壁などの直交壁のある壁付き柱を補強する場合、壁を撤去して補強後また壁を修復するなどの措置が必要であった。この点を改善したのが同工法。今回、同社が手掛けた杉並区の恵正マンションで適用した。壁を貫通するボルトは、鋼板に溶接された長ナットとさや管で鋼板に接合され、スムーズな応力の伝達を可能にしている。

東 京地区のH形鋼市況は200×100で3万4500―3万5000円中心で横ばい。販売は小口中心。建築向けのジュニアサイズに歯抜けも出始めたが、荷動きは低調。

 東京「ときわ会」の5月末在庫は、前月比7100トンと6・7%減少して9万9900トンになった。入庫量は同0・9%減と、特約店が契約を絞っている割りに減っていない。商社が、ある程度在庫を確保しているため、との見方もある。出庫量は同0・2%減と相変わらず低調。

 7―9月の需要も例年ほどは増えない見込みのため、流通は「今年は悪いことを覚悟」(特約店)して、売り上げを求めず、安値多売を控える方針だ。

東 京地区の厚板市況は弱含み。市中価格(12ミリ、ベースサイズ)3万9000―4万円が中心。

 4月の販売量が前年同月比でマイナス(東鉄連厚板部会)となるなど定尺、切板ともに販売が落ち込み、先安ムードが残る。「コイルの範ちゅうも含めて、溶断業者は通常の7割操業くらいではないか」(販売業者)との声も聞かれる。

 母材は輸入材の入着が2月以降3カ月連続で前月比マイナス。4月は5万トンを切る水準まで減少し、国内メーカーも減産を表明している。供給はようやく絞れてきたが、需要も同様に細っている。需給の緩みは基本的に変わっておらず、市況回復への期待は薄い。目先も弱含み。

大 阪地区のコラム市況はベース5万3000―5万4000円どころで横ばい。僚品のH形鋼が底入れから安値回避に転じていることから、コラム市況も今月初めから下げ渋り。流通間の販売競争も収束し、売り上げ確保による極端な安値は回避される方向にある。

 このため、市中価格はSTKRで5万3000円以下はほぼ払しょく。BCRのエキストラは8000円程度となっている。

 一方、需給は今月も荷動きに精彩を欠くため、やや過剰。とりわけ、工場、倉庫など民間のS造物件が少なく、夏場にかけ需要回復の兆しも見られない。また、需要の低位安定から鉄骨価格もやや弱含みで推移している。