2001.07.03
新 日本製鉄、三井物産、住友金属工業3社は2日、中断していた西豪州の新規鉄鉱山開発プロジェクト「ウエスト・アンジェラス(WA)」の鉄道建設問題について、豪州側パートナー、ノース社の親会社リオティント社と鉄道建設を再開することで合意した、と発表した。今回の合意は、政府および関係諸機関の承認を得て発効する。日本側パートナーは昨年末、同プロジェクトの鉄道建設が中断したためノース、リオティント両社を契約違反として、鉄道建設の再開を求めヴィクトリア州裁判所に提訴していたが、その発効をもって訴訟を取り下げる。

 これにより同プロジェクトの主体であるローブリバー・アイアンアソシエイツ(JV)として、2002年下期の早い時期にWAから鉄鉱石が出荷されることになる。

 新規の鉄道鉄道建設再開は2段階で実行される。第1段階はWA鉱山からハマスレー鉄道までの支線を建設し、既存のローブリバー鉄道の港湾から70キロ地点からWA鉱山に向けて部分的に鉄道を建設する。

 第2段階はWA鉱山の年間出荷量が1500万トンを超えた時点で、日本側パートナーは残る全区間の鉄道建設をローブリバーJVとして行う権利を有するというもの。

 今回の合意で日本側パートナーとリオティント社は今後とも、ローブリバーJVが独立した鉄鉱石サプライヤーとして存続することを確認した。

住 友金属工業(下妻博社長)は2日、電炉小棒トップメーカーの共英製鋼(高島秀一郎社長)への出資比率を引き上げることにしたと発表した。現状の30・2%から5%引き上げ、35・2%とするもので、高島社長や共英グループ会社が保有する株式を買い取る形で、7月中の実施を予定。これにより全株式の3分の1以上を取得し、共英への商法上の支配権を増す。今後、共英との連携を強め、グループ建材事業の総合力強化を図る。

 住金は共英の30・2%の株式(1110万2000株)を保有する法人筆頭株主だが、従来は共英にオーナー色が強く、事業面で連携していける関係になかった。しかし昨年、高島成光氏が共英の代表取締役会長に就任して以後、関係は改善、同6月末には当時の小島又雄会長や小川眞一氏を取締役に派遣するなど関係を強化する動きをとってきた。最近では田中正美氏を共英グループの共英建材工業社長に派遣し、密接度を増している。

 今回の出資比率の引き上げはこうした関係強化の流れに沿ったもので、建材事業で戦略を十分に共有できる体制に向けて、従来30%と微妙な水準にとどまっていた比率を商法上、大きな意味を持つ、全株式の3分の1以上に引き上げる方針を固めた。

経 済産業省がまとめた2001年度第2・四半期(7―9月)の特殊鋼需要見通し(熱間圧延ベース、月平均)によると、特殊鋼需要量は131万1400トン(前期比1・5%増、前年同月比3・2%減)と策定された。主力需要分野の自動車生産を完成車で240万台(同3・4%増、同1・3%減)、KDセットで135万台(同2・3%増、同3・6%減)、合計375万台(同3%増、同2・1%減)と想定、国内向けについては前期を上回る水準とした。一方の輸出も東南アジア向けの大径鋼管などで高抗張力鋼が増加するのを受けて前期比増と予測された。

 特殊鋼需要見通しの内訳は、国内向け93万9800トン(同1・3%増、同4・1%減)、輸出37万1600トン(同2・1%増、同0・7%減)。

 見通し通り推移すると、国内、輸出とも2期ぶりの前期比プラスで、合計は2期ぶりの前期比増とともに130万トン台に乗せることとなる。季節的要因から自動車の国内販売の増加を見込み、構造用鋼、ばね鋼、軸受鋼など自動車用鋼を中心にプラスとしたほか、建築関連需要に絡んでステンレス条鋼が増える。輸出は東南アジア向けを中心に在庫調整のためステンレスなどが減少するものの、高抗張力鋼の増加で全体を押し上げる。

経 済産業省は、あすから4、5日の2日間にわたり、台湾・台北市で台湾政府と「第1回日台鉄鋼対話」を開催する。日本からは経済省から半田力・鉄鋼課長を派遣し、台湾の産業部門、貿易部門の担当次長、組長(経済省の課長レベル)級と鉄鋼産業や鉄鋼貿易などを中心に意見を交す。鉄鋼対話はこれまでに日・米、日・EU(欧州連合)のほか、アジアでの日・韓、日・中と合わせ4対話が行われており、今回日・台が実施で、アジア鉄鋼業および市場に対する政策などの遂行に当たって、日本がパイプ的機能を果たす下地が固められることになる。

 日・台鉄鋼対話には、日本の経済省と台湾の国際貿易局、工業局の担当官が出席、課長レベルの対話として進められる。このほど中国鉄鋼(CSC)で郭炎土新会長が就任するなど台湾の鉄鋼事情にも変化が出てきているほか、米政府の通商法201条(セーフガード)調査決定など鉄鋼貿易での懸念材料も散見される。こうした中で日台それぞれの鉄鋼産業や鉄鋼市場の動向などを情報交換、さらに今後の民間を交えた日台鉄鋼対話の実施も視野に入れ、開催要領などを探る方針だ。
韓 国の5月粗鋼生産が、3年7カ月ぶりに過去最高を記録した。韓国鉄鋼協会の発表によると5月粗鋼は384万9000トンで、これまでの最高97年10月の384万トンを9000トン上回って新記録となった。協会によると操業日数の増加と、POSCOの製鋼工場の稼働率が95%と高水準を維持しているためとしている。またPOSCOのミニミル、韓宝鉄鋼の電炉部門も今年最高の生産となった。

 マーケットの要因としては内需が回復傾向にある中で、国産品による輸入(全鉄鋼)材への代替が進んでいることが背景にある。鉄鋼輸入は、4月までの累計が前年同期比20・3%も減少している。内需減を上回るもので、この差が国内生産の拡大でカバーされている。

 韓国の国内粗鋼生産は、年間の需要見通し(輸出1413万トンを含む)が、5118万5000トンと前年実績を1・9%下回るとされており、必ずしも高くない。ただ供給は、輸入が11・5%減少すると予想されているため、国内生産は全体需要が低下する中で微増が見込まれている。現に4月までの累計は1416万トンで前年同期比0・2%の微増。

 5月粗鋼生産は、前年比1・8%増、前月比3・9%の増加。内訳は、転炉鋼が211万3000トンで前月比2・8%の増加。電炉鋼は173万6000トンで同5・3%の比較的高い伸びを記録している。
シ ャフト関連機器メーカーの増田鉄工所(本社=神奈川県横浜市、増田尚男社長)は、細物シャフトに適用した可変速タイプの直線カット機を開発し、このほど本格販売に入った。従来のコンバインドマシン(CM)に比べ約5分の1の低価格ながら、真直精度はCMの30ミクロンを上回る10ミクロンと高い。磨棒鋼は、家電メーカーなど需要家から、より細物・精密化のニーズが強く、磨棒鋼メーカーでは細物精密シャフトの取り組みに力を入れている。増田は、低コストの設備開発で顧客の要請に応えていく方針。

 開発した直線カット機は、特殊銅合金でカバーしたスピンナーを採用し、傷付きを防ぎ、高い真直度を出す。省スペースで設置が容易。直線カット、面取機、矯正機、探傷機の各設備で構成されるが、設備の組み合わせは自由。必要な設備だけ購入しオンライン化できる。処理スピードは1分当たり30メートル。通常の約倍の速度で処理能力は1日当たり5トン程度。

 従来のコンバインドマシン(T型)では導入コストが1億円以上要し、償却負担が大きい。真直度も30ミクロン程度が限界で、10ミクロン単位の精度を求める一部ユーザーに応えるには直線カットが優位という。また、CMではダイス、切断刃、スピンナー、2ロールと調整部分が多いが、増田のカット機はスピンナーの調整だけですむ。
関 東地区の小棒市況は、メーカーサイドが市況対策を強化し始めたことで、7月に入り基調引き締まりの見通しが強まってきた。細物の輸出増加や夏季減産期を迎え、需給バランスは調整されつつある。ベースの枠売り継続に加え、細物メーカーの枠売り実施が具体化し、商社に販売姿勢の立て直しを迫っている。足元は新規物件の発注に精彩を欠き、ベース2万7500円どころを弱含みで推移しているが、メーカー主導のテコ入れ策が本格化する7月中旬には、基調に変化が生じる可能性もある。

 ベースメーカーは、7月契約まで5カ月連続して枠売りを実施した。とくに7月は、売り出し期間を6月末の前半と7月の後半とに2回に分け、前半は据え置くが、後半には値上げを行う姿勢をみせている。

 さらに市況停滞のネックとみられていた細物についても、メーカーが米国向け中心に輸出ドライブをかけ、国内供給量の削減に傾注。加えて、枠売りの導入を7月に行う考え。出荷抑制と販売方式の変更のダブルの対策で市況の改善を見込む。

 こうしたメーカーの意思表示が流通を刺激している。「今より下の価格で買えなくなる」と危機感を持つ商社は、販価の是正に急いでいる。3月以前に契約したロング玉(思惑による先買い)はほぼ消え失せているようで、流通にとってメーカーの値上げは仕入れ負担の上昇に直結する。ただ、「細物が上がればベースも高値成約に持っていきやすい」「ユーザーは価格の安定を望んでいる」(商社)とメーカー値上げに対しては、大手商社を中心に歓迎する向きが大半だ。

小 棒メーカーの山口鋼業(本社=岐阜県岐阜市、山口憲一社長)は7月1日付で一部組織改正を実施、業務推進本部と製造本部の2本部制を採用した。営業、管理、製造、施設など従来の部単位の上にそれらを統括する本部制を敷き、よりおおぐくりな組織管理を行うことで、業務の効率化を図るのが狙い。

 同社ではこれまで各役員が統括する格好で資材、営業、管理、製造、施設などの各部があった。しかし、製造部門の意思疎通の簡易化を図るため、本社棟内にあった製造部を本社西側にある施設部の隣に移転。これを機に一部組織改正を実施した。

 業務推進本部は資材、営業、管理(総務・経理)の各部を、また製造本部は製造(製鋼・圧延)、施設の各部をそれぞれ統括する。このほか社長直轄の品質管理部があるが、これは従来通り。

東 京地区の厚板市況は需要停滞で弱含み横ばい。市中価格(12ミリ、ベースサイズ)は3万9000―4万円が中心。

 需要は店売り主力の鉄骨、建機が不調。鉄骨は大型物件に関連する受注があり「7月から忙しくなってくる」という溶断業者もあるが、中小規模の民間物件は減少。溶断業者の仕事量にもばらつきがあるようだ。

 定尺は5月以降の販売減が顕著。東鉄連厚板部会の5月の販売量は前月比14%も減少している。定尺品の価格は小幅の値下げにとどまるが、切板は溶断業者の受注姿勢により安値が出ており、今後も下げ基調。高炉メーカーの減産姿勢が在庫にどこまで反映されるかも注目される。

東 京地区の鉄スクラップ市況は様子見。メーカー実勢購入価格は湾岸で6000―6800円、北関東で5400―6100円。

 湾岸メーカーでは好調な輸出の影響を受けて値下げの可能性は少なく、逆に一部ウラ値を付けているところもある。輸出価格がFASで6700―6800円と湾岸メーカーの中心値6400円と比べ高く、輸出量が週3万―4万トンペースで好調なことも要因。

 一方、北関東メーカーは減産強化で値下げをうかがう気配。ただ、輸出価格が北関東メーカーより1000円前後高く、輸送コストを考えても輸出向けが有利な情勢。様子見気配が強いものの、今後も弱含み。

大 阪地区のH形鋼市況はベース3万2000円中心で強含み。4月以降の在庫調整の進展を受け、扱い流通各社が売り腰を強化。この効果もあって、先月から安値が1000円方切り上がっている。

 さらに、今週からは地区唯一の在庫商社である阪和興業が3万4000円唱え、3万3000円下限を完全実施するべく販売価格を引き上げ。同社は第1ステップとして、3万5000円の市況形成を目指す方針で、他の流通各社もこれに追随する見込み。

 ただ、市中の荷動きは相変わらず低調。「6月の売れ行きは5月より多少マシだった」(特約店筋)ものの、依然、活況感を欠く展開となっている。