2001.08.06
住 友金属工業の今年度粗鋼生産は、当初計画の1040万トンを下回る見通しだ。すでに上期では520万トンを10万トン程度減少、下期も上期並みの生産か、状況によっては上期以下に抑制する。需要の先行きを読み違えた前年度の反省を踏まえたうえで、国内の鋼板類を中心に生産を落とす。国内の在庫調整と市況対策と同時に、シームレス鋼管、UO鋼管、交通産機品などの得意分野に重点を置くことで、収益の改善につなげる。

 今年度の当初計画では上期、下期とも粗鋼520万トン、鋼材480万トン(国内330万トン、輸出150万トン)、通期では粗鋼1040万トン、鋼材960万トン(国内660万トン、輸出300万トン)となっていた。上期は330万トンの国内鋼材のうち、30万―40万トンの減産で290万―300万トンに抑制する。薄板の在庫調整と市況対策を中心に、厚板、建材などは実需に合わせて調整する。

 国内の減少分はホットコイルの黒皮、シームレス鋼管、UO鋼管などの輸出でカバーしていくが、すべてはカバーしきれず、国内の減少により、粗鋼生産は当初計画の520万トンより10万トン程度落ち込む。

 下期は全国粗鋼生産が9700万トンまで落ちることを想定し、需要動向を見極めたうえで、在庫圧縮に取り組む。当初計画では粗鋼520万トンと前年同期の528万トンを下回るが、状況次第では520万トンの当初計画も下回り、上期並みのレベルかそれ以下に落ちる可能性もある。

住 友金属工業と住友商事が現地の有力鋼管メーカー、宝鶏石油鋼管廠と合弁で中国陜西省に設立、今年5月、営業生産を開始した電縫鋼管製造工場が早くもフル操業体制に移行した。同工場の実質年産能力は12万トン。「西気東輸」関連需要を中心に年内いっぱいの受注にメドがついた。

 住金、住商は昨年9月、中国石油天然ガス集団総公司(CNPC)と中国石油物資装備集団総公司(CPMEC)傘下の中国宝鶏石油鋼管廠と合弁契約に調印、12月に「宝鶏住金石油鋼管有限公司(大塚唯史社長)」を発足させた。資本金は3億3400万元、出資比率は宝鶏63%、住金25%、住商12%。

 宝鶏鋼管の16インチ電縫管ミル、ネジ切り、継手など既存設備を活用、投資額は邦貨換算で93億円にとどめられている。住金・住商にとっては、経営参画を伴う鉄鋼事業で、初の本格的対中投資で、技術指導を担当。中国側は販売代金の回収や労務を担当する。

 宝鶏住金はその立ち上がりがCNPCが計画しているタリム盆地―上海間4200キロメートルを結ぶ天然ガスラインパイププロジェクト「西気東輸」の着工時期とミート。生産開始からわずか3カ月でフル操業に移行した。

普 通鋼電炉業が、8月1日付で雇用調整助成金制度の業種指定を受けたことで、関東地区では形鋼メーカー中心に臨時休業申請に向け検討が進められている。大手電炉では東京製鉄が岡山・高松・宇都宮の3工場、エヌケーケー条鋼が仙台・姫路両製造所、合同製鉄が大阪・姫路両製造所とそれぞれ事業所別に検討を開始。平鋼では、中央圧延が8月後半の休業計画の中で2、3日臨時休業を取る予定。王子製鉄と大三製鋼は検討中という。一方、丸棒メーカーは関東地区での出荷が堅調なため、申請するところは限られそうだ。

 建設需要の落ち込みで、建築資材をメーンに生産する電炉各社は、軒並み減産体制を強いられている。経済産業省の統計によると、電気炉鋼生産(全国ベース)は今年2月から5月まで4カ月連続で前年同月比を割り込んだ。2―5月4カ月間の累計生産量は、前年比6・1%減の967万7800トンと減少している。

 うちH形鋼は同20・2%減の152万3300トン、一般形鋼は同10・2%減の59万6100トン。厚生労働省の雇調金の対象業種指定用件「減産率5%以上」を下回るため、平鋼、形鋼メーカーで雇調金を申請するメーカーは今後増える見込みだ。

 一方、小棒は同0・5%減の399万100トンと減産率は小幅にとどまっている。関東地区では、都心部の再開発工事や高層マンションの建築が堅調。また、メーカーではコスト削減から操業シフトも受注対応限界に切り替えており、「休業は取れない」(メーカー社長)状況。小棒では申請するメーカーは少ないもようだ。

日 新製鋼は、新タイプの溶融亜鉛めっき鋼板「ZAM」に関して、今年度入り後から月間平均1万2000―1万3000トンの生産レベルに達し、メーンの建材向けを中心に順調に伸びている。今後は電機や自動車など、非建材分野において後めっきや後塗装、ステンレスなどからの代替を進める一方、新用途分野の開発・進出など積極的に展開し、中期的には生産量を同3万トンに引き上げていく方針。

 「ZAM」は、亜鉛―アルミ6%―マグネシウム3%のめっき層を持つ新タイプの溶融めっき鋼板で、昨年5月から東予製造所(愛媛県)で本格的な営業生産を開始。同製品は(1)耐食性は従来の亜鉛めっき鋼板比10―20倍、亜鉛―5%アルミ合金めっき鋼板比5―8倍ともに高い(2)耐疵付性や切断端面部の防食性に優れている(3)型鋼や型物の後めっきや後塗装の代替として使用でき、ユーザーの工程省略が図れる―など、メリットが大きい。

 用途は大手プレハブメーカーなどで採用が増えている鉄骨部材や、ガードレールなど建材分野(全体出荷量の約70%)をはじめとして、農業資材やケーブルラック、自動車部材など非建材分野(同約30%)など幅広い。

住 友金属工業は、6月28日にスタートしたテクノロジーソリューション推進組織「CAT」設立後、初めての成果として大手自動車部品メーカーからテーラードブランク接合機1基を受注した。テーラードブランクメーカーは国内に数社あるが、いずれも自動車メーカーの子会社などで大手の本格参入は初めて。ヨーロッパで急速に普及するテーラードブランク技術の国内での普及を見越したもので、同社では大手自動車メーカーや自動車部品メーカー向けに年間数基ペースでの受注を目指す。設備エンジニアリング事業の大きな柱として、2002年度をメドに年間10億円規模の事業へと育てていく方針。

 今回のテーラードブランク接合機受注は、6月末に設立したテクノロジーソリューション推進組織「CAT」をベースに環境・プラントエンジニアリング事業部が受注したもの。CAT発足後、初めての成果として受注にいたった。

 同社のテーラードブランク接合機は、鉄鋼設備の建設で培ったノウハウを活かして独自開発して製品実用化した。突合精度が100分の5ミリメートル以下、2ラインで毎分90メートルで搬送できる優れたサイクルタイムが特徴で、累計4基の採用実績がある。

 複雑形状でも扱える6軸ロボット方式のガントリータイプで搬送ラインが構成され、突合せ、溶接、検査の一貫工程で対応できる。また、工場の設置面積や部品サイズ、生産枚数のタクトタイムなどユーザーに最適なスペックをフレキシブルに提供できる。

国 光製鋼、合同製鉄からの生産受託分を含め関西ベース小棒の集約生産を行う中山鋼業は、夏季定期修理期間明けの7日から、3社統一の新ロールマーク、新ブランドによる生産を開始する。中山で生産する3社分のベース小棒は、昨秋の集約生産の開始以降、暫定的に中山のロールマーク、ブランドを使用、統一の新ロールマーク、新ブランドへの移行は懸案事項となっていた。

 今春にそれが具体化し、6月に新ロールマーク、新ブランドが決定した。新ロールマークは3社の協調ぶりを示し、互いに手を握り合う形を図案化したS字に似たしるし。新ブランド名はストロング・バー。中山では7日から生産を開始、旧手持ち在庫の消化後、市場に初登場する。

関 西地区の縞鋼板取り扱い業者の三泉シヤー(本社=大阪市浪速区久保吉、青木信博社長)は今期(02年3月期)から、さらに切板の加工・販売体制を強化していく。まず、工場の省人化対策として、今期中にも既存のプラズマ切断機の付帯設備としてホイストクレーンを導入する。また、将来は型切りの受注増に対応し、プラズマ切断機の増設を検討していく。一方、顧客サービスの一環として、ホームページを開設、この中に、縞板の自社在庫の内容を掲載する予定。

 同社は中山製鋼所の関連会社で、中山製鋼所の縞鋼板を在庫・加工販売している。

 本社倉庫の概要は敷地面積が約1500平方メートル、加工設備がシャーリング2基、油圧ブレーキプレス、アイトレーサー付きのプラズマ切断機1基。取扱量は月間2500トン前後。

 前期には本社倉庫にプラズマ切断機1基を新設、縞板の型切り分野に本格的に進出した。今期も付加価値の向上から、この路線をさらに強化する。

 まず、既存のプラズマ切断機の加工の効率を引き上げるとともに、省人化を図るため、今期中にも既存のプラズマ切断機の付帯設備としてホイストクレーンを導入する。これにより、材料の搬入・製品の搬出が迅速にできる。

 また、型切りの加工ニーズは今後、一段と強まってくるとの判断から、将来的にはプラズマ切断機の増設を検討している。加工量も現在、月間200トン(シャー、熔断、曲げ加工)だが、今後、同250トンまで増やしていく。

金 属の切断・溶接加工機メーカー、小池酸素工業(本社=東京都墨田区太平3―4―8、小池康雄社長)は7日から2日間、プライベートフェアを千葉の精機工場で開催する。フェアでは切断機4機種を披露。それぞれの特徴、用途をわかりやすく実演展示する。

 小池酸素工業では今回、大電流水プラズマ自動開先切断装置の製品化を実現し、水プラズマ切断の用途を充実させた。

 ▼場所=千葉県市川市新田2―3―1 小池酸素工業精機工場▼開催時間=10時から17時▼TEL=047―379―4611

東 京地区の異形棒鋼は輸出対応などで細物市況が引き締まり始め、つれてベースも下値が消え始め、ベース2万7000円どころを横ばいで推移している。

 7月後半に関東スチールが8日間炉休するなど夏季減産期に入り、細物ではタイト感が出始めている。細物の市況対策がベースを刺激し、ベース各社では8月前半は販売をスキップ、後半売り出しで値上げを検討している。

 メーカーの強気を受け、商社もゼネコンとの交渉で販価改善に意欲を強めているが、ゼネコンは当用買いに徹し、商社との綱引きの手を緩めていない。それでも「メーカーの姿勢が大きく左右する」(内販商社)のは、間違いなく、減産の進展がカギとなりそう。

東 京地区の厚板は国内高炉のロールにタイト感が出ているが市場に波及する需要が弱く、市況は横ばい。価格は定尺(12ミリ)3万9000―4万円が中心。

 母材は高炉メーカーが造船の好調とUO鋼管の受注でロールが締まってきたことにより、流通では市況好転を期待する声が聞かれる。ただ、流通や中小溶断業者の在庫は輸入材を含めて多く、母材の荷動きも悪い。

 母材同様に定尺品も動きが小さい。流通では、雰囲気が変わるとしても8月後半以降との見方が強い。需要は中小業者には小口、短納期の受注で繁忙感の強い向きと閑散という向きと2つに分かれている。切板は一部安値が残っている。

大 阪地区の異形棒鋼は軟調に推移。市中相場はベース2万2500―2万3000円どころ。

 需要の低迷が続くなかで、流通ではゼネコンの厳しい指し値に応じる形での安値受注が目立つ。2万2000円の安値折り合いも消えていない。

 ただメーカーでは採算的に危険水域に入っていることから減産強化策などにより、今後、市況には追随しない方針を打ち出している。

 ベースメーカーの思い切った減産による強攻策の検討も伝えられている。  メーカーがこれまでのような後追い感のある減産ではなく、攻めの減産を打てれば、相場は先行き転機を迎える可能性もある。