2001.11.26
新 日本製鉄など高炉5社のエンジニアリング事業の2001年度中間期の売上高、受注高が出そろった。5社合計の売上高は、好調だった昨年の受注を受けて前年同期比12・9%増の4032億円、それに対して受注高は前年同期比18・2%減の4782億円と厳しい結果となった。

 2000年ピークを迎えたガス化溶融炉マーケットなど、需要環境は下期に入っても回復の兆しは見られず限られたパイを巡るし烈な受注競争は続く。各社とも新規事業参入や環境ビジネス強化策を打ち出すなか、キーワードは「収益力強化」。需要低迷という壁にぶち当たる高炉各社のエンジニアリング事業は、大きな転換期を迎えたといえよう。


中 山製鋼所(神崎昌久社長)は2002年度から05年度までの4カ年の新中期経営計画をまとめ発表した。高炉生産からの撤退など鉄鋼生産構造の改革、商品の付加価値アップ、グループ営業力の強化と管理部門の合理化、複合経営の強化の4つを柱とするもので、計画の推進で02年度通期からの連結経常黒字化を目指す。

 人員面では本体は生産構造改革などで現在の約1100人から約200人削減、さらに本体以外のグループで約100人削減する。最終05年度には足元の01年度との比較で連結経常ベースで100億円、単独経常ベースで70億―80億円の収益改善を見込む。現在1442億円ある連結有利子負債は4年間で300億円程度圧縮する方向で取り組む。

 新中期は経営環境面で常態的な熾烈化が続くとの前提で策定。生産構造改革では将来的にコスト競争力の見込めない高炉2基と原料供給の焼結工場を来年9月末をメドに休止。鋼材の現状規模の生産販売を維持するために必要な粗鋼のうち年間90万トンは新日本製鉄からスラブ鋼片を購入。自社生産の粗鋼は電気炉の夜間フル操業で同30万トン、既存の転炉を改造しての冷鉄源溶解法で同60万トンの計画。新日鉄大分から購入するスラブは子会社の三星海運が輸送を担当する方向。

 冷鉄源溶解法による生産には慎重に対応し、軌道に乗るまでの間は外部からビレット鋼片を購入する。存続するコークス工場でできる塊コークスは主に新日鉄に販売し、スラブ受給と併せ関係を強化する。生産構造改革による上工程の合理化の完了で現状より50億円程度の収益改善を見込む。

 また商品の付加価値アップについては、鋼板の店売り汎用品から高付加価値新商品へのシフト、棒鋼線材の高級化・採算重視型販売の一段の強化などを進め、鋼材販価の下支えアップを図る。高付加価値鋼板のうち最近独自開発した微細粒熱延鋼板は500―600Nクラスの拡販に注力するとともに、800Nクラスの商品化を急ぐ。

阪 和興業は、ステンレス鋼板の販売基盤強化策として、10月の組織変更で東京本社のステンレス室を薄板部統括下に組み込んだ。普通鋼薄板の販売ネットワークを活用し、ヒモ付きを中心としてユーザーの確保を図る。04年には、ステンレス鋼板の扱いを現在の月間500トンから1000―1500トンに増強する方針だ。

 ステンレス鋼板の販売を薄板部の統括下にしたのは、扱い量アップを即座に行うことが目的。「粗鋼生産量1億トンのうちステンレスは3%の300万トン。これはユーザーにも当てはまることで、普通鋼薄板を扱っているユーザーの3%は、ステンレス薄板も扱っている。

 ステンレス鋼の販売に参入して日が浅いことを考慮すると、早急に販売の基盤を拡大するためには、普通鋼薄板とともに扱った方が良いと判断した。薄板営業にステンレス薄板を加えることで、普通鋼の販売ネットワークを活用し、販売基盤の確立を図る」(小嶋時彦薄板・ステンレス部部長)という。また、現在はヒモ付き、店売りともに半数ずつの扱いだが、店売りの比率を上昇させる予定だ。

関 西地区の小棒細物メーカーの大手、岸和田製鋼(鞠子重孝社長)は今月23日に予定していた新電炉のホットラン開始を12月4日に延期した。電炉設備は完成したが、設備の点検作業を徹底し、万全を期すため11日間の延期を決めたもの。

 新電炉はNKK製の環境対応型高効率アーク炉「エコアーク」の実用第1号機(70トン炉)。従来の電炉2基を新鋭1基に集約する狙いで建設。併せ炉外精錬設備の新設、酸素自家発生装置、フリッカー防止装置の更新、新スクラップヤードの建設などを行い、製鋼部門を抜本的に更新した。

合 同製鉄、東京鉄鋼など関東地区のベースメーカー各社は、市況対策を強化し、今週1週間売り止める。市況が軟調で締まらず商社の売り腰が弱いとみて、販売を抑え価格重視の姿勢をより鮮明にする。一方で原料の鉄スクラップ価格が高騰しているため、価格改善が急務となっており、メーカーサイドは11月契約分から販価をトン当たり1000円引き上げた。12月契約でさらに1000円の追加値上げを商社に伝え、市況のテコ入れを図る考え。通常、造り込み時期の年末年始も需給調整に向け、炉休を検討している。

 秋口以降、ゼネコンからの物件発注はさえず、指し値も依然厳しいため、市況はベース2万5500円どころを弱含みながら横ばいで推移している。低市況に引っ張られ、メーカー仕切りも停滞。加えて、スクラップ価格が夏場の7000円台からここへきて9000円際まで上昇し、メーカーではコスト負担が増大している。

 こうした局面の打開に各社は、11月契約から8カ月ぶりの値上げを表明。「数量より価格」(メーカー営業担当者)に重心を置いている。メーカー各社は今年度継続して減産姿勢を維持しているが、9月以降さらに減産強化が進められた。東京鉄鋼では11月に9日間の炉休を実施。10月比20%の減産を行い、12月も大幅減産を検討。
日 新製鋼は来年度の経常損益の黒字転換を目指し、中期経営計画で打ち出しているコスト削減策を前倒しして実施する。操業改善や購買費低減などにより来年度で今年度比200億円のコスト削減を具体化する。

 同社の上半期業績(単独)は売上高が1487億円と前年同期比8・6%減少、経常損益は前年同期の95億円の利益から86億円の損失に大きく後退している。大幅減益はとくに普通鋼鋼板の価格下落による。

 このため同社は今年度の通期業績(単独)見通しを9月に発表した売上高3000億円、経常損失130億円から、それぞれ2850億円、180億円に下方修正している。
国 土交通省関東地方整備局が関東技術事務所構内(千葉県松戸市)に開設した「建設技術展示館」がこのほど、屋内・屋外の展示技術を全面リニューアルし、22日にオープン。当日は来賓など関係者約150人のほか、多くの来場者でにぎわった。

 「建設技術展示館」は、今後の建設事業に貢献する新技術を実物展示することで、建設技術への理解を深めてもらうと同時に、技術開発を促進させることを目的として、99年11月に開設。すでに2年が経過したが、これまでに約4万7000人が訪れている。

 オープニングセレモニーであいさつに立った国土交通省の奥野晴彦・関東地方整備局長は「これからの建設事業はより良い物をより安く供給するとともに、現場においては新技術を積極的に活用することが求められている。今回のリニューアルを機に、今後も建設技術の情報発信基地として、大いに機能を発揮してもらいたい」とあいさつ。

 今回の全面リニューアルにおいて、鉄鋼業界では住友金属工業(「サンドイッチ型複合床版」「ウェザーアクト処理」)や軽仮設リース業協会(「手摺先行型足場」)、岡三リビック(「多数アンカー式補強土壁工法」)などの製品や工法が新技術として選定されており、2年にわたって常設展示される。

山 梨県のファブリケーター(鉄骨加工業者)で構成する山梨県鉄構協会(会長=今村豊行・住吉鉄工社長)はこのほど、物件別鉄骨単価積算基準を作成した。物件の規模や加工の難易度に応じた単価を換算表から容易に算出できるもので、全国初の試み。単価の内訳と採算ラインを明示できるため、積算方法がファブによって大きく異なることで普及が妨げられていた共同積算事業や、ゼネコンとの交渉の進展が見込まれる。指し値が厳しさを増し、採算を度外視した安値請負が増加するなか、ファブは「8−9割が、見た目でトン当たりいくらと決めた丼勘定」(今村会長)の現状から脱却し、適正単価の確保を目指す。

 方法は、まず設計図書から必要な加工を拾い出し、加工係数点集計表から部位別に係数点を求める。例えば内ダイヤが2カ所あれば、記載されているこの加工の係数は0・5点なので、0・5×2=1で加工係数点は1点となる。これを部位ごとに求めて合計する。次にH形鋼やコラムなどの総重量を、この総係数点で割って単価を求める。例えば総重量が12トン717キログラムで総加工係数点が62点ならば、単価係数は205点になる。

 単価係数表で205点に該当する個所をみると、鉄骨加工単価はトン当たり12万円になっている。これに材料単価を加えたものが鉄骨単価となる。難易度が高まると単価が上がり、数量が多くなると単価が下がるようになっている。同様の方法で、柱と梁の加工単価も算出できる。

東 京地区の異形棒鋼市況はゼネコンサイドが厳しい指し値を寄せ、ベース2万5500円どころを横ばいで推移している。

 ベースメーカー各社は、11月契約から1000円の値上げを進め、商社の販売テコ入れの意思表示を強め、さらに12月の追加値上げを検討するなど強気で押し通している。ベース各社は年末年始も減産を行う意向で需給調整に拍車をかける。

 出荷は依然タイトな状況。ベース、細物メーカー各社の在庫は歯抜け状態で即納物は受けにくい状況。一方、ゼネコンサイドは1―3月の不需要期に向け先安を見込み、当用買いで手当てを抑えている。メーカーの強腰を受けて商社がどう反応するか。

東 京地区の冷延薄板市況は実需が乏しく弱含み横ばい。市中価格(1・0―1・6ミリ、ベースサイズ)は4万5000―4万6000円。

 定尺品の小売価格は動きがなく、販売業者の採算を確保する姿勢が強く出ている。ただ、数量がまとまると安値に流れる傾向があるうえ、コイルセンターの稼働率も10月に60%台に落ちるなど弱気要因が多い。

 このため、高炉各社が10―11月出荷分から打ち出した値上げは、冷延でも浸透していない。冷延店売りで主力の輸入コイルの入着が月間4万―5万トンまで落ちている中で市況が底入れしないのは、需要停滞で在庫の回転が悪いことが大きい。目先も横ばいか。

大 阪地区の異形棒鋼市況は市中相場ベース2万2500―2万3000円どころで高値寄り。ベースメーカーを中心とした減産強化から、納期タイト感が強まっており、流通サイドも価格よりデリバリーとの姿勢に変わっている。

 ベースメーカーではタイト化を背景に11月契約で500円値上げを厳守する方針で、流通も枠確保が先決として値上げ受け入れは致し方ないとの認識。

 こうしたことから商社筋ではベース2万4000円どころを高唱えて、2万3000円固めを図る方向で動き出している。需要の低迷からテンポは鈍いが、相場は2万3000円どころにサヤ寄せされ、先行き反発局面も予想される状況。