2001.12.14
米 国国際貿易委員会(ITC)による通商法201条の損害認定で10月にクロ判定を受けた小棒輸出は、来年2月に決定される大統領救済措置の適用内容が10%程度の関税引き上げでまとまる公算が大きく、このため関係者の間では来年2月以降も輸出が継続される見通しが広がっている。関東地区メーカーでは1月船積みまで輸出を決めているが、2月以降については現時点では未定。仮に10%の関税でも「他国との価格差はなお大きい」(商社)と競争力は保持されるため、一部メーカーでは国内の需給改善に向け、輸出を続ける姿勢を示している。

 細物小棒(9―13ミリ径)の米国向け輸出は、今年の3月積みから活発化し、1―9月の累計で800%増の28万2560トンと急増した。関東地区では、月平均1万5000トンの輸出が行われ、来年1月積みでも1万2000―3000トン程度の輸出が成約されている。

 輸入量の増加を背景に、米国ITCは10月に損害認定で小棒輸入についてクロ判定を下した。救済措置の案を策定する委員は6人で構成され、このうち3人が10%の関税引き上げ、2人が35%、1人が数量割り当てを提示。委員は12月19日に大統領への最終勧告を行い、来年2月17日に大統領の救済措置が決定される。

 商社筋によると、ITCでは、日本製品のシェアが低いこともあってダンピングの要素も少なく、米国市場に与える影響は小さいため、関税引き上げと緩やかな措置となる見込み。「外国製品とは100ドルの開きがある」(商社)といわれ、10―20%程度の関税がかかっても、販売面にはさほど支障はないとみられる。

阪 和興業の鉄鋼部門は今年度下期で、国内では東京、大阪、名古屋の流通センターの有機的な活用、eコマースの拡充、鋼板類のシェア拡大、リスク管理の強化を図る。需要は上期より増加しないと判断しているが、機能を強くすることで収益拡大につなげる。海外ではコイルセンターに経営資源を集中し、中国向けを中心に弱電やOAの新しい展開をフォローする。鉄鋼部門全体では、数量は上期比3%増の358万トン、売上高は2%増の1672億円を目指す。

 下期の販売量は、国内が上期比2%増の316万トン、貿易が10%増の42万トン、合計では3%増の358万トン。売上高は国内が2%増の1145億円、貿易が2%増の227億円、合計では2%増の1672億円の計画。なかでも、流通センター、eコマースの機能を活用し、品種では鋼板を伸ばす。

 具体的には、流通センターの活力ある展開を推進する。最新鋭設備に在庫、加工の物流機能を付加して、ビジネスチャンスを拡大。営業のツールとして有効活用し、収益の向上を狙う。

 昨年10月から東京でスタートしたeコマース(鋼材電子商取引)サイト「ハンワ・スチール・ドット・コム」は、名古屋、大阪、北海道と地域を広げ、確実に成果を上げている。今後は機能の充実・付加と改善でインフラを整備。ユーザー数、数量の拡大につなげる。ビジネスのサポート役として大きな意味を持つポジションに成長しているため、流通センターの有効活用や鋼板類の拡販とも合わせ、営業のツールとして拡大する。

 鋼板類は条鋼類と比べて拡販の余地を残しており拡充していく。メーカーの再編などにより、マーケットが大きく動いていることをとらえ、さまざまな角度でビジネスチャンスを模索。鋼板に大きな経営資源を注ぎ込んで、収益拡大を目指す。

経 済産業省はこのほど、日本鉄鋼業の競争力強化の方策を検討、中長期的な方向性を示す「我が国鉄鋼業の競争力強化と将来展望研究会」(岡本巖・製造産業局長の私的懇談会、座長=足立芳寛・東大教授)の報告書をまとめた。

 鉄鋼業の重要性を明示したうえで、経営環境の変化から10年後には年間粗鋼生産量は約1億トンから約9000万トンにシフトする可能性を指摘。1億トンの能力を維持しつつも、9000万トン水準でも利益確保できる下方弾力性を持つ強靭な生産体制の構築を提唱した。そのために品種の住み分けなどで競争力のある製鉄所に生産集約、企業数見直しや企業の枠を超えた効率体制の早期実現、さらに経営参加も含めたアジア全体での分業などによる効率生産体制の構築を提言。技術開発とリサイクル事業などフロンティア拡大も重要とした。

 日本鉄鋼業は極めて重要な産業で、安定発展は不可欠―と位置付けたうえで、世界に冠たる技術力、競争力の維持・向上に向けた方策の早期実践を掲げた。

 現状では、世界最高の技術水準を擁するものの、コスト競争力では中国、韓国などに対し優位性が縮小していると分析。高付加価値化により利益確保を図り、競争力の源泉となる研究開発の縮小傾向の歯止めと技術開発戦略の強化も重要課題に挙げた。

住 金物産は、ドイツに本社を置くシュレッダーのトップメーカー、シュライヒャー社製のコンピューターメディア細断用シュレッダー「インティムス・マルチメディア」ほか、2機種の販売を12月から開始した。コンピューターメディアを細断することにより内蔵データの解読を不可能にする機器の日本での販売は、インティムス・マルチメディアが初めてとなる。マルチメディア専用シュレッダーは、ソフトウエアメーカーや企業・官公庁などを中心に、初年度で1000台(約6億円)の販売を計画している。

 インティムス・マルチメディアは、CD―ROM、DVD、FD(フロッピーディスク)だけでなく、MOやZIP、DDSデータカートリッジなどのコンピューターメディアを、毎分50枚の処理能力で、安全かつスピーディーにパーティクル状(1センチメートル角のくず)やストライプ状に細断し、確実にデータ漏えいを防止する。価格は1台当たり64万円で、その他CD―ROMやFDの細断に機能を絞り込み、価格を抑えた姉妹機種も同時に発売する。

 住金物産は、1989年にシュライヒャー社と総代理店契約を締結して以来、家庭用のパーソナルシュレッダーからオフィス用の大型シュレッダーまで、年間約2万台(約20億円)の輸入販売を行っている。

高 炉筋によると、来期(1―3月)の造船厚板需要は、今期並みの56万トン強でほぼ横ばいの見通し。2年強の手持ち工事を確保しているため、足元の建造環境は良好で高水準の起工が続いている。ただ、「2003年後半以降の建造となる今秋の商談が大半ストップしている」(大手造船)状態であるため「2004年以降の船票の埋まり具合が悪い」と言われている。このため2002年度は、第1クオーターから起工の繰り延べで手持ちの平準化の動きが出てくる懸念も指摘されている。

 造船厚板需要は、2001年の新造船受注が1500万総トンに迫る状況で、足元は極めて良好。今期も当初見通しの56万トンを若干上回る水準で収まる見通しで、年率では230万トン前後に達している。

 来期も今期の基調が継続されると見られており、56万トンの横ばいと想定されている。「ドックの能力から見ても、造船厚板需要は量的には上限に張りついている」状況で、来期まで好調な推移が見通されている。

 ただ、新規の商談はここへきて中断している。大手造船の営業部隊は「テロ事件後の世界景気の低迷から新造船の秋の商談は、全くストップしている」。「開店休業」の状態で、新規の船票の埋まり具合は、急速に悪くなっている。

関 包スチール(本社=大阪市西区、谷本隆広社長)は来年7―8月をメドに、千葉県浦安市内に壁材などの建材製品の新工場を建設する。早急に浦安鉄鋼団地の近くの土地(敷地=1万1880平方メートル)を購入する方針。土地の取得後、工場・事務所の建屋を建設し、フォーミングライン6基を設置する予定。生産量は月間2000トン程度を計画している。今回の新工場の建設は、関東地区のおう盛な建築下地材の需要に迅速に対応できる体制を整備するのが狙い。既存の浦安鉄鋼団地内の浦安営業所の土地・建屋は売却する方針。

 これまで、同社は東日本地区の建材需要に対しては関係会社の関包スチール工業(本社=鹿嶋市)を主力に、一部を自社の浦安営業所で対応していた。

 しかし、広大な関東地区での物流を考慮すると、首都に近い地域での生産が必要と判断、浦安市に新工場を建設することを決めた。すでに、工場予定地を選定しており。今後、正式に購入する。

 予定地は浦安鉄鋼団地の近い場所で、敷地は1万1880平方メートル。来年早々にも、工場建屋と事務所の建築を開始する。建築面積は約4000平方メートル。工場完成後、フォーミングラインを設置する。

 フォーミングは6基を予定しており、このうち1基を新設し、浦安営業所から2基、関包スチール工業から3基を移設する予定。来年夏から壁材を中心に生産を計画しており、生産目標は月間2000トン。関東地域を対象に受注を行う予定。

日 本造船業が2001年で3年ぶりに新造船受注で世界一の座に返り咲く可能性が高くなった。日本造船工業会は、11月の新造船受注実績を公表した。それによると11月は、97万8000総トンで前年同月比40・1%の増加。これにより1月以降、11月までの累計実績は1278万9000総トンと、2000年実績(1193万総トン)を上回った。韓国は10月までの累計が982万総トン。この段階で日本が199万総トン上回っている。このまま日本が差を維持して、世界一の座を奪還する見通し。

 日本の11月受注実績は貨物船が16隻、61万9000総トン、油槽船が10隻、35万8000総トン。前月に続き貨物船が好調に推移している。月次の97万8000総トンは、前月比では22・0%の減。しかし、高水準の推移は変わらない。

 11月末までの累計では貨物船が198隻、701万2000総トン、油槽船が124隻、571万9000総トン。その他3隻、5万8000総トン。金額は、1兆1931億5200万円。

 日本の新造船受注は、年初から高いレベルで推移している。韓国の選別受注への転換と船価の上昇、円安などで収益改善が進んだことを背景にしている。1月以降、月次では100万総トン台に乗ったのが7回に達している。

ユ ジノール、アーベト、アセラリアの3社は12日、合併会社の社名をアルセロールとすることを公表した。ガイ・ドーレ会長は自動車向け鋼板のシェアを現行の約10%から5年間で倍増させる方針を明らかにした。また、鋼板は2002年第1・四半期に量・価格とも底を打つとの見通しを示した。また、フランシス・メール会長は米国の鉄鋼業界再編の動きに対して直接、間接に参加したい考えを示した。

 アルセロールは生産量が粗鋼ベースで年間4600万トン、従業員11万人と世界最大。  マドリード、ルクセンブルク、パリ、ブリュッセルに上場し、合併に伴う株式の交換は2002年2月末までに完了する見込み。

東 京地区のH形鋼市況は200×100で3万6000―3万7000円中心の強含み。流通の多くが今週から再度3万7000円下限販売を表明したことで、間もなく3万7000円が過半数となるもよう。

 東京ときわ会の11月末在庫は6万7040トンと10月比7・3%減。入庫が同6・1%増、出庫は同1・0%増といずれも2カ月連続増。12月に入り引き合いは減少しているが、入庫を絞ってきたため歯抜けが散見。特にジュニアサイズで多く、形鋼部会の11月調査では、入庫が広幅で30%、中幅と細幅で10%以上増えたにもかかわらず、在庫率は0・99カ月と非常に低い。不需要期入り後も減産継続で、目先強含み。

東 京地区の厚板市況は市中価格(12ミリ、ベースサイズ)3万9000ー4万円中心で横ばい。

 12月の加工量は中小、大手ともに期待できない見通し。鉄骨、建機など各分野で需要減が目立ち、海外生産の影響も深刻化している。関東地区の大手溶断業者でも「11月後半から急激に落ち込んだ」という。

 母材は高炉メーカーの値上げに対し、流通や溶断業者は慎重な姿勢。減産の効果がまだ限定的である点と価格的にも完全に入れ替わるまで至っていないとの疑問が残るためだ。需要業界のコストダウンから切板価格への要求も厳しく、値上げを浸透させるのは難しい状況が続いている。当面横ばいか。

大 阪地区のH形鋼市況はベース3万3000円どころでもちあい。

 不需要期を控え市中の荷動きは低調だが、流通の出荷量は思ったほど減っていない。ときわ会の11月末実績では入庫が横ばいの4万2986トン、出庫が前月比2・1%減の4万4317トンで、「出庫量は日割りにすれば増加している状態」(特約店筋)。在庫も同比2・8%減の4万8132トンと2カ月連続の減少となった。

 また、メーカーサイドでは住金スチールが今月下旬から20日間の炉修に入るほか、高炉筋は来期(1―3月)5%の減産強化を表明している。一方で需要家の値上げへの抵抗は厳しく、市況は当面、もちあい。