2001.12.20
世 界全体で2005年までに鉄鋼生産能力は、粗鋼ベースで約7500万トン、2010年までにさらに2300万トンを削減し、今後10年間に、合計で最大9750万トンと1億トン近い能力削減が実施される見通し。17―18日の両日、パリで開催された経済協力開発機構(OECD)のハイレベル鉄鋼会合で、各国政府から過剰生産能力の削減見通しが提示され、世界的レベルで非効率的な生産設備廃棄に動き出す。日本は3―4年間で稼働中設備の500万―600万トンを含む2800万トンの削減見通しを示した。会合では鉄鋼市況の軟化、通商面での緊張拡大を踏まえ緊急に取り組みを進めることで合意、能力削減では国際金融機関への協力要請など財政援助の可能性を考慮することでも一致した。

 ハイレベル鉄鋼会合には、OECD加盟30カ国と、中国、ロシアなど非加盟国10カ国の合計40カ国が政府高官を派遣し、能力削減、補助金などの規律強化を中心に議論を進めた。冒頭、米国代表は同会合での削減見通しなどの提示内容が「米通商法201条(セーフガード)措置の大統領決定判断に大きく影響する」(アルドナス商務省次官)と述べ、201条とハイレベル会合との関係にも言及した。

 各国から提示された生産能力削減見通しは、まず、03年末までに世界全体で6100万―6500万トンを削減、その後05年までに、さらに950万トンを減らし、計7450万トンを削減。加えて10年までに2300万トンを廃棄、総計では10年間で最大9750万トンと1億トン近い削減が見通しとして示された。

日 本鉄鋼連盟は19日、02年度の国内の粗鋼生産が今年度の1億トン程度(見込み)から9500万トン程度に減少するとの見通しを発表した。02年度は、国内鋼材需要が土木・建設、製造業ともに減少、世界経済の減速により東南アジア中心に鋼材輸出も大幅に縮小すると予想し、粗鋼生産見通しを01年度比500万トン減と策定した。国内粗鋼は98年に9100万トンに落ち込んだ後、99年9800万トン、00年1億690万トンと回復基調にあったが、急速かつ大幅な内需の落ち込みによって01年、02年ともに前年割れとなる。

 鉄鋼連盟は、01年度の鉄鋼需要について、国内需要が建設、製造業とも大幅に減少すると見込んでいる。具体的には土木が公共投資の減少によって前年度を下回り、建築についても住宅がマイナス、非住宅も大きく落ち込む。また製造業も設備投資・輸出減を受けて自動車、産業機械、電気機械を中心に減少するとみている。

 一方、輸出については、世界経済の減速などによって鋼材ベースでは減少するものの、中国、台湾、東南アジア向けを中心とする半製品の増加もあって、全鉄鋼ベースでは前年度を上回ると見込んでいる。

 粗鋼生産については、国内需要の大幅減に在庫調整が加わり、下期には年換算1億トンを下回る水準に減少、年度では前年度比690万トン減の1億トン程度にとどまると予測している。

川 崎製鉄は高強度・高加工性電縫鋼管『HISTORY鋼管』を開発、昨年10月から同社・知多製造所で製造設備の稼働を開始したが、このほどトヨタ自動車の『エスティマハイブリッド』に続く第2弾として同じくトヨタ自動車の『ノア』『ヴオクシー』のベルトアンカー部材として採用が決定、納入を開始した。

 同社が開発した『HISTORY鋼管』は、熱処理をしなくても電縫溶接部を含めた円周方向の硬さが均一であり、高強度でありながら曲げや絞りなどの厳しい加工にも十分耐えられる世界初の高機能管。これはストレッチレデューサー(縮径ミル)での『温間域高縮径圧延』によって創製された材質特性を生かしたもので、この材質により低炭素鋼素材を用いても鋼管の高強度化が可能となり、優れた溶接性を発揮する。

 同社では自動車メーカーなどに対し採用に向けた取り組みを積極的に行ってきたが、今年6月トヨタ自動車の『エスティマハイブリッド』のシートフレーム高強度ベルトアンカー部材として初めて採用され、高強度による軽量化やコスト面などで高い評価を受けていた。今回はこれに続く2弾目として『ノア』『ヴオクシー』への採用が決定、11月から納入を開始した。
合 同製鉄は19日、10―12月で実施した姫路製造所の店売り向け構造用棒鋼の大幅減産を来年1―3月も継続すると発表した。10―12月同様、今年度上期実績比30%減産を実施するもの。6カ月連続の大幅減産で需給引き締めを図り、値戻し環境を整える。

 店売り構造用鋼で25%のシェアをもつ同社をはじめメーカー各社の10―12月の自主減産実施で、市中在庫は減少傾向にあるが、予想を上回る需要減から需給引き締まりには至っていない。このため需給タイト化を狙いに1―3月も大幅減産を継続することにした。3月末までに市中の在庫調整が進み、需給が引き締まれば、大幅に落ち込んでいる価格の是正に乗り出す。

N KKは19日、地球環境に優しい高機能クロムフリー化成処理鋼板「ジオフロンティアコート」が、社団法人表面技術協会(会長=岸富也・慶応大学理工学部教授)の02年度技術賞を受賞することに決まったと発表した。

 授賞式は、東京千代田区の弘済会館で2月27日に行われる。クロムフリー化成処理技術に関する受賞は、表面処理技術協会技術賞を含めた学会、協会の賞では業界初となるという。

 「ジオフロンティアコート」は、独自の高バリア性特殊有機皮膜と防錆添加剤からなる複合皮膜の開発により、高い耐食性と導電性、溶接性を両立させることに成功した画期的な鋼板。

 従来のクロムフリー化成処理技術は、耐食性を確保するために皮膜を厚くせざるをえず、プレス成形後にプレス油をアルカリ脱脂により除去する際、化成皮膜が化学的ダメージを受けて耐食性が劣化する弱点があった。同社では、この点に着目して、世界で初めてジオフロンティアコートで技術的に克服した。

 これにより、屋内家電の中でも、これまで適用が難しかった耐食性要求レベルの高い冷蔵庫、洗濯機などの用途にもクロメート系プレコート鋼板代替としての適用も可能となった。

 98年の商品化以降、OA、AV機器分野を中心に幅広く採用されており、今回の授賞を機に同商品のより幅広い分野での適用、拡販を狙っていく方針。
重 仮設リース業者、協友リース(曽我部満社長)は保有資材を有効活用するため、従来はスクラップとなっていたH形鋼ケタ材の端材や、デッドストックの短尺品同士を溶接接合した「H形鋼ジョイント材」を、杭材やソイルセメント柱列壁工事の芯材向けで販売を開始した。同社では、親会社である川商ジェコスと丸紅建材リースに先行営業しているが、本格的な体制が整った段階で、2社以外の重仮設リース業者にも販路を拡大していく。

 協友リースは86年、大手重仮設業者の川商ジェコスと丸紅建材リースが50%ずつ出資して設立。H形鋼ケタ材と挟締金具のリースおよび販売・製作・加工・修理などを推進してきた。取引先は出資2社をメーンに、日商岩井鉄鋼リースや丸藤シートパイル、日本鉄鋼建材リースなど幅広い。

 ゼネコンの受注競争は激しさを増しており、最低レベルにある重仮設リース料金は大きな回復が見込めない状況。同社では、選別受注を徹底してリース料金の下落を防ぎ、採算回復に尽力してきたが、さらなる収益を確保するため、昨年には全アルミ合金製裏込部材「ブルブロック」を開発するとともに、今年度から加工込みリースを開始するなど、業容拡大に取り組んできた。

 この一環として、従来はスクラップとなっていたH形鋼ケタ材の端材や、デッドストックの短尺品に開先加工を施し、接合部にスプライスプレート(当て板)を取り付けて全溶接した「H形鋼ジョイント材」を、杭材やソイルセメント柱列壁工事の芯材向けで販売をスタートした(埋め殺し向け販売のみ)。

東 京地区の冷延薄板は市中価格(1・6―2・3ミリ、ベースサイズ)4万5000―4万6000円中心で横ばい。

 需要の頭打ちによる停滞感に加えて、ゼネコンの倒産をきっかけとした与信警戒が強まり、市場は冷え込んでいる。11月後半から荷動きが鈍り、12月の商いは半ば手仕舞いの雰囲気が漂う。高炉の減産、在庫減が防御線とはなりつつある。

 ただ、輸入コイルに左右されるだけに来年1月以降、先行き流通側は楽観できないとの見方。月間4万―5万トンレベルと低水準で推移するが、薄板類の国内値上げが波及してくれば長期的にこの水準が続くとは考えにくい。市況は現状維持で年末を迎えそう。

東 京地区のH形鋼は200×100で3万6000―3万7000円中心の強含み。12月に入り多少一服感があるものの、入庫を絞ってきたため、品薄感はジュニアサイズを中心に依然強い。

 東京製鉄は1月販価は据え置いたが「次の値上げを考えている。持続的に上げていき、市況に良い影響を生み出す」と表明。ただ、生産面ではメーカーの姿勢にばらつきが出始め、一部夏場より増産しているところも。

 ヒモ付きの値上げの浸透具合は各社マチマチだが、対象となる新規物件が出始めて平均1000―2000円程度達成し、店売り市場に好影響と流通は歓迎。強横ばいで越年。