2002.01.17
韓 国からの小棒輸入の引き合いが増加しているが、関東地区メーカー各社は慎重な構えをみせている。韓国の建築需要が堅調で、昨年は東北、関西地区からの輸出が主力だったが、ここへきて信越メーカーが3月積みを成約。関東では前向きな細物メーカーもあるが、大方は「友好的な韓国メーカーを刺激したくない」と静観している。昨年増大した米国向け輸出が法的制限を受ける見通しで、韓国は代替候補となるものの「国内出荷はタイトな状況にあり、価格面からも大幅な輸出増は考えにくい」(大手商社)との見方が一般的だ。

 97年の通貨危機以降、韓国経済は回復基調をたどっている。今年5月に開催予定のサッカー・ワールドカップによる需要喚起も後押しし、「事務所形式のマンションを中心に、ビル物件の出件が相次いでいる」(別の大手商社)とされ、昨年9月に93万トン、10月には94万トンの小棒需要があったという。中国向け輸出も増えているようで、韓国鉄鋼協会では02年の小棒総需要を前年比0・2%増の966万5000トンと予測、昨年並みの需要が続く見込みだ。

 日本からの韓国向け輸出は、01年10月で前年比5倍の9860トン、11月は同30倍の1万6600トン(財務省貿易統計)。1―11月累計では前年比89・5%増の7万2200トンと増えている。「12月も相当量出ている」(商社)もようで、信越や東北地区のメーカーでは、不需要期の冬場対策に輸出を増やしている。

 韓国バイヤーからみると、割安な日本材は魅力となる。メーカー筋によると、韓国メーカーの販売価格はSD295でトン30万ウオン(D13)。SD395では31万ウオンといわれ、円換算ではそれぞれ3万円、3万1000円。日本材より4000―5000円割高となり、韓国バイヤーは日本に対し2万4000円で引き合いを寄せている。購入はドル建てであり、円安傾向がフォローとなっている。

三 菱製鋼は特殊鋼の製造子会社である三菱製鋼室蘭特殊鋼の電気炉(100トン)を休止したことを明らかにした。同社の抜本合理化の一環として、新日本製鉄・室蘭製鉄所から溶鋼の供給を受け、鋼材の生産に当たる新体制に年初から移行させた。99年度から室蘭特殊鋼の再建計画を遂行、特殊鋼部門の改革が大きく前進したことになる。同社では素形材事業、バネ事業と構造改革を実践、この成果から黒字化を果たしており、残る鋼材事業についても、室蘭での新体制を基点に、素形材部門など他部門への人員シフトなど改善策を通じ、早期の黒字化を目指す方針だ。

 同社では、99年度に鋼材製造部門の三菱製鋼室蘭特殊鋼での再建を掲げ、これまで合理化策を進めてきた。赤字体質からの脱却を念頭に、製鋼部門での改善を推進、生産体制の体質強化を志向。

 新体制では、新日鉄・室蘭製鉄所から溶鋼の供給を受け、電気炉は廃止される。自社では、炉外精錬(LF)以降の生産対応を従来通り行い、同工程以降に集中する。これらによって鋼材製造での効率性を高める。
日 本造船業界の2001年の新造船受注は、357隻、1389万7000総トンと前年比19・9%の増加となった。韓国の新造船受注がEUとの摩擦や採算重視への転換から1000万総トン強の可能性が強いため、日本が3年ぶりに韓国を抜いて受注で世界一になったもよう。受注拡大で2002年の造船鋼材の需要も増加すると見られており、会員大手18社で300万トンに迫る水準が予想されている。

 日本造船工業会はこのほど、12月の新造船受注実績を公表した。それによると受注は32隻、110万8000総トンと前月比13・3%の増加。タンカーが22隻、70万3000総トンと前月比倍増しており、全体の水準を押し上げた。この結果、2001年の新造船受注は、357隻、1389万7000総トンと90年以降では最高水準を記録した。内訳は、貨物船が208隻、741万6000総トン、タンカーが146隻、642万3000総トン、その他3隻、5万8000総トン。

 全体の隻数は37・2%減少したが、大型船の増加で総トン数は大きく改善した。

 これに対し99年から世界一の座にある韓国は、手持ちが3年近くに拡大しているため採算性重視の姿勢に転換。加えてEUが安値受注をめぐって韓国をWTOに提訴するとして牽制していることもあり、3月以降の新造船受注が大きくスローダウンしている。このため暦年の実績は1000万総トン強の水準と見られている。

 2000年で韓国に700万総トンの差をつけられている日本は、3年ぶりに世界一の座に返り咲いたと見られている。
日 本鉄鋼産業労働組合連合会(荻野武士・中央執行委員長)は02年春闘に際し、1月下旬から2月中旬にかけて、業種別労使懇談会を開催する。賃上げ要求を見送る02年春闘では「雇用春闘」の意義を明確にするため鉄鋼労連本部と各部門の労使による会議を個別の労使交渉・協議の前段および並行する形で実施するもの。

 一連の労使懇談会には荻野委員長が出席し、02年春闘の目玉となる「雇用安定協定」の意義を改めて経営側に説明すると同時に問題提起する。

 また、同委員長は鉄鋼労連の活動報告として、最近の鉄鋼産業に関する鉄鋼労連の受け止め方などを説明する予定。

 業種別労使懇談会の日程は次の通り。

 【1月】▽単圧=23日▽電炉=28日▽アロイ=29日▽総合大手=31日

 【2月】▽特殊鋼=1日▽ドラム缶=8日▽鋳鍛鋼=13日▽建材=15日

関 東地区の鉄スクラップ価格が、1年6カ月ぶりに1万円の大台に乗った。東京製鉄・宇都宮が16日にスクラップ購入価格を500円値上げし、特級ベース1万円を付けた。他メーカーもこの動きに追随しており、1万円に肉薄する価格帯まで迫っている。

 前回、東鉄・宇都宮が1万円を切ったのは00年6月で、その後スクラップ需給は緩み値を下げていき、01年6月には史上最安値の6100円を付けた。しかし、年間600万トン(01年度推定)を越えるスクラップの大量輸出や、それを後押しする円安の進行で輸出価格が上昇。電炉メーカーもスクラップの購入価格を上げざるを得なくなっていた。

 現在、輸出価格(新規契約ベース)はFASで8800―9200円と高値で取引されており、これに対応する形で、メーカー実勢購入価格(H2ベース)が、湾岸地区で8800―9200円、北関東地区で9500―1万円と値上げ基調を見せている。

 東鉄・購買担当者は、「円安が進んでいること、台湾、韓国向けの輸出価格が値上がりしていることに対応した。在庫は使用量ベースを確保しており、入荷に心配はない」という。

 この値上げ基調がいつまで続くかが、スクラップ業界で話題になっているが、国際価格化した鉄スクラップ価格の行方は誰もつかめない。ただ、今後も海外要因の影響を受ける形で国内価格が推移することは間違いないだろう。



工 具鋼流通のカムス(本社=千葉県市川市、笹本泰彦社長)は4日、北関東熱処理(本社=群馬県太田市、弓削博資社長)を吸収合併し、熱処理業務を引き継いだ。日本高周波グループの流通部門として、工具鋼の在庫、切断・切削・加工、熱処理を一元化し、業務の効率化・最適化を図ったもので、合併後は初年度18億円の売り上げを見込んでいる。来年4月には現在増設中の旧北関東熱処理本社社屋に、カムスの本社・工場を移転・集約し、在庫能力を倍増させる予定だ。

 移転後は市川、横浜、厚木、群馬、大阪に販売拠点を確保することになり、東日本でのカムスの工具鋼物流、販売体勢が完成する。これは日本高周波鋼業工具鋼営業部の工具鋼販売戦略の一環として行われており、今後は、同じく日本高周波鋼業の子会社で工具鋼流通の緑熱処理(本社=神奈川県厚木市、大屋暁明社長)との連携をさらに強化し、グループ全体で工具鋼の拡販に取り組む方向。

 カムスは01年7月にケイ・エイ・メタルサービスと大和金属の合併で設立した日本高周波鋼業の100%子会社。01年3月期は売上高13億9000万円、経常利益2900万円。

フ ジタのシステム建築「超ローコストファクトリー(FLF)」が、茨城県内の店舗向けに相次いで建設されている。昨年12月に1店が竣工・オープンし、もう1店舗も3月上旬に竣工する予定。

 ワンダーコーポレーション(本社=茨城県つくば市)の2店舗で、1店舗はエンタテインメント専門店「ワンダーグー笠原店」。延べ床面積1330平方メートル、昨年12月中旬に竣工したもので、約2・5カ月の短工期で建設された。もう1店はパソコン専門店「デジックスワンダー日立店(仮称)」。延べ床面積4042平方メートル、昨年11月から着工し、3月上旬の竣工を予定している。

 FLFは、標準照明と法定設備を備えた標準モデルで3・3平方メートル(1坪)当たり9万8000円(首都圏、平屋・延べ床面積6000平方メートル、税抜き価格)から建設を可能とした工場・倉庫・ホームセンター・店舗向けの低価格システム建築。ゼネコンのノウハウを活用し、工期も従来工法に比べて1カ月程度短縮できる。

 今回建設している2店舗でも、間柱を不要とし12メートル程度の柱間隔により店舗の機能性を確保。定尺部材を連続梁で使用し部材サイズを抑えたほか、架構システムやロールH形鋼主体の鉄骨部材採用、補助部材や溶接量の低減などFLFの特徴を出している。フジタでは工場・倉庫に加え量販店、ホームセンター向けでも営業を拡大させる考え。

U Sスチール、ニューコアなど米大手鉄鋼メーカーは15日、鋼材輸入の急増による国内業界の被害対策と合併や設備廃棄のために、連邦政府の緊急対策が必要との認識で一致したと発表した。

 貿易法201条に基づく包括的な救済策や合併のための障害除去が必要としており、40%の関税による輸入制限と退職者医療給付金などの政府支援を改めて要請している。

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 北米の貿易業者で構成する米国国際鉄鋼協会(AIIS)は15日、国内鉄鋼業界の保護貿易強化要請に応じないよう、大統領に求める文書を8日に提出したと発表した。文書ではまた、いわゆるレガシーコストについて政府が支援するのは適切だが、対象は閉鎖施設に限定し、合併や統合の促進策として実施すべきとの考えを示した。
東 京地区の等辺山形鋼は6×50で3万6000円、溝形鋼は5×50×100で4万円中心の横ばい。引き合いは小口中心ながら、H形鋼の上昇基調に乗って底堅く推移している。

 年末年始で取引先への信用不安が増大。稼働日数減による引き合いの減少と相まって、11―12月初めのころのような勢いはなくなりつつある。12月中旬から流通が唱える山形3万7000円、溝形4万1000円は通っていない。

 しかしH形鋼同様、メーカーの価格優先姿勢が明確なため、ダブつき感はない。スクラップ価格の上昇で採算が悪化したメーカーは、2月契約分の販価引き上げを視野に入れ減産を継続する。目先横ばい。

東 京地区の表面処理鋼板(電気亜鉛めっき)は底ばい。定尺市況は5万3000―5万4000円(熱延)、6万3000―6万4000円(冷延)。

 需要は1―3月も停滞が予想されるが、新年の荷動きは予想したよりも出足が良いようだ。東京のコイルセンターでは「自社を含めて在庫をかなり落としてきている。急ぎの注文に対応できないこともある」と荷が動いた要因を指摘する。

 ただ、安値は切り上がるとしても価格反転にはまだつながりそうにない。全体的な在庫調整は着実に進展するものの、需給にひっ迫感を生むまで1―2カ月は必要とみられ、需要家の値下げ要請も相変わらず強い。
大 阪地区のコラムはベース5万2000―5万3000円どころで横ばい。

 年明けの荷動きは主力の建設が不需要期とあって、極めて低調。現状、市中在庫に過剰感はないものの、マーケットはややもたつき気配の商いとなっている。加工流通筋の加工納期も昨年末に続き2―3日程度とほぼ即納の状態。ただ、僚品主力のH形鋼が年明け以降、タイトな需給環境を反映して上昇気運となっているため、これが当面の下支え材料となっている。

 現在、ファブリケーターの仕事量はHクラスで3―6カ月、Mクラスで3カ月弱程度で、やや中小向け物件が少なくなっている。