2002.02.19
東 京製鉄(池谷正成社長)は18日、3月契約の販売価格を発表し、2月契約に続いて薄板、条鋼品種など全面値上げとした。ホットおよび酸洗コイルはトン2000円のアップ。3カ月連続の値上げとなり12月契約からみて5000円上昇した。溶融亜鉛めっきコイルは建値3000円上げで2カ月連続の見直し。H形鋼は実行販価を1000円上げ、4カ月連続の値上げとした。東鉄は「値戻しの緒についたばかり」(安田英憲常務)とし、市況の持続的回復に努める方針。年初から強まる鋼材市況の上伸ムードを後押しし、春先に見込まれる高炉各社の薄板値上げにも追い風となりそうだ。

 東鉄は、1月契約で2年ぶりにホット、酸洗、縞鋼板(コイル)の値上げを実施。2月契約では、溶融亜鉛めっきを加え条鋼品種も含めて全面高とした。しかし「依然安過ぎる」(安田常務)価格の是正に、3月契約も全品種の追加値上げを決めた。ホットを建値ベース3万円、酸洗3万3000円、縞鋼板3万7000円、ユニバーサルプレート3万5000円とし、それぞれ建値2000円引き上げた。溶融亜鉛めっきは前月の2000円上げに続き、3000円上げの4万2000円とした。

 条鋼品種は、線材が実行販価で3000円アップ。U形鋼矢板が同2000円、H形鋼と縞H形鋼、I形鋼は各1000円値上げした。溝形鋼は建値1000円引き上げ、販価3万6000円、山形鋼は同1000円上げの3万2000円、異形棒鋼は2000円上げの2万7000円とした。売り出しは18日、締め切り21日。
東 京製鉄が4カ月連続でH形鋼を値上げしたことに対し、流通は「需要が低迷するなかで、市況4万円までもっていくための後ろ盾になる」とおおむね歓迎する向きもある一方で、「減産と原料高による採算悪化とはいえ、現状の設備能力のままで、減産してコストアップだからと値上げするのはどうかと思う」との指摘もある。さらに「東鉄の2月契約までの3000円アップは、一昨年11月に高炉が2000円値上げした分に追いついた程度。今回の3月契約分からが実質的な値上げ」とみて、今後の高炉メーカーの値上げを視野に入れる。

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 東京地区の熱延鋼板流通は市中への価格転嫁をさらに急ぐ考え。一部値上げを進めたものの、東鉄の値上げ幅は高炉メーカーの値上げ幅を上回り5000円となった。高炉メーカーの再値上げも検討される中で、採算悪化が懸案の流通は、年度末に向け厳しい局面に入りそうだ。

 東京地区の流通では、3カ月で計5000円もの値上げに戸惑いも見られる。これまで熱延鋼板で1000円ほどの値上げを転嫁しているが、高炉メーカーが昨年夏に掲げた3000円の値上げは完全に浸透していない。

 しかし、値上げそのものは、メーカーの価格是正が一段と明確になったとの受け止め方。熱延鋼板の販売業者は需要不振にあえぎながらも、自社の収益悪化に対する危機感は強く、値上げに本腰を入れる方針。まずは3月までにさらに1000円の上乗せを目指す。
住 友金属直江津は18日、摂氏300度以上に過熱されない業界初のIHクッキング専用感温クラッド鋼を開発し、松下電器産業向けに専用母材の供給を開始したと発表した。松下電器産業では業界に先駆け「ダブルセーフティ」をコンセプトに、2月1日からIHクッキングヒーター専用感温フライパン、天ぷら鍋を販売開始。同社では、素材面から家電製品のオール電化や老人福祉関連施設向けニーズに対応し、家電メーカー向けに初年度は年間50トンの販売を目指す。

 今回の感温クラッドは、天ぷら油の過熱によって起こる火災事故を防ぐために開発され、摂氏300以上になると磁性が失われる整磁合金ベースの3層クラッド鋼。

 これまで熱膨張による接合剥離などの問題から開発が進まなかった感温クラッド鋼だが、同社は専用圧延機に設置したインダクションヒーターでロール直前で加熱接合する技術を確立。今回、業界初のダブルセーフティクラッドとして業界シェア70%の松下電器産業に採用された。

 感温クラッドを使用した鍋は、油を使う場合でも過熱せず安全性に優れており、フッ素コートがいたみにくいなどの特長がある。今後、住宅のオール電化や高齢化社会の到来による福祉施設などでの普及が見込まれる。
関 東有力の小棒メーカー、朝日工業(本社=東京都豊島区、大塚寿郎社長)は、今週18日から、ベース小棒の販売価格をトン1000円値上げした。今月1日に1000円の値上げを行ったが、原料の鉄スクラップ価格が上昇しているため、追加値上げを実施しコスト増の吸収を図る。採算ラインの回復には不足とし、3月以降も段階的に価格を引き上げていく方針。また、普通線材と構造用鋼についても、3月積みからトン3000円の値上げを実施する。

 同社は、昨年来から市況対策として減産体制を強化し、需給改善を進めてきた。市況は停滞を続けたが、昨年秋からスクラップ価格が高騰。年明け後もスクラップ高が続いていることで2月1日から値上げに踏み切った。ただ、スクラップ価格は昨年の最安値からみてトン4000円程度上昇し、輸出を背景に先行きもスクラップ価格が高水準で推移しそうなことから、順次追加値上げに取り組む考え。
関 西地区の小棒メーカーは、2月契約分からトン当たり1000円の値上げを実施、ベース2万6000円の販価を打ち出したが、鉄スクラップ価格の急騰もあり、来月以降も引き続き現在の減産基調を維持するとともに、早急に2万8000円どころの価格確保を目指す。

 中山鋼業、ダイワスチールなど小棒メーカーでは昨年12月以降、3カ月連続での値上げを打ち出している。両社とも昨年秋以降、大幅減産に取り組んでおり、中山鋼業では同社と国光製鋼、合同製鉄の委託分を含めて月間3万5000トン、ダイワスチールでも関西地区の店売りは、ベースで1万5000トンの水準にまで削減、4―6月についても価格回復を最優先に考え、原則的にこの数字を継続する構えを見せている。

 このような情勢を背景に地区の小棒需給は、ベースを中心にタイト化がしており、メーカーが主導権を持つ形で価格修正が本格化してきた。現在でもベースでは、ロール待ちが2カ月程度にまで延びているといわれる。

 しかし、鉄スクラップ価格が円安や、コンスタントな輸出を背景にして急伸、H2ベースで1万円台乗せが確実視される状況となっており、メーカーサイドとしては、来月契約分以降も引き続き値上げを継続、最低でも2万8000円どころの水準を目指す考えだ。

大 手高炉5社の01暦年出銑量(1日当たり)は21万1168トンで前年比1・23%増加した。5社は低迷する鋼材価格を是正するため昨年10月から粗鋼の減産を実施しているが、それ以前の増産で通期では若干増加する結果となった。

 各社別の出銑量は新日本製鉄7万8513トンで同5・55%増、川崎製鉄4万1370トンで同10・32%増と2社が5―10%の範囲で増加したが、NKK3万9157トンで同0・30%減、住友金属3万1403トンで同0・81%減、神戸製鋼2万725トンで同2・08%減と3社が減少した。

 5社の出銑比(炉容積1立方メートル当たり)は1・92で同0・05ポイント下落し、各社別でも新日鉄の1・99を始め、2・0台を割り込んだ。 燃料比(銑鉄1トン当たり)は5社合計で516・7キログラムで同1・5キログラム増加した。5社の中で500キログラム台を下回ったのは新日鉄の493・6キログラムで、他4社は518―549キログラムの範囲で推移した。
全 国ステンレス流通協会連合会が実施した01年10―12月期の経営実態アンケート調査によると、前期比で売り上げ減および赤字への回答企業数は減少したが、比率は依然として高く、全国のステンレス流通業者の収益悪化が続いていることが浮き彫りになった。

 来期の業績予想についても「余り変わらない」や「やや悪化する」という回答が増加。需要環境低迷による先行き不安感が広まっており、ステンレス流通業者の苦境は続きそうだ。アンケートは全国6地区(東北、東京、名古屋、大阪、中国、四国)の協会加盟会員326社を対象に実施され、回答率は65・6%。
三 井造船が建設していた高知県内の大手量販店向けの廃発泡スチロール(EPS)リサイクルプラントが竣工し、このほど本格稼働した。処理能力毎時300キログラムPSペレットの設備で、食品用トレイや梱包用緩衝材などの発泡スチロールをリサイクル処理する。

 同プラントは、ソニーが開発した常温でESPを溶解するリモネン液をベースに廃発泡スチロールをリサイクルするもの。三井造船が開発した「ハイビスカスエパポレーター」を介することで高品質に再生回収する。

 同社では、今回のプラント稼働を機に、全国の発泡スチロール排出業者が計画するマテリアルリサイクルプラント計画に参画し、ライフサイクルソリューションサービス事業の強化を図る方針。



東 京地区の冷延薄板は底値で横ばい。市中価格4万5000―4万6000円(1・0―1・2ミリ、4×8)。

 熱延鋼板のメーカー値上げが、再販価格に一部転嫁され浸透しつつある中で、流通としては「何とか冷延を上げたい」ところ。メーカーも再度の値上げにより、価格を押し上げたい考え。ただ、需要不振から値上げはまだ難航している。

 販売業者では1、2月とも量が伸びないうえ、販売先に対する与信を警戒して思い切った商いができないでいる。輸入コイルは低水準で推移し、在庫も昨年秋口をピークに本格的に調整が進むが、販売が上向かないと販売業者も強気になりにくいようだ。

東 京地区の角形鋼管は底値圏で横ばい。市中価格(黒皮、2・3×100×100)は、4万7000―4万8000円中心。

 東京製鉄の熱延コイル値上げにより、高炉メーカーを含めて母材コイルの価格上昇が現実のものとなってきた。軽量形鋼やコラムと同様に角形鋼管も先行き値上げが予想され、流通も早期に価格転嫁を進めたい考え。

 しかし、市況上昇を後押しする需要に勢いがない。建築、土木関連の需要は公共、民間とも低調で、3月の年度末に向けても期待しにくい状況。1月は12月に比べて多少荷動きが上向いたが、2月に入ってからは一時の伸びが止まったようだ。目先は横ばい。
大 阪地区のH形鋼はベース3万5000円どころで強含み。

 主力の建築が不需要期とあって、市中の荷動きは低調。流通出庫も2月に入って一段と落ち込んでいるが、一方で需給はメーカーの減産効果から引き続きタイトな状況。1月のときわ会在庫も前月比1・9%増の微減にとどまり、流通では「ベース、ジュニアは歯抜けだらけ」の状態。また、メーカー各社は4―6月についても1―3月並みの減産を実施する意向を表明。同時に、昨秋の値上げに続く再値上げも検討しており、当面、価格重視の姿勢は変わらない。

 この中で、特約店も値上げ転嫁に動いており、市況は強含み。