2002.04.01
鉄 鋼産業懇談会の三村明夫会長(新日本製鉄副社長)は前月29日、懇談会終了後の定例記者会見で、「国内の鋼材需要は引き続き下降し、とりわけ足元の3月の建材・薄板需要は経験したことがないほどの落ち込み」との認識を示しながら、2月末時点の普通鋼メーカー・問屋在庫が前月よりさらに10万トン減少した背景について、「各社の生産が国内需要を下回ったレベルにとどめられた証左」と評価した。同会長は「この状況は3月にも続くと確信している」と強調した。

 また、同会長は、「輸出需要家が1―2月の段階で在庫調整を終え、現在の在庫はカラカラで、補填あるいは投機的な動きもある」とした上で、「値段も数10ドルレベルで上がっている」と説明。

 一方、同会長は「米国の201条発動を受け、欧州などセーフガードで対応するなど通商戦争に発展することを憂慮している」と懸念し、政府の適切な対応を要請した。同会長はこれに関する「狼狽売りの情報は一切ない」と断言した。

韓 国・POSCOは先週末、熱延および冷延、メッキ鋼板など薄板類の国内販売価格を5月1日からトン2万ウォン引き上げることを決めた。2万ウォンの市況ディスカウント撤廃による値戻しを実施するもので、熱延、冷延鋼板の国内ベース価格はそれぞれ30万5000ウォン、40万9000ウォンとなる。

 日本の高炉各社は昨年来、薄板類の国内外価格の値戻しに努めており、台湾・中国鋼鉄も国内価格の引き上げを発表済み。POSCOが国内価格の値戻しを正式に決定したことで、日台韓の大手高炉の足並みがそろう。

 POSCOは薄板需給の緩和を受けて00年末に熱延、冷延鋼板など薄板類の国内ベース価格にトン2万ウォンの市況ディスカウントを導入していた。今回のディスカウント撤廃は、原料価格の上昇を背景に、アジア薄板市況の底入れ―反発を確認して決定されたもの。

関 東地区の小棒メーカー各社は、きょう4月1日からの販売契約でトン1000円の値上げを行い、販価3万円を実現する。鉄スクラップ価格が高止まり、コストアップが続いているため、ベースおよび細物メーカーともに値上げを進め、再生産可能な価格を確保する。メーカー各社は4月中旬以降、追加値上げを検討中。商社の販売価格への転嫁状況を見極めつつ、5月連休の炉休・減産強化で需給調整に努め、市況上昇を後押しする構えだ。

神 戸製鋼所は神戸製鉄所に「神鋼神戸発電所」(発電規模140万キロワット:70万キロワット2基)の建設工事を進めていたが、このほど1号機(発電規模70万キロワット)の最終試運転を終え、きょう1日午前零時から営業運転を開始した。

 同社のIPP事業は、95年の電気事業法改正を受け、関西電力の卸売電力募集に発電規模140万キロワットの電力卸供給事業を計画、落札した。これは国内最大級の電力卸供給事業で、発電した電力は全量関西電力に供給する。2基稼働時の発電量は、神戸市が夏場のピーク時に使用する電力の8割を賄える規模。

 同発電所は環境アセスメント終了後の99年3月に着工、01年6月ボイラー、タービン、貯炭サイロなどの据え付け工事を完了、01年7月16日から試運転を開始、このほど最終試運転を終え営業運転に入ったもの。

 1号機の南側に隣接して2号機の建設を進めており、現在、タービン棟、ボイラー棟の建屋工事およびボイラー関連の機器据え付けを行っている。03年7月には試運転を開始する予定。
経 済産業省は29日、2002年度第1四半期(4―6月期)鋼材需要見通しを発表、鋼材需要を2251万トン(前期比77万トン、3・3%減、前年同期比22万トン、1%減)とし、これにともなう出荷相当の粗鋼需要見通しは2420万トン(同74万トン、3%減、同218万トン、8・2%減)と策定された。

 年度換算では1億トンを下回る水準にとどまる。国内は建設、製造業とも減少、輸出もセーフガード措置などで米国向けの減少を見込んでマイナスとなる。特に、国内の在庫水準の適正化を念頭に3月末在庫550万トンを圧縮、第2四半期末には適正レベルとされる500万トン、在庫率1・1%を下回るレベルとする対応をにらんだ数値が示された。2期ぶりの前期比減、5期連続の前年同期比減。

 第1四半期需要見通しに関して同省では、需要面は楽観できる状況にないものの、足もとの動向について「国内は生産と需要がマッチした体制がつくられてきた」(半田力・鉄鋼課長)とし、輸出についても「アジアが底固めしつつあり、実態に即した慎重な動きを見せている」(同)と一定の評価を下している。

日 本鉄鋼連盟が29日発表した2月末の普通鋼鋼材在庫(メーカー・問屋、速報ベース)は、前月末比3・9%減の686万6000トンとなり、2000年3月以来、1年11カ月ぶりに700万トンを割った。メーカーの減産継続姿勢を顕著に表したものといえる。

 2月の生産量は前月比5・3%減の605万8000トン。また、国内向け出荷量は同2・1%減の459万6000トンと4カ月連続の500万トン割れとなった(輸出向けは同6・9%増の174万3000トン)。

大 野興業(東京都中央区)は4月から、三菱商事グループとして新しい経営体制をスタートさせた。3月末に増減資を実施し、三菱商事が出資比率を従来の20%から67%に引き上げ、筆頭株主となることで事業基盤を強化した。4月1日付で大野隆司社長は取締役会長に就任し、新社長には牧田利彦副社長が昇格、就任した。

 新資本金は1億7500万円。出資比率は三菱商事67%、残りを大野不動産などが保有する。トップが交代するほか3月末で役員2人が退任。三菱商事からは4月中をメドに、非常勤役員1人を迎える予定。

住 友金属工業はこのほど、従来のプラスチック成形用金型材(S55C)に比べ被削性が2倍以上、強度・靭性が同等以上の金型用鋼「SD18」を開発、本格販売を開始した。

 同社はプラスチック成形用金型材として強度・靱性に優れた「SD17」、被削性に優れた「SD10」などを製造・販売しているが、新製品は被削性を「SD10」並みに高め、なおかつ「SD17」と同等以上の硬度を有する新材料を開発したもの。主力の自動車部品向け用途のほか、住宅設備、家電向けに拡販、プラスチック金型材向けシェアを現在の30―40%から50%程度まで高めていきたい考え。



東 京地区の熱延鋼板(中板)は強含み横ばい。流通の価格転嫁への取り組みが続くものの、需要は振るわない。このため、値上げも段階的になっており、メーカー値上げ分をすべては吸収できていない。

 コイルセンターや大手流通を中心に、段階的に再販価格を引き上げる動きが出ており、市況は底値から1000円ほど上昇した。東京製鉄と高炉メーカーの値上げを受けて、流通は価格転嫁のため引き続き値上げを進める姿勢。

東 京地区のSUS304系ベースサイズがトン当たり21万円、SUS430系ベースサイズが同16万5000―17万円どころを中心に横ばい。

 メーカーの値上げ姿勢が鮮明であることから先高観が高まり、国内市況に底打ち感が広がっている。需要環境は一部で「主力のIT関連、建材分野などに多少の引き合いが生じてきた」との声があるものの依然として低迷。
大 阪地区の異形棒鋼はメーカーが需給タイト化を背景に、4月契約でもさらに販売価格の1000円引き上げを打ち出すなど売り腰を一段と強めておりベース、トン当たりで2万7000円どころ中心に一段高となっている。