2024年1月15日

日本製鉄次期社長の横顔 今井正氏 製鋼畑、構造改革で手腕

「研究開発から製造現場まで経験を積み、常務の時に経営企画も担当し、判断できるところは多々あると思う。(今後は)社長の立場で大きな経営判断に携わるが、現場の実力に根差した競争力を大事にしていきたい」。12日の会見で今井正副社長はこう抱負を語った。

旧新日本製鉄出身初の技術系トップの誕生だ。根っからの技術屋で製鋼畑。名古屋製鉄所が長く、君津製鉄所の製鋼部長も務め、ものづくりにかける情熱は人後に落ちない。「発想のスケールが大きく、若い頃から将来の社長候補と目されていた」とは周囲の弁で早くに昇進。技術総括室長時に当時の経営トップに正面から意見を述べるなど直言居士であり、「今井が言うなら」と後に経営幹部となる上司からも信頼を得ていた。

名古屋製鉄所長の際に「鉄づくりと仕事を好きになることで人生の豊かさが変わる」と社員の成長が所の成長につながる考えを共有し、一貫製造体制の強化やコークス炉事故後の立て直しに所員一丸で力を注いだ。自身含め仕事には厳しいが、細かなことより本質を追う「王道を行くタイプ」(同期評)。野球チーム「東海REX」の練習に毎朝足を運ぶなど情に厚く、同僚や部下から人望を集める。

常務の時に技術系として異例の経営企画を担当。自社と国内外を広く捉える目を鍛えた。抜本的な生産設備構造対策を2019年に企画・立案し、高炉含む設備休止について各製鉄所を回り、会話を重ね現場の理解と協力を求めた。困難を伴う改革を結実させた手腕を橋本社長は高く評価した。

昨年来、橋本社長はカーボンニュートラルの対応が将来を左右すると考え、長期に広い視野で深く思慮できる人材に任せたいと述べていた。「知力、胆力は自分をしのぐ」と認める今井副社長にグローバルな視座など経営者として備えるべき思考を事あるごとに伝え、目をかけてきた。

22年にタイ一貫製鉄プロジェクトリーダーとして買収したタイ電炉の事業を前進させ、名古屋の次世代熱延ミルとグリーン鋼材の両プロジェクトにまい進。グリーン・トランスフォーメーション推進本部長としてGXの陣頭指揮を執り、23年6月から電炉プロセス推進プロジェクトリーダーとして大型電炉による高級鋼製造の開発をけん引している。

脱炭素筆頭に長期にわたる技術課題に加え、インド事業の拡大や米USスチール買収など新たな成長戦略の具体化と成果の獲得という重大な責務を感じるが、会見の返答はいずれも明快。「自分で考えることが一番大事」とブレない強さと持ち前の明るさ、オープンな人柄で周囲を巻き込み、先導する。

座右の銘は一意専心。「意志の力を意味する言葉に惹かれる」。ゴルフは上級者レベル。家族は妻と娘が2人。大のそば好きで食べ歩きが楽しみ。(植)

▽今井正(いまい・ただし)氏=88年3月東大院(金属工学)修了、同4月新日鉄入社。97年マサチューセッツ工科大院博士(工学)取得。16年執行役員、19年常務執行役員名古屋製鉄所長、20年常務取締役、23年副社長(グリーン・トランスフォーメーション推進本部長、電炉プロセス推進プロジェクトリーダー)。63年5月22日生まれ、岡山県出身。

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