2020年7月2日

「鉄鋼商社の経営戦略」 JFE商事 織田直祐社長

 ――2019年度の連結セグメント利益は前期比24%減の270億円だった。

 「18年度実績は357億円で、19年度は360億円を目標に掲げてスタートした。振り返ると18年度は、米通商拡大法232条が発動されて北米のホットコイル市況がトン1000㌦まで高騰し、ケリーパイプやVESTなど米国事業の利益が底上げされた結果、上期のセグメント利益が193億円に達していた。19年度上期は、そうした一過性要因を差し引いた150億円を目指してスタートし、ほぼ計画並みの146億円の実績となった。年度当初は、年央から米国市況がもう少し持ち直すと考えていたが、そうはならず、通期360億円の計画を320億円に下方修正した。米中貿易摩擦の長期化が直接、間接に国内の経済環境に影響したことによる国内需要の減速や、海外事業の配当金の期ズレ等により、結果的に270億円となった。総括的に18年度と比較すると、北米事業が約50億円の減益となり、JFE商事鉄鋼建材、JFE商事鋼管管材、JFE商事電磁鋼板など国内事業も約30億円の減益となった。一方、中国事業本部、ASEAN事業本部は構造改革が奏功し、ほぼ横ばいの利益をキープした。米中貿易摩擦による世界の景気変動、国内外の鉄鋼需要低迷が続く中での270億円の利益は、ほぼ現状の実力値だったとみている」

 ――事業会社の損益状況は。

 「立ち上げ途上のメキシコの自動車用鋼板コイルセンターJSSB等を除くと実質赤字会社は9社。19年度は国内の赤字会社が増えたが、15年度の17社から半減している」

 ――第6次中期経営計画(18―20年度)のセグメント利益目標は370億円。

 「新型コロナウイルスの影響で世界経済が停滞しており、このコロナ影響はリーマン・ショック以上で、『緊急事態』と捉えるしかない。6次中計で掲げた経営目標はいったん脇に置いて、緊急対策を徹底する。JFEスチールは中長期の需要見通しを前提とした高炉休止を含む構造改革に着手し、その後、コロナによる需要減に見舞われ、大幅減産を迫られている。製造業、建設分野をはじめとするお客様も生産調整を余儀なくされている。間に立つ商社として、メーカー、需要家の双方との連携を強化して、混乱を回避し、サプライチェーン全体のダメージを最小化していく。激しい生産変動に対する在庫の持ち方、与信管理を含めて商社として何ができるか、何をすべきかを限界まで考え抜くよう社員に指示している。感染防止策のため直接話を聞く機会は減っているが、リモートワークで従来以上にコミュニケーションを取れているとの報告もある。JFEスチールとの連携を徹底的に強化し、シンパの鋼材流通企業ともしっかりスクラムを組み、未曾有の危機を乗り越えていく。本年度は徹底的に足元を見つめていくが、一方で中長期スパンでの競争力強化も頭の片隅に置き、バランスをもって対応する」

 ――最終年度の収益見通しは。

 「感覚的なレベル感はあるが、公表できる確度ではない。セグメント利益はもちろん重要だが、緊急事態に対応するためキャッシュフローを重視する。自社のことだけではなく、お客様、シンパの流通企業を含むサプライチェーン全体を見渡して、キャッシュフローの確保に注力する。投融資は、安全対策や老朽更新など当然行うべきものは対応しつつ、全体としては優先順位を見定めて絞り込んでいく。コロナ影響で在宅勤務が長期化しており、人件費、出張旅費、交際費など経費は削減できているが、財務施策などにも踏み込んで検討していく」

 ――中長期の競争力強化策については。

 「絶対的な解はないだろうが、コロナ以前に戻るものと戻らないものを見極めつつ、中長期的な視点での競争力強化策を具体化していきたい。M&Aの機会は増えるだろうし、個別に意義を明確にしながら、成長戦略投資を実行していく。こういう時だからこそ、より提案力・発信力を向上させ、JFEスチール、JFEエンジニアリングとの連携強化によって機能をさらに磨いていく」

 ――JFEスチールとの連携強化について。

 「日本鉄鋼業を取り巻く環境は極めて厳しくなっており、事ここに至ってはJFEスチールと重複している機能の見直しも不可欠。在宅勤務やテレワークを行う中、それぞれの業務や機能を見直すには良いタイミングでもある。かねてよりグループの全体最適を優先するよう指示してきたが、そうした観点でサプライチェーン全体の各機能を見渡し、今後グループ全体にとって最適な配置に組み変えていくことも必要になるだろう」

 ――コロナ後を見据えると、ESGを観点としたビジネスが伸びていく。

 「19年10月に『サステナビリティ経営推進チーム』を新設したが、これはスチール、エンジとともにESG経営課題に貢献していくのが狙い。環境への対応としては、自動車の車体軽量化、EVやHV対応の電磁鋼板ビジネス、再生エネルギービジネスへの対応を強化している。鉄鋼貿易本部に『再生可能エネルギー鋼材貿易チーム』を7月1日付で新設、風力発電など再生可能エネルギー関連ビジネスを一元管理し、伸びる分野での市場開拓を推し進める。リサイクルの観点では、鉄スクラップは輸出を含めて強い分野であり、バイオマス発電用のPKS(パームヤシガラ)や木質ペレットの輸入も拡大している。4月1日付で『バイオマス燃料部』を設置した」

 ――4月1日付で「事業連携推進チーム」を新設した。

 「JFEエンジニアリングとの連携による具体的な成果が出始めており、エンジとの連携を組織的に強化していく」

 ――今中期(2018―2020年度)のこれまでの投資実績は?

 「18年度が229億円、19年度は114億円と2年間で343億円の投資を行い、前中期(第5次)の3年間合計312億円を上回っている。一宮電機タイへの出資、自動車向け等モーターコア加工の浙江ブルジョアへの出資、メキシコの自動車鋼板対応コイルセンターJSSBの新設、変圧器コア加工で北米最大手のコジェント買収などを実施してきた。今期は安全対策、老朽更新を優先するが、これに留まらず将来の競争力を意識しつつ、変化するお客様の動向を注視し、投資の発動時期を後ろ倒しできるものなどを見定めて対応する」

 ――日・米・中・ASEANのグローバル4極体制による地域戦略もテーマ。

 「昨年度、経営企画部に海外事業企画室を新設し、海外戦略の一元的な企画機能の体制強化を図った。米州では米国JFE商事ホールディングスを設立し、米州現地における企画・構想力を強化した。ケリーパイプは構造改革を一段と進展させ、安定収益体質への転換を加速する」

 ――中国、ASEANもホールディングス機能を持たすのか。

 「現地の企画機能をさらに強化し、海外事業企画室と建設的に意見をぶつけ合うことで、何か新しいものが見えてくると考えている。体制論は今後の課題と認識している。中国鉄鋼メーカーが競争力を増しており、30年後を見据えると、今後の海外市場開拓がJFEグループ全体の成長を大きく左右する。お客様にとって最も効果的なサプライチェーンを構築していく」

 ――国内では事業会社の構造改革を推し進めてきた。

 「大阪スチールの事業を終了し、近江産業に出資した。新潟スチールと北陸スチールの機能分担を見直した」

 ――JFE商事鋼管管材(JKK)と旭鋼管工業が新昭和鋼管の事業を譲受した。

 「新昭和鋼管から事業を受け継いだ中部伸管工業は、自動車、産業機械向け精密部品の製造販売などJKKが得意ではなかった分野に強みを持っており、相乗効果を期待している」

 ――新型コロナ感染防止策を継続する。

 「4月以降、在宅勤務を徹底してきたが、実務、効率ともに想定以上の効果を確認できている。政府の緊急事態宣言は解除されたが、ワクチン、治療薬が確立されるまでは社員と取引先の安全を確保するため、在宅勤務、テレワークの活用を続ける。コロナ終息以降も在宅勤務、テレワーク、WEB会議システムなどのメリットを生かしながら行き過ぎたところがあれば軌道修正しつつ、コロナ終息後の企業活動の在り方を模索していく」(谷藤 真澄)

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