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2024.12.4
2020年7月15日
「鉄鋼商社の経営戦略」メタルワン 岩田修一社長 この1年で選択と集中 2つの経営課題推進が最優先
――中期経営計画について。
「2019年度は、17・18年度の2カ年計画『成長戦略2018』を1年継続し、『経営方針2019』として『業態変革』『集中の徹底』『連結経営の深化』の3つの重点課題に引き続き取り組んだ。このほど策定した20・21年度の2カ年の経営計画では、『不採算事業等からの撤退を含めた事業ポートフォリオの見直し』『成長市場におけるポジション強化に向けた経営資源のシフト・人材開発の加速』の大きく2つの経営課題に取り組む」
――前中期経営計画では、20年度以降のあり姿として、いかなる事業環境においても300億円以上の連結純利益を計上できる体制を目指すとしていたが。
「19年度は世界経済減速を背景に鋼材需要が停滞し、日本の鋼材需要も設備投資の減少や自動車需要の低迷等によって縮小した。鋼材市況も需要低迷を背景に軟調に推移した。住商メタルワン鋼管の持分法適用化の影響も加わり、19年度は取扱数量が4%減の2138万トン、売上高は11%減の2兆458億円となり、売上総利益が16%減の1045億円にとどまった。純利益については23%減の195億円と後退した。米中貿易摩擦の影響が広がる中、北米の収益が想定を大幅に下回り、インド、ASEANも芳しくなかった」
――ちなみにエムエム建材、住商メタルワン鋼管を加えた事業規模は。
「取扱量はエムエム建材と住商メタルワン鋼管の2社合わせ900万トン程度として3000万トン規模。売上高は両社で9000億円程となり3兆円規模となる」
――19年度のグループ会社の収益は。
「連結対象会社は国内60社、海外68社の128社で、うち直接連結が国内41社、海外60社の101社。メキシコのコイルセンター、ニコメタル・グループ3社の統合によって2社減となった。101 社のうち黒字が77 社、赤字は24 社。国内は、東京五輪関連や再開発プロジェクトなど建設分野の大型案件が続いたことから建材分野関連のグループ会社が堅調に推移した。海外では自動車関連分野の事業会社が苦戦した」
――得意とする自動車分野は、新型ウイルス影響が加わって世界規模での大幅減産が続いている。
「自動車鋼材の他、線材・特殊鋼分野でも自動車関連の比率が高く、国内外のコイルセンターも自動車関連のウエートが高い。事業ポートフォリオを考慮し、自動車以外の分野の強化を図ってきたが、成果を引き出せていない」
――新計画における定量目標は。
「新型コロナウイルスの影響等で4―5月のビジネスは前年同期に比べて2割を超える規模で減少した。本年度はコロナ影響をミニマム化しつつ、バランスシートとキャッシュフローを重視した舵取りを進め、並行して二つの経営課題を着実に推し進めることが最優先事項となる」
――1兆円の総資産、4000億円の資本金・利益剰余金がある。主要株主の三菱商事はROE10%以上を目標に掲げている。
「売上高2兆円であれば、総資産は7000-8000億円が適正と見ている。在庫の持ち方や決済条件、設備投資等についての発想を変えていけば適正規模に近づけることは可能と考えている。約4000億円の資本を持つが、借入金も約3000億円ある。資金効率を意識して成長戦略を描いていく」
――事業ポートフォリオの見直しについて。
「国内・海外法人18社を含めて128社の連結対象会社を抱えるが、旧日商岩井、三菱商事時代の事業会社からの事業利益と比較し、メタルワン設立後の新規事業の貢献度は低い。110社の事業会社にはピークを過ぎた企業、機能が限定的となっている企業もある。過去3年間の選択と集中は不十分だった。これまでと違う意味合いで不採算事業の撤退を含め、選択と集中を進める。時間をかけず、この1年間で実施する。日本の鉄鋼業が全国粗鋼8000万トン時代に向かう中、数量や売上高を追い求めるのではなく、新しい時代に見合った機能を創出し、鉄鋼メーカーの国際競争力回復に貢献していきたい」
――従来と異なる次元で構造改革に取り組む。
「コロナ影響は、リーマン・ショックより深刻なインパクトとなるだろう。国内の鉄鋼市場環境は4-5年先に深刻な状態に陥ると想定していたが、コロナ・ショックで前倒しされた。コロナ後の新常態における鉄鋼市場環境を見据え、強い危機感を持って事業構造改革に取り組む。改革をやり遂げることが、経営トップの役割であると決意を固めている」
――コイルセンター業界の再編を主導する意向は。
「枠を越えた企業の再編は時間がかかる。メタルワンは国内で一定規模のコイルセンター事業を展開しており、まずはグループ内の適正化、効率化を図る抜本的な構造改革を進めていく。一定のかたちが整ったところで、グループ外との事業連携も検討していく」
――投融資スタンスを。
「19年度は国内・海外のコイルセンター、厚板溶断など事業会社の維持・更新投資、新規投資を合わせて約116 億円の投資を行った。2カ年計画における投資枠は設定していないが、19年度に引き続き年間で100億円程度の維持・更新投資を計画している。既存事業の見直し、整理を一層進める一方、成長実現に向けた新規投資については慎重に検討を重ねていく」
――鉄鋼メーカーの再編が一歩進んだ。
「旧・日鉄日新製鋼を統合して新たなスタートを切った日本製鉄さんは、最重要取引先の一つであり、鉄鋼製品の需要発掘、安定供給に引き続き貢献していきたいと考えている。鉄鋼業界には高炉系の日鉄物産、JFE商事、神鋼商事が存在している。メタルワンならではの機能を磨き、創出していかなければ存続できない。4月1日付で『事業開発部』を新設し、固武良輔執行役員が全社開発担当(CDO)として管掌し、約20人の陣容で新規事業開発に傾注している」
――商社の再編については。
「エムエム建材では三井物産スチールと、住商メタルワン鋼管では住友商事とそれぞれ連携しており、これに続く具体的な案件はないが、国内の事業環境を注視しながら、あらゆる可能性を排除せず、鉄鋼業界発展に向けて適切な判断を下していく」
――コロナ後の働き方改革について
「コロナ以前から取り組んでいる働き方改革をさらに促進・強化していく。ニューノーマルの到来を見据え、今後の働き方改革の方向性として、 書類削減でのスペース捻出による、イノベーション・協業の促進に向けたスペース活用、 在宅勤務頻度アップ・サテライトオフィス利用の継続を前提としたテレワークの拡充、WEBツールの活用を通じたペーパーレス・ワークフロー推進などを検討しており、Web会議定着に伴う会議のあり方として、とくに社内会議目的の国内・海外出張のオンライン化も考えている」(谷藤 真澄)
「2019年度は、17・18年度の2カ年計画『成長戦略2018』を1年継続し、『経営方針2019』として『業態変革』『集中の徹底』『連結経営の深化』の3つの重点課題に引き続き取り組んだ。このほど策定した20・21年度の2カ年の経営計画では、『不採算事業等からの撤退を含めた事業ポートフォリオの見直し』『成長市場におけるポジション強化に向けた経営資源のシフト・人材開発の加速』の大きく2つの経営課題に取り組む」
――前中期経営計画では、20年度以降のあり姿として、いかなる事業環境においても300億円以上の連結純利益を計上できる体制を目指すとしていたが。
「19年度は世界経済減速を背景に鋼材需要が停滞し、日本の鋼材需要も設備投資の減少や自動車需要の低迷等によって縮小した。鋼材市況も需要低迷を背景に軟調に推移した。住商メタルワン鋼管の持分法適用化の影響も加わり、19年度は取扱数量が4%減の2138万トン、売上高は11%減の2兆458億円となり、売上総利益が16%減の1045億円にとどまった。純利益については23%減の195億円と後退した。米中貿易摩擦の影響が広がる中、北米の収益が想定を大幅に下回り、インド、ASEANも芳しくなかった」
――ちなみにエムエム建材、住商メタルワン鋼管を加えた事業規模は。
「取扱量はエムエム建材と住商メタルワン鋼管の2社合わせ900万トン程度として3000万トン規模。売上高は両社で9000億円程となり3兆円規模となる」
――19年度のグループ会社の収益は。
「連結対象会社は国内60社、海外68社の128社で、うち直接連結が国内41社、海外60社の101社。メキシコのコイルセンター、ニコメタル・グループ3社の統合によって2社減となった。101 社のうち黒字が77 社、赤字は24 社。国内は、東京五輪関連や再開発プロジェクトなど建設分野の大型案件が続いたことから建材分野関連のグループ会社が堅調に推移した。海外では自動車関連分野の事業会社が苦戦した」
――得意とする自動車分野は、新型ウイルス影響が加わって世界規模での大幅減産が続いている。
「自動車鋼材の他、線材・特殊鋼分野でも自動車関連の比率が高く、国内外のコイルセンターも自動車関連のウエートが高い。事業ポートフォリオを考慮し、自動車以外の分野の強化を図ってきたが、成果を引き出せていない」
――新計画における定量目標は。
「新型コロナウイルスの影響等で4―5月のビジネスは前年同期に比べて2割を超える規模で減少した。本年度はコロナ影響をミニマム化しつつ、バランスシートとキャッシュフローを重視した舵取りを進め、並行して二つの経営課題を着実に推し進めることが最優先事項となる」
――1兆円の総資産、4000億円の資本金・利益剰余金がある。主要株主の三菱商事はROE10%以上を目標に掲げている。
「売上高2兆円であれば、総資産は7000-8000億円が適正と見ている。在庫の持ち方や決済条件、設備投資等についての発想を変えていけば適正規模に近づけることは可能と考えている。約4000億円の資本を持つが、借入金も約3000億円ある。資金効率を意識して成長戦略を描いていく」
――事業ポートフォリオの見直しについて。
「国内・海外法人18社を含めて128社の連結対象会社を抱えるが、旧日商岩井、三菱商事時代の事業会社からの事業利益と比較し、メタルワン設立後の新規事業の貢献度は低い。110社の事業会社にはピークを過ぎた企業、機能が限定的となっている企業もある。過去3年間の選択と集中は不十分だった。これまでと違う意味合いで不採算事業の撤退を含め、選択と集中を進める。時間をかけず、この1年間で実施する。日本の鉄鋼業が全国粗鋼8000万トン時代に向かう中、数量や売上高を追い求めるのではなく、新しい時代に見合った機能を創出し、鉄鋼メーカーの国際競争力回復に貢献していきたい」
――従来と異なる次元で構造改革に取り組む。
「コロナ影響は、リーマン・ショックより深刻なインパクトとなるだろう。国内の鉄鋼市場環境は4-5年先に深刻な状態に陥ると想定していたが、コロナ・ショックで前倒しされた。コロナ後の新常態における鉄鋼市場環境を見据え、強い危機感を持って事業構造改革に取り組む。改革をやり遂げることが、経営トップの役割であると決意を固めている」
――コイルセンター業界の再編を主導する意向は。
「枠を越えた企業の再編は時間がかかる。メタルワンは国内で一定規模のコイルセンター事業を展開しており、まずはグループ内の適正化、効率化を図る抜本的な構造改革を進めていく。一定のかたちが整ったところで、グループ外との事業連携も検討していく」
――投融資スタンスを。
「19年度は国内・海外のコイルセンター、厚板溶断など事業会社の維持・更新投資、新規投資を合わせて約116 億円の投資を行った。2カ年計画における投資枠は設定していないが、19年度に引き続き年間で100億円程度の維持・更新投資を計画している。既存事業の見直し、整理を一層進める一方、成長実現に向けた新規投資については慎重に検討を重ねていく」
――鉄鋼メーカーの再編が一歩進んだ。
「旧・日鉄日新製鋼を統合して新たなスタートを切った日本製鉄さんは、最重要取引先の一つであり、鉄鋼製品の需要発掘、安定供給に引き続き貢献していきたいと考えている。鉄鋼業界には高炉系の日鉄物産、JFE商事、神鋼商事が存在している。メタルワンならではの機能を磨き、創出していかなければ存続できない。4月1日付で『事業開発部』を新設し、固武良輔執行役員が全社開発担当(CDO)として管掌し、約20人の陣容で新規事業開発に傾注している」
――商社の再編については。
「エムエム建材では三井物産スチールと、住商メタルワン鋼管では住友商事とそれぞれ連携しており、これに続く具体的な案件はないが、国内の事業環境を注視しながら、あらゆる可能性を排除せず、鉄鋼業界発展に向けて適切な判断を下していく」
――コロナ後の働き方改革について
「コロナ以前から取り組んでいる働き方改革をさらに促進・強化していく。ニューノーマルの到来を見据え、今後の働き方改革の方向性として、 書類削減でのスペース捻出による、イノベーション・協業の促進に向けたスペース活用、 在宅勤務頻度アップ・サテライトオフィス利用の継続を前提としたテレワークの拡充、WEBツールの活用を通じたペーパーレス・ワークフロー推進などを検討しており、Web会議定着に伴う会議のあり方として、とくに社内会議目的の国内・海外出張のオンライン化も考えている」(谷藤 真澄)
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