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2024.12.4
2020年7月29日
未来へ見出す活路 転換期迎えるアルミ二次合金 EV化、需要大幅減少へ 車体軽量化など開発推進
アルミ二次合金業界は、100年に1度の転換期を迎えている。普及拡大が進められている電気自動車(EV)は、これまで二次合金が大量に使用されてきたエンジンやトランスミッションを搭載しないため、需要の大幅な減少が予想される。また、国内自動車生産台数や部品輸出の減少に加え、生産台数に占める軽自動車の比率の上昇で二次合金の使用量が押し下げられている。
関係筋の推測では、乗用車保有台数に占める軽乗用車の保有台数の割合は約37―38%に上昇しており、今後、生産台数が増えても軽自動車の比率が上がれば1台当たりのアルミ使用量は減ることになる。
日本の自動車生産台数(乗用車・トラック・バス)は、リーマン・ショック直前の07年が直近のピークで1159・6万台。その後、東日本大震災などを経て、ここ数年は年間900万台を推移し、昨年は前年から微減して968・4万台だった。生産台数の半分が輸出されており、輸出先は米国、オーストラリア、中国と続く。
二次合金はこれまで、延性を求められない自動車のパワートレイン関係部品や各種筐体に主に用いられ、二次合金の代表品種・ADC12によって軽量化が見込まれる部品はほぼ出尽くしたともいわれている。
EV化ではエンジンやトランスミッションがなくなる一方で、高重量のバッテリーを積むため車体や構造材の軽量化が今以上に求められる。鉄だった足回り部品や構造材のアルミ化が進展すると予想されており、一部の二次合金メーカーは高延性や高強度の二次合金の開発を進めている。
さらにEVの大型バッテリーには、充放電を繰り返して溜めた熱を逃がす冷却システムが同時搭載されるため、従来の板材や押出形材を加工したものから、今後はコスト面から放熱性の高いアルミ二次合金製のダイカストに置き換わる可能性もある。
需要や技術的な面以外にも、国内二次合金業界の課題はある。経営者の後継者問題や労働力不足だ。近年、現場作業員の高齢化が進んでおり、若い世代を確保して従業員数を維持するには、3K(きつい、汚い、危険)と言われる同業界で仕事をしたいと思うだけの魅力を提供する必要がある。
世界の二次合金業界に目を向けると、さまざまな地域で大きな変化が起きている。欧州では自動車販売の不振を背景に、これまで取引の少なかったイタリアやスペインの二次合金メーカーが日本やアセアン向けに販売攻勢を強めている。EU圏で売れない玉が中東を超え、アジアに販路を求めている。
中国においては、スクラップの輸入規制を背景に原料不足が深刻化しており、スクラップの代わりにアルミ地金や二次合金を輸入する動きが進展している。
中国税関発表の通関統計によると、アルミ合金の輸入量は2018年の月間平均は6000トンだったが、19年の平均値は3倍の1万8000トン、今年3月には単月で過去最高の8万3000トンに達した。
主要な輸入先はマレーシア、韓国、インドネシア、ベトナム、インド、ロシアなどがあり、特に昨年末からは、これまで取引が少なかった韓国やASEAN諸国からの輸入が拡大している。韓国からは、今年1月に昨年1年間の輸入実績を超える2万2000トンが輸入され、直近5月も前年同月比20倍の1万3000トンが入着した。
インドネシアからは5月に19倍の1万トンに達し、過去最高を記録。マレーシアからも1万4000トン規模での輸入が続くなど、これまで数百トン、数千トン単位だった輸入量が1万トン以上の規模に膨れている。
中国の輸入先に韓国やASEAN諸国が名を連ねている背景には、これらの国々と提携した貿易協定がある。中国はアルミ合金の輸入に通常7%の関税を課しているが、ASEAN諸国とは自由貿易協定を締結しており無税。また、韓国とも中韓貿易協定で同じく無税だ。
日本では、3月から5月にかけて自動車メーカーが大幅に減産し、国内で二次合金の在庫が積み上がったが、中国への輸出量は5月に前年同月比140%増の400トン台と多少は増えたもの、輸出規模は1万トン以上の韓国やASEANに比べて低いまま。日中間の関税が障壁となり、日本産では価格競争力がなかったためとみられる。
日本のアルミスクラップについては、輸入制限がある中国には直接向かわず、韓国やASEANに向かっている。現地でスクラップがアルミ二次合金に加工され、最終的には中国に輸出されている。
日本の輸出通関によると、対韓国のアルミスクラップ(UBC除く)輸出量は、これまで月2000―3000トンだったが、昨年末に前年同月比2倍の4000トン台に拡大。通年では前年比2倍の3万5000トンに達した。直近でも月3000トン台後半で推移している。
国内二次合金業界は、需要分野におけるEV化や軽自動車比率の上昇をはじめ、後継者・人手の問題、スクラップの海外流出とさまざまなことに直面しているが、加工性やリサイクル性に優れるアルミのニーズや、国内発生するスクラップをリサイクルする地場産業の二次合金業は今後も決してなくなることはない。ただ、新たな需要分野に向けた研究開発や、原料となるスクラップを確実に手当てするルートの開拓は今後さらに強く求められる。 (石橋 栄作)
関係筋の推測では、乗用車保有台数に占める軽乗用車の保有台数の割合は約37―38%に上昇しており、今後、生産台数が増えても軽自動車の比率が上がれば1台当たりのアルミ使用量は減ることになる。
日本の自動車生産台数(乗用車・トラック・バス)は、リーマン・ショック直前の07年が直近のピークで1159・6万台。その後、東日本大震災などを経て、ここ数年は年間900万台を推移し、昨年は前年から微減して968・4万台だった。生産台数の半分が輸出されており、輸出先は米国、オーストラリア、中国と続く。
二次合金はこれまで、延性を求められない自動車のパワートレイン関係部品や各種筐体に主に用いられ、二次合金の代表品種・ADC12によって軽量化が見込まれる部品はほぼ出尽くしたともいわれている。
EV化ではエンジンやトランスミッションがなくなる一方で、高重量のバッテリーを積むため車体や構造材の軽量化が今以上に求められる。鉄だった足回り部品や構造材のアルミ化が進展すると予想されており、一部の二次合金メーカーは高延性や高強度の二次合金の開発を進めている。
さらにEVの大型バッテリーには、充放電を繰り返して溜めた熱を逃がす冷却システムが同時搭載されるため、従来の板材や押出形材を加工したものから、今後はコスト面から放熱性の高いアルミ二次合金製のダイカストに置き換わる可能性もある。
需要や技術的な面以外にも、国内二次合金業界の課題はある。経営者の後継者問題や労働力不足だ。近年、現場作業員の高齢化が進んでおり、若い世代を確保して従業員数を維持するには、3K(きつい、汚い、危険)と言われる同業界で仕事をしたいと思うだけの魅力を提供する必要がある。
世界の二次合金業界に目を向けると、さまざまな地域で大きな変化が起きている。欧州では自動車販売の不振を背景に、これまで取引の少なかったイタリアやスペインの二次合金メーカーが日本やアセアン向けに販売攻勢を強めている。EU圏で売れない玉が中東を超え、アジアに販路を求めている。
中国においては、スクラップの輸入規制を背景に原料不足が深刻化しており、スクラップの代わりにアルミ地金や二次合金を輸入する動きが進展している。
中国税関発表の通関統計によると、アルミ合金の輸入量は2018年の月間平均は6000トンだったが、19年の平均値は3倍の1万8000トン、今年3月には単月で過去最高の8万3000トンに達した。
主要な輸入先はマレーシア、韓国、インドネシア、ベトナム、インド、ロシアなどがあり、特に昨年末からは、これまで取引が少なかった韓国やASEAN諸国からの輸入が拡大している。韓国からは、今年1月に昨年1年間の輸入実績を超える2万2000トンが輸入され、直近5月も前年同月比20倍の1万3000トンが入着した。
インドネシアからは5月に19倍の1万トンに達し、過去最高を記録。マレーシアからも1万4000トン規模での輸入が続くなど、これまで数百トン、数千トン単位だった輸入量が1万トン以上の規模に膨れている。
中国の輸入先に韓国やASEAN諸国が名を連ねている背景には、これらの国々と提携した貿易協定がある。中国はアルミ合金の輸入に通常7%の関税を課しているが、ASEAN諸国とは自由貿易協定を締結しており無税。また、韓国とも中韓貿易協定で同じく無税だ。
日本では、3月から5月にかけて自動車メーカーが大幅に減産し、国内で二次合金の在庫が積み上がったが、中国への輸出量は5月に前年同月比140%増の400トン台と多少は増えたもの、輸出規模は1万トン以上の韓国やASEANに比べて低いまま。日中間の関税が障壁となり、日本産では価格競争力がなかったためとみられる。
日本のアルミスクラップについては、輸入制限がある中国には直接向かわず、韓国やASEANに向かっている。現地でスクラップがアルミ二次合金に加工され、最終的には中国に輸出されている。
日本の輸出通関によると、対韓国のアルミスクラップ(UBC除く)輸出量は、これまで月2000―3000トンだったが、昨年末に前年同月比2倍の4000トン台に拡大。通年では前年比2倍の3万5000トンに達した。直近でも月3000トン台後半で推移している。
国内二次合金業界は、需要分野におけるEV化や軽自動車比率の上昇をはじめ、後継者・人手の問題、スクラップの海外流出とさまざまなことに直面しているが、加工性やリサイクル性に優れるアルミのニーズや、国内発生するスクラップをリサイクルする地場産業の二次合金業は今後も決してなくなることはない。ただ、新たな需要分野に向けた研究開発や、原料となるスクラップを確実に手当てするルートの開拓は今後さらに強く求められる。 (石橋 栄作)
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