2020年8月12日

三菱商事 総合素材グループの事業戦略 鉄鋼製品本部長に聞く 石山隆生氏 事業改革「集中」実行の年

――鉄鋼製品本部の事業内容から

「メタルワンは三菱商事にとって最大規模の事業会社で、鉄鋼製品本部のメタルワン事業部はメタルワンに人材を含めた経営資源を提供し、一体運営している。総合素材グループは単体500人、連結1万人で、うち鉄鋼製品本部はメタルワンへの出向者を含め単体200人、連結6000人の体制。鉄鋼業は需要分野が多岐にわたり裾野も広く、大きな接地面積を持つ。総合素材グループの炭素本部、機能素材本部のみならず、金属資源をはじめ他のグループと多くの分野でオーバーラップしている」

――総合素材グループの2020年3月期の連結純利益は260億円、期末の総資産は1兆2700億円だった。

「20年3月期のメタルワンの連結純利益は195億円、総資産は約1兆円。出資比率は6割であり、総資産はグループ全体の6割を占める。大きな経営資源を張っているので、収益的にも屋台骨となるべきだが、終盤に新型コロナウイルスの影響を受けて、結果的にはグループの期待していた成果には至らなかった。課題は資産の効率化、資産相当の収益確保であり、改善を急ぐ」

――鉄鋼業を取り巻く環境は厳しい。

「新型コロナウイルスによって世界景気がマイナス成長に転じる中、鉄鋼業においては国内鋼材需要の縮小など潜在的な課題が一気に顕在化した。2003年にメタルワンを設立して以来、国内外の主要マーケットで加工・物流機能を強化してきたため資産も膨らんでいる」

――メタルワンは国内・海外法人を含めて128社の連結対象会社を抱える。

「事業会社は110社あり、機能が限定的となっている事業もある。とくに国内は日本製鉄、JFEスチールをはじめ鉄鋼メーカーが需給構造対策を本格化しており、すべての事業を見直し、再評価して事業の選択と集中を図る。19年度は徹底して事業の見直しを進めてきており、本年度は集中を実行する年となる。並行して新しい時代に合ったメタルワンならではの機能を創出していく。メタルワンは、旧第二営業本部の『ビジネスディベロップメントセンター』を、新規事業開発の専任組織として4月1日付で新設した『事業開発部』に移管し、約20人体制で新規事業の創出に取り組んでいる。事業の選択で捻出した経営資源を投入していく」

――資本金・利益剰余金は3700億円を超えている。

「株主資本比率は30%台をキープしているが、有利子負債も3000億円ある。資金効率を意識しながら、持続的成長に向けた投融資も必要と考えている」

――20年度の収益見通しは。

「コロナ影響が広がっており、先行きが見通せない状況が続いている」

――メタルワンは約5年前にも「選択と集中」を徹底した。

「世の中は大きく動いており、事業基盤の最適化は永遠のテーマ。メタルワンは『ポートフォリオの見直し』と表現しているが、商社機能が限定的な事業は整理する。実体を伴い、機能の対価をメーカー、ユーザーから頂ける事業を強化し、創出していく。いったん減量し、筋肉質にした上で、新たな事業に経営資源を配分していく。その第一歩として、今期は徹底して集中を実行に移す」

――「集中」していくエリア・分野は。

「国内は重要なマーケット。従来以上にメーカーさんと連携し、お客さんとも会話を重ねて、コスト競争力の強化を図っていく。戦略的なターゲットは海外市場となる。自動車分野を強化するとともに土木・建築などインフラ分野もターゲットとなる。地産地消型のインフラ需要に応える機能を創出するには地場に入り込む必要があり、戦略的な投資を積極的に展開していきたい」

――エムエム建材との機能分担、スクラップの海外市場対応は。

「エムエム建材が国内の建設鋼材、鉄スクラップを扱っており、海外についてはパートナーの三井物産の意向も踏まえて整理する必要がある。鉄スクラップは将来的に中国が輸出国に転じる可能性も高く市場も大きく拡大するが、冷鉄源としての括りでは製鉄原料を扱う金属資源グループとの機能分担も必要となる」

――海外では北米市場への関心が再び高まっている。

「先進国でありながら人口が増え、資源、技術もある成長マーケットと認識している。カーギルから現プレートプラスを買収するなど投資も行っている。新規事業を創出できる土壌もあり、新しいものを行うには最適な市場と認識している。他グループ出身者がメタルワンの北中米統括に就任し、従来と異なる視点で新たなアプローチを展開している」

――北米のコイルセンター再編は。

「コイルプラスはメキシコ、カナダを含めた11拠点体制。自動車メーンで電機を含めた製造業分野をカバーする冷延・表面処理鋼板事業モデル。プレートプラスは8拠点体制で、建設向けの熱延厚板分野がメーン。業態が異なるため、それぞれの課題整理を優先する。メキシコは自動車分野のコイルセンター3社を統合した」

――プレートプラスは先物デリバティブ関連ビジネスも得意とする。

「主要スタッフと一緒に、鉄鋼流通のプロとしてのメタルワン流の事業運営ノウハウを注入しつつ、ヘッジ機能も活用していきたい」

――エネルギー分野は。

「カナダの鋼管問屋、カンタックが油井管、ラインパイプを扱っているが、収益は堅調に推移している。米国では西海岸、ヒューストンに合弁事業があり、鋼管流通、鋼管ねじ切り事業などを行っている」

――ASEAN市場対応は。

「タイ、インドネシアなど事業基盤がある成長市場で機能を強化していきたい。薄板、特殊鋼、パイプを含めて自動車分野がメーンなので、先ほど話をしたように建設分野の市場を開拓していきたい」

――中国は先行して需要が回復している。

「メタルワン中国は前期、過去最高益を計上した。世界最大の自動車市場であり、鉄筋も1億トン規模の巨大マーケット。Eコマース市場も拡大しており、引き続き注力する」

――価格インデックス事業では、中国のマイスチールと連携する。

「インドにマイスチールとの合弁企業を設立し、インデックス事業を展開する。インド市場は、コロナ影響が深刻で乗用車、トラックともに生産が激減しているが、中長期的には成長が期待できる。コイルセンター2社、厚板溶断、ファスナー関連などの事業基盤もあるので、伸びる需要を捕捉していきたい」

――炭素本部、機能素材本部との連携は。

「3本部ともに素材、川中、製造業を結びつけるサプライチェーンを構成している。炭素本部は石炭・石油コークス、ニードルコークス、アノードなどの商材を扱い、鉄鋼・アルミ産業を対面産業としている。機能素材本部は塩ビ、硅砂、セメント、木材などを扱い、自動車、建設分野を対面産業としている。いずれの業界も似たような産業課題を抱えている。本部を越えた人事ローテーションを加速し、メタルワンにも両本部の中堅幹部を派遣している。素材は異なるが、産業構造の本質を掘り下げるなど、ビジネスモデルの創造的破壊を本格化している」

(谷藤 真澄)

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