2020年8月25日

「変革する建設市場 未来のあり姿を見据えて」 重仮設リース 材工一式受注対応を加速 現場でICT活用の動き

 土木や建築の基礎工事を安全かつ確実に進めるためには土砂崩壊を防ぐ山留工事などが必要となる。重仮設業はこうした仮設工事の設計・施工も行いつつ、鋼矢板・H形鋼・覆工板・敷鉄板など重仮設資材の供給を担う。地震や豪雨といった災害発生時には復旧工事で資材を緊急出荷するなど、見えないところで人々の生活を支えている。一方、技能者の高齢化、人手不足への対応は建設業界に密接する重仮設業でも喫緊の課題といえる。縁の下で社会基盤を支える重仮設業の現状、取り組みを探る。

 【需要動向】

 国土交通省の建設関連業等動態調査によると、重仮設リース(12社)の2019年度賃貸売上高は前年度比1・1%増の739億4200万円と3年連続で増加した。単価改善に加え、都市部の再開発、インフラ整備の需要が賃貸売り上げを押し上げ、調査対象会社が12社に増えた09年度以降で2番目に高い水準となった。



 直近20年度における4―6月累計の賃貸売上高は前年同期比0・1%減の176億4100万円と微減にとどまり、堅調な需要環境が継続。新型コロナ禍や景気後退に伴う投資抑制を受け、民間建築分野は下振れリスクが生じているが「老朽インフラの整備や国土強靭化、災害関連などは必須の工事。こうした公共土木向けの仕事量は底堅く推移する」(重仮設リース業幹部)との見方は多い。

 【人手不足への対応】

 近年、大手各社は建設現場の工期短縮や工費削減、省力化に主眼を置いた新工法・新製品の開発を加速。現場のニーズに沿い、特注の加工品を作るケースもあり、ジェコスは大阪工場(大阪市西淀川区)でスチールセグメント用の自動溶接ロボットを導入するなど、工場の生産性を向上する動きが進む。「ゼネコンからは材料、工事を一体化した材工一式の発注が増えている」(重仮設リース業幹部)とし、各社が材工での受注体制を強化している。

 重仮設業の工場における省人化・省力化の一つとして「自動ケレン機」の活用も挙げられる。建設現場から戻ってきた重仮設材は再び出荷するために工場で整備・修理作業が必要となる。自動ケレン機は返却された資材の泥など付着物を効率的に除去でき、人手に頼ることの多かった整備作業を迅速化する。

 ある重仮設リース大手の幹部は「次の出荷に向け、戻ってきた重仮設材をいかに早く整備、修理できるかが競争力の源泉」と捉える。「人手に頼ることの多かった整備作業を機械化、自動化することは安全面も含めて大きなメリットがある」と工場作業を効率化する重要性を強調する。



 【ICTを活用へ】

 建設現場ではICT(情報通信技術)を活用したi―Constructionなどの導入機運が広がる。重仮設業でもICTを活用し、現場の生産性を向上する動きが出ている。

 丸紅建材リースはこのほど、親会社の丸紅、技術ベンチャーのCACH(カック)と共同提供する「IoTによる切梁異常検知・自動通知システム」を発表し、営業拡大を進めている。切梁は山留壁の変形や土崩れを防ぐため、壁に対して水平方向に設置する重仮設材。同システムは市原工場(千葉県市原市)で専用デバイスを資材に設置した上で供給する。切梁の軸力部分にかかる力を無人で計測し、担当者は手持ちのスマートフォンやタブレットなどで遠隔から計測データを確認できるようになる。

 従来、切梁の現場管理は人手に頼った目視確認や計測作業が中心だった。配線や専用機器の設置など計測の準備作業でも数日かかるケースがあったという。

 同システムでは仮設後の計測準備や計測作業、定期的な巡回が不要となり、計測時の転落など事故発生リスクの低減にもつながる見込み。異常検知時にはメールでアラートを通知する機能を備えており、今後も新たな機能拡充を検討している。

  【海外に活路も】

 中長期の内需先細りを見据え、現在の国内主体の事業から海外に目を向ける会社も多い。大手では既にヒロセ、ジェコス、エムオーテック、丸紅建材リースがアジアを中心に海外事業を展開する。

 直近では丸紅建材リースが新たな海外拠点の拡大を発表しており、新型コロナ禍の状況を見定めながら、中国内で2拠点目となる瑞馬丸建を本格稼働する予定だ。中国は産業廃棄物の発生が多いコンクリート山留を用いるケースが多いが、近年は中国政府が環境問題を重視する方針に転換しつつある。今後はリサイクル性、短工期に優れた鋼製山留工法のニーズが高まるとみられており、現地で事業拡大を進める。

 親会社の丸紅は「将来はアジア全体でも建設現場の職人高齢化、人手不足への対応が課題となる。建設業の省力化技術は後追いの形で途上国でも必要となってくる」(宮崎慶介・鉄鋼製品事業部副部長)と見据える。総合商社のネットワークを生かし、前述の「IoTによる切梁異常検知・自動通知システム」の拡販を含め、長期的な視点で現地の需要捕捉を狙う。

 海外建設市場は重仮設材を用いた工法が一般的ではないケースもあり、大手でも収益化に苦心しているのが実態。そうした中でも大手各社では内需縮小に対する危機感が一致しており、新たな収益基盤の構築を模索している。

(加治屋 雄基)

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