2020年8月26日

「変革する建設市場 未来のあり姿を見据えて」 軽仮設リース 「新型足場」で省力、安全強化 BIM連携サービスも

 建設業の労働災害死亡者数は墜落・転落が40%前後を毎年占めており、事故別で見ても最多の発生件数となる。近年は足場などからの墜落災害を防ぐため、先行手すりなど安全措置部材の活用増、フルハーネス型安全帯の着用義務化が進む。建設現場ではこうした安全基準が高まっているほか、建設業の労働者不足もあり、省力化や安全に主眼を置いた軽仮設材の重要性が増し、近年は次世代型と称する「新型足場」の普及が加速する。足場をはじめとする軽仮設市場の今を追う。

 【市場が急拡大】

 国土交通省の建設業等動態調査によると、軽仮設リース(50社)の2019年度賃貸売上高は前年度比6・5%減の2309億5800万円だった。3年ぶりの減少に転じたが、調査対象会社が50社に増えた10年度以降では3番目の水準で、堅調な事業環境が継続。10年度の賃貸売上高(1522億9700万円)と比べると5割強の増加となっており、市場拡大が進んでいる。

 軽仮設リース業協会はユーザーであるゼネコンなど建設業者を対象とした軽仮設機材のリース・レンタル使用度調査を隔年で実施。19年度で枠組足場・くさび式足場・型枠類など軽仮設材全体の使用度平均値は83・5%となり、17年度の前回調査比で2・9ポイント増だった。今後の使用度は84・9%と現状比1・4ポイント増となるなど、ユーザー側でリース資材を活用する割合が増え、市場拡大の一因にもなっているようだ。

 【新型足場が普及期に】

 特に近年、軽仮設の市場をけん引するのが次世代型と称した「新型足場」の普及にある。従来型とされる「枠組足場」は半世紀前の日本人の平均身長を基準としており、階高1700ミリが主流となっている。

 新型足場の多くが階高1800―1900ミリを標準とし、従来よりも広い作業空間を確保。組立時にくさび緊結式や先行手すり工法を採用し、優れた積載効率や施工性、安全性などが特徴となっている。現在は枠組足場の普及時と比べて平均身長が伸びているほか、建設現場の人手不足や安全基準の高まりなどもあり、こうした新型足場のニーズが高まっている。

 アルインコは新型足場など仮設機材の需要増を見据え、ここ10年で国内外の生産体制を増強し、20年3月期の仮設機材生産高(金額ベース)は161億7200万円と前期比13・7%増、10年3月期と比べて3・6倍に拡大。タカミヤは20年3月期で次世代足場「Iqシステム」の販売実績が前期比31・3%増の42億9400万円となり、同社試算の普及平米数は同21・8%増の648万平方メートルに達したという。

 【近年は競争激化も】

 需要増に伴い、近年は多くの仮設機材メーカーが新型足場の市場に参入。競争が激化しているほか、機材を購入する大手リース業者も主力メーカーが固定されつつある。メーカーは各々の新型足場に適用できるオプション部材の開発を推進するなど、他社との差別化、既存顧客を囲い込む動きが一段と進んでいる。

 ただ、既存の枠組足場の普及規模を考慮すると「すぐには完全移行が難しい」(軽仮設リース業幹部)との声もある。当面は建設現場の状況に柔軟に対応できるように「実際は新型足場と枠組足場の双方をバランスよく保有する必要がある」(同)と全面的な入れ替えには慎重な見方もある。「メーカーごとに部材や規格が異なり、互換性がない」(別の軽仮設リース業幹部)ことも課題となっているようだ。

 【ITやAIを活用】

 直近では軽仮設リース大手のタカミヤが自社製品の次世代足場「Iqシステム」とBIMソフトを連携したサービスを7月から開始した。Iqシステムの高い作業性、安全性を生かしつつ、19年秋ごろから始めたBIMサービスと連携している。

 3Dで仮設計画を行うことで、危険箇所を可視化できるようになり、施工時の安全性向上にも寄与。スキルが相対的に低いユーザーでも簡単なレクチャーで使用可能となり、導入前と比べて社内業務コストが10%減につながったという。

 ある軽仮設リース業のトップはこうした仮設計画のBIM対応に加え、軽仮設材を保管・整備する機材センターでもIT・AI化を推進する意向を示す。整備・修理作業の機械化を模索するだけでなく、在庫管理などの自動化を検討し「資材購入なども人の経験や勘に依存しない体制の構築を図りたい」と軽仮設リース業、機材センターの新たな形を探っている。

(加治屋 雄基) (おわり)

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