2020年9月9日

「未来へ見出す活路 台湾の循環経済」台湾資源再生協会 黄孝信理事長 高度な産業生態システムを 環境・経済、ウィンウィンに

台湾は世界的なIT産業の集積地であり、関連する企業などから発生するスクラップのリサイクルを積極的に進め、高度なリサイクルシステムを築き上げてきた。重要な役割を果たしてきたのが産官学のリサイクル関係者が集う台湾資源再生協会。118の企業や研究機関などの団体会員と218の個人会員が加盟する同協会の黄孝信理事長に台湾のサーキュラーエコノミー(循環経済)の現状と未来の姿について聞いた。

――台湾の資源リサイクルの現状を。

「行政院環境保護署(環境省に相当、以下環保署)の統計資料によると、2019年の資源再生量は一般生活ごみと産業廃棄物を含め合計で約2200万トン。このうち一般生活ごみが約500万トンで、資源回収率は56・27%。産業廃棄物の再利用量は約1700万トンで、再利用率は84%となった。台湾では高度な資源回収システムを構築し毎年、安定した回収量を維持してきているが、本年は新型コロナウイルスの影響でリサイクル量が若干減少する可能性があると見ている」

――台湾のリサイクル産業の特徴は。

「台湾の製造業は計517種類の分野で成長を遂げている。発生する廃棄物の種類も多岐に渡り、多様性が台湾のリサイクル産業に発展をもたらしたと言える。台湾でリサイクルに関連する企業・団体は計1725社に上り、リサイクル産業の市場規模は734億台湾元(約2700億円)に達した。このような成果は先進国の模範であり、多くの産業のレベルアップやモデルチェンジにつながっている。資源循環利用の成功体験をシェアし、資源の永続的利用を促進している」

――業界が抱える課題は。

「資源循環産業の大多数を中小企業が占めていることと、資金不足で十分な研究開発が行われていないことだ。リサイクル技術の進展に歯止めをかけ、時代とともに変化するニーズへの対応を難しくする要因となっている。近年は原材料の多様化や使用量の増減といった変化に伴い、既存のリサイクル技術や設備で対応が難しくなっているケースが相次ぎ、リサイクルコストの抑制にも支障をきたしている。そのため環境に悪影響を及ぼさない金属スクラップなどの有用資源を政府による管理ロジックから抜け出させ、厳しい輸入規制の緩和などが必要になる。政府主導で企業と業界、エコタウンといった点・線・面をつないだ資源チェーンを構築し、より高度な循環経済の産業生態システムを構築していかなくてはならない」

――世界的に循環経済の動きが進んでいるが、台湾ではどのような変化があるか。

「各国の循環経済の戦略を大局的に見ると、多様な産業間で共生可能なネットワークの形成を促すことが主要な動きとなっている。台湾のリサイクル産業は過去、企業の技術や資金、規模の不足と環境モラルへの理解が十分でなかったため、動脈産業側と効果的な関係を構築する動力に欠けていた。改善するために政府は『5+2産業イノベーション』という循環経済政策を推し進めている。大手企業などでは循環経済の重要性を意識し始め、企業の社会的責任(CSR)において循環経済を重点目標に定めるところがある。半導体の製造過程で生じる廃硫酸を循環回収し、電子工業用硫酸にリサイクルする工場を設けたメーカーなども出てきた」

――どのようなことが必要になるのか。

「循環経済に関する取り組みを多く行ってきたが、台湾が必要とする工業原料となる資源を満たすには十分ではない。本協会は環保署に対して経済効果を有する使用済み資源の輸入規制の緩和を優先的に進め、海外で発生したリサイクル資源の循環利用を台湾で促進することを提言している。台湾だけでなくアジア太平洋地域の国家が連携して廃棄物処理問題の解決を進めていくことができる。台湾政府の循環経済政策を国際協力のレベルまで押し上げ、台湾の技術と経験を海外に広めていくことも重要だ。他国でも廃棄物処理問題が経済成長の妨げにならないよう、環境と経済がウィン-ウィンの関係となるシステムの構築が求められる」

――非鉄金属のリサイクルについて。

「本協会の直近の調査によると、台湾で発生する銅含有廃棄物は年間91万トンほど。600社近いリサイクル業者が存在し、銅が含まれた有用金属資源を年8・3万トンほど得ている。アルミ含有廃棄物の発生は年25・1万トンほどで9・2万トンのアルミ含有廃棄物を輸入し、8・1万トンを輸出している。390社近いリサイクル業者があり、アルミを含む有用金属資源を年25万トンほど得ている」

--廃電子機器などEスクラップの対応は。

「ノートパソコンやデジタル家電、輸送機器の電子部品などから発生する廃電子機器は金や銀、白金、コバルトなどの高価な金属資源を含有している。効率よく選別し、回収・精製することが重要だが、台湾企業は回収・分類に関する技術に比較的欠けているところがあると感じられる。AIなどデジタル技術の活用に力を入れ、効率良く安全に選別、回収できるよう改善していく必要がある」

--LiB(リチウムイオン電池)普及の現状を。

「台湾はLiB製造の下流部分に当たるモジュール生産で全世界の40%のシェアを占めるが、LiBの上流部分の生産は原料の輸入価格が高額であることと海外特許の制限を受けて日本と韓国に独占されている。正極材料の自給率は30%に届かず、負極材料はさらに低く15%ほどで必要量の大部分を日本から輸入している。上流部分のカギとなる原材料の確保は台湾のLiBメーカーの発展において最も切迫したニーズだ。2017年12月に台湾政府は40年までに自動車の全電動化を達成すると宣言し、現在まで電気自動車を約20万台販売している。一部は今後3―5年の間にバッテリーの交換期が訪れると予測され、リサイクル方法の確立が求められる」

--LiBのリサイクルについては。

「台湾で回収可能な使用済みLiBの数量は約600トンで、そのうち70―80%が使用可能な原材料にリサイクルでき、再生した原材料の売上高は約1億2000万台湾元(約4億3000万円)になる。電気自動車産業およびエネルギー貯蔵産業の増加と淘汰に伴い、100億台湾元(約360億円)以上のマーケットが期待されている。台湾でLiBをリサイクル処理できる業者は2社のみ。主に分解や放電、破砕、ふるい分けなどの物理的選別を行い、有価な資源については再利用が可能な事業者に供給している。輸出は3社が行っている」

--LiBリサイクルの課題は。

「直面している課題は3点。一つは国内からの原料取得が困難なこと。環保署の回収量は直近3年間で年162トンほどに止まっている。次にLiBの種類が多岐に渡り、成分も複雑でリサイクルが難しいことだ。回収技術の向上が常に求められる。3つめは法規制のためにリサイクル原料の輸入が困難なこと。原料不足から事業者の投資意欲が高まらず、回収システムの発展が阻害されている」

――太陽光発電パネルのリサイクルは。

「環保署は19年に使用済み太陽光発電パネルについて専属の廃棄物コードD―2528を設定し、現在までに3社の廃棄物処理工場が処理許可証を取得している。処理システム構築の第一歩を踏み出した。発電所の寿命による廃パネルの退役ピークまでにまだ数年の猶予があるものの、現状の処理能力は充分とは言えず、発展の初期段階にあるのが現状だ。具体的な処理方法として廃太陽光発電パネルのアルミフレームとジャンクションボックスを台湾で分離し、リサイクルしている。その他のものは粉砕処理後、日本へ輸出してリサイクルしている。台湾でも研究機関や民間企業が革新的な再生技術成果を発表し始めており、廃パネルの再生処理法の改善が進むと考えている」

――台湾のリサイクル業界は今後10年でどう変化するか。

「10年先に各方面で経済的な資源リサイクルが次第に実現すると考えているが、そうなるためには技術とリサイクル製品を高付加価値化しつつ、資源再生製品認証サイトや関連製品の品質規格を構築する必要がある。リサイクル製品への国民の信頼を高め、産業界が優先的に利用し、国内で優先的に供給していくことで天然資源の使用量を抑制することができる。台湾の大手企業はここ数年、資源循環に関する研究開発や製造工程での廃棄物低減、IoTやAIなどのDX投資推進による工場の管理能力強化や再生製品の品質向上などを進めている」

――2050年の台湾のリサイクル産業の姿は。

「楽観的シナリオとして30年先に各種資源の循環利用は日常生活の一部となり、動静脈産業のマッチングが当たり前となり、境界線はますます曖昧なものになる。大手中心に企業が50年までに循環リサイクルに関する投資に踏み切ると予測する。企業間の競争の枠を超え、社会全体で協力しながら資源リサイクルを実現できる社会が到来すると期待している」

――日本に期待したいことは。

「本協会は04年の設立以来、視察団を日本に毎年派遣し、資源再生工場や技術の見学を行ってきた。JETROや地方自治体、大学、学術研究団体などと交流し、見学した工場は100社近くに達する。台湾と日本の企業は長年に渡って安定的な協力関係を築いてきた。日本政府と企業が台湾と多元的な交流と協力の場を設け、日台の資源リサイクル産業の発展を共に促進していくことを期待したい」

――新型コロナウイルスの台湾経済への影響は。

「製造業は半導体、ディスプレイパネル、機械、石油化学、鋼鉄業を主としているが現在も台湾を主要生産拠点としているため影響は比較的小さい。サービス業と旅行業の影響が比較的大きくなっている。中国、東南アジアにある台湾企業の工場が生産を一時停止しており、サプライチェーンや発注状況に影響を与えている。中華経済研究院の予測では20年の台湾経済の各四半期成長予測値は1―3月が1・83%増、4―6月が0・12%減、7―9月が00・52%増、10―12月が1・86%増となっている。今年後半は世界の主要国が新型コロナ対策に成功し経済が動き出せば、若干の改善が見込まれる」

――米中貿易摩擦の影響はどうか。

「中国と高度に貿易を行っている台湾資本の企業に影響を与えている。製品が追加関税項目に関係している場合、中国での工場の有無に関わらず、関税コストが増加し、影響を被ることになる。このうちICT産業は台中間のサプライチェーンの関係で間接輸出が受ける影響が比較的大きい。国際産業のサプライチェーンが複雑に交錯する環境下で世界二大経済体の貿易摩擦、特に米国が追加関税の対象を中国のIT産業に定めている状況では、集積回路が輸出の3割近くを占める台湾が自身の都合だけを考えるのは困難となっている」

――台湾資源再生協会の最近の活動は。

「メーカー会員の市場競争力を高め、政府のAI化政策に応えるため、本年はメーカー会員の個別ニーズに応じて、生産プロセスまたは製品品質に対するAI化診断を32社に、オンサイト指導を3社に提供している。メーカーにAI化による生産プロセスの改善を間接的に促すことで省力化と、技術訓練マネジメントを簡潔化して生産効率の底上げを図っていく。また、21年に台湾で開催予定の第16回東アジア資源再生技術国際シンポジウム(EARTH 2021)に向けて準備を進めている。今後も会の設立趣旨に則り、引き続き台湾の金属資源循環システムの構築計画、資源循環関連管理法規の合理化などを推進していく。今後、台湾の資源循環産業が合理的な管理と公平な競争の下、さらなる発展を遂げることを願い、協会として活動を進めていきたい」

――台湾の方々にも支えられ、産業新聞社は紙齢2万号を迎えることができました。

「貴紙は静脈産業の報道に力を入れている。長年、台湾の資源循環産業の現状を深く取材し、報道していただいた。台日両方の交流が促進され、台日企業の提携が進んでいる。この場を借りて厚く感謝の意を示すとともに、紙齢2万号を迎えられたことに心から御祝いを申し上げたい」 (服部 友裕)

スポンサーリンク