2020年9月28日

「未来へ 見出す活路 溶接鋼管・引抜鋼管メーカーの戦略」 次なる需要のヤマに備え「変化への対応」「挑戦」が鍵

 溶接鋼管は建設・土木やプラント、造船、自動車、建設機械と非エネルギーの分野で主に使用される。シームレス鋼管含む受注は2016―18年度と堅調だったが、その後に東京五輪・パラリンピック向け需要が一服。米中貿易摩擦などによる世界の景気減速が影響して19年度の全国受注は308万トンと前年を10%強下回り、コロナ禍を受ける20年度は同10―20%減る見込みだ。メーカー各社は生産を調整するが、次なる需要のヤマに向け、生産の効率化や品種・販路の拡大など対策にも乗り出している。

 JFEスチールはグループの技術・人材の効率的な活用を図るため、15年に鋼管センターを設置し、グループ全体の鋼管事業戦略を加速させた。17年4月、JFE鋼管と川崎鋼管を統合してJFE溶接鋼管を発足。商品・サービスを充実させ、生産設備の効率化とともに製造・販売力を強化し、国内の自動車・産業機械分野と海外向け中心に小径電縫管事業の成長を図っている。

 日本製鉄の溶接鋼管事業の中核を担う日鉄鋼管は19年に旧日鉄日新製鋼から自動車用ステンレス鋼管事業の商権を受け、事業規模を拡大。日本製鉄グループの強みを生かし、電縫管の高強度化や軽量化ニーズに対応している。近年は技術開発に一層力を注ぎ、製品群を広げ、品質管理を徹底。グループ会社含めた国内外の製造拠点をフルに活用し、グローバルな生産・販売体制を強くしている。

 独立系で国内シェア首位の丸一鋼管は国内生産拠点数を北海道から九州まで16カ所、販売拠点を北海道から沖縄まで23カ所配置している。海外はグループ会社を7カ国17拠点展開し、品質と納期を追求している。需要地の近くに生産拠点を構えることで製品をいち早く需要家に届け、強度・加工性・軽量化ニーズに対応している。

 20年4月、神戸製鋼所から旧コベルコ鋼管の全株式を受け、丸一ステンレス鋼管としてグループ化した。シームレスステンレス鋼管というニッチだが高付加価値品の事業を新たに加え、「パイプのリーディングカンパニー」としての地歩を固める。

 厳しい事業環境が続く引抜鋼管メーカー。業界団体の全国鋼管製造協同組合の加盟社は19社でうち東部組合8社、西部組合11社だが、自動車足回り部品向けを主体とする事業構造はコロナ・ショックをもろに受け、8月の生産は前年同月比約3割減の1万673トンと落ち込んでいる。ボトムの5月の8490トンから緩やかに回復しているものの、自動車や建機、工作機械を主要需要先とするだけに低迷からいつ抜け出せるかは不透明だ。

 撤退や再編の動きが見られる。東部組合に加盟していた山和鋼管(本社工場=横浜市金沢区)は昨年、台風15号の高波の被害で護岸が損壊し、工場内への浸水で操業が停止。そのまま自主廃業を余儀なくされた。

 今年2月、JFE商事鋼管管材と国内引抜管最大手の旭鋼管工業が共同出資で冷間引抜鋼管と精密部品の製造・販売を行う新会社、中部伸管工業を立ち上げた。旧新昭和鋼管の事業を譲り受けており、精度・品質の高い精密部品の製造に加え、旭鋼管グループ各工場との連携によって加工体制を強化した。独立系が多くを占める引抜鋼管業界にあって、専業商社大手と最大手メーカーが組んだ事業がどう展開していくか、注目されている。

 自動車含む輸送機の排気構造の多様化によって需要動向が変化する中、さらなる連携・統合が予想され、引抜鋼管業界は向こう10年後に一変する可能性がある。細径を得意とする企業や金属全般の特殊加工などを広く手掛ける企業など、「他社がやらないニッチ分野で強みを発揮するメーカーが勝ち残る」と業界OBは語る。

 培ってきた引抜加工の技術をベースに従来品の高付加価値化とともに新たな材料などに対応できるか、メーカーの模索は続く。「変化への対応」と「挑戦」が未来へのキーワードとなりそうだ。

(菅原 誠)

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