2020年10月6日

「未来へ 見出す活路 構造改革急ぐ建材薄板メーカー」 限られた経営資源 商品開発、効率化投資に 無益な消耗戦に終止符を

 建材薄板メーカーは高炉メーカー同様、構造改革の真っただ中にある。建材薄板(めっき鋼板、カラー鋼板)は屋根・壁用途が大半を占め、向け先も純内需の建築分野に限られることから、人口減少に伴う需要縮小に合わせたダウンサイジングが不可避だ。業界の共通目標である「他素材からの切り替え」を推進し、建材薄板需要の維持・拡大を図るためにも、まずはそれぞれの構造改革に道筋を付け、目の前の坂を登り切ることが先決となる。

 構造改革を最も強力に推し進めているのは日本製鉄グループだ。日鉄鋼板は6月に船橋製造所(現東日本製造所・船橋製造部)の連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)を2基から1基に集約。7月の日鉄日新製鋼建材との合併では、統合を目前に控えた状態で新型コロナウイルス感染拡大に直面し、両社そろっての会議や打ち合わせができないなど、統合作業に多大な支障が生じたが、計画を先送りさせることなく、新会社を始動させた。

 日鉄はメーカー再編が一段落したのも束の間、同時並行で計画していた流通再編も前進させる。自社が保有する旧日新製鋼系二次商社の月星商事の株式を日鉄物産子会社で一次商社機能を持つNST日本鉄板に一部譲渡。商流を整流化し、親子間での連携拡大を促す狙いだ。

 構造改革を急ぐ背景にあるのは日鉄内部に共通する”待ったなし”との強い危機感だ。「コロナに関係なく、過渡期を迎えている。われわれも住金(住友金属工業)や日新と合併して形にはなったが、今のままで10年、20年とやっていけるとは思っていない」(同社薄板営業部)。

 統合後の新生・日鉄鋼板は建材薄板の市場シェアが約6割と他を圧倒するが、その分、生産能力も大きく、足元のような不況下では2社分の過剰能力を抱えることとなる。日鉄鋼板幹部も「統合シナジーを早く出さないと、マーケットはその間もシュリンクしていく」と改革実行のスピードが重要との認識を示し、必要となればラインの統廃合にも踏み切り、生産性やコスト競争力の高い設備に寄せる考えだ。

 JFE鋼板は長年、業績低迷に苦しんできたが、東日本製造所のCGL集約をはじめとする合理化が実を結び、2020年3月期は大手4社で唯一の経常増益となった。16年、17年と立て続けに京浜地区のCGLを休止し、東日本でのめっき鋼板生産を千葉地区に集約。当初は移管に手間取り、生産性が伸び悩んでいたが、前期は期を通じて集約効果を引き出すことができた。

 今期はCGLに続き、京浜の連続カラーライン(CCL)も年度内の休止を決定。京浜を閉じて能力を適正化し、千葉と倉敷製造所との東西2拠点体制による背水の陣で臨む。京浜は大手特約店向けの大ロット品の生産が主体のため、千葉への集約効果も大きいが、一方で需要動向によっては能力が不足することも想定される。小ロット品については必要に応じて外部に委託することも検討しており、自前主義を排して収益確保を優先する。

 淀川製鋼所は今期からスタートした3カ年中期経営計画で、基幹生産ラインのリプレースを打ち出した。同社は建材薄板に加え、電機向けも手掛け、他の大手2社とは収益構造が異なる。リプレースは前中計から構想しており、コロナ後を見据え、生産性向上と事業基盤の強化を図る。

 総投資額約76億円を投じて福井に新工場を開設するエクステリア事業も鍵を握る。建材薄板メーカーでは唯一、熱延コイルから一貫生産し、原板も特定の高炉メーカーに縛られず、柔軟に調達できる点が同社の競争力の源泉だが、エクステリア事業も鋼板事業からの一貫メリットを生かせる得意領域の一つ。事業の一部を大阪工場から新工場へ移管し、生産・物流体制を一新することで、主力の物置では国内シェアナンバーワンを目指す。

 大手が効率性や収益性を追求する中、中小メーカーは生き残りをかけて、機動力や独自性に活路を見いだす。千代田鋼鉄工業は8月、市川工場で進めていたCCL高度化投資を完了した。最新鋭のオーブンに更新し、生産性を高めたのに加え、弱電向けに適用可能な高級カラー鋼板の製造も狙える体制を整えた。小ロット・短納期を可能にする小回りの良さを生かし、他社が店売りには対応しない特殊なカラーも特約店や施工店に供給する。

 東邦シートフレームは独自開発の光触媒プレコート鋼板「ピュアクリーンコート」が抗菌・防臭機能が施主から高い評価を獲得し、従来の外装材用途に加え、内装材として使用されるケースが増えている。鋼製家具や機械装置、パネル、スパンドレルなどのメーカーとの積極的なコラボが最終製品への採用に結び付いており、今後もインテリアや非建材分野での用途開発に注力する方針だ。

 日鉄鋼板と日鉄日新製鋼建材の合併によって、06年の日鉄住金鋼板発足以来続いた大手4社体制は幕を閉じた。これまでは4社の拮抗するシェアがし烈な販売合戦を招き、各社とも痛み分けとなっていた。原材料高騰時に値上げ時期がずれるのは毎度のことで、その都度、流通も価格競争に巻き込まれてきた。

 業界関係者の間では、今回の大型再編を機に市場が安定化に向かうことへの期待も大きい。昨今の災害激甚化を受けた防災ニーズの高まりに応え、建材薄板メーカー・流通は地震や火災に強い金属屋根・壁を普及させる使命を持つ。構造改革を乗り越えた先では無益な消耗戦に終止符を打ち、限られた経営資源を商品開発や効率化投資により一層振り向けることが求められる。

(音成 泰文)

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