2021年1月29日

営業戦略を聞く 日本製鉄 中村真一副社長 適正マージン確保必須 車軽量化提案など高級材供給注力

――2021年の国内外の鉄鋼市場をどうみる。

「国際鋼材市況の上昇基調をけん引している中国は政府の景気対策が継続し、鋼材消費、粗鋼生産ともに高い水準が続くと想定している。また、中国企業の再編や中国資本を中心としたASEANなどでの能力拡大の動向についても見守っていく。日本の鋼材需要は20年度見込みの5200万トンから21年度は5500万トン程度を想定し、粗鋼生産は経済産業省の20年度見通しの8250万トンから増えて21年度は8000万トン台後半をイメージしている。自動車中心に製造業は内外需ともに回復基調が続く。建設は土木が前年並みとなる見通しだが、建築は20年からの横ばいから若干増と想定される。大型再開発案件が本格化する一方で人口減など中長期的な課題に加えてコロナ影響による設備投資の低迷や物件の着工遅れが懸念される。米中貿易摩擦、新興国の経済回復、コロナ渦の影響などが経済に及ぼす影響については引き続き注視が必要と考えている」

――足元の半導体不足による自動車減産の影響は。

「半導体影響で1―3月期に国内で合計10万台弱の減産になるようだが、鋼材需給がタイトな中で当社は在庫調整や翌契にずらしてロールを調整するなど対応しており、1―3月期の当社の生産に大きな影響はなく、20年度の単独粗鋼生産は3300万トン程度の予想で変更はない。21年度以降は半導体供給の問題が自動車生産にどう影響するか、動向を注視していく」

――鋼材市況は上昇基調を保つのか。

「中国は旺盛な鋼材需要から月9000万トンを超える粗鋼生産が続いているが、鋼材輸入の増加、輸出の減少、在庫の減少など現時点で内需の強さに不安要素はない。世界の粗鋼生産の約6割を占める中国の粗鋼生産が高水準を維持することで原料価格・鋼材市況ともに高騰が続く」

――中国の鋼材貿易に変化がみられる。

「減少していた鋼材輸出が11、12月と増え、急増していた鋼材輸入が12月に以前の水準に戻ったが、見掛消費に対して規模は小さい。大きな傾向として表われてもいないが引き続き注視していく」

――欧米や東南アジアの鋼材市況も上がっている。

「欧米の鉄鋼主要生産国でも経済再開に伴い鋼材需給がタイト化している。原料価格上昇に伴う鋼材市況の上昇は全世界的な流れだ。ASEANは域内需要が回復する中、中国とインド、ロシアなどからの鋼材輸入が減少し、需給が急速にタイト化している。鋼材市況は上伸しているが国際的にみると低位にあり、市況が下がる状況ではない。日本は下期の需要回復に伴って鉄鋼各社が生産回復に努めているが、鋼材在庫は大きく減少し、鋼材輸入も低位に留まり、需給はタイトだ。国際鋼材市況に比べ回復が遅れていた国内鋼材市況も急速な需給のタイト化と主原料価格や鉄スクラップ価格の高騰を受けて昨年末に上昇局面に入り、1月も上がっている。足下の世界的な原料高、鋼材市況高は中国の好調な粗鋼生産に端を発する構図に変化が生じない限り、若干の調整があるにせよ当面続く」

――マージン改善の進ちょくは。

「高騰している主原料や鉄スクラップ、資材費、物流費などのコストプッシュ分を早急に価格転嫁することが最重要課題だ。店売分野はコストアップと需給、国際鋼材市況との比較などを勘案して販売価格を薄板でトン1万5000円引き上げるなど各品種で販価への反映を進めている。ひも付きのお客様に対しても、まずは急激なコストアップ分の価格反映をお願いし、早期の価格転嫁を実行する。上昇する外部コストの転嫁に加えて当社が提供している価値の理解活動、適正マージンの確保を続ける。技術力やソリューション提案、品質、デリバリー、グローバル供給体制など多大なリソースを投入しており、設備・研究開発投資を継続できる適正マージンの確保が必須だ。お客様との交渉を粘り強く続け、適正価格を実現させる。急激に変動する原料価格の反映が遅れるため個別のお客様との価格フォーミュラの見直しや、エキストラが十分に取れないなど不採算品種からの撤退を含む販売品種の再検討なども実施する。お客様のご理解を得つつ、一定のマージン改善は進展してきたが、完遂すべく取り組む」

――戦略商品、特に自動車用鋼板と電磁鋼板の質・量両面の強化策は。

「顧客ニーズに応える高付加価値商品の比率を高めて収益力を向上させる。技術開発力と高付加価値商品を安定生産する製造力を活かし、国内外の顧客との総合的取り組みを一層深化させ、他社が追随できない高付加価値商品を開発・供給するなど鉄の可能性を追求する。脱炭素社会の実現に向けたニーズも踏まえ対応する。自動車分野は先進的な素材開発に加え、部品構造や加工・評価技術を組み合わせて次世代自動車構造コンセプト『NSafe―AutоCоncept』を構築し、一層の軽量化提案やEV用の軽量部材提案も実施する。1・5ギガパスカル対応の君津地区の第6CGLを1月に稼働させ、増量要請にも応える」

「電磁鋼板はCO2排出削減や省エネのニーズが高まる中でハイグレード材の需要が飛躍的に成長する見通しだ。最先端の電磁鋼板を供給してきた開発力、ハイグレード材を安定的に供給する力を持つが、今後の需要増に応えるために総額1040億円を投じ、23年度上期までに約40%の能力向上と品質対策を図る。自動車の電動化がさらに進み、その先も需要が強いようであれば次を考える。インフラ分野でも激甚化する災害への対策や都市部のインフラの老朽化、少子高齢化に伴う人手不足などのニーズに対応する。当社グループの各種工法・製品の開発力、豊富な技術提案実績や製品供給力を生かし、施工効率が高いハット形鋼矢板や工期短縮化のニーズに応えるメガハイパービームなど様々なソリューションを提案して需要を捉える。再生可能エネルギーや水素関連インフラに用いられる鋼材などのラインナップもある。高付加価値商品の供給に必要な対策は中長期的な需要環境の変化を見据え、国内外で最適な施策を実行することで、規模で勝る海外の競合ミルとの厳しい競争に勝ち抜く考えだ」

――21年度からの中期計画での営業戦略上のテーマとは。

「まずは検討・公表済である薄板生産体制の効率化・厚板事業の体質強化の最適生産体制構築の施策を、お客様のご理解とご協力も得ながら確実にやり抜く。長期的に見れば、中国内需のピークアウト、インドやASEANの鉄の自国産化、日本の間接輸出の減少を含めた内需の減少といった東アジア鋼材需給構図の変化を想定している。さらなる体質強化策についても不断に検討していく」

――海外需要を取り込む戦略がカギに。

「競合他社が追随できない高付加価値商品を中心に日本からの輸出によって需要を捕捉する。培ってきた高い技術・品質およびソリューション提案力などの強みを生かせる製品・設備に資源を集中し、CO2削減も含めて高度化するニーズへの対応を踏まえ、今後も増加が見込まれる世界の鉄鋼需要を確実に捉える。海外での現地生産に関しては世界の顧客とのネットワークを礎に他社に先駆けて品種・地域ごとに最適な事業展開を推進する。特に日系需要家の海外進出に応じて下工程拠点を確保し、高品質の製品を提供する体制を築く。海外事業の収益基盤を強化すべく、各事業の収益力を一層高めるとともに不振事業の早期撤退を進める。現地の需要全体を捕捉する一貫生産体制は、インド事業の拡充や新たな案件を模索していく」(植木美知也)





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