2021年3月1日

財務・経営戦略を聞く JFEHD副社長 寺畑 雅史氏 スチール単体黒字目標 販価改善、改革効果発揮へ

――2021年3月期の利益予想を前回予想より大きく上方修正した。

「連結の事業利益を前回予想時に900億円の損失としたが今回、320億円の損失と580億円改善する予想とした。鉄鋼事業が前回予想の1350億円の損失から800億円の損失と550億円改善した。生産量が前回想定より増加したことや、輸出を中心とした市況好転により、スプレッドが改善していることが影響している。製鉄所の設備・工事や物流系など国内グループ会社も収益を取り戻しつつある。海外では出資先のJSWスチールがインド市場の急回復で利益を上げている。エンジニアリング事業は20年度予想220億円とコロナ状況下でも前年度並みの水準を達成する見通しであり、商社事業も国内外の景気回復に伴う鋼材需要の増加を受けて好転している」

――鉄鋼事業の利益改善は数量以上に販価上昇の効果が大きい。

「通期の粗鋼生産は2270万トン。前回予想から20万トンの増加で40億円程度の改善を見込んでいるため、後はやはり販価の改善が大きく寄与している」

――上期と下期予想の比較も大きく改善している。数量や販価が上向き、低価法による上期の評価損の反動増も多く含まれる。

「ホールディングスの事業利益は下期823億円のうち、一過性を除く実力ベースは553億円に改善した。上期の棚卸資産評価差等のマイナス680億円に対し、下期は上期に計上した低価法の解消もあり、棚卸評価差等で270億円のプラスで効いている。鉄鋼事業は下期に562億円の利益を見込んでいる。粗鋼生産が上期の1017万トンから下期に1250万トン強と230万トンほど増え、販価の改善やコスト削減も積む。グループ会社収益も一定程度の回復を見込んでいる。鉄鋼事業の実力ベースの利益は下期292億円で第3四半期と第4四半期はほぼ同水準。21年度は粗鋼生産2500万トンの見通しで四半期の実力損益140億―150億円がベースとなるイメージだ」

――販売価格の改善についても取り組みを継続している。

「諸物価の上昇や設備の老朽更新コストの増分については、従来より、価格改善に取り組んできており、大半についてご理解を頂いているが、一部まだ届かないところについては引き続き交渉していく。主原料コストについては、コストアップ幅を確実に転嫁していくことに加え、鋼材価格への反映早期化も図っていく。また、エキストラの見直しにも取り組み、適正な商品価値、付加価値に基づく価格体系を再構築していく」

――半導体不足や東北の地震の影響で自動車生産が一時減少する影響は。

「薄板については、足元は自動車向けに加えて、他分野の需要回復も進展しており引き合いが強く、現時点で当社の生産計画を大きく変更することはない。自動車業界の動向については引き続き注視していく」

――土地売却を決め、20年度の資産圧縮を300億円増し、2000億円とした。

「JFEエンジニアリング所有で賃貸中である神奈川県の土地・建物について今回、資産の効率的運用と財務体質強化のために売却し、280億円の売却益を見込んでいる。20年度の当初はCP発行の環境が悪く、資金面の懸念があったので積極的に資金を調達した。7月に社債発行600億円を行い、借入れも増やしたので12月末の現預金残高は1760億円に積み上がった。事業環境が好転したことで有利子負債の削減を行い、21年3月末に1兆9000億円と予想していた有利子負債を20年3月末より少ない1兆8000億円に減らす。収益は上期の損失を取り戻せず通期で赤字となるが、21年3月末に106・6%とみていたD/Eレシオは95%台に下がる見込み。事業会社の資産圧縮や20年度上期を中心に実施した製品や原料在庫のミニマム化の成果も出ている。設備投資の見直しを継続し、政策保有株式は原則保有しない方針のもと、引き続き売却を進めていく」

――21年度の国内外の市場の見通しは。

「国内の自動車は堅調を持続するとみている。建設機械は国土強靭化や北米の需要増で想定以上に回復のピッチが速く、産業機械も上振れしている。建築は大型再開発案件や物流倉庫は堅調であり、中小物件は低調だが企業の設備投資の戻りにより総じて緩やかに回復するとみている。造船は非常に厳しいが、コンテナ船の環境については昨年後半から好転しており、今後も継続して回復することを期待している。海外はエネルギー関係が厳しい一方で、自動車は中国に続き、タイがほぼ昨年度の水準に戻り、インドネシアはなお低調だが徐々に上向いている。インドは急回復している。JSWスチールは海外の投資先の利益の半分ほどを占め、21年度も貢献度は高いとみている。北米のCSIは19年ほどではないが改善している」

――21年度のホールディングスの事業利益は18年度の約2300億円に近づくのでは。

「21年度はJFEスチール単体黒字化が目標だ。エンジと商社の利益は各200億―300億円がベースとなり、鉄鋼事業の下期の実力利益は年率600億円程度だが、グループ会社の利益に加えて、スチール単体でどれだけ乗せられるか、ということになる。改修で操業を止めている倉敷地区第4高炉を21年12月に再稼働させるが、需要次第では昨年の福山地区第4高炉の再稼働のように早めに立ち上げて生産量に上乗せしていきたい」

――原料価格が高止まりする見通し。販価改善が21年度も大きなポイントに。

「原料価格が変動した時に速やかに価格転嫁できるようになれば、損益の時期ずれは生じないことになる。お客様と丁寧に話をし、原料コスト上昇分の鋼材価格への反映およびその早期化について交渉していくことになる」

――20年度の緊急対策的コスト削減の反動増があるのでは。

「設備の補修費抑制や一時帰休など労務対策などが変わってくる。生産量が増え、業務の活動が上がってくれば労務費コストは増える。投資については、今までも安全・防災・環境に関しては着実に実行しているが、それ以外については投資案件の厳選や徹底的な低廉化を実施していく。構造改革に関して、23年9月に京浜地区の上工程と熱延ミルを休止する時期が決まったので、補修の計画を改めて精査し、知恵を出しながら減らす努力をしていきたい。ラインの稼働の仕方も考え、構造改革の効果を前倒ししたい」

――受注が増えているエンジの利益がさらに増えるのでは。

「受注額が19年度の4130億円から20年度に5000億円に増える見通しなので、21年度は増益が見込める。廃棄物発電プラントなど環境分野や橋梁など鋼構造分野が好調だ。プラントの建設から運営までを担うビジネスモデルにより収益を確保していく。食品やプラスチックのリサイクル事業にも積極的に取り組んでいる。また、昨年度の三井E&S環境エンジニアリングの株式取得に続き、21年4月には三井E&Sプラントエンジニアリングとの株式も取得予定であり、環境、エネルギー分野の事業拡大も図っていく」

――次期中期経営計画を21年度からの4年間としたのは。

「京浜の構造改革について、23年9月をめどに実行することを決定しており、この構造改革成果がフルに発現する24年度までの4年間を7次中期経営計画と位置付けることとした。構造改革後の24年度の粗鋼生産は2500万―2600万トンを想定しており、現時点の想定と大きく前提が変わるということではない。21年度は需要に応じたコストミニマム操業による最適生産の継続、年度ベースの粗鋼生産量の回復、新規設備投資によるコスト削減、販売価格の改善を継続的に進め、スチール単体の黒字化を達成し、収益の拡大を図る」

――2050年のカーボンニュートラルへの取り組みをどう進めていくか。

「現在取り組んでいるフェロコークスなどCO2排出を削減する技術は重要であり、研究開発を続ける。BHPと提携し、製鉄プロセスの低炭素化に向けた還元鉄活用などの共同研究に取り組む。カーボンニュートラルに向けては、カーボンフリーの水素や電力の大量且つ安価安定供給のための社会インフラ等の整備が必要であり、また、研究開発や設備投資にかかる多額のコストは個社だけで負担できるものではないため、業界を超えて社会全体、国と一緒に考えるテーマとなる」(植木 美知也)

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