2021年6月15日

鉄鋼業界で働く/ ―女性工場職編― インタビュー/工程超えた多能工目指す

鉄鋼業界で働く女性が増えている。関西地区のコイルセンター、近江産業(本社=大阪市大正区、水口哲社長)のグループ会社で板金加工などを行う近江テクノメタル(本社=兵庫県尼崎市、中倉孝社長)では、製造2課の松本美奈子さんが、溶接作業を日々行っている。鉄鋼業界に飛び込んだきっかけや仕事の魅力について聞いた。

――入社の経緯は。

「前職はケーキ店に勤務し、ケーキ作りに携わっていました。姉がビスを研磨する工場で働いており、仕事の話を聞いたり、姉の職場の皆さんとレクリエーションでお会いしたりする機会などを持つ中で、私も工場で働いてみたいと思い、21歳の時に入社しました。ケーキ店もそうですが、“モノづくり"が好きなのかもしれません」

――現在の職務内容は。

「前工程作業や別部門の溶接業務を経て、現在は電車の電源ボックスの溶接作業をメインに担当しています。今日も、海外の新幹線向け電源ボックスの溶接を行っていたんですよ」

――溶接の魅力は。

「図面を読んで形にしていくのがとても楽しいです。仕切り板というものを組んで行くのですが、1人で1つの製品を作ると達成感があります。作業で汚れたり汗をかいたりするのも苦ではなく、むしろ仕事をした感じがして好きですね」

――実際の生活に密着しているものを数多く製作している。

「テレビなどで電車の特集を見ると、『もしかしたら自分の作った電源ボックスが搭載された車両かもしれない』とモチベーションが上がります。東京ディズニーリゾートのモノレール向け電源ボックスや、大手コンビニエンスストアのコピー機の一部にも携わりました」

――入社後に苦労したことは。

「持てる重さの荷物を代わりに持とうかと気を使われたり、女性だからなのか職場で目立ってしまい、他の社員と作業内容について話しているのに休んでいると勘違いされるなど、“女の子扱い"されるのが気になりましたね。入社前は女性社員が1人しかおらず、同僚も接し方が分からなかったのだと思います。今は気持ちをくみ取りつつ、気に留め過ぎずに仕事に取り組んでいます」

――今後の目標は。

「小柄だからか、割と小さな製品の溶接を任されることが多いです。でも、もっと大きな製品の溶接にもどんどんチャレンジしてみたい。また溶接に限らず、ベンダーなど他の作業も学び、複数の工程ができる人材になりたいです。手が空いている時に忙しい部署を助けることができますし、他の部署の仕事を理解するきっかけにもなるので。工程を超えた多能工化を目指したいです」

(芦田 彩)

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