2021年7月16日

経営戦略を聞く JFEシビル 弟子丸慎一社長 新中計 新しい成長の種育成 24年度売上高1100億円目標

JFEグループで建設事業の中核を担うJFEシビルは1972年の創立以来、JFEスチールの製鉄所・製造所の建設・メンテナンスをはじめ海外プロジェクトを多数手掛けてきた。近年は物流施設、システム建築、メタルパーク(駐車場)、耐震・制震デバイスシステム、スーパージャッキ(重量物昇降)、地盤調査・樹木診断、公共工事・インフラ商品(耐震補強・補修工事)など幅広い事業領域を持つまでに成長した。2021年度からは新たな第7次中期経営計画がスタート。弟子丸慎一社長に24年度の目標、国内外での取り組みなどを聞いた。

 --21年3月期の事業環境から。

 「新型コロナウイルスの感染拡大にどう対応するかを突きつけられた1年だった。建設業界は現場あっての業界であり、感染対策について、協力会を含めて全員できちんと対策を打って進めようとの考えだった。おかげさまで、20年は全国で50現場近くあったが一人も感染者を出すことなく業務出来た。現場を止めることなく出来たのは、仕事に携わった皆が意識を高く持って取り組んだ努力の賜物であり感謝したい」

 「20年度の売上高は809億円、経常利益は62億円となり2期連続で増益を達成できた。売上高経常利益率(ROS)は7・7%と建設業としては比較的高い数字を確保した。19年度の大型物流施設の受注などが好調で、竣工したのは全部で7施設、うち冷凍倉庫は2棟あった」

 --テレワークなどの導入は。

 「グループ内ではいち早く導入し、最大で出社比率は3割まで落とした。施主などとの打ち合わせもテレビ会議システムなどで対応したが、建設事業は設計施工が原則なので、オンラインでのやり取りにはやはり限界があるというのが実感だ」

 --昨年4月に外販の建築事業を再編した。

 「新たに物流建築事業部を立ち上げ専門部署とした。これまで相当程度の物流建築を担ってきたので、全面的に力を入れ、お客様のニーズを捉えるべくスタートした。もう一つはシステム建築をベースに総合工事ができるようにとの考えから建築事業部として、2本柱体制とした」

 「物流建築事業部は、物流倉庫、冷凍倉庫を徹底追求する。建築事業部は全国の6支店と4営業所を管轄し、全国の総合的な建築工事とシステム建築の需要を捕捉する。コロナ禍でのスタートでどうなることかと思案したが、1年経過し今期から軌道に乗ってきた。公共事業や民間土木向けを担う社会基盤事業部とも連携し、より効率的な事業体制となった」

 --21年度は環境が変わりつつある。

 「20年度厳しかった受注が今期は増えている。建築事業では首都圏・関西のお客様を中心に延期していた案件を再開したいなど、製造業を中心に戻ってきた印象だ。とくに電子商取引(EC)は今後もさらに活発化するとの試算があり、好調が続く物流施設をはじめ、ラストワンマイルの拠点建設などポストコロナを見据えた動きが多数見受けられる。年末から来年以降の着工案件は埋まりつつある状況だ」

 「累計43棟受注したうち、現在は6棟が設計段階。足元、端境期にあるが7月以降は順次、工事に入る」

 --19年度に開設した技術開発研究センターはどうか。

 「ようやく花開いてきた。人員は専属で10人強。JFEスチールや大学の研究機関と連携して評価試験を行い、技術の業務提携をしている案件が多数ある。鉄骨の工法やコンクリートと鉄のハイブリッド工法など取り入れて、コスト削減と工期短縮に貢献している」

 --ところで、今期から4カ年の中期経営計画がスタートした。

 「最終年度となる24年度に売上高1100億円、経常利益65億円を目指すが、利益は低めに設定した。というのはコロナ禍により、物流施設などは競争入札の激化が予想されるからだ。また、人手不足は当社も同じ。現在全体で730人程度だが、売り上げを1100億円に伸ばすには、1割増の800人程度は必要と感じており、中途採用を含めて人員確保が課題だ。当社は従業員こそが会社としての根幹をなす。一人ひとりのレベルアップが最重要だと認識している。前6次中計は人材の戦力化に重きを置いてきた。新中計では花を開かせ、新しい成長の種を育て、技術開発にも注力したい」

 --現場では外国人労働者が増えている。安全教育などはどうか。

「過去の反省から、とにかく安全第一を呼びかけてきた。5カ国語の安全マニュアルを作成し、現場で一人ひとりに配った。19年度以降は外国人労働者による災害はゼロが続いている」

 --海外事業は。

 「フィリピンのマニラに子会社のリオフィル社がある。19年に30周年を迎えた。隣接してJFEシビル直属のBIMセンターを設置し稼働している。フィリピンはIT分野の産業が盛んであり、レベルも高い」

 「リオフィルは現地の日系企業をはじめ、地場の食品関連など全部で4棟が着工している。コロナ禍だが、感染対策を万全に順調に稼働している」

 --土木関連ではどうか。

 「社会基盤事業部が首都高速道路向けにJFEエンジニアリングとJVを組んで、支承交換の工事を行う。また当社独自の工法で山間部の急傾斜面の道路建設に適したメタルロード(立体ラーメンプレハブ桟道橋)工法の受注が伸びており、21年6月現在、574件の実績を積み上げてきた。国土強靭化計画の中で貢献できる技術であり、まだまだ伸ばしたい。また一人で制御できる油圧ジャッキシステムの引き合いが増えており、省人化に寄与する技術としてPRしていく」

 --音響技術もあると聞く。

 「実は20数年来の古くて新しい技術だが、地下構造を調べる『音響トモグラフィ』という技術が最近、脚光を浴びている。とくに海上から3Dを駆使し反射を利用して海底の地層調査に応用できる。通常は海でのボーリング調査となるが、コスト面で大変優位性があり、工期も短縮できるなど引き合いが増えている。最近は洋上風力発電向けに日本近海の地質調査が増えており、大いに貢献できる」

(菅原 誠)

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