2021年9月2日

つなぐ、企業の未来/事業承継・M&Aのいま/中小企業基盤整備機構インタビュー/豊永厚志理事長/廃業は雇用・知財に損失/納税免除やM&A支援でてこ入れ

高齢化する中小企業の事業承継が課題だ。近年の優遇税制など支援策が世代交代を促すが、次世代に引き継ぐことなく休廃業する例はなお多いという。中小企業経営者の新陳代謝は日本の収益力の問題という中小企業基盤整備機構の豊永厚志理事長に課題を聞いた。

 ――中小企業の事業承継の現状を。

 「企業は経営者1人ではない。貴重な雇用の機会と同時に技術なり知的財産がある。ここが抜ければ地域に大きなダメージになる。サプライチェーンに穴が空きかねない。経済の安定性とか経営資源の維持という観点から事業を続けて行ける必要がある。高齢化ゆえに廃業するケースが増えている。コロナ倒産は増えているが、倒産全体はここ20年ほぼ一貫して減っている。東京商工リサーチによると、倒産が7000件の時に休業、廃業は5万件くらいある。中小企業減少の主な原因とされるが、かなりの部分が高齢化だ。調査会社によると、倒産、休廃業する人の平均年齢が70歳を超えた。70を超えて休廃業する人が6割になっている。後継者にバトンタッチする意思がない人はいかんともしがたいが、バトンタッチしたいけれど息子も継がない、番頭さんも個人保証が嫌だ、M&Aも嫌だという出口のないまま突然亡くなったり体調を崩したり、貯めるものは貯めたからと辞める人が増えている。中小企業庁の試算で、後継者が探せないままいくと2025年とか30年には数百万人の失業者が出る。もう1つの問題は経営者の高齢化は収益力の低下とほぼ比例している。代替わりすると売り上げもしくは収益が上がる。5年、10年経つと安定期に入る。高齢化すると減収期に入る。この傾向は統計的に出る。減る局面が長くなると中小企業全体の収益力、ほぼ日本経済の収益力低下になる。新陳代謝がなされ企業は成長する。生産性も上がる。新しい市場も開ける。意欲ある世代がマクロ経済的にも必要だ」